衛宮士郎「もう疲れた...新天地へ旅立とう」

1 名前:名無し 投稿日:2014/02/14 23:18 ID:FgStHRnl
 ~東京某所、とあるレストランにて~ 

 士郎「志貴さん、僕もう疲れましたよ」

 志貴「士郎君?一体どうしたんだい?」

 士郎「いやね、僕がこの世界に生まれて十年経つじゃないですか」

 志貴「そうだね。僕や幹也さんも後少しで十五年経つかな」

 士郎「色々なことが沢山ありましたよ。物心ついた時から冬木の

    大惨事、高校生になってからは聖杯戦争」
 
 士郎「聖杯戦争が終わった後、セイバーをこの現世にとどめ、

    高校生活を送ってきました」

 士郎「もう、あと少しで卒業なんですよ僕」

 士郎「高校じゃないですよ。大学です」

 士郎「でも、なんか心にぽっかりと穴が開いた感じがするんです」

 士郎「僕の人生ってなんだったんだろうって」

 
 
2 名前:名無し 投稿日:2014/02/14 23:32 ID:FgStHRnl
 志貴「俺もあまり士郎君の心のうちについてはわからないけどさ」

 志貴「凄いじゃないか、俺なんか高校を卒業したらすぐに秋葉に

    家業を手伝わさせられてるんだ」

 志貴「やってることはもっぱら秋葉の護衛と秘書役」

 志貴「まぁ、端的にまとめればね。もう離れたくないっていう

    秋葉なりの精一杯の愛情表現なんだけどね」
 
 志貴「そりゃあ、最初の内は何回も逃げ出したよ」

 志貴「高校にいたときは月の小遣いが5000円」

 志貴「その上、門限つきときた」

 志貴「それが高校を卒業してからも半年くらい続いたんだ」

 志貴「シエル先輩が埋葬機関に帰り、シオンとリーズさん達も

    世界を旅するって言ってそのまま三咲町をでていったんだ」

 志貴「丁度その頃、東日本大震災が起きてね。遠野グループの

    企業が軒並み大打撃を受け、破産の危機に直面したんだ」

 志貴「琥珀さんが過労で倒れ、その上翡翠が本当に誘拐され、

    あの時は本当にショックだけで死ぬかと思ったよ」

 士郎「ああ、そういえば新聞にも週刊現代も遠野グループの

    進退についてやけに激しく叩いていましたね」

 志貴「そうそう。根も葉もないこと、例えば秋葉がどこぞの敵対

    グループの重役を色仕掛けで籠絡した、とか」

 士郎「裏ビジネスのブローカーとか、ブラック企業とか取沙汰されて

    ましたね」

 志貴「嫌なことがね、立て続けに起きるとどうしても憂さを晴らし

    たくなるんだよ。その時くらいからかな?アルクェイドと

    また関係を持つようになったのは」

 士郎「えっ?!よ、よくばれませんでしたね」

 志貴「まぁね。かたや人間、かたや星そのものだ。根本から存在が

    違うんだよ。だからその気になれば記憶操作もお手の物さ」
3 名前:名無し 投稿日:2014/02/14 23:55 ID:FgStHRnl
 
 志貴「家に帰れば、眼を血走らせてヒステリックに琥珀さんや

    翡翠にあたり散らして泣き喚く秋葉」

 志貴「琥珀さんは親父に性的虐待を受けてたあの時に逆戻りしかけ、

    翡翠に至ってはひきこもりになっちゃったからね」

 志貴「俺も俺で秋葉の愚痴を延々と聞かされるんだ。五時間も」

 志貴「で、この問題はすぐに解決できないだろう?だから抱いた。

    次の日、秋葉が記者会見に出るにも拘らずキスしまくった、

    中に出しまくったよ」

 志貴「後からわかったんだけど、その時秋葉は妊娠二ヶ月目だったんだ」

 志貴「ストレスが生まれてくる子供に多大な影響を与えるのは誰でも

    わかる理屈だろ?」

 志貴「でも、その時の俺は荒んでた。やけくそになってた」

 志貴「だって名ばかりの秘書役でさ、経済とか経営の'け'の字も

    わからない人間がまともに取材の応対できると思う?」

 士郎「できませんね。聖徳太子でも目を回すでしょう」

 志貴「そんなときにアルクェイドが三咲町に戻ってきた」

 志貴「笑っちゃうよ。アイツ千年城に帰ったはいいけど、あまり

    寝れないからこっちに戻ってきちゃったって言ったんだよ」

 志貴「だ、だからさ」グスン

 志貴「俺は秋葉達を、家族を裏切った」

 
4 名前:名無し 投稿日:2014/02/14 23:55 ID:q8VNiBzv
面白い
5 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 00:08 ID:EZ97CHqx
 志貴「楽しかったよ、良心の呵責とか縋る秋葉達を横目に自分だけが

    何の憂いもなくリフレッシュしてたんだ」

 士郎「そうですね。でも俺はそんなこともできなかった...」

 志貴「アルクェイドの心の底から浮かべる嬉しそうな笑顔を見ると

    なんか全部がどうでもよくなった。いっそ今まで自分が築き

    あげてきた全部と引き換えに死徒になってもいい位にさ」

 志貴「だって、そうだろ?俺が今までやってきたことを鑑みれば、

    一つか二つくらい道を踏み外してもいいじゃないか」

 志貴「だけどさ、そんな俺に罰が当たったんだ」

 志貴「秋葉が俺とアルクェイドの関係に気が付いた」

 士郎「記憶操作は効いていなかったんですか?」

 志貴「効いてた。けどやっぱり愛の深さなのかな?」

 志貴「ふらふら~って、俺とアルクェイドが東京の六本木で

    宜しくいちゃついてた時に音もなく、幽霊のように現れた」
6 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 00:09 ID:gDBGJFuk
見てるで
7 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 00:20 ID:EZ97CHqx
 ~回想~

 秋葉『もう兄さん。今までどこに行ってたんですか』

 志貴『秋葉...』

 アルク『あ、あのね妹...これは全部私が悪いの!

     私が志貴をさ、誘って...誑かした...の』

 秋葉『兄さん...帰りましょう?』

 秋葉『琥珀も、もう兄さんや私に悪戯はしないと言ってるし、翡翠も

    変な料理を作らない。それに』

 志貴「その時、秋葉は俺にこう言ったんだ」
 
 秋葉『兄さんがもし、心の底から自分の人生をリセットしたいなら』

 志貴「ポケットからナイフを取り出して、大きく振りかぶって」
 

 秋葉『私は、今すぐ兄さんから身を引きます』

 
 志貴「思い切り腹に突き立てたんだ...」
8 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 00:25 ID:fcMMk5aq
型月SSとか俺得
9 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 00:45 ID:lqSY5KFE
これは支援
10 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 00:48 ID:EZ97CHqx

 志貴『秋葉ァアアアアアアアア!!』

 アルク『い、嫌アアアアアア!!!!』

 志貴「幸いなことに、アルクェイドの全力で救命措置をして

    くれたから、母子ともども命を取り留めたよ」

 士郎「...壮絶すぎて、言葉が出ないです」


 ~回想その2~

 秋葉『あ、嗚呼...また、アルクェイドさん貴女ですか』

 アルク『ごめんなさい...ッ!本当に、ごめんなさいごめんなさい

     ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 秋葉『結局、私はいつも貴女に勝てなかった』

 秋葉『体つき、美しさを初めとした魅力。そして兄さんの心を

    射止めたのも、最初から私が渇望して止まなかった全てを

    貴女は手に入れていた』

 秋葉『貴女がいなくなって、ようやく私と琥珀、翡翠だけを

    見てくれるようになった兄さんは誰にも渡さない、

    誰にも渡さないって思っていた』

 秋葉『だけど、貴女は常に私の一歩上を嘲笑うかのように

    進んでいた」

 秋葉「悔しかった。憎悪してもしきれないほど貴女を憎んだ。

    そしてその貴女の足元にすら及ばない自分に絶望した』

 秋葉『今もまた、私の生殺与奪を握っておきながら、涙を流して

    死なないでと哀願の真似事をする』

 秋葉『死なない怪物の貴女が死にかけの人間に流す涙の正体、

    それって単なる優越感や愉悦でしょう?』

 アルク『そ、そんなこと考えてないよ!』

 アルク『私はもう誰も殺したりなんかしない。ただ命じられる

     ままに動いていた真祖の処刑人なんかじゃない!!』

 アルク『志貴は私に人らしさを教えてくれた。メイド達は楽しさを

     じいやは私に自由を、そして妹は...秋葉は』

 アルク『友情を教えてくれた!友達なんか生まれてこの方一人も

     いなかった私を対等にみなしてくれた!』

 秋葉『冗談も程々にして下さい。それではこの結末も全ては

    兄さんの教えてくれた人らしさってやつの極致ですね』

 秋葉『だから、もうそれでいいんですよ』

 秋葉『私は兄さんの絶対になれなかった。唯一になれなかった』

 秋葉『でも貴女と同じ、永遠になることはできる』 

 秋葉『だから、私に死を下さい。アルクェイド』

 秋葉『人を自称するのであれば、貴女が私に対して持ちうる友情に

    報いたいのならば、それが唯一私が貴女に望むことです』
11 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 01:17 ID:EZ97CHqx
 士郎「そ、それで秋葉さんは一体どうなったんですか?」

 志貴「そうだね。それじゃあ当事者達に来てもらおうか」

 志貴「秋葉、アルクェイド、琥珀、翡翠、士郎君が呼んでるよ」

  志貴の一声と共に四人が姿を現す。

  士郎はその姿を見るなり短く悲鳴を漏らした。

 琥珀「珍しいお客様と思えば、衛宮さんでしたか。ご無沙汰してます」

 アルク「ヤッホー、元気にしてるかい?少年」

 翡翠「ど、どうも。翡翠です」

  どこをどう見ても目の前にいるのは自分の知己とその親戚縁者。

 しかし、それはあくまでも人間の範疇に収まっていればの話。

  露出の多いスリットの入ったチャイナドレスやパーティドレスから

 見え隠れする、まるで白皙の陶器を髣髴とさせるようなその肌の

 色は真祖の肌と全く同質だった。

  鮮やかな瞳の虹彩も今では深い紅玉のような妖しい光を放っている。

 士郎「ま、まさか志貴さん...貴方は、なんてことをしたんですか」

 秋葉『なんてこととは失敬な。これが兄さんの出した結論です』

 志貴「秋葉の言うとおりだよ。普通の人間はそんなことを絶対に

    望まないからね。でも、俺はこうするのが一番いいと考えた」 

 志貴「報われない愛は愛じゃないんだよ士郎君。それはね、単なる

    高邁な理想。一途と言えば聞こえはいいけどその実、それは

    一方通行でしかないんだよ」

 翡翠「私も、姉さんも目の前にいる一人の人を愛してしまった。

    だから、身を焦がす狂おしいほどの憎悪を秋葉様や

    アルクェイド様に向けてしまいました」

 琥珀「アハハー、私達って普段凸凹コンビメイドとしてやって

    ますけど女としては結構重い方なんですよ~」

 琥珀「それはもう、自分の使える主を殺してまでも、愛する男に

    振り向いてもらえればそれだけでいいって思えるくらいに」

 翡翠「でも、だからこそ私たちは一人も欠けてはいけないんです」

 琥珀「時よ止まれ、お前は斯くも美しい。私達が今こうして

    生きているこの一分一秒刹那が過ぎていくことすら」

 翡翠「耐え難い苦痛なのです」

 秋葉「だから私も、琥珀も翡翠も兄さんを道連れにした死を
   
    最良の選択としました」

 アルク「だけど、琥珀の言ったことが今の私たちの全て」

 志貴「いい加減わかるよね、士郎君?」

 

 志貴「俺達は永遠を選び、人の領域を踏み外したんだ」

 

 志貴「そして、これが俺の彼女達に応える唯一つの愛の形だ」





12 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 01:20 ID:EZ97CHqx
 こんばんわ、作者です。

 明日の朝バイトなので、続きは15日の夜に書きます
13 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 01:45 ID:CdsV4hjX
面白い、続き待ってます
14 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 10:08 ID:12njsPYs
狂ってやがるwww
15 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 10:43 ID:RfHJVjHk
狂ってるな
16 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 11:41 ID:5ccqaqpC
待ってる
17 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 12:07 ID:c024KppV
悪くはない
18 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 13:32 ID:2ASukc6t
4えーん
19 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 16:04 ID:xh5smxnb
続きはよ
20 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 18:22 ID:EZ97CHqx
 今帰ってきたところです。今から書き始めます
21 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 18:35 ID:EZ97CHqx
 秋葉「衛宮さん、ここからは兄さんに代わって私が事の顛末をお話します」

 士郎「...」

 ~回想その3~

 志貴『秋葉...帰ろう。俺達の家に』

 アルク『...』

 秋葉『お兄ちゃん...、琥珀も、翡翠も待ってるよ』

 秋葉『私、もう怒りすぎて何がなんだかわからないの』

 秋葉『悪いことしてないのに、皆が私の事を影から指を指して

    げらげらって、すごく悪い顔で笑いかけてくるの』

 秋葉『怖い、ずっと怖かった』

 志貴『うん。もう大丈夫だから...ずっと休もう、秋葉』

 秋葉『私がここで転んだら、誰も私なんかの相手をする筈がないもの』

 秋葉『翡翠も琥珀も兄さんも、ずっと私の傍にいて欲しい大切な家族』

 秋葉『でも、それは私の傲慢な勘違いだった...』
22 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 18:42 ID:EZ97CHqx

 秋葉『この前ね....琥珀と翡翠が遠野の家を出ようって、二人で

    お暇を秋葉様に貰いましょうって話しているのを聞いちゃった』

 秋葉『兄さんも一緒に連れてどこか遠くに逃げちゃいましょうって』

 秋葉『信じられなかった。嘘だって言いたかった』

 秋葉『でも、あの翡翠が琥珀にそう言いだしていたの』

 志貴『そっか、琥珀さんがいかにも言いそうなことだとかなって

    思ってたんだけど、翡翠がそんなことを言ったんだ...』

 秋葉『あの一言が私の心に罅を入れた。あの一言のせいで私は

    何時捨てられるかわからない恐怖にずっと耐えなければ

    ならなかった』

 志貴『なるほどね、何も仕事の事についてわからない俺が秋葉の

    仕事を手伝わされたのはそれが理由だったんだ』




























23 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 18:55 ID:sD5CUoyg
かは
24 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 19:08 ID:EZ97CHqx
 
 秋葉『気が変になりそうだった。狂いそうになった。だから

    兄さんをあの二人の傍に置きたくなかったの』

 志貴『ごめんな。もう何回言ったかわからないけど本当にゴメン』

 秋葉『兄さん、ところで三咲とは随分違う場所に来ているようですけど』

 秋葉『一体、どこに向かわれているんですか?』

 志貴『七夜の里に寄る前にね、琥珀さんと翡翠と合流するんだ』

 志貴『七夜の里につくまで結構時間があるから、秋葉は寝なよ。

    大丈夫、車の中に置き去りになんかしないから』

 志貴『もう、誰も俺の傍から絶対に離れさせやしないから...』

 秋葉『兄さん...大好き///』

 ~回想3終わり~

 琥珀「秋葉さま~、さらりと路線変更をしないで下さいね?」

 琥珀「こんな中途半端な終わり方だったら、そのまま志貴さんと

    nice boatな仲になったまま二人だけで心中した。って

    衛宮さんに勘違いされますからね~」

 秋葉「エへへへ」

 士郎「あ~、それで琥珀さんと翡翠さんはその後どうされたんですか?」

 翡翠「姉さんと私はアルクェイドさんに秋葉様が自殺しようとした。

    という連絡を受け、すぐに六本木まで直行しました」

 翡翠「幸い、腹部に刺さったナイフの傷はアルクェイド様が全力で

    治癒を施して下さったので何も問題ありませんでした」

 琥珀「あは~、それで私達と合流した志貴さんから色々な話を

    聞きました。特に浮気の事を重点的に」

 琥珀「翡翠ちゃんの処女を散らし、あまつさえ危険日に抜かずの

    十発を私と翡翠ちゃんにお見舞いして子供を孕ませたと言う

    のに、それに飽きたらずアルクェイドさんと浮気」

 琥珀「まさしくこの時、志貴さんは女泣かせのスケコマシへの

    真の覚醒を果たしたのです!!」

 志貴「琥珀さん、後でラボにある全部の発明品を直死の魔眼で

    切り捨てますよ」

 琥珀「ひぇ~~!それだけは勘弁してくださ~い」

 翡翠「でも、その浮気も一概に悪と断じ切れなかったんです」

 翡翠「ここからは私が秋葉様の話さなかったことをお伝えします」
25 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 19:14 ID:ZFWQi5g0
続き始まってた
26 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 20:11 ID:EZ97CHqx
~回想その4~

 翡翠・琥珀『志貴様、秋葉様は、秋葉様は大丈夫ですかッ!』

 志貴『アルクェイドのおかげで一命を取り留めたよ』

 翡翠・琥珀『よかった...』

 志貴『こんなに安らかな顔して眠ってる秋葉を見るのは久しぶりだよ』

 翡翠『志貴様、取りあえずお車のほうに』

 志貴『分かった。ちょっと俺の行きたい所に三人とも付き合って

    もらうけど、いいかな?』
 
 琥珀『...いいですよ。丁度、私も翡翠ちゃんも志貴さんにいくつか

    お話しなければならないことがありますので』

 志貴『そっか。じゃあ、車に乗ろっか』

 
 ~車で移動中~

 琥珀『さてと、何故アルクェイドさんと志貴さんが六本木くんだりで

    いちゃいちゃしているのかについては目をつぶるとして』

 琥珀『志貴さん、今日を以て遠野グループは倒産しました』

 琥珀『秋葉様が遠野グループの主要事業の重役とその社員達を

    全員集め、最後のセレモニーを行う。今日はそんな日です』

 志貴『そっか、そうだったんだ』

 琥珀『場所は奇しくも六本木ヒルズ近くのビルです』

 琥珀『偶然にしてはあまりにもできすぎた話です。秋葉様が車で

    会場へ移動している途中で、まさか志貴さんがその眼と

    鼻の先で浮気している所を見つけてしまうなんて』

 琥珀『まったく、困ったもんですよ』

 琥珀『財閥である遠野家当主としての最後の大仕事を、一人の

    男の為に放り出して、そのまま衝動的に死を選ぶなんて』

 琥珀『本当に大馬鹿野郎ですよ、このお嬢様は』

 志貴『琥珀さん、あのッ...』

 琥珀『シャラップ!まだ私は志貴さんに口を開けとは一言も言って

    ませんよ?翡翠ちゃん、要件その二を言っちゃって!』
 
27 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 20:30 ID:EZ97CHqx
 翡翠『はい、姉さん』

 翡翠『志貴様、三日前、私と姉さんが妊娠四ヶ月ということが

    判明しました。お腹の子は二人とも女の子だそうです』

 志貴『....』

 翡翠『志貴様も既にご存知であるように、私も姉さんも志貴様を

    心の底から愛しています』

 翡翠『志貴様が望めば、死を選ぶほどに』

 翡翠『そして、最愛の方から貰ったこの愛を絶やしたくありません』

 翡翠『だから、どうか答えてください』

 翡翠『私達姉妹と秋葉様、どちらを天秤にかけて捨てるのかを』

 志貴『ははっ、なんていえばいいんだろう』

 志貴『まさか翡翠がこんなに感情をむき出しにして、俺に

    突っかかってくる日が来るなんてな...』

 翡翠『志貴様、翡翠の一生に一度の哀願です』

 翡翠『どうか、どうか。一生をかけて貴方の傍を歩く幸せを

    私と姉さんに賜してくださいませ』

 翡翠『子を産む条件の代わりに私が四肢を失っても構いません。

    志貴様がお望みならば、売女の如く他の男にも股を開き、

    獣の魔羅にも貫かれましょう』

 翡翠『ですから、愛を下さい』

 翡翠『心を打つような美辞麗句は要りません。ただ一言の真理を

    私達の心に慈雨の如く降らせて下さいまし』

 翡翠『私達は、その夢(あい)に永劫溺れていたいのです』
28 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 20:47 ID:EZ97CHqx

 志貴『嗚呼』

 志貴『そっか、琥珀さんも翡翠も俺をそこまで想い続けてくれたのか』

 志貴『でも、ちょっとその答えを言う前に今度は俺の方から

    翡翠にいくつか質問していいかな?』

 翡翠『なんなりと』

 志貴『秋葉が眠る前に教えてくれた』

 志貴『琥珀さんと翡翠が俺と一緒にこの家を出ていこうって

    相談を重ねていたってことを』

 志貴『それが原因で秋葉は翡翠と琥珀さんの事を信じられなく

    なって当り散らすようになったって』

 志貴『秋葉の言ったことは、本当かい?』

 琥珀『志貴さん、それは....』

 志貴『琥珀、今俺は翡翠に質問している。口を挟むな』

 翡翠『志貴様のおっしゃる通り、私が姉さんにその話を持ちかけ

    ました』

 翡翠『妊娠したのは姉さんの方が先でした』

 翡翠『姉さんが妊娠してから三ヶ月経過した頃、つわりがひどく

    なっていました。無知な私が一見してわかるほどに』
 
 翡翠『秋葉様が三日ほど家を空けるとき、姉さんを同伴しようと

    していました。私は必死になって秋葉様を止めました』

 翡翠『秋葉様は結局根負けし、姉さんが一日遅れで来ることを

    条件に空港へと行きました』

 翡翠『その後、私は姉さんを問いただしました』

 翡翠『志貴様の子供を妊娠しているのですか?と』
29 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 21:13 ID:EZ97CHqx
 琥珀『翡翠ちゃん...もうやめて、それ以上いわないでよぅ....』

