ルシフェル「そんな手牌で大丈夫か?」小蒔「大丈夫です、問題ありません」

1 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 22:51 ID:b8yZ1PLL
 鹿児島県女子麻雀総体予選三日前、小蒔の家

 小蒔父「小蒔、ちょっと来なさい」

 小蒔「はい?なんでしょう」

 小蒔父「実は、私の後輩の息子夫婦がゲーム機をはがきの懸賞で

     当てたのだ」

 小蒔「えーっと、この箱に入っている...ぷれいすてーしょん3

    というのがそうですか?」

 小蒔父「ああ、そうだ」

 小蒔父「何でもその人の奥さんが妊娠していて、ゲームどころ

  ではない。といってこれを暫く預かってほしいとのことだ」
2 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 22:52 ID:b8yZ1PLL
 小蒔父「なぁに、コントローラーやゲームソフト諸々はお前達

六女仙が皆で楽しめる様に人数分揃っている」

 小蒔父「小蒔ももう17歳だ。少女漫画はそろそろ卒業しても

いいと思うぞ?」

 小蒔「そ、そんなぁ...」

 小蒔父「ハハハ。母さんはゲームをするのは一日三時間とは

言っていたが、ほどほどにな」

 小蒔「わかりました。お父様」

 小蒔父「それじゃ、ゲーム機本体の入った箱とソフトの箱だ」

 小蒔父「気を付けて運ぶんだよ」
3 名前:名無し 投稿日:2014/03/07 22:53 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「霞ちゃ~ん」

 霞「あらあら、どうしたの?その箱。ゲーム機みたいだけど」

 小蒔「はい。なんでもお父様の後輩の息子夫婦さんからの

預かりものです」

 小蒔「預かっている間は、自由にげーむをしていいそうです」

 霞「へぇ~。でも、小蒔ちゃん。そんな時間はないわよ」

 小蒔「え!」

 霞「忘れたの?あさっては鹿児島県のインターハイ予選よ?」

 小蒔「そ、そんなぁ...」
4 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 22:54 ID:b8yZ1PLL
 霞「それに巴ちゃんならともかく、はっちゃんや春ちゃんが

   これを見たらきっと麻雀に集中できなくなるわよ」

 霞「予選が終わったらみんなでゲームしましょう」

 小蒔「はぁい...」

 巴「あ、姫様と霞さんじゃないですか?」

 巴「二人して箱を持っているようですけど何なんですか、それ?」

 小蒔「い、いえ。お父様が私にしばらく預かるようにと

仰せつかったものです」

 巴「そうでしたか...」

 小蒔「そ、それでは私は部屋に箱を置いてきますね」

 巴「あ、待ってください姫様」

 巴「慌てて行っちゃった...」

 霞「さてと、はっちゃんを呼んできてくれるかしら?巴ちゃん」

 霞「予選のオーダーと作戦を立てなきゃ」
5 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 22:55 ID:b8yZ1PLL
 小蒔の部屋


 小蒔「えーっと、ぷれーすてーしょん3ということは2と

同じようにコードをつなげばいいんですよね」

 小蒔「これをこうしてあれをこうして...」

 春「姫様、何をしているの」

 小蒔「わぁっ!び、びっくりさせないでください!春ちゃん」

 春「姫様はずるい」

 小蒔「な、なんでですか?」

 春「私達、生まれてこの方ファミコンしか買ってもらって

   いないのに一人だけ最新鋭のゲーム機とソフトを

   ご当主様に買ってもらってる」

 春「不公平&ずるい」

 小蒔「そ、そんなことありません!断じて違います」

 春「じーっ」

 
6 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 22:56 ID:b8yZ1PLL
 初美「はるるー、姫様ー」ガラッ

 小蒔「は、はっちゃん」

 初美「あーっ、ずるいですよー、姫様ー」

 初美「私達の部屋にはテレビがないのをいいことに、自分の

部屋にある備え付けのテレビで一人だけゲームを

しようとしてましたね~?」ニヤニヤ

 初美「霞ちゃんだけでは飽き足らず、今度はゲームにまで

その魔手を伸ばしているとは...恐ろしい姫様」ヘラヘラ

 小蒔「ううっ、違うんです。二人とも話を聞いてください」グスン

 小蒔「これはお父様の後輩の方の息子夫婦からの預かりもの

なんです」

 小蒔「預かっている間、六女仙のみんなで使っていいって

お父様から言われているんです」エッグエッグ
7 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 22:57 ID:b8yZ1PLL
 春「初美さん、姫様泣かした。い~けないんだ」

 初美「ちょ、ちょっとそれははるるも同罪ですよね?」

 春「霞さん達が来る前にすたこらさっさ」

 霞「あらあら、春ちゃん、初美ちゃん?小蒔ちゃんに何をしたのかしら?」

 初美「ひぃっ!?で、でたー」

 春「諸悪の根源は初美さん。間違いありません。霞さん」

 霞「これはズバリ、お仕置きタイム突入確定物よ?はっちゃん」

 初美「イダダッ、イタイイタイ!!いたいですよぅ」グリグリ

初美「この熟れた体を持て余す団地妻め!」キンク

 霞「へ、へぇ」ビキビキ

 霞「久々に誰かのタマを握り潰したくなってきたわぁ~」ニギニギ

 初美「あわわわ。ゆ、許してくださいなのですよ~」ガクブル

 霞「許さない」ニコォ
8 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 22:58 ID:b8yZ1PLL
 霞「巴ちゃん」

 霞「私の部屋から鞭と荒縄、それとこけしを持ってきて頂戴」ニタァ

 霞「この似非幼女に団地妻の四十八手をお見舞いしてあげないと」

 霞「大人を舐める子供に罰を与えなきゃ」スマイル

 巴「ひぃっ!に、逃げますよ姫様、春ちゃん」キャアアア

 霞「狩宿、巴ェ!」キョウカツ

 巴「あわわ、ぶくぶくぶく...」キゼツ

 小蒔「霞ちゃん、怖いです...」ナミダメ

 小蒔「私はただ、皆で仲良くゲームをしたいだけなのに...」ウルウル

 霞「ふんふむ」

 霞「御免なさいね、小蒔ちゃん」

 春「ごめんなさい、姫様」ペコリ

 初美「ゆるしてくださ~い、姫様~」ドゲザ

 小蒔「そ、それじゃあ。皆でゲームをしましょう」パァッ

 小蒔「仲直りにはこれが一番です」
9 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:00 ID:b8yZ1PLL
 初美「さすが姫様」

 初美「そこにシビレる、憧れるぅ~」

 初美「玉潰し職人の霞さんとは月とすっぽんの差がありますね~」

 霞「おい、薄墨」

 霞「あまりふざけてると、ハブにすんぞコラ?」

 初美「ごめんなさいごめんなさい、マジで勘弁してください

お尻ペンペンだけはいやああああああ」
10 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:01 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「はい、まずはこの対戦格闘ゲーム、ええーっと」

 小蒔「ぶれいぶるー?をやってみようと思います」

 巴「二人だけでしか楽しめないのが玉に瑕ですが...」

 巴「まずはジャンケンで最初にやる人を決めましょうか」

 春「じゃんけんぽん」

 霞「あらあら~。負けちゃったわ~」

 初美「やった~、やりましたよー、勝ちました~」

 巴「勝っちゃったよ....」

 小蒔「えーっと、じゃあ取扱説明書を私達は読んでますね」

 巴「霞さん、これ勝ち抜き戦でいいですよね?」

 霞「そうね。負けた人はすぐに交代しましょう」
11 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:01 ID:b8yZ1PLL
 初美「えーっと、どのキャラにしようかなぁ~」

 巴「取り敢えず、ランダムにしてみましょう。面白そうだから」

 補足、1P、巴 2P、初美

 初美「うげぇええ、なんですか~?このむさい忍者は」

 春「シシガミ・バングwww忍者マジウケる」

 巴「うわぁ~、なんか気持ち悪いうねうねが私のキャラだ~」

 霞「なんだかキワモノぞろいね...このゲーム」
12 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:02 ID:b8yZ1PLL
 ブレイブルー、初美VS巴

 初美「キタ―ッ、キタキタキタ―ッ。超必殺技キタ―ッ」

 バング『熱血最終奥義!掟破りの超忍術、地獄絵図を味わうでござる!』

 アラクネ「ギャアアアア」

 巴「...色物コンビに負ける私って一体なんなのかしら...」

 初美「いやぁ~楽しいですねー。このゲーム凄く面白いですよー」

 小蒔「巴ちゃん...」

 巴「いいもん。どうせ私なんか地味眼鏡でワカメにも負ける

    雑魚なんだもん。今更負けたってどうってことないやい!」

 霞「巴ちゃん可愛い」

 初美「さぁさぁ、お次は誰が相手ですか?」

 初美「はるるですか?姫様ですか?それとも霞ちゃんですか」
13 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:03 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「私がやります」