 翡翠『答えはイエスでした』

 翡翠『姉さんはこうも言っていました』

 翡翠『秋葉様にこのことがばれたら、間違いなくこのお腹の

    子供は殺されてしまう。あの鬼の娘が嫉妬に狂えば、

    それは覚めない悪夢から現実へと昇華する、と』

 琥珀『もうやめてえぇぇぇ!!!、やめてぇえええ!!!』

 翡翠『あの..あ、あの、遠、遠野槇久の子を...』

 翡翠『無理やり孕まされ、自らの手で殺めた時のあの絶望を二度と

    味わいたくない。でも、こんな穢れた私でも志貴様は

    まっすぐに見てくれた。嘘でも愛しているって言ってくれた』

 翡翠『だから、黙っててと』

 翡翠『何が何でも、この子は何があっても絶対に私が守ると』

 翡翠『その時、私は決心しました』

 翡翠『秋葉様を地獄の底に叩き落としても、姉さんの幸せは

    絶対に奪わせたりしないって、心の底から誓いました』

 翡翠『その時のやり取りの一部始終を秋葉様は聞いたのだと思います』

 志貴『琥珀さん...翡翠....』

 志貴『俺が家に寄りつかなくなっている間にそんな凄い状態に

    なっていたなんて....』

 翡翠『今、志貴様が向かわれている場所は七夜の里の跡ですね?』

 志貴『そうだよ』

 翡翠『そこから志貴様と私達の人生は始まりました』

 翡翠『ならば、そこで全ての決着をつけると致しましょう』

 翡翠『私も姉さんも、志貴さんがきっと正解を出してくれると

    信じていますから....』

 琥珀『翡翠ちゃん...、志貴ちゃん...』

 
30 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 21:18 ID:2ASukc6t
士郎好きだから嫌じゃないけど
このss士郎いるか?
31 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 21:22 ID:EZ97CHqx
 ごめんなさい。あと少しで月姫組のお話が終わります。

 士郎の話は大体60スレくらいに書いていく予定です。

 
32 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 21:25 ID:EZ97CHqx
  さらに言えば、士郎の話もこれと似た感じで進んでいきます。

 正義の味方になろうとした矢先、士郎の心を揺るがす出来事が起き、

 そこから運命の歯車が狂い始める。みたいな感じで
33 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 22:10 ID:12njsPYs
士郎さんは幸せになりますか?(震え声)
34 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 22:22 ID:EZ97CHqx
 ~回想その4が終わった後~

 士郎「重い、重すぎますよ。志貴さん」

 志貴「ハハハ。まぁ、七夜の里に着いたら着いたらで、秋葉と翡翠、

    琥珀さんとの三人で凄い修羅場が繰り広げられたからね」

 志貴「その後なんだかんだあって、俺が瀕死状態になって、秋葉、

    琥珀さん、翡翠も死にかけたんだ」

 アルク「見かねた私がね、四人とも全員私の死徒にしたんだ」

 アルク「私ってほら、人間じゃないでしょ?真祖じゃん」

 アルク「それでも、やっぱり眠りから覚めて誰もいない時間が

     すっごく淋しかったんだ」

 アルク「いびつな形だけどね、姉さんみたいな家族が私にも

     欲しかったんだ」

 士郎「いつか、そのうちの誰かが自分より早く命を落としても、

    ですか?」

 アルク「そうだよ。それが家族じゃないの?」

 士郎「それは、そうですけど」

 アルク「これについては君が一番よく分かっている筈だよ」

 琥珀「でも、吸血鬼の体もそんなには悪くありませんよ」

 琥珀「目の下に隈ができやすいことを除けば、風邪の一つも

    引かないし、バストだって2カップ位増えました」

 琥珀「あの秋葉様も絶壁からCとDを行き来するようになりました」

 秋葉「こ~は~く~うぅ~」

 琥珀「痛い痛い痛いですようぅ。檻髪で首絞め、残った両手で鼻と

    口を塞がないでください。シャレになりませんから」

 秋葉「ふん、本当はかまって」

 琥珀「わー、わーっ。言っちゃダメです。言わないで~」

 秋葉「ま、今日はこれくらいで勘弁してあげる」

 琥珀「衛宮さん。秋葉様、今胸パッ」

 秋葉「魂まで、残さないッ!」ボオオオオオッ!

 琥珀「ぎぃやああああああああ!」ジタバタ

 士郎「...そのまま爆ぜちゃえばいいのにな」

 志貴「さてと、時間も時間だし琥珀さん、お願いします」

 琥珀「はいはーい。わっかりました~」

 琥珀「衛宮さんも、パソコンのモニター越しのみなさんも」

 琥珀「今から三つ巴の修羅場編に突入しますよ~」

 琥珀「チャンネルは、このままで」ウィンク

 
35 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 22:34 ID:EZ97CHqx
  33さんへ、結論から言えば士郎は全てに絶望しています。

 士郎はこのスレの後にもう一話作ってそこで活躍してもらいます。
 
  一応、話の流れとしてはFate/EXTRA CCCの世界に士郎が

 ダイブしてCCCのサーヴァント、キャス狐かカルナと一緒に白野の

 ポジションで活躍するお話を考えています。
36 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 22:50 ID:12njsPYs
そうかぁ、でも面白いから絶対最後まで見ます。
キャス狐さんは珍しいね
37 名前:名無し 投稿日:2014/02/15 23:43 ID:EZ97CHqx
 ~回想5~

 秋葉「兄さん...、ここはどこですか?」

 志貴「ん~?そうだな、もう少し先に行けばわかるよ」

 その質問の答えをはぐらかしながら俺は車を降り、秋葉を背負った。

 秋葉『ありがとう。兄さん』

 志貴『どういたしまして』

 琥珀さんと翡翠にはあらかじめ罠を取り除いた道を教えてある。

  少なくともあの琥珀さんが道を間違うミスを犯すはずがない。

 そう思いながら、俺は無言で目的地に向かって歩き始めた。

 秋葉『こうされていると、昔の自分に戻った気分になりますね』

 秋葉『小学生の時はそんなに背丈は変わらなかったのに...』

 秋葉『今では兄さんの方が背が高いです』

 志貴『秋葉は昔からマセてたからな。知ってるぞ、身体測定の時、

    少しでも背を高く見せようと踵を浮かしていたこと』

 秋葉『な、ななな、なんでそのことを兄さんが知ってるの?!』

 志貴『瀬尾さんと久我峰の野郎が俺に教えてくれた』

 秋葉『久我峰ェ...』ビクビク

 志貴『そうかっかするなよ、秋葉』

  取り留めのない会話をしながら、できるだけあの場所に着くことを、

 琥珀さんと翡翠が待つ全ての始まった場所へと辿り着く時間を少しでも

 遅らせることに俺は心を砕いた。

  これから俺は自分がしてきたことに対するケジメをつける。

 ずっと先延ばしにしてきた答えを今日、ここで出さなければいけない。

  翡翠はもう、止まらないだろう。琥珀さんもきっと同じだ。

  あの二人の心を俺が救うには、たった今俺の背中に背負われている

 妹を彼女達の目の前で殺すか、あるいは徹底的にその心を壊すか。

 その二択しかない。

 志貴『着いたよ、秋葉』

 秋葉『兄さん...ここって、まさか』

  後ろの秋葉がヒュッと息を呑む。

 志貴『ああ、その通りだよ。ここから俺の人生は始まったんだ』

  燃え尽きた残骸、雨風に曝され朽ち果てた家々の残骸。

  七夜の里に俺は再び戻ってきた。  

  
38 名前:名無し 投稿日:2014/02/16 00:32 ID:JSeOfN9y
 琥珀『見せつけてくれますねぇ、秋葉様』ギリギリ

 翡翠『...秋葉様』

 秋葉『こ、琥珀?、ひ、翡翠?』

 琥珀『取りあえず、志貴さんの背中から降りてください秋葉様。
    
    人が真剣な話をするときにおんぶで聞くってのは、些か

    以上に私達の事を舐めきってるってことですかね?』ドヤァ

秋葉『...分かった』

 そういうなり秋葉は俺の背中から降り、物凄い形相で俺を引っ張り

 琥珀と翡翠の前に歩み寄った。

 翡翠『チッ!』

 秋葉『それで話というのは何かしら?暇乞い、それとも介錯の依頼?』

 琥珀『やだなぁ。暴力を振りかざして交渉事を有利に進めるのは

    ヤクザと同じですよ秋葉様。あっ、そっかぁ。鬼子だから

    非道なことをするのに躊躇がないのは当然かぁ』ニヤァ

 琥珀『親も親なら子も子ですね』

 秋葉『何ですって!とでもいうと思った?』

 秋葉『貴女のやり口は分かっているわ。逆上させ、人の弱みを基準に

    虚実織り交ぜた巧みな誘導尋問で勝手に相手を自滅させる』

 秋葉『でも、それは所詮野球の牽制球みたいなもの』

 秋葉『割り切れば琥珀の軽口って、心乱される事もなく聞き流せる

    くらいのブラックジョーク程度なのよ』

 琥珀『その憎々しげな余裕綽々な態度と傲慢不遜さは相変わらず

    ですね、秋葉様』

 琥珀『でも、それも今日までです』

 琥珀『翡翠ちゃん、言っちゃいなさい』

 翡翠『秋葉様』

 秋葉『翡翠...。その様子だと琥珀に唆されたのではなくて、

    自分の意志で私に刃向かうということでいいのかしら』

 翡翠『秋葉様の言う通りです』

 翡翠『単刀直入に用件だけを秋葉様に伝え、お暇させて頂きます』

 秋葉『聞いてあげるわ。ただし、その望みは絶対に叶えないけど』

 翡翠『ご心配なく、許可を取らずとも目的を果たせばすぐにでも

    秋葉様の目の前から立ち去りますので』

 秋葉『本気なのね...二人とも』

 翡翠『要件というのは....』

 琥珀『遠野に奪われてきた私達の青春を返してほしいんですよ』 

 秋葉『そう、なら好きにすればいいじゃない』

 秋葉『専門学校に通うなり、定時制の高校や大学に行くのも

    ありでしょう。ご自由にどうぞ』

 秋葉『少なくとも貴女の人生を奪ってきた私が、これからの

    貴女と翡翠が生きる未来までは邪魔しないわ』

 秋葉『ただし』

 


 秋葉『兄さんは何があっても絶対に貴女達には渡さない』



  
39 名前:名無し 投稿日:2014/02/16 14:10 ID:DuMtbmRf
夜連載スレか。続き待ってます。
40 名前:名無し 投稿日:2014/02/16 20:39 ID:JSeOfN9y
 
 秋葉『今の貴女達に対し、否定的なことを言っても無駄そうだから

    単刀直入に教えてあげる』

 秋葉『私のお腹の中には、兄さんの子供がいます』

 琥珀・翡翠『....信じられない』

 秋葉『そこに至るまでの過程はあまり褒められたものではありません』

 秋葉『嘗てお父様が琥珀にしたことと同じような手管で、兄さんを

    半ば脅すようにして、無理やり孕んだ子供』

 秋葉『ある意味、遠野の宿痾を凝縮したような存在と言っても

    いいでしょう』 

 秋葉『でも、私は貴女達を迫害した鬼畜の血を引いた娘としてではなく

    一人の女としてこの子供を産みたい』

 秋葉『そして、その傍らには兄さんと琥珀と翡翠がいて』

 秋葉『もっともっと今の日々より楽しく過ごしていきたいって

    考えていたの!』

 秋葉『だから、お願い...お願いです』

 秋葉『琥珀ッ、翡翠ッ!私の下からいなくならないで下さい...』

 秋葉『お願いです』ドゲザ



 琥珀『いい台詞ですねぇ、感動的ですよ秋葉様。でも無意味です』


 琥珀『私達、もう秋葉様の言うことに従う気は既にありませんから』
41 名前:名無し 投稿日:2014/02/16 21:08 ID:JSeOfN9y
 
 秋葉『そ、そんな...』

 琥珀『なんですか?今の土下座』

 琥珀『まさか、それで私の質問に答えた気になっているんじゃ

    ありませんよねぇ?』

 琥珀『都合良く人の言うことを捻じ曲げて解釈する秋葉様に

    もう一回だけ、わかりやすく言い直しますね』グイ

 琥珀『志貴さんは貴女に渡さない』アタマフミツケ

 琥珀『これからは、あのだだっ広い遠野邸で一人寂しく生きて

    いってくださいね?』

 琥珀『なに、大丈夫ですよ』

 琥珀『お世継ぎが男だったら志貴とでも名前を付けて溺愛する位の

    自由は秋葉様に残されていますから』

 琥珀『だけど、その子がだいぶ大きくなったら教えてあげます』

 琥珀『貴女の母親は、自分の父親の一族郎党を皆殺しにした

    鬼畜の血を引いているってことをね!』ゲラゲラ

 秋葉『あ、アアアッ....』ザワザワザワ

 志貴『こ、琥珀さん...』

 翡翠『秋葉様...』

 琥珀『ふぃー、これで十年分の溜飲がだいぶさがりましたねぇ』

 琥珀『土下座する秋葉様の頭を思い切り踏みつけるなんて、

    死んでもできないと思っていましたけどね』

 琥珀『最高にHIGHってやつですよ』

 琥珀『当の元凶の本人、槇久の野郎の頭も踏みつけられないのは、

    流石に再考を通り越して業腹モノなんですけどね』
 
 琥珀『ま、これでわかりましたよね。秋葉さん?』


 琥珀『貴女が志貴さんと結ばれることがどれだけ罪深いことなのか』
42 名前:名無し 投稿日:2014/02/16 21:46 ID:JSeOfN9y
 
 秋葉「あああ…琥珀…。琥珀ぅううーーーーーーー!!!!」

  絶望が、心を引き裂く―――悲鳴をあげるように声をあげた……!

 信じがたい心の激痛に抗う術を知らず、私はは喉が張り裂けるのも

 構わずに、叫んだ―――

  自分の身体を抱きしめる。

 強く……。そのすべてを感じるように……。

  もう二度と温もりに満ちたあの日々が戻ることはないの―――?

 引き裂かれた心の奥底から、名状し難い激しい感情が溢れる……!

  己の半身ともいえる大切な存在が今ここで死んだという絶望と、

 今まさに自分の大切な人を奪おうとする女に対する憎悪。

  その二つがない交ぜとなった形容し難いほどに荒ぶった衝動が、

 私の心と身体を焼く。

  どす黒い―――破壊衝動。

 自我の総てを破壊しようとする、激しい衝動が私の五体を駆け巡る。

  絶望に苛まれた心の痛みが、全身の細胞を沸騰させる憎しみの炎に
 
 塗り潰されていく―――

  遠野の鬼の血が、私を完全にを飲み込もうとしている……!

  だけど……
 
 この現実が否定できるなら、どんなことでも厭わない……。

 そう思った瞬間―――私の視界は闇に覆い尽くされ、意識が途切れた……。

 
 琥珀『ふふふ、アーッハッハッハ。大成功、イッツパーフェクト』

 志貴『琥珀さん、アンタって人はまさか...』

 琥珀『さぁ、志貴さん選んでください』

 琥珀『今や反転して自我も何もない完全な紅赤朱(おに)か』

 琥珀『今まで仕えてきた主を貴方に殺させようとする姉妹(げどう)』

 翡翠『志貴様...』

 翡翠『救いの手を求めている愚かな女達に愛を教えて下さい...』
 
 
 琥珀・翡翠『私達は、貴方を愛しています...』
 


 秋葉『許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

    許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

    許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

    許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない』

 秋葉『ニイサンは、渡さない」

 秋葉『お前たちになんか絶対に渡すものかアアアアッ!!』
 
  怒れる赤鬼の怒気が瞬く間に七夜の里を凍りつかせる。

  景色が一瞬の内に、凍土の如く凍りついていく。

  全ての感情を押し殺し、人外二人はただその力をぶつけ合う。 

 守るべきものを見失いかけ、闘う決意が鈍る殺人貴。

 今まで積み上げてきた全てを捨て去った悲しい紅赤朱(おんな)。

  哀切なまでの悲しさが彼等を追い詰めていく
43 名前:名無し 投稿日:2014/02/16 23:08 ID:JSeOfN9y
 
 志貴『琥珀さん、翡翠ッ!来るんだ!』

 翡翠・琥珀『志貴様(さん)...///』

 俺は自我を失った秋葉から二人を遠ざけるためにその手を引き、

 七夜の森へと駆け込んでいった。

  鬱蒼と茂った木々が月と星の光を掻き消し、視界から一切の光を

 奪う。

  しかし、この時程俺はツンデレがヤンデレに、ヤンデレが

 怒りに狂い、鬼女となった女の恐ろしさを甘く見ていた。


 秋葉『む~か~し七夜の古里に 鬼殺しども籠りいて

    都に出ては鬼を切り かねや命を散らし逝く』

 志貴『大江山かよっ!洒落にならねぇッ!』

  逃げれば逃げるほど、秋葉から距離をとればとろうとするほど

 聞くものの心を鷲掴みにする恐ろしい歌声が徐々に近づいてくる。

 秋葉『鬼の大将 槇久は 時の御上の依頼にて  

   七夜殺しを受け申し 一族郎党 出掛けたり』

 翡翠『狂ってる...、本当に秋葉様は狂われてしまったのですね』

 琥珀『元からですよッ!余計なことを考えないで!翡翠ちゃん』

 秋葉の声が歌うたびに段々しゃがれた声へと変わっていく。

 秋葉『家来は名高き軋摩鬼 沙門の姿に身をやつし

    険しき山や深き谷 道なき道を切り開く』

 秋葉『ふふふ、どこへ逃げようと無駄ですよ兄さん』

 秋葉『猿にも劣る逃げ足が私の眼に入らないとでもお思いですか?』

 秋葉『琥珀、この泥棒猫』

 秋葉『いっそ兄さんの子を孕む前に殺しておけばよかった』

 秋葉『そうすれば...ふふふ、夢を見ないで済んだのに』

  ゲタゲタとタガが外れたように狂笑する秋葉の歌は更にその

 狂気に輪をかけていった。

 秋葉『七夜の巣窟来てみれば 撥持ち七夜が頭にて

    老いも若きも捕まえて 阿鼻叫喚の大鏖殺』

 志貴『...秋葉、それは』

 志貴『それだけは、お前が言ってはいけない名前だろ...』

 秋葉『驚きまどう七夜ども 一人残さず縊り捩じ

    七夜の頭の頸をとり めでたく復讐終わりけり』

  最後の歌詞を声高らかに歌い終えた後、それきり秋葉の歌声は

 聞こえなくなった。

 翡翠『キャアアアアアア!!!!!』

 志貴・琥珀『翡翠ッ、翡翠ちゃん!』

  何もない、少なくとも俺たちが立っている地面には何の変化も

 見られてはいなかった。けれど、翡翠の体から物凄い勢いで何か

 白い霧のようなものが立ち込めていることが分かった。

  それが翡翠の体の水分だということに最初に気が付いたのは

 琥珀さんだった。

 琥珀『志貴さん!魔眼ごと翡翠ちゃんに絡みつくもやもやを切り

    裂いてください!早く!』

  俺は琥珀さんの言う通り、慌ててメガネをはずし翡翠にまとわりつく

 秋葉の略奪の異能の死の『点』を見た。

 志貴『ここか』

 気体の死の点を突くのは初めての事だったが、集中して見えた

 黒い点を軽く突いた途端、翡翠の体の拘束は自由になった。

 翡翠『ごぼおっ!』

  口から血を噴き出し、地面に叩き付けられる様にして崩れ落ちた

 翡翠の全身の肌はカサカサになっていた。

 翡翠『ひゅーっ、ひゅーっ、ひゅッ、げほっげほっ』

  急激に体から水分が蒸発したことによるショック状態を起こした

 翡翠は一刻を争う瀕死の状態だった。

 琥珀『嫌アアアアアアアアアアア!!!!!』

 琥珀『翡翠ちゃん翡翠ちゃん翡翠ちゃん、ダメ、ダメ、ダメェッ!

    死なないで死なないでええええええ!!!!』

  陸に打ち上げられた魚がビチビチと死に物狂いで跳ね回るように、

 翡翠は四肢を激しく地面に叩き付けていた。 

 志貴『琥珀さんッ、感応能力だッ!貴女の血を翡翠に早くッ』

 琥珀『はい、はいっ!』

  琥珀さんは素早く腕をまくり、手持ちの剃刀で右手の脈近くの

 皮膚を切り裂き、翡翠の口に押し当てた。

 琥珀『翡翠ちゃん、飲んで、飲みなさいッ!』

 琥珀『生きて志貴さんと一緒に人生をやり直すんでしょう?

    子供の名前だって、もうちゃんときめてるでしょう?!』

 琥珀『お願いだから...私を一人にしないで...』

  瀕死の状態ではあるものの、翡翠には何とか俺たちの言葉は

 届いていた。

  必死の形相で思い通りにいかない体を無理やり制御し、必死に

 生きようとする翡翠の姿に俺は涙を流した。

 志貴『死ぬな、死ぬんじゃないぞ!翡翠ッ』

 志貴『俺は....俺は...』

 
 秋葉『俺は秋葉を捨てるから、だから生きろですか?兄さん?』


  冷え冷えとした何の感情も差し挟まない声が聞こえた。

  それと同時に翡翠の体は急速に動きが鈍り始めていった。

 琥珀『秋葉さん...』

 秋葉『さぁ、琥珀。私に対して重ねてきた無礼のツケ』

 秋葉『ここいらで年貢の納め時と洒落込みましょうか?』

 
 秋葉『貴女の命の一括払いでねッ!!』

 
44 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 00:13 ID:egZmRjqd
  秋葉の爛々と輝く鬼の眼が俺と琥珀さん、翡翠を捉え離さない。
 
 膠着状態の一瞬の隙を突き、秋葉は360度に全展開された七夜の森に

 張り巡らせた赫い檻髪を琥珀さんの心臓めがけ、発射した。

 志貴『ウオアアアアアアッッッ!!!!』

 秋葉『うそ、どうして...張り巡らせた檻髪が消えたの...』

 志貴『ガアアアアアアッッッ?!!!!』

  一か八かの最後の奥の手がかろうじて翡翠と琥珀さんの命を

 救うのに役立った。

 秋葉『ま、まさか直視の魔眼で殺したのは...』

 志貴『そ、うだ。檻髪の『概念』だ』

  直死の魔眼は対象の死期を視覚情報として捉えることが出来る眼だ。

 そして、その視覚情報をもとに対象を殺すことができる能力なのだ。

  この魔眼が見る死期とは、生命活動の終焉ではなく「存在の寿命」

 意味や存在がその始まりの時から内包しているいつか来る終わりの事。

 誕生という大元の原因から、死という最終結果を読み取っているとも

 言える。

  だから、極めれば「魔術などの概念」さえも殺せるようになる。

 それは秋葉の檻髪でも例外ではない。

  しかし、ただでさえ使用に際し脳に多大な負荷をかけるため、

 濫用はできない。特に俺みたいなやつが使うと...

 志貴『まいったな、目が、目が見えないよ...秋葉』

 秋葉『兄さん、兄さんッ!』

 志貴『だめだなぁ、女泣かせな性分は最後まで治らなかったよ』

 志貴『馬鹿は死ななきゃ治らないとはよく言ったもんだ』

 秋葉『兄さん、しゃべらないで...今、私の命を分け与えるから』

 志貴『ダメだ!』

 志貴『外傷的な傷ならともかく、脳の損傷にはお前のもう一つの

    力は全く意味を持たない』

 志貴『最悪、お前まで死ぬかもしれない』

 秋葉『関係ないッ!そんなの関係ないですっ!』

 秋葉『兄さんの為に私は全てを投げ出した!』

 秋葉『会社も、信頼も、使用人も、全部捨ててきたッ!』

 秋葉『私を狂奔させた本人が直視の魔眼の使い過ぎで死にかけ

    寸前ですって?女を馬鹿にするのも大概にしてよッ!』
 

 秋葉『生まれてくる子供に父親がいないで、どうするのよ...』


 琥珀『志貴さん...翡翠ちゃんが死にました...』

 志貴『...琥珀さん、翡翠を連れてきてくれないかな?』

 琥珀『翡翠ちゃんの死を...魔眼で切り裂いてくれるんですか?』

 志貴『どうやら...俺もすぐに翡翠の傍に行きそうかもしれない』 

 琥珀『そうですか...』

 琥珀『私達は願ったものから取り逃がして、欲しいものから

    失くしていくんですね...』

 琥珀『永遠に奪われ続けて終わる星の下に生まれついた、運命の

    操り人形。自分に纏わりつく諸々の呪いや、成就できない

    展開に嫌気が差してもそこから絶対に逃れられない』

 琥珀『ふふっ、それでも志貴さんの子供を授かったときは、

    翡翠ちゃんも私もすごくうれしかったんだけどな...』

 琥珀『秋葉様もきっと、祝福してくれると思ったんだけどなぁ』

 秋葉『琥珀...』

 琥珀『秋葉様、志貴様』

 琥珀『今日にいたるまで御二方に翡翠共々お仕えできた日々、

    私達の人生において真にかけがえのない日々でした』

 琥珀『その恩に報いることなく、非礼無礼の限りを尽くした挙句』

 琥珀『秋葉様の誇りを貶めた私の悪行は万死に値します』

  翡翠の冷たくなった左手と反対の右手に握られている短刀を、

 力の籠らなくなった俺の手からするりと抜けた感触がした。 

 琥珀『私の死を以て、非礼の対する落着とさせてくださいまし』

 志貴『琥珀...生きろ、生きてくれ』

 琥珀『御免』

  ぞぶり、と肉をかき分けた刃が胸骨を瓜を両断するかの如く

 きれいに琥珀さんの心臓を貫いた。

 琥珀『...おやすみなさい、秋葉様、しき、い、いえ...』

 
 琥珀『あ...な...た...』
 
45 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 00:38 ID:V3Pi4DOi
見てるよ
46 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 01:02 ID:egZmRjqd

 ??『だ~か~ら~、姫様ってば、やめたほうがいいですよ!』

 ??『人間誰しも永遠を生きる事なんかできませんからね』

 ??『それに、見てくださいよ。この四人の安らかな顔』

 ??『このまま死なせた方が彼らにとって最善ですよ』

 アルク『うるさいわよ、メレム』

 アルク『貴方が埋葬機関にいてくれて、本当に助かっているの』

 メレム『姫様、詭弁を弄して時間を悪戯に浪費するのは避けて

     貰えませんか?そろそろシエルじゃない他の埋葬機関の

     代行者達がこの森に火を付けにきますからね』

 メレム『はぁ、じゃぁ最後にこれだけ聞かせてくださいね』

 メレム『魔眼使いと純粋な鬼種の末裔、そして感応能力を持つ双子』

 メレム『彼らを姫様が救いたい理由、それは』

 メレム『死なすには惜しい逸材(かぞく)だからですか?』

 アルク『そうよ。わかってるじゃない』

 アルク『私ね、志貴も秋葉も琥珀も翡翠も、おまけにシエルも』

 アルク『みんな大好き』

 アルク『だから、私の手の届く範囲で救うことが出来るのなら』

 アルク『絶対に取りこぼしたりなんかしない』

 アルク『後が怖くても、後悔だけはしたくないから....』
47 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 01:16 ID:egZmRjqd

 メレム『...分かりましたよ。姫様』

 メレム『人を狂奔させる魅力を持つ存在って凄いんですね』

 メレム『同時に愚かしくも感じますけど、そんな彼等の賢しさを

     貴女は好きになったんですよね』

 アルク『メレム、私前から貴方の事を悪質なストーカーか

     追っかけだと思ってたけど、意外と話が分かる奴なのね』

 メレム『姫様第一のファンですからね』

 メレム『姫様の命とあらば、例え火の中水の中姫様のスカートの中

     どこにだって馳せ参じますよ』

 アルク『さーて、姉さんは今どこにいるのかしら?』
 
 メレム『マジで謝りますからそれだけはご勘弁を~』

 アルク『?!予想より早かったわね...』

 メレム『第三席と予備役かぁ、アイツ等は僕の事を何かと敵視する

     からなぁ...よし、やっちゃおっかな』

 アルク『処す、処しちゃう?』

 メレム『処しちゃいます』

 アルク・メレム『wwwwwwwwwwwww』

 アルク『メレム、時間稼ぎお願いね』

 メレム『御意に。姫様もなるべく早く済ませて下さい』

 メレム『最悪、ナルバレックも出張ってくるかもしれませんから』

 メレム『その時は、僕はそこに転がってる人間を置き去りにしても

     姫様を抱えて逃げますからね』

 アルク『誰の心配してるのよ』

 メレム『それでは、姫様』

 メレム『首尾よく彼らを救っちゃってください』

 メレム『後でご褒美下さいね』  

 アルク『気が向いたら千年城に招待してあげる。近いうちにね』

 メレム『はは、楽しみにしてますよ』
48 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 01:28 ID:egZmRjqd
 アルク『さーて、とっとと死徒転生をやっちゃいますか』

 志貴『』

 秋葉『』

 琥珀『』

 翡翠『』

 アルク『メレムに感謝しなさいよ~、志貴』

 アルク『妹とメイドの赤ちゃんは無事よ。メレムが魔力の防壁を

     あの子達の子宮に張り巡らせていたからね』

 アルク『全く、妹とメイドを選んだはいいけど、その最後が

     無理心中なんて、選ばれなかった私が馬鹿じゃない』

 アルク『志貴』

 アルク『志貴の事を諦めてた私の想いを燃え上がらせた罪は

     すっごく重いんだからね!』



 アルク『四人とも、私を本気にさせた責任とってもらうから!』


 
49 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 02:04 ID:egZmRjqd
 ナルバレック『ふむ、そんなところで何をしているのかな?姫君』

 アルク『うげぇ、ナルバレック』

 ナルバレック『あの似非ピーターパンの動きを見張っていたら

        案の定、貴女が殺人貴を己の死徒にしようとした

        場面に出くわしたというわけだ』バァァァン!

 ナルバレック『量産型エル・ナハトを作れないのが残念だが、

        今日は大盤振る舞いだ』ドヤァ

 ナルバレック『既に貴女の血を流しこまれた死徒諸共まとめて

        封印してやろう。この『胃界教典』でな!』

 ??『プライミッツ、ナルバレックをブッ殺しなさい!』トウジョウ

 ミッツ『ガルルルルルル、ウガアアアアア』

 ??『十二位と十九位の仇を取りなさい!』

 ナルバレック『チィッ!!黒血の月蝕姫と霊長の殺人者が出てくる

        とは想定外にも程がある!』

 アルトルージュ『分かってるのならとっとと退きなさい』

 アルト『魔導元帥のおじい様も直にこっちに来る』

 アルト『果たして、ご自慢のエル・ナハトがどこまで通用

     するのか教えて貰いたいものね』

 ナルバレック『....』テンイ

 アルク『...姉さん』
 
 アルト『久しぶり、アルクェイド。元気にしてた?』

 アルク『どうしてここに?』

 アルト『人が人を想う様に、吸血鬼が自分と血の繋がりのある

     吸血鬼を気に掛けることがそんなにおかしいことかしら?』

 アルク『じいやはどこにいるの?』

 アルト『もう少ししたら来るわ』

 アルト『それと、カレーさんから手紙を預かっているの』

 
50 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 02:09 ID:egZmRjqd

 アルク『?!シエルから』

 アルト『要点だけまとめて言うと、もう貴女とは絶縁ですって』

 アルト『抜け駆けをするようなアーパー吸血鬼の顔なんか見たくも

     ありません。だから今度からは晴れて宿敵同士ですって』

 アルト『私が貴女を殺すその時まで、新しい家族をお大事にって』

 アルク『...シエル』

 メレム『姫様ご無事でしたかっ、って...』

 アルト『あら、メレムじゃない?』

 メレム『ぎゃあああああああああ』
 
 アルト『あ、待ちなさいメレム!ゆっくりお話ししましょう?』

 アルト『この前みたいにジョロキア唐辛子を飲ませたりしないから』

 メレム『いやぁあああ!姫様たすけてー!』

 アルク『姉さん、メレム』

 アルク『ありがとね』

 アルト『どういたしまして』

 メレム『いつか、僕の事を姫様の臣下に取り立ててくださいね』

 メレム『さーて、埋葬機関に帰って報告書報告書っと』テンイ

 アルト『プライミッツ、帰るわよ』

 ミッツ『ワンッ!』テンイ

 
 アルク『二人とも、本当にありがとう...』
51 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 15:00 ID:DoH94WWO
支援
52 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 18:24 ID:92apCn1k
見てるよ
53 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 19:23 ID:QZNtPa0U
夜進行のssやで
54 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 19:40 ID:9Yhyqwpf
支援
55 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 19:40 ID:B1hiBKVh
支援
56 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 19:40 ID:9Yhyqwpf
支援
57 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 19:40 ID:B1hiBKVh
支援
58 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 20:39 ID:egZmRjqd
アルク『ってことでね、回想その5はおしまい』

 士郎『いきなりですね...』

 アルク『ここから先の後日談はね、私から言っちゃうけど、皆

     それでいいよね?』

 志貴『じゃあ、アルクェイドにお願いしようかな?』

 琥珀・翡翠『お願いしまーす』

 アルク『オッケー』

 秋葉『こほん』

 秋葉『二時間もぶっ続けで話すのは結構ですけれど』

 秋葉『さすがに衛宮さんもお腹が減っているのではなくて?』

 士郎『そ、そうですね。何か軽くつまめるものが欲しいです』

 秋葉『分かりました...。少々お待ちくださいね』

 士郎『あ、あれ?こういうのって琥珀さんがやって...』

 翡翠『いいんです。秋葉様の料理は姉さんより美味しいのです』

 琥珀『そこらへんの事情はアルクェイドさんが今からお話して

    くれますよ。私達は少し席を外しますね』

 アルク『それじゃメイド達も席を外した所で、私達の今置かれてる

     状況から話しましょうか....』 
59 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 21:05 ID:egZmRjqd
 
 アルク『私と姉さんの血を流しこまれた志貴、秋葉、琥珀、翡翠』

 アルク『そのうちの志貴と秋葉は死徒二十七祖に名前を連ねることに

     なったの。十二位と十三位にね』

 志貴『十三位が俺で、十二位が秋葉になったんだ』

 アルク『そして私は朱い月の三位に返り咲いたの』

 士郎『...』

 志貴『俺は死徒になったことで体の弱さを克服し、直死の魔眼を

    肉体に負担をかけることなく、行使出来るようになった』

 志貴『秋葉も』

 志貴『俺を生かすために使っていた能力を戻したことによって

    紅赤朱モードに自由自在に入れるようになったんだ』
 
 志貴『その上、死徒としての親がアルクェイドだから、その血の

    影響力が凄まじく強く、鬼の血に飲まれることなく能力を

    行使できるようになった』

 志貴『琥珀さんと翡翠の感応能力なしでね』

 士郎『その気になれば二十七祖の大半を滅ぼせちゃいますね』

 アルク『だから私達全員封印指定を受けちゃったんだ』

 志貴『まさか自分達が賞金首になるとは思わなかったよ』

60 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 22:45 ID:egZmRjqd
 志貴「俺が二十億、秋葉が八億。琥珀さんと翡翠は七百万円」

 秋葉「それで頭に来た私達で埋葬機関と聖堂教会に殴り込みを

    かけに行って、組織の機能を半壊状態にしちゃいました」テヘ
 
 アルク「シエルもシエルで本気で私達の事をハンティングしようと

     してたのよね...」

 士郎「志貴さん...アンタにはもう人の心はないのか?」

 志貴「士郎君、君の抱く歪な理想と今の俺達は似ているんだ」

 士郎「違う!」ツクエタタキ

 士郎「人であることを辞めたアンタ達と一緒くたにされたくないッ」バァン

 志貴「命を秤にかけ、一人でも重い方が乗った皿を救うため」

 アルク「軽い方を切り捨てる」

 志貴「それは即ち多数を生かすために少数を切り捨てる行為だ」

 士郎「アンタ達が、アンタ達がその理屈を語るな!!」

 志貴「俺にはね、生まれた時からまともな心がないんだ」

 志貴「大体の理由は、実は見当がある程度ついてるんだ」

 志貴「俺の眼はずっと死を見続けてきた」

 志貴「死と隣り合わせの日常が俺の世界だったんだ」

 アルク「私の今までも志貴とほとんど同じ」

 アルク「私の正体は、一切の感情を排した堕ちた真祖をただただ

     処刑するための処刑人。心が無い、心臓は動いているけど

     生きている実感が全くない生きた人形だった」

 アルク「志貴に殺された事で「バグ」が起こって、感情が芽生え」
 
 アルク「そして、生まれて初めて恋に落ちたの」

 アルク「でも、感情を知ったがゆえにジレンマに悩むように

     なっちゃったの」

 アルク「それこそ、人間らしい呆れちゃうくらいに矮小な考え方」

 アルク「志貴の赤ちゃんを産みたいとか、志貴を独占しようとする

     シエルと妹、メイド達を殺してやりたいって気持ちとかね」 

 士郎「何が言いたいんだよッ!アンタ達はッ!」

 志貴「士郎君、君が何に行き詰っているのか」

 志貴「それについては、あえて触れないでおこう」

 志貴「ただね...」


 志貴「どんな化け物でも、心が人間なら人間なんだよ...」


61 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 23:12 ID:egZmRjqd

 アルク「正義という理想に燃えながら、救われない理想(じぶん)に

     絶望してまでも正義(こたえ)を求め続けた衛宮切嗣は

     吸血鬼の私から見ても化け物よ」

 士郎「違うッ、違うッ。じいさんは化け物なんかじゃない!」

 アルク「君はね、優しすぎるんだ」

 アルク「だから、同時にとてもそれ以外には冷たい人なのよ」

 アルク「だって君は誰にだって分け隔てなく接するでしょう?」

 アルク「正義か、お人よしの性格かはわからないけど、どんなに

     憎い人でも、どんなに好きな相手でも衛宮士郎の中には

     一番になる人がいない。誰もが平等なのよ」

 アルク「君は誰だって好きになれるし、誰だって許してしまえる。

     自分の後輩を凌辱した同級生、召喚したサーヴァント

     聖杯に汚染された間桐桜、人間に限りなく近いホムンクルス」

 アルク「許しはしないだろうけど父の死の遠因となった神父のこと

     ですら完全に否定できてないじゃない」

 アルク「痛々しい理想(ゆめ)を抱き続けると本当に溺れ死ぬわよ?」

 アルク「愛に生きなさい」

 アルク「必要としてくれる人達全てじゃなくていい」

 アルク「自分が必要とするたった一人を幸せにしてあげなさい」  

 アルク「夢は見るものではなく、冷めるものなのよ?」  
62 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 23:34 ID:egZmRjqd

 士郎「う、うそだ」

 士郎「う、うそだ、そんなことーっ!」

 志貴「士郎君、気が付いているかい?」

 志貴「君の全てを分け隔てなく救う「正義の味方」って理想」

 志貴「君の「他人を救う」という理想は「命を救う」という方面に

    偏っているんだってことにさ」

 士郎「ちっ、違う!俺は本当に全てを分け隔てな...」

 志貴「はぁ、節操なしもいい加減にしろよな」

 志貴「君は全てを分け隔てなく救うんじゃなくて」

 志貴「救うという行為に心が陶酔し、麻痺してるんだよ」

 志貴「だから、カニファンのときのデート大作戦でも耳触りの

    いいことをいけしゃあしゃあと素面で言えたんだ」

 士郎「...」

 志貴「救えなかったんだろ...?君の傍にいた身近な人を」

 士郎「はい」

 志貴「きっとその出来事はさ、義父が残した唯一の理想が

    揺らいでしまうほどに大きな出来事だったんだろ?」

 志貴「士郎君、今度は君の話を聞かせてくれないか?」

 志貴「ああしろこうしろって俺もアルクェイドも好き勝手

    君に言ったけどさ」

 志貴「恋をして、家族を得るって素晴らしいことだよ?」

 士郎「...わかりました。お話しますよ」

 士郎「俺が今日にいたるきっかけになったそもそものきっかけ」

 士郎「あれは、高校卒業を控えた一月の事でした....」
63 名前:名無し 投稿日:2014/02/17 23:51 ID:egZmRjqd
 ~士郎の回想 その1~

 衛宮邸、縁側、午後十時


 大河「はぁ、」

 アーチャー「ん?どうかしたのかね」

 大河「あ、貴方は遠坂さんのこれ?」コユビタテ

 アーチャー「出会い頭にそれはないんじゃないのか」ズッコケ

 アーチャー「毎度のことながら、凛が世話になってる」

 アーチャー「彼女が何か不便でもかけているのか?」

 大河「ううん、そうじゃないの...そうじゃないんだ」

 アーチャー「もしや教育委員会がらみのことなのかね?

       担当した生徒が非行を犯し、その陳情に

       出頭しなくてはならないとか?」

 大河「アハハ、ニートさんってすっごい勘が鋭いんだね」

 アーチャー「私はニートさんではないッ!」

 アーチャー「せめて、せめて」

 大河「はいはい。わかってるわよ、士郎」

 アーチャー「私は衛宮士郎でもないッ!」

 大河「嘘つく人って、大抵本当のことを言われると反対の事を

    いうのよ?」

 アーチャー「...勝手に呼ぶがいいさ」

 大河「ねぇ?ちょっと愚痴をきいてもらっていいかな」

 アーチャー「いいとも。助言の類はあてにならんかもしれんがね

       私なりにその悩みを真摯に聞いてやろう」

 大河「可愛くない奴...」

 大河「少し長くなっちゃうけど、話すね」
64 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 00:25 ID:QJTv0czU

 大河「士郎ってさ、生徒の不純異性交遊ってどう思う?」

 アーチャー「私としては無責任極まりない行為だと思う」

 大河「もし、それを監督できる人間がずっと傍にいながら

    長い間その生徒の非行を放置し続けていたら?」

 アーチャー「君はその保護者の保護責任能力を問いたいのかね?