 春「私がやる」

 霞「あらあら、それじゃあ私もやろうかし...」

 春・小蒔「どうぞどうぞ」

 巴「霞ちゃん、ちょろいな...」

 霞「分かりました」
 
 霞「それじゃあもう一回キャラクターを選びましょうか」

 初美「私はさっきの忍者でいいですよ」
14 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:04 ID:b8yZ1PLL
 霞「そうねぇ...じゃあ私は..」

 小蒔「なんかすごく胡散臭い人を選びましたね」

 春「霞さんの暗黒面がにじみ出ているようなキャラ」

 巴「ユウキ・テルミ?ってキャラみたいですね」

 霞「はっちゃん、せいぜい調子こいていられるのも今の内よ?」

 初美「霞ちゃんこそ後で吠え面かかないでくださいねー」
15 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:04 ID:b8yZ1PLL
 初美VS霞

 バング「うぎゃああああ」

 初美「あ、喰らっちゃいました」

 霞「ふふん、まだまだコンボは続くわよ~」

 テルミ「ウロボロス!!蛇麟煉翔牙!ヒャッハー!」

 初美「んなっ!」

 音声「ディスト―ション・フィニッシュ」

 初美「ま、まだまだですよ」

 初美「次で取り返せばいいんですからね、私は」

 霞「あらあらまぁまぁ。果たしてできるかしら」
16 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:05 ID:b8yZ1PLL
 音声「LEVEL2、FIGHT!」

 バング「風林火山!」

 初美「初っ端からこれを使うのは嫌だったんですけどね」

 初美「機動性ならこっちが上です」

 霞「あっ、このっ!ちょこまかと動きすぎよ」

 霞「何でこのキャラ走らないのよ!」

 霞「走れ、走りなさい!」

 巴「霞ちゃん、初美ちゃんといい勝負ですね」

 春「どっちが勝つと思う?姫様」

 小蒔「えーっと、初美ちゃん?」

 音声「フィニッシュ、テルミ、LOSE」

 霞「ちょっと、小蒔ちゃん!」

 小蒔「はっ、はい」

 霞「余計な茶々を入れないで頂戴。負けちゃったじゃない」

 小蒔「すみません」
17 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:06 ID:b8yZ1PLL
 初美「さぁさぁ、次で霞ちゃんをフルボッコしてやるのですよ~」 
 
 初美「巴ちゃん、春ちゃん、姫様、括目してくださいね~」

 霞「小蒔ちゃん、リモコンを貸してくれるかしら?」

 小蒔「はい」

 霞「ボリュームを三十に上げておいて」

 音声「LEVEL3、FIGHT!」

 霞「えーっと、オーバードライブを発動っと」

 テルミ「もうめんどくせえのはナシだ!ぶっ殺す!」

 初美「ひいっ」

 霞「あっ、キタキタこれよこれ」
18 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:06 ID:b8yZ1PLL
 テルミ「蛇縛封焉塵!たまんねぇなぁ!…テメェ、終わりだぜ。死ねよ」

 初美「うぎゃあああああ、ゲージが七割持ってかれた―」

 初美「ちっくしょー、こうなったら体力ゲージを回復させないと」

 霞「いいわよ。体力が回復するまで待ってあげる」

 春「やばい、使ってるキャラと相まって霞さんが邪悪に見える」

 巴「初美ちゃん、ご愁傷様」

 霞「半分以上回復したのね。だけど」

 霞「ディスト―ション・ドライブはこの先二度と使えないから」

 巴「うわー、えげつないなー」

 巴「全部の攻撃を紙一重で見切った挙句、残りの体力ゲージが

    一になるまで追い込むなんて...」

 霞「ヒャッハ―!イヤッフゥウウウー」
19 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:07 ID:b8yZ1PLL
 テルミ「大蛇斬頭…烈封餓ぁぁぁぁ!!!」

 テルミ「ヒャハハ!ヒャハハ!ヒャッハハハ!見せてやるよ、神の剣を!」

 音声「アストラル・フィニッシュ」

 初美「ふぇええ」ビエエエン

 霞「ふぃー、すっきりしたわぁ」

 霞「さ、次は誰が私の相手になるのかしら?」

 春「姫様がやりたいっていってました」

 小蒔「ええーっ、ちょ、ちょっと春ちゃん」
20 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:08 ID:b8yZ1PLL
 霞「春ちゃん」ニコニコ

 春「は、はい」

 霞「次は春ちゃんとやりたいわぁ~」

 小蒔「春ちゃん」

 春「...」

 小蒔「ドンマイです」

 春「逃げたい...今すぐ逃げたい」

  この後、怯える春をフルボッコにした霞は意外な事に巴に負け、

   春は小蒔に対して苦戦の末、辛勝した。
21 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:08 ID:b8yZ1PLL
 霞「中々面白いゲームだったわね。このブレイブルーってゲーム」

 初美「エッグ、エッグ。霞ちゃんのバカァ...」
 
 初美「怖かった、怖かったよぉ~」

 巴「霞さん。ちょっと大人げなさ過ぎでしたよ」

 霞「あら?巴ちゃんだって春ちゃんとやった時は挑発を連発して

   ディスト―ション・ドライブばっか発動してたじゃない」

 巴「しょうがないじゃないですか!よりにもよって猫と子供ですよ!

   すぐにへばる、使いづらい、それに雑魚キャラの三重苦!」

 巴「しかも春ちゃん、主人公とか強いキャラ引き当てるし」
22 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:09 ID:b8yZ1PLL
 春「霞さんの言うとおり」

 春「あれは流石に誰の目から見ても反則行為」

 巴「だまらっしゃい!」

 小蒔「ふぁ~あ」

 初美「ありゃ、姫様が寝ちゃいましたね」

 霞「ふふっ。一番はしゃいでたのは小蒔ちゃんだったわね」

 霞「春ちゃんとやった時なんか、飛んだり跳ねたりしてたわね」

 巴「ええ、凄くかわいかったです」

 春「結構霞さんも苦戦してた。巴さんは論外だけど」
23 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:10 ID:b8yZ1PLL
 霞「はいはい、睨み合うのはそこまで」

 霞「ご飯を食べ終わったら、またさっきのゲームをやりましょう」

 初美「今度は負けませんよー」

 霞「じゃ、今からご飯を作るからみんな手伝ってね」

 三人「はーい」
24 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:10 ID:b8yZ1PLL
 午後十時、

 小蒔「指がとても痛いです」

 春「凄い目がしぱしぱする」

 巴「午後三時から夜ご飯を挟んで三時間以上連続でやって

   ますからね」

 初美「明日はお勤めありませんけど、早く寝たい気分です~」

 霞「そうね。じゃあ、今日はこれでお開きにしましょう」

 霞「ゲームはまたインターハイに出場することが決まったら

   お祝いとしてやりましょう」
25 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:11 ID:b8yZ1PLL
 四人「はーい」

 霞「それじゃあ、小蒔ちゃん。おやすみなさい」

 春「おやすみなさい」

 初美「おやすみなさい」

 巴「おやすみなさい」

 小蒔「おやすみなさい」
26 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:12 ID:b8yZ1PLL
  就寝の挨拶と共にめいめいが部屋に戻っていったのを確認した小蒔は、

 預かっているゲームソフトの箱を開け、他にどんなゲームソフトが

 あるのかをがさごそと探し始めた。

 小蒔「みなさんには悪いですけど、ゲームってすごく楽しいです」

 小蒔「お勤めが無いことをいいことに夜更かしするのは気が引けますが」

 小蒔「ちょっとくらいいいですよね?」

  箱の中に入っている何本かのゲームソフトを確認した小蒔は三十分後、

 一本のゲームソフトをゲーム機へとセットした。
27 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:13 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「サッカーのゲームも、戦争のゲームも残っていたゲームは

全部一人用のゲームでした」

 小蒔「なので、この一番簡単そうなエルシャダイという

ゲームをやってみたいと思います」

  うぃいいいん、とゲーム機がエルシャダイのデータを読み込む。

 ルシフェル「イーノック、そんな装備で大丈夫か?」

 小蒔「ううっ、これって会話をスキップしてもよかったんでしょうか?」 

 イーノック「大丈夫だ、問題ない」

 小蒔「あっ、待って」
28 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:13 ID:b8yZ1PLL
  小蒔の叫びも空しく、イーノックは古代の剣闘士の鎧を身に纏い、

 堕天使達の手下達が待ち受ける地上へと飛び降りていった。

 イーノック「うっ、」

 イーノック「グアッ」

 小蒔「ああっ、イーノック、イーノック!」

  鎧をアーチに砕かれ、首にその刃を当てられたイーノックは

 そのまま死にそうになった。だが、

 ミカエル「神は言っている、ここで死ぬ定めではないと」
 
 小蒔「あれ、あれれ」

  小蒔が何が起きたのかを理解する前に時間が巻き戻される。
29 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:14 ID:b8yZ1PLL
 ルシフェル「イーノック、そん、な装備、で」

  まき戻った後に聞こえてきたのはルシフェルの声だった。

 だが、なぜか分からないがルシフェルの声はぶつ切りになって聞こえてきた。

 イーノック「だ、い丈夫だ、問題、ない」

 小蒔「あわわ、どうしよう」

  新品同様のゲーム機を壊すような粗雑な扱いは小蒔達は決してしなかった。

  それはちゃんと自信を持って言える事だ。

  だけど、小蒔はそんなことを考えることが出来なくなりつつあった。
30 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:14 ID:b8yZ1PLL
 ルシフェル「ん?なんだ」

 ルシフェル「おい、そこのテレビ越しの女の子」

 ルシフェル「そう、そこの君だよ」

 小蒔「ひぃっ」

  画面越しに自分に語りかけてくる大天使ルシフェル。

 神社の娘でも、彼が熾天使から堕天して魔王ルシファーに

 なったことは知識として知っている。

  身の危険を察知した小蒔はテレビのコードを思いきり引き抜いた。
31 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:15 ID:b8yZ1PLL
 ルシフェル「おいおい、随分なご挨拶だな」

 ルシフェル「私も長いこと時間を行き来したが、まさか自分が

   ただの人間に観測されるなんて初めてだ」

 ルシフェル「興味がわいた。君、名前はなんていうんだい?」

 小蒔「神代小蒔です」

 ルシフェル「まぁ、一応初めましてとでも言っておこうか」

 ルシフェル「私はルシフェル。一応、暁の明星とか悪魔、

   魔王ルシファーとか呼ばれている」
32 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:17 ID:b8yZ1PLL
  ルシフェルの自己紹介が終わるや否や小蒔の意識は突然途切れた。

 九面「世界で最も邪悪な魔王よ」

 ルシフェル「へぇ、随分と体の中に色んな神様を蓄えているな」
   
 九面「疾く去れ。ここは日ノ本古来からの神境。異国の堕天使、

 それも大魔王がここにいることは許されぬ」

 ルシフェル「おいおい、君達自分の実力が分かって私に喧嘩を

   売っているのか?」

 ルシフェル「他の八百万の神々に言われるのならまだしも、君達

       天下り組には言われたくないな」

 ルシフェル「私に対して喧嘩を吹っ掛けるのなら、国つ神くらいの

   連中じゃなきゃ困る」

 ルシフェル「格下相手に私の沽券を下げるわけには行かないからね」

 パチン、とどこかから指を鳴らす音が聞こえたその瞬間、 

 九面「信じられん。私達の生依の身体を乗っ取るとは」

 ルシフェル「成程、どうしてこの小娘の身体に神様が丸々入るのかが

   ようやく分かったよ」

 ルシフェル「イーノック...懐かしいな。メタトロンの欠片が時と

   時空を超えてこんなところに落ちていたのか」
33 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:18 ID:b8yZ1PLL
 九面「貴様、我らをどうするつもりだ」

 ルシフェル「何、既に終わった結末を少しだけ変えるのが一つ」

 ルシフェル「それと、まぁ物見遊山というのが二つ目かな」

 九面「ち、力が奪われ...」

 ルシフェル「まぁ、出雲でも行って蕎麦でも食べるといい」

 ルシフェル「君達の役目は暫くの間、私が代わりに務めよう」

 ルシフェル「それじゃ、おやすみ」

  小蒔の身体から九面神を追い出したルシフェルは小蒔の

 身体に入り込み、その後すぐに小蒔に意識を返したのだった。
34 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:19 ID:b8yZ1PLL
 ~次の日の朝~

 巴「うーんっ、今何時かな?」

 巴「八時半か~。もうみんな起きてるかな?」

  布団を畳み、髪を整え、歯を磨いた巴は皆の待つ場所へと

 移動していた。

 ???「ホーホーホー(デビル様...)」

 巴「あれぇ、フクロウの声がする」

 巴「でも、フクロウって夜行性じゃなかったっけ?」
35 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:19 ID:b8yZ1PLL
 ???「ホッホーホー(間違いない!ここに居られる)」バサバサ

 巴「むむむ?木の上に止まってるのってフクロウだよね?」

 ???「ホーホーホー(取り敢えずあの眼鏡の子に聞くか)」

 ???「ホーホー(おーい、そこの眼鏡の女の子)」セッキン

 巴「わわっ、フクロウがこっちに飛んできた」カタニトマル

 巴「でも、この鳥フクロウじゃない...」ダッコスル

 ???「ホーホーホー(おい、そこの眼鏡の女の子)」

 ???「ホーホ(俺はアモン、闇の侯爵だ)」ミツメル
36 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:20 ID:b8yZ1PLL
 巴「ま、まさか」ガクゼン

 アモン「ホホ―(娘、お前の名前は?)」

 巴「未知のウイルスを持つ、キメラなのかな...」ワクワク

 アモン「ホホホー(あっ、コイツ俺をシカトしてやがる)」

 巴「だって、胴体から蛇っぽい手が出てるし...」テヲハナス
 
 アモン「ホーホッ!(おい、この野郎!話を聞けよ)」

 巴「うん、これは警察に通報だ」ケータイトリダス

 アモン「ホーッ、ホーッ(こんにゃろう、ここまで俺を虚仮にする

  とはいい度胸だ!とっちめてやる)」バサバサーッ

 巴「でもなぁ、この子すっごく可愛いし...」キラキラ

 巴「ねぇねぇ、君のお名前はなんていうの?」

 アモン「アモン」
37 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:21 ID:b8yZ1PLL
 巴「うわっ、なんか喋った。でも今アモンって言った、よね?」

 アモン「ホホホホホー(やっと話を聞いてくれた)」

 アモン「ホ、ホ―(なんか疲れた。ご飯が食べたい)」

 巴「触っていいのかな?でも、噛まれないかな...」

 アモン「ホ―(もういいや。好きにしろよ)」

 巴「よ、よし。皆に内緒でこのフクロウさんを飼っちゃおう」

 アモン「(なんかよく分からないけど、いいや)」

  巴は物置小屋におおきなウサギ用のゲージがあったことを思い出し、

 アモンを自分の部屋に閉じ込め、それを取りに行った。
38 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:22 ID:b8yZ1PLL
 初美「あ、巴ちゃん。おはようございますなのですよー」

 巴「お早う。はっちゃん」

 初美「聞いてくださいよー、巴ちゃん」

 初美「霞さんがご飯を作ってる時にフクロウを見たって言うんですよ~」

 霞「調理場のね、窓のすぐ傍にある木に止まってたの」

 霞「だけどね...明らかにおかしい姿をしてたのよ」

 霞「胴体から蛇の鱗の付いた手がにょっきり生えて、尻尾は蛇の尾なの」

 巴「へ、へぇ~。霞さんにしては面白い冗談ですね」
39 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:23 ID:b8yZ1PLL
 霞「そういわれても仕方ないんだけど...気味悪くて」

 春「霞さん。姫様はまだお部屋ですか?」

 春「皆がいるからてっきりいるかと思って」

 霞「そうみたいね」

 霞「小蒔ちゃん、あれから夜更かししたんじゃないのかしら?」 

 巴「そうかもしれませんね~」

 初美「ま、ご飯もできていますし、私が姫様を呼んできます」

 霞「じゃあ、お願いね」

 初美「はーい」
40 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:24 ID:b8yZ1PLL
 ~小蒔の部屋~

 小蒔「ふぁ~あ」

 小蒔「何かおかしな夢を見ていた気がするなぁ~」

 小蒔「でも、何の夢だろう?」

 ルシフェル「やぁ、おはよう。随分とファンシーな部屋だな」

 小蒔「...お、お部屋には誰もいませんよね?」

 ルシフェル「ひどい言い草だな。ここにいるだろう?ほら、君のすぐ隣に」

 小蒔「えっ、え、え、え?」

  自分の頭の中にまるで誰かが直接メッセージを送っている。

 そんな感じの声が先ほどから小蒔を戦々恐々の状態にしていた
41 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:25 ID:b8yZ1PLL
 ルシフェル「おっと、いけない。普通の人間には私の姿は

   見えないことをすっかり忘れていたよ」

  小蒔の動揺を知ってか知らずしてか、その声の主は何千何万回と

 繰り返してきた、あの伝説の指パッチンを一つした。

 小蒔「ひゃっ、あわわわ」

  パチンッ

  軽快な指鳴らしの音が聞こえるか否か、小蒔の目の前にはこの世の者とは

 思えない美しい男?が悠然と立っていた。

 小蒔「あ、貴方はだ、誰ですか」
42 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:26 ID:b8yZ1PLL
 ルシフェル「ルシフェル、あるいはデビル。そしてフォース

     私としては、そう、ルシフェルと呼んでほしい」

 小蒔「る、ルシフェルって...まさか」

 ルシフェル「そう、君のやっていたゲームのナビゲーターさ」

 ルシフェル「どうやら、この世界の神は悪戯好きなようだ」

 ルシフェル「勿論、今の私は堕天前の熾天使、セラフだ」

 ルシフェル「君の身体にいる神様達より格上の存在だがね」

 小蒔「し、信じられません...あ、貴方は一体何をしに来たんですか」

 ルシフェル「暇つぶしさ」
43 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:26 ID:b8yZ1PLL
 ルシフェル「神との争いに敗れて全てを失った私を君が、いや、