       それとも生徒が完全に悪いと思ってるのか?」

 アーチャー「いや、失敬。教師が生徒を悪と断じることは

       教育において何よりのタブーだったな」

 アーチャー「すまない」

 大河「私の立場としては前者の方なのかな?ちょっとだけ後者の

    考え方も交じった考え方みたい」

 アーチャー「もしや、まさか...」

 大河「そ、士郎の事なんだ」

 大河「士郎ってモテるじゃん?セイバーちゃん、遠坂さん、桜ちゃん

    イリヤちゃん。代表的な女の子で四人」

 大河「そのほかにも、シスターさん、メイドさん、ダメットさん」

 アーチャー「...まさか、衛宮士郎の交友関係がそれに相当すると?」

 大河「ピンポン。大正解」

 大河「最初はね、ある一年生からの相談から端を発したの」

 大河「私じゃない先生が恋愛の相談を受けたのよ」

 大河「衛宮先輩が大好きですって、どうすればいいの?って」

 アーチャー「....それで?」

 大河「その先生も結構なベテランでね。士郎の事を気に入ってた」

 大河「でも、遠坂さんの事を嫌ってたの」

 アーチャー「凛の性分だ。どうにもあれは無自覚の内に他人の

       劣等感を煽ってしまうからな」

 大河「依怙贔屓はしない人なんだけどさ、多分、自分を

    上回ってる人間を認めたくないって人」

 大河「それで、私にその相談のお鉢が回ってきたの」

 大河「その先生曰く、『藤村先生が衛宮君を一番よく理解している』

    そう言ってたの」

 大河「さらに間の悪いことに私、その子の担任だったのよ」

 大河「私、私頭の中真っ白になっちゃった」

 大河「だって、士郎はあの中の誰とも付き合ってないのよ?!」

 大河「それに加えて全員が全員、士郎の本物の恋人みたいに

    べったりなのよ。どう説明すればいいの!!」

 アーチャー「そ、それは...」

 大河「私が言ってもあの子達は絶対に聞かない。それどころか

    そのうちの誰かがその生徒を締め上げる可能性があるの!」

 大河「セイバーちゃんの尋常じゃない剣道の腕、学校のマドンナで

    負けん気の強い遠坂さん、イリヤちゃんだってヨーロッパの

    名のある貴族の娘なのよ?!」

 大河「そんなハイスペックな子達から士郎を奪うのがどれだけ

    危険なことか」

 大河「そして彼女達が『諦めて』っていったらその子があまりに

    可哀相じゃない!報われないじゃない!」

 アーチャー「済まない...謝ってどうにかなる問題ではないが」

 アーチャー「本当に済まない」

 大河「それで私、その子の前で泣き崩れちゃったの」

 大河「あの出来事が起きた時期が十二月で本当に良かった」

 大河「士郎はその時学校にこなくなってたから」

 アーチャー「卒業を待つだけだからな。無理に学校に来なく

       なっても別にいい時期だしな」

 大河「それで、それで」

 大河「士郎のハーレムがばれちゃったの」

65 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 00:54 ID:QJTv0czU

 大河「そりゃそうよね...。だって生徒の前で教師が泣き崩れる

    なんてよっぽどのことだもん。怪しまれちゃった」

 大河「で、その時セイバーちゃんと鉢合わせしちゃって」

 大河「色々と押し問答した挙句に、セイバーちゃんが嫁宣言」

 大河「その子、ひきこもりになっちゃった」

 アーチャー「一概にアイツが悪いとは言い切れないのが悪辣だな」

 大河「親御さんが学校に怒鳴り込んできて、校長先生に直談判」

 大河「その次の日には職員会議でほぼ名指し状態で紛糾状態」

 大河「土下座してなんとか先生たちの胸の中にこの一件をとどめて

    もらったけど」

 アーチャー「教育委員会だな」

 大河「教育委員会の査問で士郎のハーレムをどうして放置してたのか
    
    それを報告書にして提出しろって...」

 大河「私だって...士郎の事、大好きなのに....」

 大河「どうして、こんな辛い目に遭わなきゃいけないのよッ!」

 アーチャー(藤ねぇ...俺は、なんてことを貴女にしてしまったんだ)

 アーチャー「そのことは、ご家族には伝えたのか...」

 大河「言ってない。雷画じいちゃんにそんなこと言ったら士郎が

    殺されちゃう。他の女の子たちも殺されちゃう」

 大河「ぐすん。まさか教師をやってて生徒に後ろ指さされる日が

    こんなに早く来るなんて予想外だったなぁ」ナミダメ

 大河「教育委員会のご沙汰はね、穂群原学園から転勤しろって」

 大河「それも、最低でも隣の県の高校にって言われたの」

 大河「なんとかおじいちゃんとお父さんは納得できたの」

 大河「でも、でも」

 大河「士郎の傍から離れたくないんだよぅ」

 大河「教師失格だけど、士郎が好き。大好き」

 大河「日陰の女になっても、それでも一緒に居たいのよ...」ポロポロ

 大河「しろぉ~、お願いだから、どこにもいかないで...」ビエエエン

 アーチャー「藤ねぇッ!藤ねぇええええ!!!」ガッシリダキシメ

 大河「恋も知らないまま、このままずるずるって生きていたくない」

 大河「ぽっと出の新参者の女の子達より、私が、私がぁッ」

 大河「一番士郎の事を理解しているんだからああああああ」

 アーチャー「藤ねぇええええ!!!」オトコナキ
 
 大河「しろおおおおおおおおおお」
66 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 01:23 ID:JVuJLNij
やっとFateに入ったか

応援してんぞ頑張れ
67 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 07:44 ID:Ur5yj9rA
アーチャーさん、あの渋さはどこ行ったんすかwww
68 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 11:03 ID:QHjY4i1p
支援
69 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 18:03 ID:FHl3S5iX
今日書くのか?
70 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 21:35 ID:QJTv0czU

 ~衛宮邸、大河の寝室、午前零時~

 月に照らされながら、二つの裸体が一つの部屋で睦みあっていた。

 大河「んああああっ!しろぉ~、しろぉ~!」

 アーチャー「...はぁっ、はぁ」

 大河を自分の身体の下に組み敷きながら、英霊エミヤシロウは

 浮かんでは消え続けずに己の心に残留し続ける迷いを吹っ切るように、

 強引に大河のやや肉付きの良い背中、自分からみれば可愛らしく、

 華奢な背中を勢いよく抱き寄せた。

 大河「ゃ、あんッ!」

 大河「怖いよぉ~、しろぉ~...もっと優しく抱いてよ...」

 アーチャー(避妊の心配は...ふっ、愚問だったな)

 アーチャー「済まない。少々夜の営みは不得手なものでね」

 アーチャー「兎の様に縮こまる女性を見ると、自分でも不思議なほど

       耐え難い衝動にかりたてられるのだ」

 大河「もぅ...///士郎の癖に生意気なこと言うな...」

  首筋から脇の下を通り、無駄な贅肉が一切そぎ落とされた臀部に

 シロウは自分の舌を這わせ、大河の性感帯を緩やかに探っていた。

 アーチャー(藤ねぇは、やっぱり藤ねぇだな...)

  下腹部からその下のクリトリスにいたるその直前、シロウは

 這わせた舌を再び大河の上半身に戻し、その欲望に潤んだ唇を

 勢いよく吸った。

 大河「はぁん…ちゅ、んぷ…ふあぁ…しろぉ~……ちゅううっ!」

  両手で大河の頭を挟んで固定し、舌と舌を濃密な程に絡めあい、

 たっぷりと唾液を交換する。大河はこちらの動きを全て理解している

 かのように舌を動かし、複雑に絡めてくる。

  彼女は本当にキスが上手い。シロウは酸欠寸前になりながらも

 そう心から思った...。
71 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 22:23 ID:BqLsozTr
もっと
72 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 22:26 ID:QJTv0czU

 大河(やっぱり、この人は士郎...なんだよね?)

 士郎の事を好いている少女の一人、遠坂凛。

 その彼女の傍にいつも彼は影のように付き添っていた。

 シニカルな笑みを浮かべ、少しの皮肉と警句じみた理屈。

  それは、士郎とは似ても似つかなかったけど、

 その笑顔を見るたび、大河の心にはある種の哀切な気持ちが

 時たま堰を切って溢れ出す。

 大河「ん……んむぅう……んむぅ……」

 まるで使い込まれた愛用の道具を使い、新たなものを作り出す。

 浅黒く、褐色に焼けた逞しいもう一人の士郎の舌使いは熟練工のそれを

 彷彿とさせた。

  差し込まれたシロウの舌が私の舌を舐め上げていく。側面を奥から

 手前へなぞり、舌先をくすぐって、反対の側面をまたなぞる。

  イきたい、だけどもっとこの幸せな瞬間を味わっていたい。

 快感と理性の板挟みが大河の心と体をきつくきつく心地のいい強さで

 束縛を加速度的に強める。

 アーチャー「だいぶ出来上がっているようだな...」

 アーチャー「最後に一つだけ聞いておく」

 アーチャー「いいんだな?」

 アーチャー「俺は衛宮士郎じゃない。アイツの理想の成れの果てだ」

  いいんだな?

  その言葉の裏に隠れている言外の意味が分からない程、大河の

 精神は幼くはなかった。

  まるで、既に枯れ落ちた良心の呵責を無理矢理絞り出すような

 そんな声が余計に大河の中にある士郎への愛情を燃え上がらせる。

  己を今抱いているのが、本物の偽物(フェイカー)だとしても、

 彼女が衛宮士郎を愛しているという恋の炎に焼かれ続けている限り...
73 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 22:27 ID:QJTv0czU
  大河「なに言ってんのよ、士郎」

 大河「鏡にいくら自分が歪んで映って見えたとしても、映っている

    のは士郎本人なんだよ?」

 大河「偽物さんの士郎がどうして士郎の事を知ってるのかとかさ、

    毛嫌いしているのかなんて私にはわかんない」

 大河「だからさ、戻っておいでよ...」

 大河「切嗣さんみたいに、もう二度と遠くの会えない場所に

    士郎まで行っちゃヤだよ...」

 アーチャー「...大河」

 アーチャー「分かった。衛宮士郎は必ず私が君の傍にいるように

       取り計らおう。約束する」

 アーチャー「ただ、君のあの一言をもう少し早く聞きたかった...」

  先程の大河の一言を、凛と共に倫敦の時計塔に留学する前の自分が

 聞けば、少なくとも英雄になろうという夢を捨てる可能性は少なからず

 あったかもしれない。

  だが、それは既に過ぎた夢の軌跡...。

 己の生はとうに閉じ、今此処に在るのは一人の男の夢の残骸の

 再現に過ぎないのだから...

 大河「いい年した男が泣きそうな顔をしないの」

 大河「女泣かせの男が、女に泣かされてどうするの!」

 大河の一言に慌てて顔を拭うと、いつの間にか涙が溢れていた。

  自分の心は軟ではないと思っていたアーチャーにとって

 それは少し衝撃的だった。

 アーチャー「血潮は鉄で、心は硝子...全く上手いこと当てはまるな」

  自虐的な笑みを一瞬だけ浮かべたアーチャー。

 決意も新たに彼は目の前にいる自分を好いている女性を抱くことにした。

  衛宮士郎に恋焦がれる想いを抱きつつも、その想いに答えることも、

 叶えることなく彼女より先に逝った自分への罰として。

  大河を抱きしめた両腕を離し、その体を布団の上に優しく横たえる。

 そっと足首をもって、腿を開くとそこにはうっすらとした黒い茂みが

 広がっていた。

  その茂みからこんこんと清水の様に流れでる愛液が、未だに

 脱がしていないライトイエローのショーツをしとどに濡らしている。

 大河「来て...士郎」

 大河「士郎が望むなら、士郎にとって都合のいい女になるから...」

 大河「精一杯、可愛くなるからぁ...」

  夢見心地な表情に一抹の捨てられる恐怖がにじみ出た大河の表情。

 その表情が、遂にアーチャーの理性を焼き切った。
74 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 22:54 ID:QJTv0czU

 アーチャー「―――ついて来れるか?」

  睦みあう男女の営みにおいて最も重要な局面で射手の名の如く、

 彼、エミヤシロウはただ一言で藤村大河の心を射止めた。

 大河「はい...」

  夢見る乙女が愛する男の手によって遂に大人の女へと変わる事が

 できるその瞬間。

  世界中の女性が待ち焦がれて止まないその瞬間に、藤村大河は

 直面していた。

  愛する男の心からの愛を自分の身体の中に受け入れることに全くの

 異存も不安も無かった。

  そして彼は大河の足の間に体を入れる。既にがちがちに猛り狂う

 勃起した20㎝を軽く超える逸物をくぱぁ、と割り開いた大河の股間の

 中央へと宛てがい、一気に貫いた。

 大河「あっ、あっあああぁぁぁっ……!」

  大河がまず感じたのが驚き、次に感じたのは痛みだった。

 大河「大好き...大好きだよ。しろぉ~~~」

  自分を見つめる大河のつぶらな瞳から大粒の涙がぽろぽろと真珠の

 様に零れ落ちてきた。

  ズブッ……ズブズブズブゥ!

  自分の肉壺から淫らな水音が体の隅々にまで響き渡った瞬間、

 大河はなすすべもなく痙攣して仰け反った。

  巨大な肉槍に貫かれ、それだけですぐに絶頂まで押し上げられる。

 が、やはりイクことは叶わない。

 大河「しろぉの、イジワル~」

 アーチャー「藤ねぇ、ちょっと激しく動くよ」

 大河「ふぇ?」

  可愛らしく、まるで小鳥が首をかしげるような仕草をした大河の

 不意を突き、士郎は膣内に挿入した逸物を大河の膣を拡張しながら

 ゆるやかなグラインドを交えたピストン運動を開始した。

  今までの人生で味わった中で最大級の快楽を味わわされた大河は

 甘い声を必死に噛み殺して身悶える。
75 名前:名無し 投稿日:2014/02/18 23:31 ID:QJTv0czU
 
 張に張った自分の逸物のカリ首が大河の膣壁に擦れまくる。

 大河「気持ちいいっ!気持ちいい!」

 士郎は大河の腰に手を当て、一心不乱にその腰を振りまくった。

 大河「ああんっ!……は、あんっ! あぁっ! ふあっ!」

 一突き、また一突きと奥の方に突き込む度、大河は甘い声を上げた。

 普段ニコニコいている女教師の余裕の無さそうな表情が、責める側の

 己を凄く興奮させてくれる。

  大河のDカップを揉みながら、指の間に乳首を挟み込み、こねくり

 回しながら腰を打ち付ける。かき回されて溢れ出た愛液が布団を汚す。

 アーチャー「どうかね?乳首とアソコ、どっちが気持ちいいかね?」

 大河「そ、そんなこと言われたって……どっちも気持ちよすぎてっ……」 

  異常な程鋭敏になった急所は少しでも責められれば簡単にイくように
 
 なってしまっていた。乳首を摘み上げられただけで、クリトリスを

 弾かれただけで、そして一突きされるたびにイき狂おうとする。

  目をつぶれば瞼の裏に星が瞬き、快感のビックバンが次々と身体に

 起こり始める。自分の絶頂が近いことを知らせるシグナルだ。

 アーチャー「藤ねぇはいやらしいなぁ」

 アーチャー「そんないやらしい藤ねえにはお仕置きが必要だな!」

 大河「ま、待って」

 大河「い、今そんなに激しくされたらッ!?ひぐぅっ!!」

 アーチャー「さあ、射精(だ)してやるッ!」

  ピストン運動が加速するとともにシロウの息は荒く乱れ、その褐色の

 耳朶までが興奮のあまり紅潮していた。

  最後の瞬間を迎えるその時、シロウは最後の一突きに力を込めた。

  大河の最奥の子宮口に亀頭をぶつけた瞬間、彼等は達していた。

 その瞬間、二人の蓄積された快感が体の中に炸裂した。シロウは溜まりに

 溜まっていたものが一気に溢れ出て爆発し、その視界が真っ白に染め、

 意識が歪み、大河は背骨が軋みを上げるほど仰け反り、汗と涙と涎を

 虚空に散らした。

  膣の中、子宮口にがっぷりと咥えこまれ、暴れ馬の如く跳ね回る逸物と、

 その手綱を握るようにキュッ、キュッと痙攣する大河の膣。

  一緒に絶頂を迎えることができた。

 それがどうしようもなく嬉しい。
 
  彼等がともに感じている感情の正体は歓喜そのものだった。

  シロウと大河は強く抱き合い、より一層深く絶頂を味わおうと腰を

 振りあった。
 
  絶頂感が過ぎ去るまで彼等は貪欲に味わい合った。

 腰を使い、舌を絡め続ける。いつまでも、いつまでも...。 

 「ちゅっちゅうぅ……はぁ、はぁ、ちゅ、ちゅく……ああ、しろぉ~

  こんなにも愛してくれて、私、幸せぇぇ……ちゅぅ……」

 快楽の余韻を存分に味わいながら、次々に押し寄せる激しすぎる

 絶え間なく、連続したエクスタシーの奔流に大河の意識は押し流され、

 その意識は閉ざされてしまったのだった。

 アーチャー「」

  堕ち行く意識の中、最後に大河が感じたのは、熱い心臓の鼓動を刻む

 愛おしい男の胸に抱かれたという感触だった。
76 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 00:29 ID:zDuM8M0w
 ~次の日の朝~

 士郎「藤ねぇ~、朝だぞ~」

 大河「ZZZ...」

 士郎「全く、この駄目タイガーめ」

 士郎「今日は雷画じいちゃんが来る日だろ?」

 大河「しろぉ~、大好き~」

 士郎「はいはい。早く起きてくれ」

 大河「むにゃ?士郎」

 士郎「そうだよ、他に誰がいるのさ...」

 大河「ふぁああああ。おはよ。そしてお休み」

 士郎「起きなさい」

 ~回想その1 終了~

 志貴「つまり、君本人でもあるアチャ男さんが士郎君の姉貴分である

    大河さんを半ば丸め込んでくんずほぐれつしたと?」

 士郎「そうです。他の男だったらまだよかったんです。幾らでも

    俺の中では納得できるように思考を切り替えることが出来る」

 士郎「けど、自分自身のやった事については取り返しがつかないんですよ」

 志貴「あくまでも、『自分自身』だからね」

 アルク「それで布団をめくったら?」

 士郎「イカ臭かったんです。ご丁寧に藤ねえのパジャマに押し

    潰された生スルメイカがカモフラージュの為にありました」

 志貴・アルク「....」

 士郎「俺も馬鹿ですよね....」

 士郎「藤ねぇに『イカ刺で食べようとしたイカなのよって』言われて

    納得してしまったんです」

 アルク「士郎君、本当に精神科に行くことをお勧めするわ」

 アルク「正義の味方より貴方のそのまともじゃない神経、矯正すべきよ」

 志貴「ゴメン、なんだか不憫すぎて泣けてきたよ...藤村さんが」
 
 士郎「ここから話すことは俺が色々な人から聞いたことを自分なりに

    まとめ、推論も交えた話になります」

 志貴「う、うん」

 志貴(猫二十七キャット軍団とタメ張るわコイツwwwww)

 士郎「それじゃあ、続きを話しますね」
 
77 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 00:46 ID:zDuM8M0w
 ~回想その2~

 慎二「全くなんだって卒業前の貴重な時間を、僕がお前と過ごさなきゃ

    ならない訳なんだよ?!」

 綾子「まぁ、そういうなよ信二。お前だって桜の事が心配なんだろ?」

 慎二「ば、バッカじゃないの!どうして僕がアイツの事を心配しなきゃ

    ならないんだよ」

 綾子「べっつにー?それに弓道部の後輩たちに指導をつけるのも前部長、

    前副部長の役目だ。私達が卒業を控えているなら尚更だ」

 慎二「それより美綴、お前の弟が次の部長最有力候補なんだって?」

 綾子「そうみたいだね。衛宮も桜もアイツの事を推してたし、何より

    アイツが県大会で準優勝、インハイまで言った実績もある」

 綾子「求心力はてんで駄目だが、桜が副部長になってくれればそれも

    万事解決だ」

 慎二「...お前の弟、桜の事好きだって知ってんのかよ?」

 慎二「悪いことは言わない。弟が可愛けりゃ桜の傍に近寄らせるな」
78 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 01:04 ID:zDuM8M0w

 綾子「うん?衛宮の奴は遠坂と付き合ってるんじゃないのか?」

 慎二「付き合ってるんじゃない。ただ振り回されているだけだ」

 慎二「遠坂も桜も、アイツら高嶺の花すぎるんだよ」

 綾子「...」

 慎二「知ってたか?衛宮の進路は遠坂と一緒に留学だ」

 綾子「留学だって?!」

 慎二「宜しくいちゃつくのはいいんだけどさ」

 慎二「アイツ、いまだに取り巻きの女に告白してないんだよ」

 綾子「慎二、お前なんか悪いものでも食ったのか?」

 慎二「それに、知ってるか?藤村先生の噂」

 綾子「衛宮とその、いかがわしい仲になっているって奴か?」

 慎二「まぁ、それについては僕の知りうる限りでは誰も、少なくとも

    弓道部の連中は否定してるよ」

 慎二「ただ、衛宮も遠坂達ほどじゃないけど結構女子に人気がある」

 慎二「世界史のヒステリア、アイツのお気に入りの女子生徒が

    衛宮に告るアドバイスを貰ったらしい」
 
 綾子「実典から聞いたぞ。確かアイツの学年で失恋してひきこもりに

    なった女子が一人いるって」

 綾子「まさか...藤村先生が」

 慎二「衛宮と一番長くいたのはあの人だからな」

 慎二「姉弟同然に育ってきたんだ。アイツにかける情は人一倍さ」

 慎二「衛宮とかなり親密な付き合いしてる遠坂達だって、遠慮して

    藤村先生にそんなこといわないのに」

 慎二「この僕でさえ、あまりにも可哀相すぎて同情を禁じ得ないよ」

 綾子「慎二...」

 綾子「藤村先生を最近見ないと思えば、そういう理由があったのか」

 慎二「僕が確かな情報筋から手に入れた情報だと、先生は今、謹慎中で

    四月には冬木から離れた遠い学校に転勤させられるらしい」

 綾子「そんなこと誰から聞いたんだ?!」

 慎二「それを僕がホイホイいうわけないだろ?」

 慎二「だから、噂が本当なら藤村先生は教育委員会の決定が下された

    日から衛宮の家にいる筈だ」

 綾子「でも、」

 慎二「分かってる。そんなこと衛宮には口が裂けても言えないからな」

 慎二「全く困ったもんだよ。衛宮にも」

 慎二「そろそろ気がついてもいいんだ」

 慎二「自分の半端さが人に与える迷惑ってのに」

 綾子「...桜の副部長の件、考え直すことにするよ」

 綾子「今の話を聞いて、不安になってきた」

 慎二「贔屓目に見ても桜はいいやつなんだけどな。裏表は激しいけど」

 慎二「でも、アイツと遠坂には衛宮しかいないんだよ」

 慎二「全く、ままならないよなぁ...」
79 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 20:40 ID:zDuM8M0w

 綾子「桜はともかく、衛宮と遠坂はこのことを知ってるのか?」

 慎二「んなわけあるか!知ってたとしても言うわけないだろ」

 慎二「そんなことして見ろ?藤村先生が今度こそ再起不能になるぞ」

 綾子「だけど...私は、看過できないな」ガッコウトウチャク

 慎二「チッ、余計なこと言わなきゃよかったぜ。あーあ、当てに

    ならないな、美綴は」キュウドウブブシツ

 綾子「お前の言う通りだ。だが、それでも...」

 綾子「いや、いい。だけど」

 慎二「時間の問題だよ。たぶん桜があの中で一番早く気が付く」

 慎二「美綴、とにかく僕は言ったからな」コウイシツハイル

 慎二「衛宮と遠坂が卒業するまで僕の言ったこと、絶対に言うなよ」

 綾子「分かった...」コウイシツハイル

 綾子「藤村先生がいなくなる。か...」

 ??「先輩?今なんて、言ったんですか?」

 綾子「?!」
80 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 20:47 ID:3n3c3dPb
待ってた、支援
81 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 21:04 ID:zDuM8M0w