          正確には君の身体にあるメタトロンの欠片が私を

       ここに呼び出したのさ」

 小蒔「めたとろん?」

 ルシフェル「色々と君に話したいことはあるんだが」

 ルシフェル「どうやら君のお友達が来たようだ」

 初美「姫様~、起きて下さい。ご飯の時間ですよ~」

 小蒔「分かりました。いま行きまーす」

 ルシフェル「暫くは君の体の中に厄介することになりそうだ」

 ルシフェル「困ったことがあれば私を呼べ。力になろう」

 小蒔「は、はい」
44 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:27 ID:b8yZ1PLL
 ~朝食後~

 霞「それじゃ、今日は明日の県予選のオーダーを皆で決めたいと思います」

 四人「はーい」

 霞「じゃあ、単刀直入に聞くわね」

 霞「先鋒戦に出たい人はいますか」

 四人「シーン」

 霞「うーん、まぁいいか」

 霞「次鋒戦に出たい人」

 巴、春「ハイハイハーイ」

 霞「巴ちゃんと春ちゃんが次鋒希望と」
45 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:28 ID:b8yZ1PLL
 ルシフェル「小蒔、彼女は一体何をしているんだ?」

 小蒔「えーっと、今度の麻雀の団体戦のオーダーを組んでいます」

 ルシフェル「随分とこの世界では麻雀が流行しているんだな」

 小蒔「はい。職業にプロ雀士というものがあるくらいですから」

 霞「それじゃあ、副将戦に出たい人は?」

 初美「私が出ま~す」

 霞「初美ちゃんが副将っと」
46 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:28 ID:b8yZ1PLL
 霞「それで、小蒔ちゃん?」

 小蒔「はい」

 霞「さっきから一体誰と話しているのかしら?」

 小蒔「え、そ、そんなことはありませんよ」

 春「ゲームやりたいって、ぼそぼそ言ってた」

 小蒔「いいい、言ってませんよ」

 霞「はぁ、小蒔ちゃん。こういう時くらい集中しなさい」

 小蒔「ごめんなさい...」
47 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:29 ID:b8yZ1PLL
 霞「で、結局先鋒と次鋒と中堅が残っているのよ」

 霞「私と初美ちゃんは重複しなかったけど、春ちゃんと巴ちゃん、

    小蒔ちゃんをどこに入れるのか迷ってるの」

 霞「小蒔ちゃん、何処に入りたい?」

 小蒔「ちょっと考えさせてください」

 霞「分かったわ」
 
 霞「じゃあ巴ちゃんと春ちゃん。ジャンケンして勝った方が次鋒ね」

 巴「えー」

 春「せーの、出さなきゃ負けだよジャンケンポン」

 巴、グー。春、チョキ
48 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:31 ID:b8yZ1PLL
 初美「はるる乙www」

 巴「やったー!春ちゃんに勝ったー」

 春「負けちゃった...」

 霞「はい、次鋒は巴ちゃんで決まりね」

  続々と残りのポジションが決まる中、小蒔はやはり先鋒をやろうと考えた。

 小蒔「私、先鋒をやります」

 霞「で、春ちゃんは一年生だから中堅にしておきましょう」

  ぽんっ、手を叩いた霞は団体戦のオーダー用紙にメンバーの名前を

 ボールペンで書き始めた。

 ルシフェル「小蒔」

 小蒔「はい、何でしょう?」
49 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:32 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「一番いいオーダーでお願いします」

  パチンッ!頷いたルシフェルが指を鳴らすと...

 霞「で、結局先鋒と次鋒と中堅が残っているのよ」

 霞「私と初美ちゃんは重複しなかったけど、春ちゃんと

   巴ちゃん、小蒔ちゃんをどこに入れるのか迷ってるの」

 霞「小蒔ちゃん、何処に入りたい?」

 小蒔「えーっと、私は」

 ルシフェル(この世界では私は時を巻き戻せるようだな)

 小蒔「副将をやりたいです」
50 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:34 ID:b8yZ1PLL
 初美「えーっ、なんでですかー。姫様~」

 巴「姫様が先鋒じゃないんですか?」

 小蒔「はい。私の考えを皆さん聞いていただけますか?」

 霞「ふんふむ。取り敢えず聞いてみましょうか」

 小蒔「まず、私を知っている全国区のプレイヤーはきっと私の先鋒を

かるーく流すと思います」

 春「確かに去年の個人戦でも二位通過の選手は姫様を無難に

   やり過ごしてなんとか生き残った」

 小蒔「それに加え、私のコンディションが万全ではない、あるいは

九面神を降ろせない場合もあるかもしれません」

 霞「それだと結構困るのだけど」
51 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:35 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「その点、初美さんは一発屋の私と比較して安定した能力です」

 初美「確かに裏鬼門に入った私なら大抵の相手に役満をぶっつけられます」

 初美「けど、流石に無理があると思うんですけど...」

 小蒔「初美さんを先鋒に据えるのは、それだけが理由じゃありません」 

 巴「そういえば」

 巴「初美ちゃんって団体戦これが初めてだったよね?」

 初美「え、ええ。確かにそうですけど」

 小蒔「恐らく他の学校は私の能力に大体の見当をつけているでしょう」

 小蒔「ムラがあることも、そしてそのタイミングも」

 霞「成程..確かに筋は通っているわね」
52 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:36 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「勿論、これは私の推測です」

 小蒔「私を先鋒に据えてもインターハイ出場という同じ結果が

    当たり前のように出るかもしれません」

 小蒔「ですが、長いスパンで考えると...」

 霞「そうね。小蒔ちゃんの言うとおりね」

 霞「はっちゃん」

 初美「しょーがないですねー」

 初美「ここは一つ、私が一肌脱ぐしかありませんね」

 霞「殆ど全裸じゃない」

 初美「それは言わないお約束ですよー」
53 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:37 ID:b8yZ1PLL
 巴「あらあら」

 霞「それじゃあ、先鋒がはっちゃん、次鋒が巴ちゃん、中堅が

   春ちゃん、副将が小蒔ちゃん、そして大将が私ということで」

 春「うん、これでいいと思う」

 霞「決まりね」

 霞「そうと決まれば、皆で打ちましょうか」

 四人「はーい」
54 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:37 ID:b8yZ1PLL
 ~はるるを除いて麻雀中~

 巴「ロンです。リーチタンヤオ三色同順12000点」
 
 霞「巴ちゃん。結構調子いいわね」

 小蒔「ううっ、南場で満貫直撃は痛いです~」

 初美「次は姫様の親番ですよー」


 南三局 ドラ 七筒

 小蒔 手牌 22244888p、東東發中北 7000点

 巴 手牌 673m、456p、3789s、北北南南 16000点

 霞 手牌 4557m、3699p、11223s 34000点

 初美 36m、123456p、發西西中中 43000点
55 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:38 ID:b8yZ1PLL
 初美(あれ~、そういえば姫様寝てないな~)

 初美(それに北家の私にしてはあまり見ない手牌ですねー)

 初美(四向聴で一気通貫なんて...ちょっとおかしいです)

  初美の捨て牌、3m


 霞(ふんふむ、七対狙いでいけるわね)

 霞(裏鬼門は発動してないみたいだけど)

 霞(早めにあがっちゃいましょう)

  霞の捨て牌、7m

 
 巴(あれれ、北と南の対子があるな)

 巴(東場ならともかく、今は南場、それにはっちゃんが北家)

 巴(でも、ラッキーなのかな?)

 巴(赤ドラも南もあるし、満貫狙えるかも)

  巴の捨て牌、3s
56 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:39 ID:b8yZ1PLL
 ~五順目~

 小蒔「リーチです」

 小蒔手牌 222444888p、東東發發 待ち牌 發

 霞(おかしいわね。起きてる小蒔ちゃんが何回も何回も

   それも、九面神も降ろさないでリーチを掛けるなんて)
 
 霞(それに初美ちゃんの裏鬼門が発動していない)

 霞(かくいう私も'あれら'を降ろして絶一門に移ろうとしてるのに
  
   全然できない)

 霞(一体何が起きてるの?)
57 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:40 ID:b8yZ1PLL
 巴「リーチ」

 巴 手牌 123m、456p、789s、北北南南 待ち、南北

 巴(やった!リーチ出来た)

 巴(いつもならこの数順後に放銃しちゃっているけど)

 巴(今の私は負ける気が全然しない)

 巴(絶対に上がってやる)
58 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:41 ID:b8yZ1PLL
 初美(ううっ、一体何なんですかー、これ)

 初美手牌 123456789p、西西中中

 初美(裏鬼門は発動できない上に、姫様と巴ちゃんがリーチをかけてる)

 初美(しかも現時点での私の手牌、和了すれば跳満以上は確定してるし)

 初美(昨日やったゲームのせいなんですかね?)

 初美、牌をツモる

 初美(西ですか...)

 初美「ツモです」

 初美「門前、中、一気通貫、混一色、ドラ1 16000点」
59 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:42 ID:b8yZ1PLL
 巴「あーっ、そんな~」

 小蒔「あがられてしまいました」

  牌をパタパタと倒していく二人の手牌をみた初美と霞は驚愕した。

 霞「こ、小蒔ちゃんが四暗刻の發単騎待ち!?」

 初美「と、巴ちゃんが満貫ですかっ!?」

 巴「ふ、二人とも一体どうしたんですか?」

  びっくりした巴と小蒔を余所に霞と初美は目配せして裏ドラと次に

 小蒔と巴がツモる牌の確認をした。
60 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:43 ID:b8yZ1PLL
 霞「う、嘘でしょ...」

  裏ドラをめくった霞は思わず呻いていた。

 裏ドラは一筒、小蒔の手牌には2筒が三枚。

 もう一つの裏ドラは南、巴は西を二枚持っている。

 そして初美がめくった二枚の牌は發と北。

  もし、初美の手牌が一つでもずれていたら、次に和了したのは

 小蒔か巴かもしれない。

  今の自分の点数は34000点、そして自分の手牌には發が一枚。

  もし、何の気なしに發をさっき切っていたら...

  そう思った霞の頬を冷や汗がつつーっと滑り落ちていった。
61 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:43 ID:b8yZ1PLL
 初美「いやー。惜しかったですね~、姫様」

 小蒔「あーっ、本当ですね」

 小蒔「私が九面の神様を降してない状態で、それも数え役満

    一歩手前なんて滅多にありませんからね~」  

 小蒔「すっごく悔しいです」

 春「....」

 霞「さ、さぁ次はオーラスよ」

 霞「はっちゃんの勝ち逃げだけは絶対に阻止しないと」

 小蒔「はーい」

 巴「絶対に早アガリしてやる」

  やる気に燃える小蒔と巴を余所に、初美と霞は得体の知れない

 不安を感じ始めていた...
62 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:45 ID:b8yZ1PLL
 ~バスタイム~
 
 春「ふぅ」

  檜風呂に浸かりながら春は先程の自分の惨憺たる結果を思い出していた。

 小蒔「ロン、跳満で12000です」

 巴「ツモ、6000オールです」

 初美「へっへっへ~大四喜ですよ~、はるるに32000点直撃」

  大人げない三年生、そして二年生の集中砲火を受けて春のプライドは

 ズタズタになっていた。

 春「姫様も初美さんも大人げなさすぎる」

 霞「そうね。少し二人ともはしゃぎ過ぎたきらいはあるわね」

 春「霞さん...」

  身体をお湯で流し、湯船に入ってきた霞に近づいた春は、その豊かな

 胸に顔を埋めた。
63 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:46 ID:b8yZ1PLL
  霞に抱き着き、目を瞑った春の耳には優しい霞の声が聞こえた。

 霞「何回も何回も飛ばされ続けてやけになる気持ちは分かるけど」

 霞「インターハイに行くには春ちゃんの力が不可欠なの」
 
 春「どうせ私は人数合わせ...」

 霞「そんなことないわ」

 霞「二年前の私も先輩達にボロクソにけなされ、戦力外だ。

   生意気だから退部しろ。なーんてことはザラだったわ」

 春「でも霞さんは一年生の時、団体戦で既にレギュラー入りが確定してた」

 霞「捨て駒の次鋒戦だったわ」
64 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:48 ID:b8yZ1PLL
 霞「結局、私が一年の時は個人、団体戦ともにインターハイに出れなかった」

 春「私は、霞さんが羨ましい」 

 霞「そうね...、その気持ちはよく分かるわ」

 霞「私は皆の事を妹のように思っているの」

 霞「その中でも、春ちゃんは一番年下だから人一倍プレッシャーに

   弱いと思っている。だから支えてあげたいの」

 春「霞さん...」 

 霞「春ちゃんは一生懸命自分の麻雀を打てばいいの」
65 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:48 ID:b8yZ1PLL
 霞「マイナスになったら小蒔ちゃんと私で取り返す」

 霞「春ちゃんが点数を稼げば、頑張ってリードを広げて勝ちに行くわ」

 霞「だから、貴女の先輩達を信じて?」

 春「分かった」

 初美「霞ちゃーん、はるるー、お風呂にいるんですか~」

 霞「いるわよー」

  元気な初美の声を聞いた霞は、抱きしめていた春を優しく

 撫でてから浴槽から上がったのだった。
66 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:49 ID:b8yZ1PLL
 ~巴’S ROOM~ 

 巴「皆は今お風呂に入っているし」

  ドアを開け、誰も自分の部屋の近くをうろついていないのを確認した

 巴は押し入れに隠したアモンの入ったケージを取り出した。

 アモン「ホッホホホホー(ふざけんな!俺を何時間も押し入れの中に

 閉じ込めやがって!一体どういうつもりなんだよ!)」

 巴「ごめんね、アモン」ペコリ

 巴「皆にはまだ君の事を話すわけには行かないんだ」
67 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:50 ID:b8yZ1PLL
 巴「ここはペット飼うの禁止されてる場所だから」

 アモン「ッ!ホー(俺はペットじゃねー、悪魔だよ!)」

 巴「梟がいつも食べてるのって鼠とか小鳥だけど野菜でいいよね?」テヘペロ

 巴「はい、キャベツと桜島大根と人参、そして天然水」

 巴「たーんと食べて大きくなるんだよ」クビカシゲ

 アモン「ホホ―ホホー(おい、待てよ)」ビクビク

 アモン「ホホ―ホ(まさかまた押入れに入れるんじゃないだろうな?)」

 巴「静かにしてるんだよ?」オシイレニイレル
68 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:51 ID:b8yZ1PLL
 巴「皆にばれたら君は保健所送りになって殺処分されちゃうからね?」

 アモン「ギャーギャー(ふざけんなーーーー!!)」ジタバタ

 巴「それじゃ、私お風呂入ってくるから」ドアガチャ

 巴「最後にもう一つだけ言っとくね」クルリ

 巴「皆にばれたら保健所行きだからね?覚悟した方がいいよ」レイプメ

 アモン「ホ~ホ~(ひえええ、押し入れはもう勘弁してくれええ)」
69 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:51 ID:b8yZ1PLL
 ~夕食後、午後八時~

 霞「それじゃあ、明日は午前九時から開会式だから八時には

   ここを出ましょう」

 霞「明日の予選を勝ち抜けば、皆で一緒に全国大会に行けます」

 霞「春ちゃん、小蒔ちゃん、巴ちゃん、初美ちゃん」

 霞「絶対にインターハイ行きましょうね」

 春「やってやりましょう」

 巴「九州最強は私達です」

 初美「何言ってるんですか皆さん?」

 初美「日本一になるのは永水女子です」

 初美「そうですよね?姫様」

 小蒔「その通りです」
70 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:52 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「明日は一番いい状態で試合に臨みましょう」

 四人「イエッサー」

 霞「それじゃあ、夜の十一時までには全員寝ること」

 霞「それまでは自由に過ごしてよし」

 霞「私は部屋に行ってるわ」

  席を立った霞はそのまま自分の部屋に戻っていった。

 小蒔「あ、待って霞ちゃん」

  小蒔もまた霞の後を追っていった。
71 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:53 ID:b8yZ1PLL
 初美「はるるはこれからどうしますか?」

 春「九時からの映画を見る予定」

 初美「巴ちゃんは?」

 巴「私も映画見ようかな」

 初美「そうですね。アクション映画を見るのもたまにはいいですね」

 初美「それじゃ、テレビのスイッチをつけてっと」

  初美がリモコンの電源ボタンを押した、まさにその時

 霞「きゃああああ」

 三人「霞ちゃんッ!」

  霞の絶叫が渡り廊下を越え、三人のいるリビングへと聞こえてきた。
72 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:53 ID:b8yZ1PLL
 巴「二人はここで待ってて」

 春「泥棒ですかッ」

 巴「わからないわ」

 初美「あわわわ、ご当主様に連絡を入れないと」

  がしゃーん、がしゃーんとまるで金属の足を動かすような音が

 自分達のいる部屋まで届いてきた。
73 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:54 ID:b8yZ1PLL
 巴「と、とにかく」

 巴「二人は隠れてて頂戴!」

 巴「姫様と霞ちゃんは私が助けに行ってくる」

  そう勇ましい啖呵を切って部屋から飛び出した巴は霞の声が

 聞こえた場所へと走り出していった。

 巴「姫様ー、霞さーん!」

  一心不乱に廊下を駆け、霞の部屋の前に辿り着くと...
74 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:54 ID:b8yZ1PLL
 小蒔「あはは、フクロウさんはかわいいですね~」

 アモン「ホーホー(デビル様~、遂に貴方様の御尊顔を再び...)」

 霞「と~も~え~ちゃ~ん」

 霞「これは一体どういう事かしら?」

  小蒔にじゃれ付くアモンの後ろを見ると、見るも無残な姿に

 成り果てたウサギ用のゲージと野菜くずが散乱していた。

 (やれやれ、この汚らしいフクロウは一体どういうつもりなんだ?)