 ~回想その2を終えて~

 志貴「成る程、君の友人である慎二君がどこからかハッキング

    して藤村先生の事を嗅ぎ付けたってわけなんだね?」

 士郎「はい。慎二の性格は結構気難しい方なんですよ。でも正当な、

    筋の通った末の結果は受け入れ、決まり事から逸脱した行為は

    嫌っているんです。あくまでも彼自身の主観の範囲ですが」

 志貴「それで、たまたま部活に顔を出した美綴さんの呟きが運悪く

    君を好いている桜ちゃんの耳に入ってしまったんだね?」

 士郎「そうです」

 士郎「交通事故に遭う一ヶ月前まで藤ねぇは毎日判を押したように

    朝の七時に家を出て、夜の八時くらいに家に帰ってきました」

 士郎「でも、その時藤ねぇは俺が原因で謹慎処分を受け、学校に

    行くことが出来ずに、隣町まで行って時間をずっと潰していた

    そうです」

 志貴「そっか、俺とは真逆のケースなんだね...」

 秋葉「お待たせしました。衛宮さん」

 秋葉「ミネストローネとサンドウィッチです」

 秋葉「お飲み物の方は兄さんがコーラ、衛宮さんはオレンジ

    ジュースでよろしいですか?」

 士郎「大丈夫ですよ。うわぁ、美味しそうだなぁ」

 秋葉「ふふっ、ありがとうございます」

 アルク「ねーぇ、私の飲み物は~?」

 秋葉「アイス・カフェラテで大丈夫でしたか?」オズオズ

 アルク「うんっ」パアアッ

 秋葉「それでは兄さん、食べ終わった頃にまた呼んで下さいね」

 秋葉「私と琥珀は子供たちと遊んでいますから」ニッコリ

 志貴「ありがとう」

 秋葉「それでは、失礼します」ヘヤカラタイシュツ

 志貴「士郎君、君の話を続けて聞きたいのはやまやまなんだけど」

 志貴「君も俺も話すだけ話し続けてお腹が減ってるしさ」

 志貴「とりあえず、秋葉の料理を食べようか」

 士郎「そうですね。それではお言葉に甘えて」イタダキマス

 志貴「あーっと、そのサンドイッチとミネストローネ」

 志貴「食べるときは気を付けた方がいい」

 志貴「マスタードと唐辛子が凄く効いているから」

 士郎「ひ~~~~っ!辛い、辛すぎる~~~~ッ!」ジタバタ
82 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 21:35 ID:zDuM8M0w
 ~回想その3 イリヤの場合~

 イリヤ「ゴホッ、ゴボッ、ゴボゴボッ、ガハッ」

 イリヤ「はぁ、ハァッ、いやぁ、いやだよぉ...死にたくないッ」

 イリヤ「まだッ、士郎にも好きって言ってないの――?!」

 その言葉が出る寸前に、イリヤスフィールの口からは夥しい程の

 血液がその小さな喉を通り、万感の想いを秘めた一言にとって

 代わった。

 イリヤ「グフッ....ウォオオエエエエ」

  ビチャビチャと床を濡らす大量の血液。吐き出し続けていると、

 いつの間にかその量と勢いはますます多くなる。

 セラ「お嬢様ぁぁああああッ!おじょおおおざまあああああ」

 セラ「リズウウウウウウ!速く救急車、救急車を呼んでエエエエッ!」

 リズ「わ、分かったッ!バーサーカー、教会、教会に行って!」

 バーサーカー「◆◆◆◆◆◆◆◆--!!」

  セラとリーズリット。

  彼女達は生まれてこの方、喜怒哀楽という言葉がその根本から
 
 欠如していた。 

  それは彼女たちが人の理から逸脱したホムンクルスという存在

 だからというのが一番の原因だろう。

  しかし、ある存在がどのように人の形に似せられても、

  あるいはそれが人の範疇を軽々と逸脱している存在であっても、

  たった一つ譲れないものがあるのだ。

  そう、それは... 

  
83 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 21:52 ID:zDuM8M0w

 ~冬木教会~

 バーサーカー「◆◆◆◆◆◆◆◆--!!」

  重厚な木製の扉を壊さない程度に勢いよくあけ、バーサーカーは

 彼に課せられた目的を果たすために二人の人物を探していた。

  そう、ランサーとギルガメッシュだ。

 ケルトの大英雄と人類最古の英雄王。最近はイロモノ化が激しく進み、

 最早聖杯戦争時の凄みは薄れかかっていても、彼等の持つ叡智は

 彼の主を突然襲った病を救う最強の切り札なのだ。

 ランサー「うわあああああッ!ば、バーサーカーじゃねえか!」

 ランサー「な、何しにここに来たんだよおおおおお!」

  半ば半狂乱になりつつも、ランサーは何とかどよめく自分の心を

 押さえつけバーサーカーの出方を伺った。

  カーニバルファンタズムにて彼の大英雄が己を用い、新たな必殺技、

 『ブーメランサー』を作り出し、ランサーの心に深い傷を負わせたのは

 記憶に新しい出来事である。

 ランサー「お前、その手についてる血はなんだよ?」

 バーサーカー「◆◆◆◆◆◆◆◆--!!」カミヲテワタス

 ランサー「....おいおいおい、こりゃマジかよ」

  バーサーカーから手渡された紙にこびりついている血、そして

 手紙に書かれた内容を瞬時に理解したランサーの顔は蒼褪めた。

 ランサー「待ってろ、すぐ行くからな」

 バーサーカー「◆◆◆◆◆◆◆◆--!!」

 ランサー「ギルガメッシュか?やめとけ!アイツは今大人モードだ」

 ランサー「アイツがガキになった時にでもセイバーと一緒に俺が

      話をつけてやる」

 ランサー「よし、準備できたぜ。行くぞ、バーサーカー」

 バーサーカー「◆◆◆◆◆◆◆◆--!!」

  青い槍兵と狂える大英雄は瀕死のイリヤスフィールが生死の

 境を迷っているアインツベルン城を目指し、駆けていった。

 
  
84 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 22:59 ID:zDuM8M0w

 ランサー「...これは、もう死なせてやった方がいいんじゃねぇのか」

  ランサーがイリヤスフィールの寝室に駆け込んだとき、イリヤは
 
 血を吐いてはいなかったものの激しく体を痙攣させ、ガクガクとその

 小さな体を振動させていた。

 セラ「おねがいでずううううう!!!!おじょうさまをおおおおお」

 セラ「たすけでくだざいいいいいい!!!!」

  ランサーはこのセラと名乗るホムンクルスの事を口煩く慇懃無礼な

 メイドという印象でしか捉えていなかった。

  事実、今そこで瀕死状態のイリヤの義弟である衛宮士郎に対する

 そのあまりにも露骨すぎる嫌悪感を現す彼女の態度に眉をしかめた

 ことが何度もある。

  しかし、だからこそ彼女がイリヤスフィールにかける愛情の

 深さがどれだけのものなのかを彼は深く深く理解していた。

  セラの形振り構わぬ命がけの嘆願を聞く傍ら、今まで感情を

 移すことのなかった、その無表情な瞳から大粒の涙を溢れさせて

 ランサーの服を引っ張るリーズリット。

 リズ「イリヤ、まだ死にたくないって、言ってる」

  その言葉を聞いたとき、ランサーは初めてイリヤスフィールが

 衛宮士郎よりも年上だということに気が付いた。

 リズ「イリヤは大人。でもまだ女の子」

 ランサー「...」

  かつて自分が殺めた息子の末期の表情がイリヤスフィールの

 苦しげな表情に被さる。

  知らなかったとはいえ、己が手で息子を殺めた罪は永劫

 消えることなく、またイレギュラーとはいえ再び生を受けた

 この聖杯戦争の戦いの中でもその罪を片時も忘れたことはなかった。

 リズ「だから、お願い、助けてあげて」
 
 リズ「光の御子・クーフーリン」

  生まれて初めて感情をその瞳に宿したホムンクルス、リズ。

 その最後の一言を聞いた瞬間、彼は既に腹を括っていた。

  目の前の死に瀕している少女を絶対に死なせない、と

 ランサー「...輸血はしたのか」

  沈黙を破り、開口一番ランサーが言葉を口にした

 セラ「10ℓほどお嬢様と同じ血液を...」

  そこかしこに飛び散った血液の量と、散乱する輸血パックの数。

 それを一見してランサーはセラが嘘を付いていることを看破した。  

 ランサー「嘘をつくんじゃねぇッ!どれだけ輸血したんだ!!」

  一喝。

  雷鳴の如く轟いたその怒声はあのバーサーカーですら竦み上がらせた。

 セラ「...ア、アインツベルン城にある、半分のお嬢様と同じ

    血液型の血液を輸血して、い、今の状態です」

  自分が知りうる限り、これは最悪の状況に分類される。

  だが、それでこそ己が心が燃え上がる、躍動するのだ。

  目の前で今にも消えかけそうな命の灯火を最後まで絶対に護りきれ、と。

 ランサー「お前ら、こっから先は俺達に任せろ」

  あくまで男は背中で語るのみ、ここから先は余計な言葉は不要。

 ランサー「バーサーカー、お前、イリヤの為に死ねるか?」

  己と同じ宿業を背負った、誰よりも自分に近しい英雄と交わす言葉。

 バーサーカー「◆◆◆◆◆◆◆◆--!!」

  狂戦士は狂っている。だから言葉を話すことも意思の疎通もできない。

  だから、過去も未来も現在も忘れないのだ。

  たとえこの先、何があってもどんな結末が訪れようと、忘れない。

  正気を失って何も見えず、聞こえなくっても、それだけは忘れない。

         
  ヘラクレス『君を護ろう、この身が果てる最後まで』


  ただ一つの胸に抱いた、彼女への想いだけは...


 ランサー「そうだよな。

      英雄(おとこ)ってのは最後までそうじゃなきゃいけねぇ。

      テメェの人生に嘘を付かねえためにも、

      奪ってきた、失ってきた命を忘れないためにも」
 

 ランサー「だから、絶対に」

 バーサーカー『俺は、もう二度と大切な者を失ったりはしない!』


 
  想いの力が呼び起こした奇跡は、ほんの刹那、遥か昔に失った

 己の家族の思い出と正気を呼び覚ました。

  つかの間の奇跡はたった十秒。

 だが、この十秒がイリヤスフィールを死の淵から救う。

 
 ランサー「行くぜ、バーサーカー」
 
 ランサー「魔力の貯蔵は充分か?」

 バーサーカー『大丈夫だ、問題ない!』

 力強い一言と共にバーサーカーの身体から膨大な魔力が迸った。

85 名前:名無し 投稿日:2014/02/19 23:53 ID:zDuM8M0w
 
 セラ「奥様...どうか、どうかお嬢様をお助け下さい...」

  ランサーとバーサーカーが死に瀕したイリヤの命を救う為、

 部屋に籠ってから早八時間が経過した。

  時刻は午前五時。

  その間、セラとリーズリットは一睡もせずにイリヤの無事を

 ただひたすら祈り続けていた。

 リズ「イリヤ、イリヤ...まだ、まだ生きて」

 リズ「シロウ、イリヤが死んだらすごく悲しむ」

 セラ「リーズリット..今、あれから何時間経ちましたか?」

 リズ「八時間」

 セラ「そうですか...もう、貴女の稼働時間はとっくに過ぎています」

 セラ「お休みなさい...お嬢様は助かりますから」

 セラ「でなければ、私もお嬢様の後を追って死にます」

 リズ「やだ。眠らない、イリヤもセラも絶対死なない」

 リズ「家族はいつか別れるものだけど、今はまだその時じゃない」


 この時、リーズリットにはある予感があった。

 ランサーの命がけの魔術ももしかしたら焼け石に水でしかないのか?と

  イリヤスフィールと深く同調している自分だからこそわかる

 イリヤの身体の異変、その根本的な原因に...。

 ランサー「終わったぜ...」

  憔悴しきった表情でランサーがイリヤの寝室から出てきた。

 青いタイツにイリヤスフィールの血液と吐瀉物をこびり付かせながら。

  一つの命を救った。だが彼はそれでも憂鬱そうな表情を崩さなかった。

 セラ「お嬢様ッ、お嬢様は?ご無事なのですかッ!」

 ランサー「...無事だぜ。ああ、確かに俺のルーンでイリヤの命は

      何とか軌道に乗った」

  確かにこの一言は嘘偽りのない全てを貫く真実だ。

 だが、彼のルーンは運命を貫くと同時に、その螺旋の中心へと

 イリヤスフィールを追いやってしまった。

  それが分かるから、彼は必死に込み上げる苦い思いを殺す。 

 セラ「良かった...本当に良かった...ッ」

 リズ「ぐすっ、ぐすんっ」

  歓喜のあまり涙ぐむセラとリズ。

  本来ならば、手放しで喜びたい所だがそうは言ってられない程の

 最悪の事態がイリヤの体に起こっていた。

 ランサー「...礼を、言われるようなことを俺は何一つしちゃいない」

 リズ「バーサーカー...?どこ、バーサーカー?」

 ランサー「...」

 三者三様の沈黙が悪夢を引き連れ、彼等の心をを支配する...。

 セラ「まさか...」

 ランサー「バーサーカーは」

  まるで心の中心にぽっかりと穴が開いたような、埋めようのない

 喪失に心を支配されながら、一つの命を救う為、結果として

 もう一人の命を喪ったことをランサーは二人に告げた。


 ランサー「バーサーカーは、イリヤの中に取り込まれた」
86 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 00:25 ID:0mFPKN7u

 セラ「そ、そんな馬鹿な?」

 セラ「だって、だってバーサーカーは最強のサーヴァント」

 セラ「誰にも絶対負けない無敵の...」

 セラ「私達の、だいじな....かぞく」

  最後の一言を言い終えると同時に、セラは余りのショックで

 気を失ってしまった。

 リズ「ランサー、イリヤにどういう施術をしたのか書いて」

 ランサー「分かった..」

 リズ「ありがと、泣いちゃう前にいっとくね」

 ランサー「すまねぇな。バーサーカーを殺しちまってよ」

  鼻を啜り、顔をグシャグシャにしたランサーは、その感情を

 抑えることが出来なくなっていた。

  そして、自分の悲しみを押し留めていた最後の防波堤が遂に決壊した。

  光の御子は偉大な英雄の死を心の底から悼み、涙を流した。

  あえて、懺悔はしなかった。

  それが、全霊をかけてイリヤを救った大英雄ヘラクレスの崇高な

  行為を地に堕としめると分かっているからこそ、彼はただ涙を流す。

 リズ「ううん、バーサーカーもきっと本望」

 リズ「ずっと一緒にイリヤの命となって生きられるんだもん」

  結局、ランサーがイリヤにしてくれたこと、バーサーカーに対して

 やったことは、死の峠を越え、生き残ったイリヤが自分でその責任を

 持つしかないだろう。

  これから先、イリヤががどうなるかはわからないけど、

 彼女が最も納得できる結末を得るために自分はこれからの日々を

 生きることになるだろう。

  後どれだけイリヤに時間が残されているのか分からない中で...。

 ランサー「少し、胸を貸してくれねぇか?」

 ランサー「どうしても、やりきれねぇんだ...」

  膝をがっくりと床に着け、間接的にとはいえ、己が手で殺めてしまった

 かけがえのないを英雄を悼む蒼い槍兵の沈痛な表情がリズの心を揺さぶる。

 リズ「おまかせあれ。お好きなだけどうぞ」

  悲しみを押し殺しつつ、リーズリットはランサーに胸を貸し、

 その震える背中をいつまでも抱きしめていた...。
87 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 00:27 ID:wrG0SgmJ
支援
88 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 00:36 ID:9kQW1TtC
支援
89 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 01:11 ID:wrG0SgmJ
ヘラクレスを狂戦士としてじゃなくてちゃんとした大英雄として扱ってる。

投げ出さないで頑張れ
90 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 01:44 ID:0mFPKN7u
 イリヤ「う、うーん」

 イリヤ「なんかすっごく悪い夢を見てた気がするんだけどなぁ」

 イリヤ「気のせいだったかな?」

  ランサーの持つ十八の原初のルーン、バーサーカーの全ての魔力と

 引き換えに、イリヤスフィールは暫しの間、延命に成功した。

 イリヤ「それにしても、セラとリズはどこにいるんだろう?」

  まだ、イリヤスフィールは自分を助けるためにバーサーカーが

 死んだという事実を知らない。

 イリヤ「セラー、リズー、どこにいるの~?」

  先程とは打って変ったようにしっかりとした足取りでイリヤは

 勝手知ったるアインツベルン城を駆け回っていた。

 イリヤ「あれ...なんで、ランサーがいるんだろう?」

  玄関ホールへと続く階段にたどり着いた時、イリヤはランサーが

 呆然と立ち尽くしているのを見つけた。

 イリヤ「何か用でもあったのかな...?」

 イリヤ「お~い、ランサーーーー」

  びくり、と大きく体を震わせ恐る恐るランサーは自分のいる方角に

 目を向けた。

 ランサー「よう!嬢ちゃん」

 ランサー「体の調子はどうだ?」

 イリヤ「なぁに?今日は随分と変なことを聞くのね?」 

  なんだお前か、という表情でいつものようにざっくばらんに語り

 かけてくるランサーを見て、イリヤの感じた違和感は雲散霧消した。

 ランサー「減らず口がそこまで叩けりゃ、元気溌剌って所だな」

 イリヤ「へへーんだ。私は健康優良児なのだ~」エッヘン

 ランサー「お前が言うと本当に説得力があるな、その台詞」

 イリヤ「む~っ、シロウもリンもタイガも、皆私が小さいからって

     いっつも馬鹿にするんだもん」ムスーッ

 イリヤ「開き直らなきゃやってらんないわよ」タメイキ

 ランサー「ははっ、お付のメイドのねーちゃん達のおっぱいは

      でけぇのにな。全く、不平等なもんだよな」ニヤニヤ

 イリヤ「むきーっ!余計なお世話よッ!」プンスカ

 イリヤ「バーサーk...「それより、」



 ランサー「それより、メイドのねーちゃん達がお前を探してたぜ?」




 イリヤ「う、うん...」

 ランサー「で、でも...バーサー「早く」

 ランサー「早く、行ってやれよ。玄関すぐ出たところに待ってるぜ」

 ランサー「大丈夫、大丈夫だからよ...」

 ランサー「これ以上、待たせてやるなよ...ねーちゃん達を」

 ランサー「バーサーカーも待ってるからよ...」

  にっこりと笑うランサーの表情にどことなく影が差し始めた。

 だが、イリヤとランサーの距離は10メートル以上離れている。

  そのお蔭でランサーの表情の変化はイリヤには見えていなかった。

 イリヤ「えっ、本当?」

  なぜだか腑に落ちない予感が急にしてきたイリヤは空元気を

 振り絞り、ランサーに言葉を返した。 

 イリヤ「な~んだ、いちいち勿体ぶらないでよね」

 イリヤ「リズはともかくとして、セラまでもが私が呼んだら

     すぐに来ないなんて由々しき事態ね...」

 イリヤ「これは外にいる二人を捕まえてとっちめなきゃ!」

  そういうなり、イリヤは会談を猛然と降り始めた。

 ダンダンと一つずつ階段を下り、玄関に近づいて行くにつれ、

 ランサーの表情が鮮明に、くっきりと自分の眼に飛び込んでくる。

 ランサー「チクショウ、止まれ、止まりやがれえっ!」

 ランサー「あと少しなんだ、耐えろよ!耐えちまえよッ!」

  噛み締める強さだけで口内の全ての歯を噛み砕きそうな表情を

 浮かべたランサーは、歯を食いしばり、必死に漏れ出る嗚咽を

 無理やり飲み込もうとしていた。

 イリヤ「...」

  玄関の扉のすぐ近くにいるランサーを見ずに、そのノブを

 イリヤは握りしめる。

 イリヤ「ランサー」

 イリヤ「バーサーカーがランサーの事を宜しくねって言ってたんだ」

  二人は顔を見合わせない。

  何故なら浮かべている表情はきっと...だからだ。

 イリヤ「だから、ありがとう。バーサーカー」

 イリヤ「私、絶対に貴方の事を忘れないから...」

 イリヤ「貴方の命の分まで必死に生きていくから....」

  壁に拳を当て、黙って背中でイリヤを送り出すランサー。

  誰にも見送られることなく、外へと走り出すイリヤスフィール。

  やがて、吹き付ける大吹雪が重厚な扉を思い切り閉めた。

 ランサー「ハハハッ、何がよろしくね、だよ」

  ずるずると力なく壁に背中を押しつけ、大理石の床にへたり込んだ

 ランサーはそのまま泣き崩れた。

 ランサー「ばか、野郎ッ」

 ランサー「全部、バレてんじゃねぇかよッ」

 ランサー「ウオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!」

  アインツベルン城に、男の友を失った男の涙の哀歌が響き渡る。

 
91 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 02:16 ID:0mFPKN7u
 
 イリヤ「うわぁ~、綺麗なお星さまが一杯だ~」

 もう既に変えようのない結末が、絶え間なくイリヤの心を苛む。

 セラ「お嬢様」

 リズ「イリヤ」

  おそらく自分がここに来るまでずっと泣き続けていたのだろう。

 セラとリズの顔にはくっきりと涙の跡が残っていた。 

 セラ「そのご様子だと、お嬢様は全てを...」

 イリヤ「うん。バーサーカーが私を救ってくれたんだよね」

  そうなのだ。

  もう、自分の寿命は残りあと僅かだ。

  バーサーカーは自分が先程倒れた時に、自分の全てを捧げる

 ことをきっと覚悟していたんだろう。

  自身の半身ともいえるバーサーカーの喪失に対し、不思議と

 イリヤの心は穏やかに落ち着いていた。

  今まで、そして今日、自分が彼に最後の別れを告げるその時を

 迎えるまで、バーサーカーは常に自分の傍らに寄り添っている。

  あの巨岩の如き体躯に抱えられて冬木を駆けた日々がまるで

 走馬灯のように次々とフラッシュバックする。

  だけど、今脳裏をよぎった光景と走馬灯は完全に違うのだ。

  何故かって?