 巴「えっ?男の人の声?」

  この場にいる筈のない男の声が聞こえたように感じた巴だったが
 
 霞「ゆっっくりとお話を聞かせてもらいますからね!!」

  マジ切れ状態の霞に首根っこを掴まれ、そんなことは頭から

 抜けて行ってしまったのだった。
75 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:55 ID:b8yZ1PLL
 ~小蒔の部屋~

 ルシフェル「小蒔、そのフクロウの事なんだが」

 小蒔「はい。可愛いですよね」

 ルシフェル「いや、汚らしい溝色の羽根が気に食わない」

 ルシフェル「捨ててきてくれないか?我慢できないほど不快だ」

 小蒔「イヤです。そんな可哀想な事は絶対に出来ません」
76 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/07 23:57 ID:b8yZ1PLL
 ルシフェル「なら忠告しておくが、コイツは正真正銘の悪魔だ」

 小蒔「悪玉?コレステロールですか?」

 ルシフェル「苦し紛れのボケはいい。悪魔だぞ、コイツは」

 小蒔「確かにフクロウに手がついているのはおかしいと思います」

 小蒔「このフクロウさんはきっと遺伝子操作されたキメラです」

 小蒔「命辛々研究所から逃げだしてきて、どうしてかは知りませんが

    巴ちゃんが保護したんです」
77 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/08 00:05 ID:bDWG1QPH
 ルシフェル「(凄い神経してるな、この小娘は)」

 小蒔「仮に悪魔だとしても、私達みたいな人間は眼中に無いと思うんです」

 小蒔「このフクロウさん、しきりに貴方の事を呼んでいました」

 小蒔「デビル様、デビル様って」

 ルシフェル「驚いたな...君は悪魔の言葉が分かるのか?」

 小蒔「何となくですけどね」

 ルシフェル「(これもまたメタトロンの力なのか?)」
78 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/08 00:07 ID:bDWG1QPH
 ルシフェル「よし、分かった」

 ルシフェル「明日の団体戦にこのフクロウを連れて行ってやれよ」

 小蒔「いいんですか?」

 ルシフェル「ペットにはしたくないが、マスコットにはなるだろう」

 ルシフェル「それにコイツは中々上位の悪魔だからね」

 ルシフェル「幸運を上げることは出来ないが、悪運にかけては悪魔の領分だ」

 ルシフェル「悪運はいざというときのジョーカーにもなりうるぞ」
79 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/08 00:07 ID:bDWG1QPH
 ルシフェル「ま、コイツを連れて行くのは君達だ」

 ルシフェル「後で君のお姉さんに取り成してもらえよ」

 ルシフェル「このフクロウには私が話をつけておくから」

 小蒔「ありがとうございます。ルシフェルさん」

 ルシフェル「ああ、礼には及ばないよ」

 ルシフェル「明日の試合、私も楽しみにしておくよ」
 
 ルシフェル「それじゃ、お休み」

 小蒔「おやすみなさい」
80 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:29 ID:10KLo57C
 ~インターハイ予選当日~

 巴「姫様~、もうそろそろ開会式始まりますよ」

 小蒔「はーい」

 霞「ちょっと、巴ちゃん!」

 霞「この気味の悪いフクロウもどきをどうして連れてきたのよ?」

 初美「霞ちゃん。そんなことを言ってはだめですよー」

 初美「霞ちゃんと似ているフクロウさんを放っておける

    わけないじゃないですか」   

 霞「どういう所が似てるのよ?」

 初美「黙っていれば非の打ちどころがない」

 霞「おい初美、後で人数分の買い出し行ってこい」

 初美「ひええええ」
81 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:29 ID:10KLo57C
 春「霞さん。時間です」

 春「巴さんの趣味は今は置いといて、会場に行きましょう」

 霞「分かっているわ。皆行きましょう」
82 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:30 ID:10KLo57C
 ~開会式~

 司会「ではこれより七十一回鹿児島県高校女子麻雀の団体戦

    予選を始めたいと思います」

 司会「第一試合から第四試合までの学校はそれぞれの卓に

    付いてください」

 司会「皆さんの御健闘をお祈りしています」

 小蒔(結局、フクロウさんは巴ちゃんがインターハイまで

    責任を持って飼う事になりました)

 小蒔(見た目がちょっとあれな事を除けば、人懐っこくて

    躾もなっているし、なによりも)

 春「初美さん、初美さん」

 初美「分かっているのですよー。あとでアモンをモフモフしましょう」

 小蒔(春ちゃんと初美ちゃんが何故かアモンをとても気に入って

    いるため、霞ちゃんはしぶしぶ会場にアモンを連れてくる

    ことに同意したのでした)

 霞「さぁ、控室に行きましょう」

 霞「私達の初戦が始まるまで後二時間はかかるだろうから

   その間に対戦相手の牌譜を見直しておきましょう」

 四人「はーい」
83 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:31 ID:10KLo57C
 ~控室~

 アモン「ホーッホーッ(おい、チビ女。俺を人形みたいに扱うのは止めろ)」

 初美「いだだだだっ!」

 初美「うええええん、アモンが私の腕を噛んだのですよ~」

 巴「こら、アモン。駄目でしょ!」

 アモン「ホーッホ!!(チクショー、またお前かよ)」

 アモン「ホーッ!(俺をペット扱いする小学生と全力でブッ叩く眼鏡。

  こいつ等の親の顔を見てみたいよ)」

 霞「巴ちゃん、初美ちゃん!集中なさい!」

 霞「さっきからそのへんてこりんフクロウばっかり触ってないの!」
84 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:31 ID:10KLo57C
 初美「あああああん、私の腕がああああ、痛いですー」

 アモン「ホホホッ(お、おい...そんな泣くなよ)」

 アモン「ホッ(なんかすごい罪悪感を感じるんだけど...)」 

 ルシフェル「おい、そこのバカフクロウ」

 ルシフェル「傷を治してやるくらいできないのか?」

 アモン「ホーホ(は、はいっ。すぐにでも直します)」
85 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:32 ID:10KLo57C
 春「男の人の声...?」

 霞「まったく、はっちゃんにも困ったものだわ」

 春「霞さん」

 霞「なぁに、春ちゃん?」

 春「姫様の後ろに誰かいる気配がするんですけど...」

 霞「気のせいよ。それに」

 小蒔「ZZZ」

 霞「ほら、きっと九面の神様が降りている最中なのよ」

 春「うーん、気のせいなのかな」
86 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:33 ID:10KLo57C
 ルシフェル「凄いな...メタトロンの欠片なしでも私の存在に

       気が付く人間がここにもいるなんて」

 アモン「ホホホホ(気付かれないように殺しますか?)」

 ルシフェル「殺して何の得があるんだ?」

 アモン「...(何の意味もありません)」

 ルシフェル「まぁ、取り敢えず付き合ってやれよ」

 アモン「ホー(デビル様の仰せの通りに)」
87 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:33 ID:10KLo57C
 小蒔「ふぁーあ」

 霞「小蒔ちゃん、もう初美ちゃんの試合が始まるわよ」

 小蒔「良かった。丁度いいタイミングで起きれました」

 小蒔「初美ちゃん。初陣頑張ってくださいね」

 初美「はいですよー。相手の高校に役満をブチ当ててきますからねー」

 初美「みんな応援よろしくなのですよー」
88 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:34 ID:10KLo57C
 巴「はっちゃん、気を付けてね」

 巴「はっちゃんの相手、去年の長崎のインターハイ出場選手だから」

 初美「大丈夫ですよー」

 初美「霞さんにいつもド付きまわされていますからね」

 初美「長崎代表なんてそれに比べればヘボ以下ですよ」

 春「初美さん。負けたら霞さんが百叩きの刑に処すって言ってた」

 初美「問題ありません。逆に霞ちゃんを百叩きしてやります」

 霞「はっちゃん。みんな応援しているからね」

 霞「いってらっしゃい」

 初美「ありがとなのですよー。みんな」

 初美「それでは行ってくるのであります」
89 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:35 ID:10KLo57C
 ~団体戦予選 東一局~

  ドラ1筒

 東 A高校 100000 手牌 456m,777p,348s,發白中中

 南 B高校 100000 手牌 169m,239p,1479s、南白白
 
 西 C高校 100000 手牌 2233m,3668p,3444s、北中

 北 初美  100000 手牌 114m,59p,78s,東東南南西西


 初美「その南ポンですよー」

 初美の手牌 114m,59p,78s,東東西西  南南南

 初美(私の最初のツモ牌は北ですねー)

 初美(まだ一順目だから取り敢えず四萬切っときましょうか)

  初美は手牌から四萬を切った。

  初美の四萬が河に置かれたことでいよいよ試合が本格的に回りだした。
90 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:36 ID:10KLo57C
 ~控室~

 巴「初美ちゃんの出だしは結構いいですね」

 霞「そうね。八順目で東と南を副露している訳だし、手牌の形も

   11m,55p,北北南白だから十分いけるわ」

 小蒔「うーん。でも東家がリーチ掛けましたよ」

 春「しかも456m,777p,456s,白中中中」

 春「白を二枚持ってるB高校は既に二枚とも河に捨ててる」

 春「初美さん、結構危ないかも」 

  春の懸念は現実となった。
91 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:37 ID:10KLo57C
 東家「ロン、18000点」