 イリヤ「だって、」

 イリヤ「だって、私が生きてる限りバーサーカーは生きてるから」

 イリヤ「バーサーカーは夢幻の刹那じゃない」 

 イリヤ「ほら、感じるでしょう?セラ、リズ?」

 イリヤ「バーサーカーの魔力が今も私を包んでいるのを...」

  はらはらと涙を流しながら、イリヤはセラとリズに語りかける。

  セラは悲しみの涙を流すことを止め、リズは僅かに微笑みを

 浮かべながらイリヤを抱きしめた。

 リズ「そうだよ。バーサーカーの心はいつも皆と一緒」

 リズ「イリヤ、私、セラ、シロウ、そしてランサー」

 リズ「バーサーカー、きっと最後の時まで幸せだったと思う」 

 リズ「ぐすん、寂しいよ、戻ってきてよ...バーサーカー」

  大粒の涙をボロボロとこぼしながらリズは生まれて初めて

 声をあげて泣いた。

 セラ「リーズリット...」

 セラ「お嬢様、バーサーカーが最後にランサーに遺言を残しました」

 イリヤ「なぁに?遺書でも残したの?」

 セラ「いいえ。ですが、遺書なんかよりもずっと切な(刹那)くて」

 セラ「お嬢様と常に共にあることが出来る、そんな遺言です」

 イリヤ「そっか、バーサーカーの事だもん」

 イリヤ「きっと期待を裏切らないすっごいのがあるんでしょう?」

 セラ「はい。お嬢様の事を常に、そう私達よりも思い続けた素晴らしい

    男の最後の雄姿です。絶対にその期待を裏切る事はないでしょう」

 イリヤ「そうね。じゃあ二人ともその場所へ案内なさい」

 イリヤ「バーサーカーの最後。この私が見極めてあげる」

  セラが背中を差出し、イリヤはその背にごく普通におぶさった。

  イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを運ぶ役を今まで

 担っていた男はもういない。

  ならば、次は己の番だ。

  あの大英雄には及ばずながらも、せめて彼が守り切った一輪の

 可憐な華を散らさずに守り抜くこと。それこそが己の天命なのだ。

 セラ「それでは、お嬢様」

 セラ「出発進行です」

 イリヤ「うむ、よきにはからうのだ~」

  セラはイリヤとリズを連れて、深い深い冬木の森へと入っていった。

  バーサーカーとの別離の時は、すぐそこにまで迫っていた。
92 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 20:25 ID:0mFPKN7u

 リズ「セラ、イリヤとここで待ってて」

 リズ「私、ちょっと準備してくるから」

  完全に夜となった深い森の中を月明かりだけが照らしていた。

  セラとリズの二人は交互にイリヤを背負いながら、イリヤが目覚める

 前にランサーと共に作り上げた「あるもの」の起動の為にその場所へと

 向かった。

 セラ「お嬢様、お体の加減はどうですか?」

 イリヤ「うん、今のところ大丈夫。体の暴走は起きてないみたい」

 セラ「大変よろしゅうございます」

  天使のようなこの笑顔がつい先程までこの世から消えかかっていたと
 
 言う事実にセラは戦慄を覚えていた。

  しかし、奇跡は起きたのだ。

 セラ「もう、これで大丈夫ですね...」

  姉妹機であるリーズリット程、彼女の主であるイリヤスフィールとの

 つながりを持たないセラは、この時、最低でも自分がイリヤよりも

 早死にしない程度には生きることが絶対にできると思うようになっていた。

 リズ「セラ、イリヤ。準備できたよ」

 リズ「バーサーカーも待ってる」

  柔かい雪を踏みしめながら、リズはイリヤ達が待っている場所へ

 戻ってきた。

 イリヤ「えっ、本当に?!」

  リズの一言にその瞳を期待一色に染め、興奮を露わにしたイリヤは

 セラの背中から飛び降りて、リズが来た道を必死に駆けていった。

 セラ「お、お嬢様ッ!お待ちください」

 セラ「あまり激しく動かれるとお体に触りますから」

 イリヤ「セラー、リズー、早く来て~」

  嬉しそうなイリヤの声に背中を押されるようにして、セラは

 後、二言三言出かかった言葉を飲み込んだ。

 セラ「そうですね。私達も行きましょうか、リズ」

 リズ「オッケー。待ってよー、イリヤ~」

  顔を見合わせながら、二人の従者達はイリヤの駆けていった

 方向へと歩を進めた。

 
93 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 21:01 ID:0mFPKN7u

  暗い暗い森の中を星明りを頼りに駆けたイリヤ。

 しばらく走り続けた後、彼女は森の中の広い空間に出た。

 イリヤ「バーサーカーッ!バーサーカー!」

  彼女は最初、自分の目の前に映っている者の正体がつかめず、

 しばしの間、放心していた。

  だけど、

 ヘラクレス(イリヤスフィール、私だ。バーサーカーだ)

  厳しくも優しい、かつて自分をその逞しい腕で、襲い来る

 外敵から守ってくれた最強のサーヴァントの声が自分の心の中に

 聞こえてきたのだ。

  イリヤがたどり着いたその場所、そのすぐ目の前には...


  生前と寸分違わぬ姿を、

 ヘラクレス『済まぬ。本来ならもう少し温かみがあればよかったのだが』
 
 己を超える温もりに触れればすぐに溶けてしまう儚さを...

 イリヤ「こんな雪まみれになるまで、待っててくれたのね?」

 その鋼の肉体を雪に換え、守るべき少女の到来を心の底から待つ英雄が

 ヘラクレス『ああ。そうだとも』

 ぎこちない一歩を踏み出しながら、

 イリヤ「バーサーカー...。貴方って本当に最後まで...」

 涙にその美しさが残る顔を濡らしたイリヤスフィールを...

 ヘラクレス『私は最後まで君のサーヴァントだからな』

 力強くを抱きしめたのだった。
94 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 21:46 ID:0mFPKN7u

 バーサーカー『全く、君が泣き虫なのは相変わらずだな』

  雪像でありながらも、そのまなじりを柔和に、まるで手のかかる

 子供に向けるような、そんな優しいまなざしがイリヤを捉えた。

 イリヤ「うるさいうるさい、バカバカバカバカぁぁあ」

  もう二度と会えないと思っていたバーサーカーと、限られた

 時間ではあるものの、こうしてまたいつものように会話ができる。

  これ以上にないほどの嬉しさと照れを隠すために、イリヤは

 自分を抱きしめるバーサーカーの腹に思い切り拳を叩き付けた。

 イリヤ「バーサーカーのバーカ!ベーッ、だ!」

  ひとしきり悪態と拳を叩き付け終わったイリヤだったが、

 いざそれが終わってしまうと、途端にふさぎ込んでしまった。

 イリヤ「私を、私を置いて先に死んじゃうなんて....」

  勝気な表情を悲しみに曇らせたイリヤスフィール。

  そんな悲しげなイリヤをじっと見つめた大英雄は、遥か過去、

 かつて自分に課せられた神々からの十二の試練を思い出していた。

 ヘラクレス『親が子より先に逝くのは当然のことだ』

 ヘラクレス『どのような別離の形であれ、それは変わるべきことではない』

 ヘラクレス『君の母親も、父親もそれを分かった上で聖杯戦争を

       戦い抜いたはずだ』

  多数を救う為に少数を切り捨てることを絶対の信条として徹し続けた

 衛宮切嗣も、聖杯の完成と共に少しずつ自分が塗りつぶされる定めの

 アイリスフィール・フォン・アインツベルンも、本来は家族や友人を

 愛する優しい心を持った人間だった。

  世界中の誰よりも実の娘を愛おしく思っているからこそ、彼等は

 命を賭して聖杯戦争を戦い続けたのだ。

  たとえ、最後に娘に別れを告げれずに道半ばで果てようとも、その

 決意は絶対に揺らぐことはなかったのだ。

 イリヤ「バーサーカーの癖に生意気だぞ?」

 ヘラクレス『私にとって君は娘のようなものだ...』

 ヘラクレス『初めてこの世に現界した時からそれは変わっていない』

 イリヤ「そっか、あなたも立派なパパだもんね」

 ヘラクレス『私のことをそう言ってくれるのか?イリヤスフィール』

 イリヤ「あったり前だよ。なんていったってバーサーカーはずっと

     バーサーカーでヘラクレスなんだから」

 ヘラクレス『そうだな、全くもってその通りだ...』

 ヘラクレス『ありがとう、イリヤスフィール』

 イリヤ「えへへ」

  しばらく抱擁を交わした二人はおもむろに体を離し、互いに

 正面へと向き合った。

 イリヤ「ねぇ、バーサーカー?」
  
  自分をまっすぐに見つめるイリヤスフィールの表情は、かつて狂戦士で

 あったころにイリヤに向けられた様々な表情、その全てを内包し、想起

 させるような、そんな表情だった。

  優しい笑顔、怒った顔、困った顔、喜んだ顔、泣いた顔。

  そんな彼女の顔を見つめると、短いながらもそんな喜怒哀楽に満ちた

 日々を自分は過ごせていたのだ、と今更ながらバーサーカーは自覚した。

 ヘラクレス『なにかね?娘よ』


 イリヤ「私、あとどれくらい生きられるのかな?」


 一拍おいてイリヤの口から飛び出た言葉は、思いもかけない一言だった。
95 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 22:16 ID:0mFPKN7u

 ヘラクレス『イリヤスフィール...』

 イリヤ『私、倒れた時の事あまり覚えてないんだ』

 イリヤ『でも、自分の身体がどうなってるのかはわかってる』

 ヘラクレス『やはり、君は既に自分がどういう状態にあるのか、

       その全てを理解していたのだな』

  ランサーがイリヤの身体に施したルーンは確かに効いていた。

 それこそ、自分の身体に埋め込まれている聖杯の自壊を押しとどめ、

 限られた時間内ではあるが、既に自分の体内にある膨大な数の

 魔術回路、その全てが聖杯の暴走によって変質しているにも拘らず、

 平然と魔術を行使できる程の凄まじい効力を発揮していたのだった。

 ヘラクレス『ランサーめ、最後の詰めを誤ったな...』

 イリヤ「ダメだよ、バーサーカー」

 イリヤ「折角の男前が台無しだよ?もっと笑顔で笑ってよ」

  痛々しい笑顔でバーサーカーに笑いかけたイリヤ。

  そんな彼女が今何を自分に望んでいるのか?それを考えた時、

  自然と身体はイリヤスフィールを抱え上げていた。

 イリヤ「やっぱりバーサーカーはこうでなくっちゃ」

 ヘラクレス『...』

  イリヤの笑顔に一抹の諦観を感じ取ったバーサーカーは猛然と

 深い闇に閉ざされた森の中を駆け始めたのだった。

 
96 名前:名無し 投稿日:2014/02/20 22:47 ID:0mFPKN7u
 
 イリヤ「ねぇ、バーサーカー」

 イリヤ「私ね、今まで貴方と一緒に居た時にずっとできなかった

     ことがあったんだ」

  迷いを振り切るように、自らの内から生まれた迷いに囚われることを

 恐れるようにバーサーカーは延々と森の中を駆け廻り続けていた。

 イリヤ「それはね、バーサーカーとちゃんとお話しできなかったこと」

 イリヤ「私にとってのバーサーカーって、強くて、恰好よくて、優しい

     そんなサーヴァントだった」

 イリヤ「初対面は最悪だったけどね」

 イリヤ「でもね、バーサーカーが居てくれなかったら多分今の私は

     いないんだ」

 イリヤ「たとえ自分が人間ではない、下手をすれば地球も滅ぼして

     しまう核兵器のような、自分がそんな存在だってこと」

 イリヤ「ずっと前からわかってたんだ」

  普通ではない自分、人間ではない自分、天の杯、聖杯の器。

  今にして思えば自身の人生はいつ終わりを迎えてもおかしくなかった。

 聖杯戦争にしても、最強のサーヴァントを引き当てた時点でそれは

 確定していたのだ。

  しかし、何の因果かいまだに自分は生きている。

  例えそれが長くは生きてはいられない命だとしても、こうして地に

 足をつけ、目一杯息を吸い、そして好きな人を見て恋焦がれることが出来る。

  それが今の自分にとってはかけがえのない宝物なのだ。

  バーサーカーはそんなイリヤの声に静かに耳を傾け、走る速度を

 徐々に落とし始めた。

 イリヤ「バーサーカー?」

 ヘラクレス『イリヤスフィール、本当にいいのか?』

 イリヤ「うん、覚悟はできてる」

  森の中を駆け廻り、バーサーカーが辿り着いた場所、そこはかつて

 自分とセイバーが相対し、雌雄を決した因縁の場所だった。

  抱きかかえたイリヤスフィールを抱えた腕から降ろし、彼女が腰を

 かけるのに適当な木を探し、即座に見つけたバーサーカーは手刀一閃、

 即席のベンチを作った。

  イリヤスフィールに座るように促したバーサーカーは自分もその

 切り倒した木の切り株に腰かけながら、今まで口をつぐんでいた

 イリヤスフィールの身体の状態について口を開き、語り始めた。  

 
97 名前:名無し 投稿日:2014/02/21 00:57 ID:6mkdS3MM
 
 ヘラクレス『私とランサーが君の身体に施術した時、君は自分の身体を

       留めることが出来ないほどのかなり危険な状態だった』

 ヘラクレス『ランサーは自分の習得した原初のルーンの全てを

       君の身体に刻み込み、固有結界並みの強固な防御呪文、

       それを用いて何とか君の身体の自壊を防いだのだ』

 ヘラクレス『しかし君の身体の崩壊は防げたとしても」

 ヘラクレス『君の身体から流れ出た魔力は殆ど底をついていた』

 ヘラクレス『だから、現状で君と同質の、それも膨大な量の魔力を

       持つ私が君の身体に入り込み、君を生かすバッテリーの

       役を担うことになったのだ』

 ヘラクレス『これが君の身体に起きたこと全てに対する説明だ』

  バーサーカーは自分の身に起きた出来事を何でもないことのように語る。

  それはきっと彼なりの優しさなのだろう。

  だけど、最も過酷だったコトの説明を意図的に省き、あまつさえ

 そのままトンズラしようとするその逃げの姿勢がイリヤにはとても

 腹立たしく思えた。

 イリヤ「それで、私はいつまで生きていられるの?」

 バーサーカーは押し黙った。

 イリヤ「即答できないってことは、もう私は長くないってこと?」

 ヘラクレス『最長で十年未満、最短で二年以内』

 ヘラクレス『これが私とランサーの見立てた君に残された時間だ』

 イリヤ『...そっか、まだそんなに時間が残ってるんだ』

  イリヤの一言にびっくりした表情を浮かべたバーサーカーは、今まで

 イリヤから背けていた顔を思わず元に戻してしまった。

 ヘラクレス『怖くないのか?」

 イリヤ「怖いわよ、死にたくないわよ』

 イリヤ「でも、もう腹は括ってるもの。だから前進あるのみ」

 イリヤ「そりゃ、私だって死ぬのは怖いけど、頭を上げて堂々と

     その結末を受け入れるか、ビクビクして逃げ回った挙句に

     死神に捕まって無理やり連行される結末だったら?」

 イリヤ「そんなの、私がどっちを選ぶのかは分かり切ってるわよね?」

 ヘラクレス「イリヤ...」

 イリヤ「大丈夫だよ。バーサーカー」

 イリヤ「ここから先の日々は、バーサーカーの助けがなくても、

     自分の力で未来を切り拓いていくから...」

 イリヤ「今まで本当にありがとう、ヘラクレス」

  その一言でバーサーカーは目の前の少女はもう自分の助けが

 なくても、例え、死を上回るような苦痛に身も心も苛まれても

 きっと乗り越えていける。そう確信したのだった。

  そして、それは彼女のサーヴァントとしての自分にかけられた

 最後の労いの言葉でもあった。

 ヘラクレス『イリヤ、君と出会えなければ私は永遠に迷子だった』

  彼もまた自分のマスターに対して、最後の別れの言葉をかける。

 ヘラクレス『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』

 ヘラクレス『人生で予測できるたった一つの事は、人生は予測できないと

       いう事実でしかない』

  これから彼女に襲いかかる試練に、かつて自分が乗り越えた十二の

 試練を重ねながら、ヘラクレスは彼女に訪れるであろう未来を、

 少ない言葉に万感の思いを込めながら言祝ぐ。

 ヘラクレス『たとえ自らに待ち受けるであろう未来を垣間見たとしても』

 ヘラクレス『どうしたってどうにもならないことは時々起こるのだ。

       だから、起こる前から心配する必要なんてない』

  来たるべき時にしかるべき態度と手段、そして自分を支えてくれる

 仲間達が居れば怖いものなど何もない。

  彼女を取り巻く人間達は誰かが倒れれば、その手を差し伸べ、また

 誰かが起き上がれないときはその肩を貸して起こしてくれる人間達だ。

  だからこそ、彼はこの一言を最後にイリヤへ伝えたのだった。 

 ヘラクレス『運命は自分の中にある。必要なのは、それと向き合う勇気だ』

 ヘラクレス『立ち向かえ、そしてがむしゃらに生きろイリヤスフィール』

 ヘラクレス『君がその天寿を全うした時、縁があったらまた会おう』

 ヘラクレス『さようならは、今は言わないでおく』

  最後の一言と共に、徐々にヘラクレスの雪の身体がさらさらと

 崩壊を始めた。
98 名前:名無し 投稿日:2014/02/21 01:26 ID:6mkdS3MM

 イリヤ「?!待って、バーサーカー!バーサーカーーーー!!!」

 イリヤ「言うだけ言って、最後まで私の事ばっかり気にかけて!」


 イリヤ「本当にありがとう!バーサーカー!」


  自分でも何を言っているのか分からない支離滅裂な言葉が飛び出した。

 イリヤ「今に見てなさいよ、バーサーカー」

 イリヤ「今度会うときは軽くバーサーカーの十二の試練を軽く超える

     ような奇跡を手土産に持ってきて自慢してやるんだから!」

 イリヤ「だから、だから私の事を...」

  その言葉を聞きながら、バーサーカーの視界は涙でぼやけ、またその顔も

 くしゃくしゃに、まるで人間の様に歪んでいた。

  徐々に体が崩壊する速度が速まっていく。

 バーサーカーは最後までその顔に微笑みを絶やさなかった。

 ヘラクレス『イリヤ』

 ヘラクレス『最後に君の恋愛についての助言をしよう』

 イリヤ『こんな時に何よ!』

 ヘラクレス『逆境に咲く花は、最も貴重で最も美しい』

 ヘラクレス『君は自分で思っているよりずっと勇敢だし、強いし、

       頭もいい』

 イリヤ「そんなことない!」

 イリヤ「セイバーやリン、サクラの方が私よりずっと...」

 ヘラクレス『彼女たちと同じように、君にも、世界中の誰にでも

       真の愛に出会う資格はある』

 ヘラクレス『君が衛宮士郎と初めて出会った時もそうだった筈だ』

 ヘラクレス『運命は稲妻のように突然訪れ、心を射抜く』

 ヘラクレス『彼の心を射止めたいのであれば」

 ヘラクレス『まずはその心を解き放ち、自由にしてやるのだ』

 ヘラクレス『そして、君が彼の新しい夢になればいい』

 イリヤ「無理だよぉ...シロウに捨てられるのが、怖いんだもん」


 ヘラクレス『婚期を逃すと一生後悔するぞ。それでもいいのか?』

 
 イリヤ「絶対ヤダ!そんなの耐えられない!」

 ヘラクレス『その意気だ。その心を忘れるなよ、イリヤスフィール』

  彼らしからぬ茶目っ気に富んだその一言。

  それが今世に召喚された大英雄ヘラクレスの最後の言葉だった。 

 ヘラクレス(これほどまでに心安らげる死があったとはな...)

 ヘラクレス(ありがとう、イリヤスフィール)

 ヘラクレス(君と...出会え、共に...過ごした日々は私の宝物だ...)