 初美「ひゃあああああああ!!!」

  初美は十三順目にて手牌の状態を11p北北北南南の

 シャンポン待ちにまで仕上げることが出来たが、運悪く

 白でリーチをかけた為、狙い撃たれてしまった。

 東家「永水女子も神代小蒔以外は大したことないな」

 東家「ほら、点棒点棒」

 初美「うううっ....」

  嘲りの表情を浮かべた東家の先鋒は初美の手から差し出された

 点棒をむしり取っていった。
92 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 00:37 ID:10KLo57C
 霞「大丈夫かしら...このオーダー」

  言い出しっぺの小蒔は寝ているし、かといって初美の後に続く

 巴や春に負担を掛けたくない霞は湧き上がる不安をぐっと堪え

 初美の活躍を見守ることに専念した。
93 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:21 ID:10KLo57C
 ~東三局~

 ドラ、9p

 東家 C高校 92000点 手牌 1889m,23455,111,南南

 南家 初美  82000点 手牌 134568m,1145p,338s

 西家 A高校 138000点 手牌 12677m,345p,79s 北北東
 
 北家 B高校 88000点 手牌 3567m,1234p,667s,西發東

 
 実況「さぁ、東三局時点で点数はこの通りです」

 実況「インターハイの県予選は本選とは異なり半荘戦で

    持ち点が尽きるまで五人で戦う事になっています」
 
 実況「現時点でトップを独走しているのは昨年の長崎の

    個人戦インターハイ出場の長崎選手を擁するA高校」

 実況「家庭の事情で去年の十一月に彼女は鹿児島に来たようです」

 実況「そして、彼女の鳴きと聴牌の速さは九州随一です」
94 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:22 ID:10KLo57C
 戒能「そうですね。彼女の牌譜を拝見しましたが、無駄のない

    とてもビューティフルな打ち方をしています」

 戒能「そしてとても我慢強い選手です」

 実況「さて、最下位の永水女子はここで何とかして順位を

    上げて行きたいところです」

 実況「薄墨選手の手牌は、これまた随分と微妙な手牌ですね」

 実況「134568萬,1145筒,338索、赤ドラが二つ入っています」

 戒能「なまじドラが四つ乗っているだけに最初の手牌の形を

    一番生かせる一気通貫を狙いたくなるのがわかりますね」

 戒能「ですが、彼女はそれを急ぐあまり、自分の手の内を晒していますね」

 実況「というと?」
95 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:22 ID:10KLo57C
 戒能「彼女の河には萬子が今の所二つしか置かれてません」

 戒能「見る人間が見れば自分の手牌の待ちを索子や筒子にすれば

    簡単に狙い撃ちできます」

 戒能「焦りが死を招くのはスポーツでもギャンブルでも同じです」

 実況「なるほど、っと。ここで何らかの動きがあったようです」

 戒能「北家のB高校が7索で和了したようです」

 戒能「567萬、123筒、678索、西西、副露した東、2000点ですね」

 戒能「安い手で確実に二位へと浮上してきましたね」
 
 戒能「BとC高校、それぞれ90000点になりました」

 実況「さて、成す術もなくずるずると引き離されていく永水女子」

 実況「果たして南場で巻き返しとなるのでしょうか?」
96 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:23 ID:10KLo57C
 ~南三局~

 ドラ、7萬 

 東家 A高校 145700点 手牌 2233445566778萬、
 
 南家 B高校 104000点 手牌 567萬、3678筒、2789索、東南白

 西家 C高校 104000点 手牌 336688萬、4488索、南北西

 北家 初美  46300点 手牌 ???
 
 
 初美(キタキタキタ―ッ)

 初美(白と中の対子と發の刻子、そして138萬、39索)

 初美(大三元和了するのは凄く難しそうですけど)

 初美(やるしかない。ここで逆転するには何が何でもこれを

    モノにしなければならないのですよー)
97 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:24 ID:10KLo57C
 西家「アンタのツモだよ」

 初美「はっ、はい」

  失点続きの初美にとってこれが最後の名誉挽回の機会である。
 
 内心の興奮を悟られないように初美は参順目の牌を引いた。

 初美(シャアアア!!)

 初美(9索だー!)

 初美(ここは勿論8萬を切るっきゃないでしょう)

  喜び勇んだ初美は8萬を切った。

 東家「その8萬、ロンです」

 初美「え?」
98 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:24 ID:10KLo57C
 東家「アンタもバカだねー」

 東家「考えていることが顔を通して丸見えなんだよ」

 東家「門前、タンヤオ、平和、二盃口、清一色、ドラ3」

 初美「うわああああああ」

 東家「数え役満、48000です」

 東家「ひゃっひゃっひゃ」

  誰も五順もしないうちに親が数え役満を上がるなんて予想を
 
 することは不可能である。
99 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:25 ID:10KLo57C
 裏鬼門を出すことが出来ず、挙句皆の期待を裏切った

 その呵責が初美を押し潰した。

 初美「姫様、みんな...。この失態は私の命で償います」

  先鋒戦で全ての点数を失った初美は自らの舌を噛み切り、

 死を選んだ。
100 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:27 ID:10KLo57C
 舌を噛み切り、麻雀卓に突っ伏している初美を見下ろした

 ルシフェルは携帯電話を取り出して誰かに電話をしていた。

 ルシフェル「ああ、今回もやっぱり駄目だったよ」

 ルシフェル「次はこのSSの作者にも上手く書いてもらわないとね」

 ルシフェル「えっ、まだこのSSを続けなきゃいけないのかい?」

 ルシフェル「まいったな。どうやらどこに行っても神の命令は絶対のようだ」

 ルシフェル「全く困った奴だよ、君ってやつは」

  苦笑いを浮かべたルシフェルは携帯のスイッチを切り、

 改めてピクリとも動かない初美に声をかけた。 

 ルシフェル「私は麻雀なんて競技には興味はないが、君のその猪突猛進で

       考えなしの浅慮は、イーノックを思い出させてくれるよ」

 ルシフェル「ミカエルの真似事ではないがね、少しばかり

       君を助けてやろうじゃないか」

 初美「」
 
 ルシフェル「神は言っている、ここで死ぬ宿命ではないと」

 ルシフェル「さぁ、こんどはしっかりと上手くやってくれよ」
101 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:28 ID:10KLo57C
 ~時が巻き戻り、三順目~

 西家「アンタのツモだよ」

 初美「はっ、はい」

  失点続きの初美にとってこれが最後の名誉挽回の機会である。
 
 内心の興奮を悟られないように初美は三順目の牌を引いた。

 初美(シャアアア!!)

 初美(9索だー!)

 初美(ここは勿論8萬を切るっきゃないでしょう)

  喜び勇んだ初美は8萬を切ろうとした。
102 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:29 ID:10KLo57C
 初美(あれ、なんかこの牌を切っちゃいけないような気がする)

  それはどこかに置き忘れてきた過去の出来事のデジャブだった。

  初美にとってはつい先ほどの出来事だったが、ルシフェルにとっては

 多分、十分後の出来事だろう。

 初美(どうしましょう...。直感を信じて切らない方がいいのか)

 初美(それとも一刻も早くあがる事を選ぶのか)

  まるまる三十秒考えた初美は、1萬を切った。
103 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:30 ID:10KLo57C
 春「うそ、なんでこのタイミングで1萬を捨てれたの?」

  永水女子の控室では初美の神憑り的な回避に全員が驚いていた。

 霞「信じられない...」

 霞「確かに9索を引いた時点で8萬を捨てるのは誰だって考えるわ」

 霞「だけど、既に数え役満で張っている東家の当たり牌を

   五順もしないうちに見破るなんてありえないわよ...」

 小蒔「霞ちゃん、はっちゃんが凄いことになってますよ!」

  興奮した小蒔の声に全員がテレビを見た。

 巴「信じられない...」

  そこには初美の奇跡の大進撃が映っていた。
104 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:31 ID:10KLo57C
 初美「その中、ポンです」

 初美「その白、ポンです」

  一萬を捨てた後、立て続けに東家と南家の捨てた白と中を

 初美が全て副露したのだった。

  西家が東を捨てたのを確認した初美は約束された勝利の牌を

 当然のように引き当てた。

 初美(ここで、9萬ですか...)

  五順目、遂に初美は逆転へと王手を賭けた。

 初美(3萬はきっと、絶対に通る筈...)