  消えゆく身体と薄れゆく意識が一つに溶け合うその刹那、


 メガラー『貴方...本当にお疲れ様でした』

 ヘラクレス『メガラー...』

 デーイアネイラ『善き二度目の生を全うされましたね、ヘラクレス様』

 ヘラクレス『デーイアネイラ...』

 ヒュロス『父上、早くカリュドンで鹿狩りをしましょう』

 ヘラクレス『ヒュロス...』

 へーべー『鹿狩りもよろしいですが、オリュンポスにいい加減

      戻ってきてくださいまし。息子達も貴方のご帰還を

      待っております』

 アレクシアレース『いつの間にかいなくなったらこんなところで油を

          売ってたんですね、全く困った人だ』

 アニーケートス『みんな父上のご帰還を心待ちにしております』

  微睡の楽園の中で、彼は束の間の夢を見る。

 後悔と辛苦も共に味わった妻達と、その愛が成した子供達。

 最愛の家族に囲まれながら、古のギリシャを縦横無尽に駆け巡った

 大英雄ヘラクレスは再び深い深い眠りへと誘われていった。

 
99 名前:名無し 投稿日:2014/02/22 01:01 ID:LYeiU2ZA
今日は無いのか
100 名前:名無し 投稿日:2014/03/01 22:42 ID:0yvwFN0B
終わり?
101 名前:名無し 投稿日:2014/03/06 21:30 ID:kd1mKKxz
支援
102 名前:名無し 投稿日:2014/03/07 00:41 ID:rPNDyNXL
きりがいいとこで一旦休憩なのかな。
103 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 13:11 ID:yBpcv07U
 
 志貴「なるほどね、士郎君のお姉さんが二人とも窮地に陥ったわけだ」

 士郎「俺が藤ねえのことを知ったのは、卒業する前の一週間前、

    イリヤのことを知ったのは更にそこから一週間後でした」

 志貴「それで?結局、どの平行世界でも君は遠坂さんと一緒に

    ロンドンに留学するってことが確定してるじゃないか」

 志貴「なのに大学にいったっていうのはどういうことなんだい?」

 士郎「藤ねえが...交通事故にあったんです」

 アルク「交通事故にあった?」

 士郎「はい。そうなんです」

 士郎「そこからなんですよ。俺の人生の歯車が狂いだしたのは...
104 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 13:22 ID:yBpcv07U
 ~士郎の卒業式一週間前~

 大河「はぁ~あ、流石に卒業式前の弓道部の集まりには顔出さない

    わけにはいかないのよねぇ」

 大河「けど、その日は謹慎期間がまだ解けてないんだった...」

 大河「どうしよう...」

  大河が教育委員会から謹慎を食らってから二ヶ月が経過していた。

 いつものように士郎のところに行き、朝食をみんなで囲み、

 判を押したように家から出て行き、学校に向かうふりをする。

  電車を乗り継ぎ、隣の市立図書館にて閉館時間ぎりぎりまで

 本を読み、何とかばれないように帰宅する。

  この紙一重のアリバイ工作は意外と気がつかれることがなかった。

 だが、謹慎を食らった時は予想だにしていなかった士郎の卒業式

 という問題が大河の心を蝕んでいた。
105 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 13:40 ID:yBpcv07U
 大河「どこからこうなっちゃったんだろう?」

  その日は雨だった。

  教育論について書かれている本に目を通しながら大河は

 ぼんやりと過去のことに想いを馳せていた。

  自分の初恋の人であり、もう既にこの世を去った衛宮切嗣のこと

  そして今まで姉弟同然に育った士郎のこと。

  自分を慈しみ、今日まで育ててくれた家族のこと。

 自分を形成してきた二十数年間の日々がまるで走馬灯のように

 フラッシュバックしてきた。

  心地よい温度に設定されている図書館の暖房が睡魔を連れ、

 大河を心地よい眠りの世界へと誘いそうになったとき、

 ??「あれ?藤村先生じゃない」

  閉じかけの瞼を無理やりこじ開け、目の端に移った人物が誰かを

 認識した大河は図書館から逃げ出した。

 桜「せんせーい」

  彼女の名前は間桐桜。

  藤村大河が今この場で最も会いたくない人物だった。
106 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 13:57 ID:yBpcv07U
 大河「ちょっとちょっとなんで桜ちゃんがいるの!!」

  パニック状態になった大河はかばんを引っつかみ、図書館の本棚を

 縫いながら、かつ全速力で図書館から離脱した。

  本棚の影から桜の姿が見えたときにはびっくりしたものの、

 桜は自分に気がつかず、そのまま別の本棚へと歩き去っていった。

 大河「た、助かったぁ...」

  安堵の溜息をついた大河だったが、桜がいるということは、

 勿論ライダーも一緒にいるということを考慮しなければならないと

 即座に思い至った。

  エレベーターで鉢合わせ、後ろから肩を叩かれる。ああ、それから

 階段ですれ違って声をかけられるかもしれない。

  丸々三十秒を費やして、大河は階段を使って図書館から

 出て行くことを決めた。

  そろりそろりと違和感なく、自分より背の高い人間の後ろにぴったり
 
 ついては離れての繰り返しを続けた大河は無事に図書館から出ることができた。

 大河「た、助かった~」

  へなへなと地面にへたり込みそうになった大河だったが、

 ??「おい、そこのアンタ」

 大河「ひええええええ~」

  この時大河の脳裏に浮かんだのは、挙動不審な自分の行動を怪しんだ

 警察官が自分を任意同行するというビジョンだった。

 ランサー「何をそんなにビビッてるんだよ」

 大河「ら、ランサーさん?」

 ランサー「ま、挙動不審な動きをしている嬢ちゃんには警察官

      みたいに見えても仕方ないわな」    

  恐る恐る振り返ると、そこには白い歯を見せ、自分に微笑みかける

 ランサーの姿があった。
107 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 14:12 ID:yBpcv07U
 ~喫茶店~

 ランサー「ま、座れよ」

  ランサーに連れられて大河が入った喫茶店は路地裏のそのまた

 奥にある喫茶店だった。

 ランサー「それで?どうしたんだよ?」

 ランサー「教師をやってる嬢ちゃんが、生徒に勉強教えている昼日中、

  それもこんな隣町の図書館から出てくるなんて」

  店の一番奥の席を取ったランサーはサンドウィッチとコーラを

 二人分注文した。

 大河「そ、それは...」

 大河「私、来月で今通ってる学校を転勤になるの」

 大河「それで結構時間が余っちゃって、暇なのよ」

 ランサー「ま、嬢ちゃんがそういうことにしてほしいなら...」

 大河「何よ、嘘ついてるって言いたいの?」

 ランサー「それが悪いって誰が言った?」 

  大河がいきり立ちそうになるまさにその瞬間、見計らったかの

 ように店員が注文してきたメニューを運んできた。
108 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 14:16 ID:yBpcv07U
 ランサー「そうカッカしなさんな」

 ランサー「嬢ちゃんの性格は大体わかってるし、そんな嬢ちゃんの

      教え子達がクスリだ万引きだなんかする訳がねぇ」

 ランサー「となりゃ、家庭の事情だろ?」

 ランサー「何があった?」

 ランサー「デリケートな問題だから、俺が下手にしゃしゃり

      出るわけにはいかねぇ」

 ランサー「だけど、どうすりゃいいのか相談には乗ってやるよ」

 ランサー「ちょうど俺も人恋しかったからな...」

  真剣な眼差しに翳りを滲ませたランサーの哀愁に、現在の自分と

 通じるものを感じ取った大河はアーチャーに話したことと全く同様の

 内容をランサーに話し始めた。
109 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 14:45 ID:yBpcv07U
 ランサー「こりゃ、笑い話どころじゃねぇぞ」

  大河の話を一通り聞き終えたランサーの顔は引き攣っていた。

 ランサー「ハ、ハッ。まさか坊主の尻拭いを坊主がするんじゃなくて

      一途な嬢ちゃんにさせるたぁな」

  コーラの入ったコップを力強く握り締めた手に浮き出た血管が

 ランサーの怒りの度合いを示していた。

  メリメリと異音を立てながらコップに亀裂が走るのを見た大河は、

 一瞬、ランサーに自分の悩みを相談するのは間違いだと考えた。

 大河「で、でも士郎だって年頃の男の子だし」

 大河「そんなにランサーさんが怒らなくてもいいことなのよ?ね」
 
  普段の飄々としたランサーしか見ていない大河は。そのあまりの
 
 変貌ぶりに驚きを通り越して、恐怖すら感じ始めていた。
110 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 14:46 ID:yBpcv07U
 ランサー「いいや、俺もそろそろ鬱憤が溜まってきてたとこなんだよ」

  ヘラクレスを期せずして死なせてしまったことによる罪悪感と

 聖杯戦争が終了した後も、無為に現界させられ続けることに苦痛を

 感じ続けたランサーの心は既にパンク寸前だった。

  丁度、壊さないように力を込めたコップが今になってようやく

 割れるくらいに。

 大河「ちょ、ちょっと大丈夫?コップの破片が食い込んでるわよ!!」

 ランサー「気にすることはねぇよ。俺は生まれつき腕っ節が強えんだ」

 ランサー「ガキの時分からこんなのはしょっちゅうだった」

  慌てて近くにいる店員が持ってきた包帯と消毒液を受け取り、器用に

 巻き始めながらランサーはこともなげに言い放った。
111 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 14:47 ID:yBpcv07U
 ランサー「しかしなぁ、遠坂の嬢ちゃんにワカメの妹、それにセイバー」

 ランサー「女遊びも結構だが、すぐ近くにいる家族のことも見てやれない

  ってのは男の風上にも置けねぇな」

 大河「士郎のこと、悪く言わないで...」

 ランサー「なら、どうして怒鳴らねぇんだ?」
 
 ランサー「聖杯戦争が終わったわけだし、セイバーはともかく残りの

      二人は家に帰れって嬢ちゃんが一言言えば、きっとあの二人は

      聞くはずだぜ?」

 ランサー「だって、坊主はまだ誰とも付き合ってないんだろう?」
112 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 15:14 ID:yBpcv07U
 大河「聖杯戦争ってなに?」
  
  大河のその一言を聞いた途端、ランサーは自分が墓穴を掘ったことを

 おそばせながら気がついた。

 大河「ランサーさん。前々から思ってたんだけど、貴方と仲の悪い

    士郎そっくりなニートさん、紫色の髪の毛をしたライダーさん」

 大河「それによくよく考えてみればセイバーちゃんも一体何者なの?」

 ランサー「それは、俺の口からは...」

 大河「金髪の外国人ならわかる。イギリスだとかアメリカっていえば

    ごまかせる。だけど明らかに葛木先生の奥さんやライダーさんは

    絶対におかしい。浮世離れしすぎてるもん」
113 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 15:18 ID:yBpcv07U
  決壊したダムの如き勢いの感情の奔流がランサーに叩きつけられる。

 衛宮士郎にかける大河の想いのあまりの真剣さにランサーの

 心のうちは揺れ動いていた。

  ここで大河に真実を話すか否かを

 大河「ねぇ、ランサーさん」

 大河「なんとなくなんだけどね、分かるんだ...私」

 大河「ニートさんの正体は未来の士郎だって」

  その一言がランサーが大河に全てを打ち明ける決定打となった。

 大河「ニートさんはジョン・コナーみたいに未来から士郎の未来を

    変えるために遠坂さんの家に居候しているんだよね?」

  図星だった。
114 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 15:19 ID:yBpcv07U
 ランサー「これを聞いたら、最悪、嬢ちゃんの家族が殺されるかも

      しれねぇぞ?そして坊主も」

 大河「それは、やだ」

 ランサー「仮に坊主が好きな女の子が死んでも、坊主が

      アンタの元に留まり続ける保障はどこにもねぇ」

 ランサー「今の発言を聞かなかったことにできるならって、そんな

      後悔しても遅いからな」
 
 大河「士郎が、士郎は」

 大河「切嗣さんじゃない。絶対に士郎には道を踏み外させない」

 大河「何も知らないで後悔するのも、全部知って後悔するのもイヤ」

 大河「だから教えて、ランサーさん」

 大河「腹は括ったから。士郎に私の人生全部台無しにされてもいい」 

 大河「士郎に私の中の女の性が枯れ散らされるなら私は本望」

 大河「だって、」

 
 大河「これが私に士郎に捧げられる全てだもん」


115 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 15:20 ID:yBpcv07U
 そして、ランサーは逡巡することなく、大河に全てを打ち明けた。
116 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 16:00 ID:yBpcv07U
 ~柳洞寺~

  大河に聖杯戦争のこと、アーチャーと士郎の関係。その全てを

 打ち明けたランサーは次の一手を打つべく、柳洞寺へと赴いた。

 キャス子「あら、ランサーじゃないの?珍しいわね」  

 ランサー「よう、ちょっとばかしお前に頼みてぇことがあるんだ」

 キャス子「随分と深い悩み事を抱えているようね」
 
  はたきと雑巾を持ち、割烹着に身を包んだキャスターはまるで

 日本かぶれの西洋人という言葉がぴったりの女に見えた。

  在りし日の毒婦と呼ばれた恐ろしい魔術師はどこにもいなかった。
117 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 16:02 ID:yBpcv07U
 ランサー「そうだな、マスターに恵まれたお前には分からないだろうがな」

 キャス子「またあのシスターさんに何かされたの?」

 ランサー「いつもの通りだよ。だが、もううんざりしたんだ」

  ランサーとて聖杯から与えられたサーヴァントの知識は今も

 頭の中に残っている。

  いくら日和ったとしても目の前にいる女は姦計と密通に長けた魔女。

 自分の作戦がボロを出さないように気を引き締めてかかる必要がある。

  言葉を慎重に選びながら、ランサーは婉曲に本題を切り出した。

 キャス子「え?今なんていったの?」

 ランサー「そろそろマスターを変えようと思ってるって言ったんだよ」

 キャス子「何があったの?」

 ランサー「なぁ、キャスター。俺達って一体何なんだろうな」
 
 ランサー「サーヴァント?それともクーフーリン?ランサーか?」

 ランサー「正直言ってこれ以上無駄な時間を過ごしたくねぇんだ」

 ランサー「今のお前みたいな幸せを、俺も手に入れたいんだよ」
118 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 16:03 ID:yBpcv07U
 キャス子「それでルールブレイカーを貸してっていうの?」

  確かにこの期に及んであのランサーが嘘をつくとはキャスターには

 思えなかった。

  カレンの暴言は彼女の知己やキャスターの目から見ても人の心を

 踏みにじる類のものであるということは承知している。

  ランサーもギルガメッシュもカレンの気まぐれによく付き合っている

 方だとキャスターは常々思っていた。

  しかし、至極当然のランサーの主張に何か翳りが見え隠れするのは

 自分の気のせいだろうかとキャスターは考えつつあった。

 ランサー「カレンの尻に敷かれ続けるのはもうたくさんだ」 

  俯いたランサーの表情は見えなかったが、きっと歯を食いしばるのを

 自分に見られたくないからだろうとキャスターは思った。

 キャス子「...分かったわ。貸してあげましょう」

  だが、それでもランサーの頼みをすんなり聞き届けるより、生来の

 用心深さが先にたったキャスターはランサーにかまをかけることにした。
119 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 16:04 ID:yBpcv07U
 ランサー「恩に着る」

 キャス子「ただし」

 キャス子「それは果たして誰の為に使うのかしら?」

 キャス子「自分のためなんてふざけたことを言わない頂戴ね?」

 キャス子「宗旨替えをこの期に及んで続ける男でもないでしょう?」

 キャス子「さぁ、答えなさい。ランサー」

 キャス子「誰のためにルールブレイカーを使うのかしら?」
120 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 16:05 ID:yBpcv07U
 ランサー「バゼットのためじゃないってことは確かだ」 

 キャス子「そう...可哀想ね。彼女」

 キャス子「分かったわ。持って行きなさい」

  正直な話、ランサーがバゼットと答えればルールブレイカーを

 キャスターは渡さないつもりだった。

  今までカレンの暴虐に耐えてきたランサーが今になって元マスターと

 よりを戻すと考えるのは、ランサーの性格上考えられないとキャスターは

 確信していた。

  だからこそ、先ほどのランサーの言葉が嘘ではないと確信でき、

 ルールブレイカーを貸そうと決めたのだった。
121 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 16:30 ID:yBpcv07U
 ランサー「いいのかよ?」

  あっさりとことが進み、疑るような視線を自分に投げかけたランサーに

 キャスターは寂しげな微笑を浮かべ、助言を返した。

 キャス子「一つだけ忠告してあげるわ。ランサー」 
 
 キャス子「恋は美酒に始まり、愛は鴆酒をあおるものよ?」

 キャス子「貴方を駆り立てた女性、近いうちに破滅的な出来事が襲うわ」

 ランサー「認めねぇぞ。俺はそんな結末」

 ランサー「あの坊主が聖杯戦争を万事大団円に収めてるんだ」

 ランサー「俺だって一人の女の運命を変えること位成し遂げられる」
122 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 16:32 ID:yBpcv07U
 キャス子「ランサー」  

 キャス子「あまり女を舐めないほうがいいわよ」

 キャス子「あの坊やを三人から引き剥がせば、大惨事が起きるわ」

 キャス子「坊やとその人を駆け落ちさせるなら今のうちよ」 

 ランサー「おう、ありがとな」 

 ランサー「お返しに一つだけ俺もお前に言っておくことがある」

 ランサー「バーサーカーが消えた」

 キャス子「知ってるわ。アインツベルンの聖杯が壊れかかっているのも」
 
 ランサー「じきに冬木は戦場になる」

 ランサー「殺される前にここから逃げろ。腹の中のガキのために」

 キャス子「そうね。世界一周旅行も悪くないわね」
123 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 16:36 ID:yBpcv07U
 キャス子「ルールブレイカー」 
  
 キャス子「使い終わったらゲイボルグで破壊しなさいね」 

 キャス子「さもなければ殺されるわよ」

  長い話し合いの末、キャスターはランサーにルールブレイカーを

 譲り渡した。

  彼女としては、同じ女としてセイバー達には幸せを掴んでほしいと

 いう気持ちはあるものの、衛宮士郎を好きになった女は彼女達だけ
 
 ではないということをキャスターは理解していた。

  だからこそ、これを機に衛宮士郎を取り巻く環境が少しでも
 
 変化することにランサーは賭けたのだろうとキャスターは考えた。

 キャス子「さてと、あまり私にも時間が残されていないみたいね...」

  ランサーが柳洞寺を後にした後、キャスターは急いで身の回りの

 整理を始めたのであった。

  そして、次の日

  ランサーが再び柳洞寺を訪れた時、キャスターとその伴侶は

 まるで煙のように姿を消していたのであった。 
124 名前:名無し 投稿日:2014/03/08 18:10 ID:gh9SC8Lv
!?
125 名前:名無し 投稿日:2014/04/06 17:45 ID:t83FfN0P
書き溜め中かな
126 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 00:19 ID:kUqAXJs5
セイバー「士郎、凛。もうすぐ二人とも卒業式ですね」

凛「そうね...。あっという間の学園生活だったわ」

セイバー「ところで凛、士郎はどこに行っているのですか?」

凛「桜と一緒に弓道部の集まりに行ったわ」

凛「士郎も聖杯戦争に巻き込まれていなければ、普通の
  高校生として青春してたのかしらね?」

セイバー「きっと、そうなったことでしょう」

セイバー「私は青春というものをあまり知らないのですが、
     むしろ士郎にはそれがお似合いかもしれませんね」

セイバー「見方を変えれば士郎、リン、桜と慎二、そして
     言峰綺礼も聖杯戦争に翻弄された存在です」

セイバー「人として破綻し、歪んだ言峰も敬虔な信徒の
     まま神への信仰を失うことなく」

セイバー「また遠坂家が魔道の家系ではなく、裕福な家庭で      あれば、凛も桜もきっと普通の女の子として」

セイバー「士郎や慎二と良好な関係を築くことが出来た」

凛「珍しいわね」

凛「セイバーが私達のような今の時代の人間の普通について
  滔々と語りだすなんて」

凛「何かあったの?」

セイバー「夢を見たんです」

凛「夢?」
     
127 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 00:43 ID:kUqAXJs5
セイバー「はい、夢というより私の深層心理の発露とでも
     言い換えられるものですが」

セイバー「聖杯戦争が起きず、私やアーチャーを含めた
     サーヴァントが一人の人間として存在し」

セイバー「この冬木で今のような関係を築きあげている。
     そんな夢を見ていました」

凛「...そうね。聖杯に託す願いとしては最上のものね」

凛「授業参観や運動会、そして家族旅行」

凛「私と桜の両親はもう死んじゃったし、私も今まで
  そんなことを考えるのを止めてきたけど」

凛「一度でもいいから、そんなことを経験したかったな」

セイバー「そんな辛気臭い顔をした凛は初めてです」

凛「そりゃそうよ。望んでも望んでもお父様とお母様は
  もう二度と帰ってこないんだから」

凛「後悔と夢の狭間にありえたかもしれない未来を
  見出すなんて、えーっと死亡フラグだっけ?」

セイバー「やめてください。縁起でもない」

凛「セイバーが言いだしっぺでしょうが!」

セイバー「ま、まぁそれはともかくとして」

セイバー「私は今から土蔵の方に行ってきます」

凛「土蔵って何をするつもりなの?」

セイバー「月を肴に土蔵に隠されていた酒を呑もうかと」

凛「分かったわ。お風呂先に入っているからね」

セイバー「ええ、士郎には私は今日は土蔵で寝ると
     言っておいてください」

凛「風邪ひくわよ」

セイバー「ご心配なく。では、おやすみなさい凛」

凛「お休み。セイバー」
128 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 07:40 ID:pK13tONS
騎士王まさかの酒盛りwww
129 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 21:38 ID:kUqAXJs5
午後八時 ×県某所

綾子「えーっと、今日はみんなありがとな」

綾子「私達三年生は三日後に卒業を迎えるわけだが、
   今日こうして弓道部の面子に会えて本当に良かった」
   
慎二「まぁ、皆知っての通り僕は来月から東京の大学に行く」

慎二「ここにいる大体の奴らは二十歳を過ぎても冬木を
   出ることなく過ごすんだろうけどね」

慎二「それでも高校三年生の一年間だけはきちんと悔いの
   ないように過ごすべきだ」

綾子「お?慎二がまともなことを言ってるぞ」

慎二「黙ってろよ、美綴」

慎二「んんっ、まぁ今の発言に特に意味はないけどさ」

慎二「僕みたいな天才でもやり残したことに対して後悔が
   残る場合もあるわけだ」

慎二「だから、弓道部にしても進路にしても自分にとって
   最善の未来を掴める様に、精々がんばれよ」

士郎「慎二、お前変わったな...」

慎二「う、うるさい!」

慎二「と、とにかくだな、手抜きはすんなよってことだよ」

慎二「回り道してもいいし、どんな手段を使ってもいいから
   必ず結果を出せ」

慎二「これが僕がお前たちに贈る言葉だ。以上」

綾子「うん、私が言いたいことは慎二が言ってくれたし
   今日はここでお開きだ」

綾子「朝早くから県外のそのまた県境に近い郊外型の
   アミューズメントパークに来てるんだ」

綾子「今から帰る奴は私と途中まで一緒に帰ろう」

綾子「残りたい奴は閉園までここで遊んでも構わないが」

綾子「ちゃんとご両親や保護者の方に電話を入れる事」

後輩’s「はい、わかりました」

綾子「よし、それじゃあ今日はこれにて解散」

綾子「次会うときは卒業式だ」

綾子「全員出席だ、いいな?」

後輩’s「はい!」




130 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 21:54 ID:kUqAXJs5
士郎「あー、久々に疲れるほど遊んだな」