  じっとりと嫌な汗が初美の身体を濡らす。
105 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:32 ID:10KLo57C
 霞「お願い...通って、はっちゃんを勝たせてあげて」

 春「神様、お願いです。初美さんを助けて下さい」

 巴「はっちゃん...そんな三萬を捨てて大丈夫なのかなぁ?」

  霞、巴、春の懸念を余所に、小蒔はただ一人泰然と構えていた。

 小蒔「大丈夫ですよ。今の初美ちゃんに問題はありません」

 初美(此処まで来て引き下がるのは絶対にイヤなのですよー)

  ただ一言、胸中の一言とともに初美は三萬を捨てた。

  小蒔の確信と霞たちの祈りは通じた。
106 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:33 ID:10KLo57C
 西家「ポンです」

 東家(クソッ!どうして此処まで来て和了できないんだよ)

  今まで点数を毟り取ってきた永水女子の先鋒に対する苛立ちが

 極限まで高まった東家は自分がツモした牌を碌に見ずに捨てた。

 初美「ロン、大三元」

  その瞬間、流れは完全に永水女子へと傾いた。

 初美「32000点です」

  絶対に有り得ない役満への放銃をしてしまった東家の

 選手から初美は役満を思いきり毟り取った。
107 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:33 ID:10KLo57C
  未だにトップとの差は三万点以上だが、次は自分の親番だ。

 流石に役満は無理でも、安上がりを続ければオーラスまでには

 開いた点差を僅差にすることが出来る。

  例え安上がりであろうと、まずはあがることが重要なのだ。

  初美はそう結論づけた。

  ここから初美の怒涛の大逆転劇が始まりを告げる。

 初美「さぁ、皆さん。点棒の貯蓄は充分ですかー?」

 初美「今迄さんざん私から毟り取ってきた点数、その全部」

 初美「耳をそろえて倍にして返してもらうのですよー」
108 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:34 ID:10KLo57C
 ~オーラス~

 ドラ、1索

 東家 初美  78500点 手牌 1669萬、229索、白白東東南南、
 
 南家 A高校 112500点 手牌 567萬、3678筒、2789索、東北中

 西家 B高校 104000点 手牌 1369萬、124557索、南北西

 北家 C高校 104000点 手牌 1233666筒,459索、中發北

 
 実況「大波乱の南三局が終わり、先鋒戦オーラスが始まります」

 実況「大三元をトップのA高校に直撃させた永水女子は依然、最下位です」

 実況「ですが、B、C高校の先鋒達も虎視眈々と首位を狙っています」
109 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:35 ID:10KLo57C
 戒能「まさにその通りですね」
 
 戒能「団体戦では必ず試合の流れをチームに有利に繋げられる選手、

    あるいはエースが先鋒の役を担う事になります」

 戒能「ですが、一芸に特化した選手では先鋒が務まらないのもまた事実です」

 戒能「攻めて攻めまくる姿勢をどれだけ保ち続けられるのか?」

 戒能「それが先鋒に最も必要な資質だと思います」

 実況「戒能さん、ありがとうございます」

 実況「さて、薄墨選手の親から始まったこの局ですが、東南白の対子を

    持っている薄墨選手と三色狙いのA高校が一歩リードしています」
110 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:36 ID:10KLo57C
 ~初美の視点~

 初美(さっきの役満大直撃で他の選手は字牌を捨ててくる

    ことに凄い抵抗感を感じていると思うのですよー)

 初美(今の所、無理しなければ最短の七対子狙いで2,3向聴で行けそうです)

 初美(勢いに乗っているのに七対子で終わらせるのは癪ですからねー)

 初美(倍満くらいは行っときましょうか)

  先程の第一ツモで初美がツモった牌は南だった。

  9索を手牌から切りながら、初美は目まぐるしく頭を働かせ、

 自分にとっての理想の和了の理想をまとめていた。

  鳴き一つない静かなオ―ラスは、確実に終わりへと近づいていた。
111 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:39 ID:10KLo57C
初美(第二ツモからこの第八ツモで東と白が来て、手牌の方は

    69萬、22索、白白白東東東南南南の形になっています)

 初美(そして...)

  ここにきて初美は八萬を引いた。

 初美(五萬だったら四、七で二面張行けるんですけどねー)

 初美(四暗刻狙うにも六萬は二つとも捨てられてるし、二索も

    三枚捨てられ、残りがどこにあるのか分からないですよー)

 初美(となると...やっぱり七萬単騎待ちにした方が確実ですね)

  しかし、初美はこの時七萬は既にC高校の手牌の中に三枚とも

 納まっていたことを知らなかった。
112 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:40 ID:10KLo57C
 四暗刻を狙うという発想もあるが、初美自身が既に現実的ではないと

 役満和了を放棄したのだった。

  悩みぬいた末、初美は六萬を切った。

 初美「リーチです」
113 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:41 ID:10KLo57C
 実況「おーっと薄墨選手がここにきてリーチを掛けました」

 実況「しかし、彼女の和了牌である七萬は既にC高校の手牌に刻子として

    存在しています!」

 実況「あまりにも無謀すぎるリーチです」

 戒能「残り五順のツモで彼女が大逆転の一手を打つことは

    かなり難しいでしょうね」

 戒能「ここで和了できるかどうかで薄墨選手、ひいては永水の

    真価が問われることになります」

 戒能「まさに鬼門です」
114 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:41 ID:10KLo57C
 ~再び初美の視点~

  十、十一順目で初美が引き当てたのは九萬と西だった。

 残り三順で自分が和了しなければ、最下位のまま次鋒の巴に

 バトンタッチすることになってしまう。

  巴は平素しっかりしているものの、あがり症の気が強く、打たれ弱い。

  ここで自分が和了出来なければ最悪の場合、巴、春と芋づる式に

 点数をあれよあれよと巻き上げられ、副将の小蒔と大将の霞に回らずに

 初戦敗退という可能性も拭いきれない。

 初美「....」

  しかし、薄墨初美はそこまで軟ではなかった。
115 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:42 ID:10KLo57C
 初美「あきらめませんからねー」

  窮地に陥っても尚、初美の目は絶望に染まっていなかった。

  そして、再び初美に起死回生の一手が回ってきた。
116 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:43 ID:10KLo57C
 ~永水女子控室~

 霞「はっつみ、はっつみ、はっつみ!」

 巴「はっちゃん、いけいけいけ~!」

  一時は五万点以下に落ち込んだ持ち点を大三元で一気に縮め、

 そしてまた再び大逆転の四暗刻を呼び寄せようとする初美の

 雄姿に霞と巴は声をからして応援し続けていた。

 春「初美さん、裏鬼門だけの人じゃなかったんだ...」

 小蒔「ハッちゃん勝って!勝ってください!」

  無表情な春もこの時ばかりは黒糖を食べるのをやめ、食い入る

 ようにテレビを凝視し続けていた。
117 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:43 ID:10KLo57C
 ~実況~
  
 実況「凄い、これは凄いことになってきました」

 実況「残り一枚の二索が薄墨選手の手牌に加わりました」

 実況「ここで他家が和了しなければ、まだ薄墨選手は戦えます」

 実況「ここで薄墨選手、あーっ!捨てました。九萬を捨てました!」

 戒能「ここにきて思い切った判断をしましたね、薄墨選手は」

 戒能「確かに八萬は現時点で誰の手牌にも入っていません。

    薄墨選手が大逆転することが出来る起死回生にこれほど

    うってつけの牌はないでしょう」

 実況「さぁ、濃密な先鋒戦もいよいよ終わりが近づいています」

 実況「果たしてどの高校が一位になるのでしょうか?」
118 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:44 ID:10KLo57C
 初美にとって、運命の時が刻一刻と近づいてきた。

  十三順目、ここで八萬を引くことが出来なければ永水女子は

 一気に総崩れになってしまう。

 初美「負けない、ぜったいに」

  十三順目にして初美は皮肉な事に七萬を引き当ててしまった。

 つまり、四暗刻を狙わなければとっくに跳満以上は確定していたのを

 わざわざ得体の知れない四暗刻の幻影を見て台無しにしてしまった。

  そう第三者には捉えられるだろう。

  そして追い打ちを掛けるように西家、北家が八萬を河に次々と

 捨てて行ってしまった。
119 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:45 ID:10KLo57C
 初美(これで後は八萬は後一枚になりましたねー)

 初美(北家は多分二面待ち。残された当たり牌の数を見ても、現時点で

    私の敗色は濃厚、圧倒的に不利としかいえないのですよー)

 初美(それでも、負ける気なんか全然しないんですけどね)

  初戦から自分が追い詰められるのは初美にとって予想外の事態だった。

  しかし、その予想外の範疇には南三局の大三元も含まれている。

  つくづく麻雀には驚かされることばかりだ。

 初美「Can I do it?」
120 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:46 ID:10KLo57C
 いや、違うだろう?この時に至ってまで自分の勝利を疑ってどうする?

  泣いても笑ってもこれが自分にとっての最後のツモ。

  だから、終わるときは笑顔であろう、自信を持つんだ!

  その決意と共に初美は叫んだ。

 初美「I can do it!」

 初美の渾身のツモに会場に集結した全ての選手達が釘付けになった。
121 名前:石戸明星 投稿日:2014/03/09 22:46 ID:10KLo57C
 初美「ツモです」

 初美「四暗刻、16000オール」

  会場の外に誰かいたら、きっと爆発が起こったかもしれない。

 それほど大きな歓声と拍手が至る所から初美に対して湧き上がった。

 初美「ありがとうございましたー」

  放心状態の他の三校に対して優雅に一礼をした初美は悠然と

 仲間達が待つ控室へと足取りも軽やかに戻っていったのだった。 

 
  先鋒戦終了時の点数

 永水 126500点 A高校 96500点 B高校 88000点 C高校 88000点
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