士郎「早く帰って風呂に入って寝るとするか....」

慎二「おい、衛宮。お前これから家に帰んのか」

士郎「そのつもりだけど、どうかしたのか?」

慎二「まぁ、そのしばらくお前と会えなくなるからな」

慎二「少しだけ話したいことがあるんだ」

士郎「あ、ああ分かったよ」

桜「あ、先輩。これから」

士郎「悪いな桜、ちょっと慎二と話すことがあるから
   待っててくれ」

桜「兄さん?先輩と何を話すんですか」

慎二「お前の事だよ」

慎二「いつもいつも心配や迷惑をかけるお前みたいな
   奴を見守る衛宮が居なくなるからな」

慎二「遠坂とイギリスで宜しくいちゃつくのは結構
   だけどちゃんと連絡とれよ」

慎二「そういうたぐいの話だ」

桜「そ、そうですか」

綾子「おーい、桜。ちょっとこっちに来てくれ」

綾子「カメラのシャッターを切ってくれないか」

桜「はーい」

131 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 22:00 ID:kUqAXJs5
士郎「で、話ってなんだ?」

慎二「お前、桜の事を一体なんだと思ってるわけ?」

士郎「それは、可愛い後輩だと...」

慎二「そうじゃない。一人の女としてどう思うかって
   ことを聞いてるんだよ」

士郎「....」

慎二「聖杯戦争が終わってから桜が半ば通い妻状態に
   なってることについてはあえて触れない」

慎二「けどな、それにも限度があるんじゃないのか?」

士郎「慎二、何が言いたいんだよ」

慎二「そろそろ答えを出してほしいんだよ」

慎二「お前の家に入り浸ってる女どもの中で誰が
   一番好きなのかってことを」

士郎「そんなの!決められるわけないだろう...」

士郎「決められるわけがない.........」
132 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 22:14 ID:kUqAXJs5
慎二「だよな、けどそんなお前のエゴが周囲にふりまく
   悪影響は半端じゃないんだよ」

士郎「いつ俺が人様に迷惑をかけるようなことを
   したっていうんだよ?」

慎二「はぁ、だったらもう何も言えないな」

慎二「遠坂も所詮はただの女だったってことか」

士郎「慎二、言いたいことがあるんなら包み隠さず
   言ってくれよ」

慎二「じゃあいくら言ってもわからない鈍感野郎の
   お前に言って...」

桜「兄さん」

桜「ありがとう。もうそこまででいいです」

慎二「あっそ、じゃ僕は帰るからな」

慎二「衛宮、少なくとも僕はお前の事を親友だと
   思ってる。だけどな半端な奴は嫌いだ」

慎二「お前も男ならちゃんと決めるときは決めろよ」

士郎「おい待てって、慎二!」

士郎「行っちまった...」

桜「先輩、これからどうしますか?」

士郎「そうだな、皆と一緒に帰るつもりだけど?」

桜「じゃあ、最後に観覧車に乗って帰りませんか?」

桜「今は八時四十分だから、走っていけば最後の乗れる
  時間に間に合います」

士郎「よし、それじゃ行くか」
133 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 22:38 ID:kUqAXJs5
午後九時 観覧車

士郎「綺麗だな」

 私の向かいに座る先輩の横顔は、何の憂いも哀愁も
悲哀もなく、ただただ純粋な子供の様に輝いていた。

士郎「こういう遊園地みたいなところに来たのは今日が
   初めてだから、上手く言えないけど」

士郎「星に似てるな」

 柄にもないことを言って照れたように鼻の頭をかく
その仕草に少しだけ胸の疼痛を覚える。

 私はいつになったら、

 この人と肩を並べて歩けるんだろうと。

桜「ええ。でも私は、私にとっては」

桜「先輩が一番輝いて見えます」

士郎「ええっ!?そ、そりゃ光栄だな」

 私の目の前にいる人は、あと五日したら姉さんと
共にイギリスへと旅立ってしまう。 

 私と違って姉はその名の通り、常に強い輝きを放ち
また瑞々しいまでにその人生は光に満ち溢れている。

 だけど、私はいつまでたっても地を這う虫。
 
 聖杯戦争が終わっても、羽化することなく先輩という
安らげる泥濘のなかにその身を埋めた蛹でしかない。

 それでも、私はそんな泥濘から抜け出す決意を固めた。

桜「先輩、私」
 
 私達の乗った観覧車が一番上にさしかかろうとした
その時、ポケットの中の携帯電話が鳴り響いた。
134 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 22:46 ID:kUqAXJs5
桜(なんでこんな時に限って...)

桜「ちょっと失礼しますね」

 内心の苛立ちを隠して私は携帯電話の液晶画面を見る。

桜(ライダー?)

桜「もしもし、ライダーどうしたの?」

ライダー「桜ッ、今貴女と士郎はどこにいるのですかッ!」

 取り乱す、などという言葉とは無縁のライダーが
電話越しにでもわかるくらいに動揺を露わにしている。

桜「ライダー?ライダー!何があったの」

ライダー「た、たたた大変です!」

ライダー「大河がッ、大河が」



ライダー「車に跳ね飛ばされて意識不明の重体です!」


135 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 22:53 ID:kUqAXJs5
午後九時二十分 救急車内部

大河(あ、あれ?どうして私救急車の中にいるんだろ?)

大河(そうだ...私、じいちゃんに士郎の事がばれて、
   凄く怒られて逃げ出したんだった)

大河(ついてないなぁ...死んじゃうのかなぁ...)

大河(怖いよぉ、士郎....助けてよ)

アーチャー「しっかりしろ!しっかりするんだ!」

大河(ああ、うれしいんだけどなぁ)

大河(嬉しいんだけど、違うんだ。シロウ)

大河(私が、私の手を握っていて欲しいのは貴方じゃない)

大河(...)

大河(.........)

大河(............)
136 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 23:34 ID:kUqAXJs5
 ライダーの電話を受けた俺と桜は大急ぎで観覧車から降り、
ライダーの宝具でそのまま冬木へと舞い戻った。

 俺と桜が藤ねえの搬送された病院に行くとそこには
遠坂とセイバー、そしてアーチャーが既にいたのだった。

雷画「士郎、おめぇ今までどこに行ってたんだ!」

士郎「おじいさん、それはその...」

 ものすごい剣幕で俺に詰め寄ってくる雷画じいさん。

 この人がどれだけ藤ねえを溺愛しているのかは最早
言うまでもない。

大河父「お父さん、士郎君は今日弓道部の全員と遊びに
    出かけていたんです」

雷画「んなこと関係あるかぁ!」

 激怒しながら俺の首を締め上げる雷画じいさんは
血を吐くような声で、予想だにしなかったことを
言ったのだった。

雷画「そんなにテメェは自分の傍に侍らした女と
   乳繰り合うのが好きなのか!」

雷画「士郎、大河がお前のせいで大恥かいたことは
   しってるのか?」

士郎「な、なにいってるんだよ」

雷画「お前が侍らせている女どものせいで大河が
   懲戒免職寸前になったことを知ってんのか!」

アーチャー「ご老人、少し黙っていてもらおうか」

雷画「なんだとぉ。テメェは何様だ」

 ベンチに腰掛けふさぎ込んでいたアーチャーが
雷画じいさんを一瞬の内に気絶させた。

 憔悴しきった表情で手術室を見ているセイバーと
遠坂は涙をボロボロとこぼして泣き続けていた。

大河父「士郎君、私はともかくお義父さんは君の事を
    本当の孫の様に可愛がっていた」

大河父「それは大河も同じで君の養父が生きていた
    頃からずっと弟の様に暮らしていたじゃないか」

大河父「大河が事故に遭ったのは大河の責任だ」

大河父「だが、その原因となったのは君のせいだ」
    
大河父「今の私も冷静さを十分に欠いてしまっているが、
    お義父さんと同じ気持ちだ」

大河父「許されるなら、君を殺したくて仕方ない」

大河父「今の私達が君に対して抱いている印象は
    それくらい最悪なんだ」

大河父「近いうちにまた連絡する」

大河父「取りあえず女の子達を送り届けてあげなさい」

 憔悴しきった足取りでおじさんは俺の傍から離れて
いった。

凛「士郎...」

桜「先輩....」

セイバー「シロウ」

セイバー「私は凛と桜を連れて先に戻っています」

士郎「頼む、そうしてくれ」

セイバー「では、行きましょう。凛、桜」

 重い足取りでセイバーは二人と一緒に病院を後にした。
137 名前:名無し 投稿日:2014/04/13 23:43 ID:kUqAXJs5
医者A「藤村大河さんのご家族の方ですね?」

大河父「はい。そうです」

士郎「藤姉は、藤ねえは助かるんですか!」

医者A「今、集中治療室で藤村さんは手術を受けています」

医者A「彼女は横断歩道を歩行中に、信号を無視して
    猛スピードで走っていた車に、撥ねられました」

医者「全身打撲。四肢は強くはないようですが、胸部と
   頭部は激しく打っています」

大河父「それで?娘に後遺症は残るんですか?」

医者「現時点では何とも言えませんが、最悪脳死という
   可能性もありうることがあります」

医者「頭を強打した時に、藤村さんの頭蓋骨は陥没。
   その際に脳にその破片が突き刺さっていました」

医者「最悪、身体のどこかが不随になることを覚悟
   したほうがいいでしょう」

大河父「はい...先生」

医者A「それでは失礼いたします」
138 名前:名無し 投稿日:2014/04/27 23:23 ID:xnny8Cos
支援、
おい藤村組はガチヤクザだぞwwww
139 名前:名無し 投稿日:2014/04/28 01:13 ID:5y9FCdr9
俺も見てるで!
140 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 13:47 ID:KYLNXaoh
セイバーが泣いてたり義父が気絶させられたのになんも行動起こさない大河父とかなんかなぁ
141 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 22:14 ID:ryp9peUO
 志貴「それで?大河さんは結局どうなったんだい」

 士郎「一命は取り留めました」

 士郎「けど、もう俺の知っている藤ねぇはもう...」

 アルク「この際だから聞いちゃうけど、大河さんは今現在

 どこで何をしているの?」

 士郎「...もう、死んでます」

 志貴「え...ッ」

 士郎「頭の中の消しゴムが、自分を全部消し去る前に」

 士郎「士郎の手の中で死にたい」

 士郎「それが...大河の、藤ねぇの最後の言葉でした」
142 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 22:59 ID:ryp9peUO
大河がひき逃げされる三日前、冬木教会


 カレン「ランサー、ギルガメッシュ」

  その日は朝から雲行きが怪しい天気だった。

  名前を呼ばれた二人は、またいつものように人の心を

 踏みにじるマスターの呼び出しに渋々応じ、馳せ参じた。

 ギル「それで?今日は何のごようなんですか~」

  能天気ににこにこ笑いながら子ギルがカレンに用向きを尋ねる。
143 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 23:03 ID:ryp9peUO
カレン「...ポルカミゼーリア」

  しかし、カレンの口から出た彼女の代名詞ともいえる

 ロシア語の罵倒に、いつものようなキレが全くないのは

 ある意味では不吉の前兆より性質が悪い。

 ランサー「おいおいカレンよぉ、俺も今日は用事があるんだよ」

 カレン「人が折角、型月ファンから忘られつつある貴方達に大活躍の場を与えようというのに」

 カレン「なんて空気の読めないダメ犬なんでしょう」

 カレン「これはもうGood bye Lancerですね」

 カレン「さよなランサー。もう死んでイイですよ」

 ランサー「いちいち下らねえこと言ってるんじゃねえぞ」

  いつもと変わらないやり取り。

  しかし、
144 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 23:04 ID:ryp9peUO
 カレン「実はですね、聖堂教会から私達に特Aクラスの依頼が舞い込んできたのです」

 ギル「埋葬機関からですか?」

 カレン「何度も断りを入れたのですが、事が事です」

 カレン「真祖の姫君が殺人貴を自分の死徒にしたそうです」

 ランサー「真祖って、おいおいそりゃなんかの冗談だろ」

  カレンの口から出たのは、彼女の古巣である埋葬機関と長きに亘る吸血鬼の親玉である

 真祖の姫君との関係を一変させるほどの出来事だった。
145 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 23:05 ID:ryp9peUO
カレン「ランサー、黙って聞きなさい」

  いつもの陰険な笑みを消し去ったカレンの表情にはまるで何かに怯える様な色が混じっていた。

 ランサー「それで?俺達二人を連れてってそいつ等一党を全員皆殺しにしろってのか?」

 カレン「その通りです。説明する手間が省けました」

  ここでようやく我が意を得たりと、カレンはニヤリと笑う。
146 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 23:06 ID:ryp9peUO
 カレン「私はこの通り非戦闘員ですから、出番はありません」

 カレン「しかし、貴方たち二人は埋葬機関の代行者千人以上の実力を持つ英霊です」

 カレン「ギルガメッシュはともかくとして、この作戦にはランサーの宝具が必要不可欠です」

 ランサー「おい、何勝手に俺が参加させられてんだよ」

 ギル「ランサーさん、ちょっとマスターの様子おかしいですよ」

 ランサー「はぁ?そんなのいつものことだろ」

  ギルガメッシュの言うとおり、今のカレンは何かおかしい。

  だが、今のランサーにとって、むしろカレンがおかしいままのほうが都合が良かった。
147 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 23:08 ID:ryp9peUO
ギル「あ、はい。もしもし」

 ギル「わかりました。12:36発の電車に乗ればいいんですね」

 ギル「OKですよ」

  ギルガメッシュがべらべらと携帯電話で話し続けるのを見過ごすカレンではない。

  しかし、目の前にいるカレンはそれを見逃した。

  ようやくここに至ってランサーはカレンがとてもヤバい状況に追い詰められていることが分かった。

 ギル「それじゃ、ランサーさん。マスターの事お願いしますね」

 ギル「どうせ、あの様子じゃ僕達がまた碌でもないことに巻き込まれるのは目に見えてます」

 ギル「英雄王はクールに去るぜ!」

 ランサー「あっ、待ちやがれ!」

  脱兎のごとくギルガメッシュは教会から逃げ出していった。
148 名前:名無し 投稿日:2014/04/29 23:08 ID:ryp9peUO
カレン「ふぅ、痴愚の真似をするのも大変ですね」

 ランサー「俺はパスだからな、絶対に行かないね」

 カレン「命知らずと命をどぶに捨てるのは全く違いますよ」

 ランサー「なんだと?」

 カレン「聖堂教会と魔術協会と時計塔の査察団が近々冬木にがさ入れにくるそうです」

 ランサー「はぁ?!」

 カレン「ランサー、これから私の話すことは全部真実です」

 カレン「死にたくなければ、というより消されたくなければ今からいう事をきちんと聞きなさい」
149 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:38 ID:31Ihz4Hn
穂群原学園卒業式から二日後


 雷画「士郎よぉ、お前はこれからどうするつもりだ?」

 士郎「わからないよ...」

  藤ねぇが車に轢かれた後、無情にも卒業式がやってきた。

 本当ならそこに俺と藤ねぇはいたはずだった。

  だけど、雷画祖父さんから藤ねぇが退職寸前まで俺のせいで追い詰められたことを聞かされた

その経緯と顛末について聞かされた俺は卒業式に出席できなかった。

 雷画じいさんが聞いた話では、藤ねぇがとある後輩の女子が俺の事を好きになって、その告白の

手助けを他の先生に頼まれた事から端を発していた。
150 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:40 ID:31Ihz4Hn
 その話を聞いた時、俺はまさかと思った。

  雷画じいさんと藤ねぇのお父さんは藤ねえが事故に遭った次の日、その生徒の家に直接出向き、

その時の藤ねぇの様子を仔細に聞き出したそうだ。

 大河父『士郎君、その女の子を責めないでやってほしい』

 大河父『大河が彼女の目の前で泣き崩れた時、その女の子は 藤村先生は衛宮先輩の事が大好きなんだ』

 大河父『あの明るくて活発な藤村先生がここまで取り乱すなんてよっぽどの事なんだ』

 大河父『その原因はきっと、あー。士郎君にべったりの先輩達が悪いんだ』

 大河父「そう思ったそうだ」

  言葉を失った俺に追い打ちを掛けるように、雷画じいさんは更に言葉を続けていく。
151 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:41 ID:31Ihz4Hn
雷画『大河に生徒をけしかけた教師は、独自に士郎の近辺をうろついて写真を撮りまくったそうだ』

 雷画『当事者にとってはなんてことのない日常風景でも事情を知らない第三者が見れば、

     誰だってコイツは女をかこっているって噂がたってもおかしくない』

 雷画『そんな写真がボロボロ出てきやがった』

  雷画じいさんから見せられた写真には俺の家に出入りする遠坂や桜、セイバーの姿。果ては

 バゼットやライダー、イリヤアーチャーなど、ほぼ一般人が関わってはいけない存在である

 俺の関係者が全員収められていた。
152 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:43 ID:31Ihz4Hn
 雷画『士郎よぉ』

 雷画『別に俺達はお前が誰と付き合おうとそれが外国人の別嬪さんや学校の同級生だろうと

   構いやしねぇ」

  雷画『だがなぁ、お前の知り合いにはあまりにも不明瞭な所が多すぎるんだよ』

 雷画『一体誰なんだ、アーチャーとかランサーっていうのは?」

 雷画『それと冬木を我が物顔で歩き回ってるギルガメッシュって若造の異常な

    羽振りのよさ。正直言って訳が分からない』

 雷画『一番身近な冬木の教会のシスターさんの事を調べさせたネットに詳しい若い衆が

     心臓発作、それもキーボードに名前を打ち込んだ時に、いきなり死んだ」

 雷画『本当にアイツ等は...』

 
 ―――人間なのか?―――


 
153 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:45 ID:31Ihz4Hn
 士郎『...人間じゃなきゃお化けなのかよ』

 大河父『そういう事を言ってるんじゃないんだ。士郎君」

 大河父『僕とお義父さんとしては君の交友関係に、少なくとも藤村組に何らかの悪影響がでないのなら
 
      別に看過しても構わなかった』
 
 大河父『しかし、娘が君の行動のせいで事故に遭い』

 大河父『組員が君の知り合いを調べようとしたら非業の死を遂げる』

 大河父『これ以上、君の知り合いに関わると君にもその悪影響が、大河の二の舞になる可能性が

      出てきてしまう』

 大河父『そうなる前に、君にはそんな厄と早く縁を切ってほしい』

 大河父『私とお義父さんのいう事は間違っていないと思う。切嗣さんも士郎君の事をとても心配していた』

 大河父『僕の二の舞にならないように、士郎をお願いします』

 大河父『切嗣さんが無くなる一週間前の言葉だ』

 雷画『士郎、お前の人生はお前が決めるべきものなんだろう』

 雷画『切嗣のやつもきっとそういうはずだ』

 雷画『けどなぁ、酔狂や自分の手に余る使命感に酔って茨の道を突き進むなんてことは馬鹿げてる』

 雷画『少なくても、正義の味方なんてのは物語の中にだけしかいない存在だ』

 雷画『空想の産物が現実に出てくるのはいつだって災いの前兆と相場が決まってんだ』

 雷画『早くソイツ等と縁を切って、俺達の家に帰って来い」

 雷画『お前はもう家族なんだから、遠慮するな」
154 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:46 ID:31Ihz4Hn
 俺は、一体何をしたいんだ...

 雷画じいさんの話を聞いた俺は行くあてもなく、ただ一人ふらふらと冬木の街を歩き続けていた。

  正義の味方になるという夢は今もこの胸にある。その中に衛宮士郎と言う人間の全てが詰まっているのだ。

 だけど、よりにもよってこんな時に自分のレゾンテートルが揺らぎつつある。

 士郎「ああっ、俺はどうすればいいんだよ」

  彼の成れの果てとなった、とある正義の味方の贋作者は理想を抱きながら幻想の

 海の中で溺れ死んだ。

 士郎『違う、違うんだ!俺は絶対に違う』

  頭の中に浮かんだ、絶対に疑問に思ってはいけないことを全力で否定しつつも、いつしか士郎の心には

 ぽっかりと穴が空き始めていた。
155 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:47 ID:31Ihz4Hn
 アーチャー「相変わらず過去の自分と言うのは碌でもないな」

  頭を抱えたかつての自分を一瞥したアーチャーは大河のいる病院へと足を向けていた。

  今は午後四時だ。大河の入院している病院の面会時間は午後五時半で終わる。このままのペースで

 歩いていけば二十分くらいで大河の病室に行けるだろう。

 アーチャー「柄でもないが、花でも買っていこうか」

  丁度近くにあった花屋に入ったアーチャー。

 色々な花を見ながら歩き回ると、見覚えのある服を着た少女が自分の傍へと歩いてきた。
156 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:48 ID:31Ihz4Hn
イリヤ「あら?アーチャーじゃない」

 アーチャー「こんなところで奇遇だな、イリヤスフィール」

 イリヤ「その言葉、そっくりお返しするわ」

 イリヤ「もうすぐロンドンに旅立つリンに餞の花でも買いに来たわけ?」

  くすくすと笑いながら、かつての自分の妹が変わらない笑顔を浮かべ、冗談を飛ばしてくる。 

 アーチャー「それをいうなら衛宮士郎にだろう」

 イリヤ「ちょっと、自虐ネタは止めてよね」

 アーチャー「済まないな。ついついこの時期になると感傷的になってしまう」

 イリヤ「そうね。貴方にとってはここからが本当の始まり」

 イリヤ「長く続く険しい茨の道なのよね」

 アーチャー「...まぁ、なんだ」

 アーチャー「少々私は急いでいるのでね。用がないのなら失礼させてもらおう」

 イリヤ「大河のお見舞いに行くんでしょ?」

 アーチャー「何故、そのことを君が知っているんだ?」

 イリヤ「TVと新聞で大河の事を報道してたわよ」
157 名前:名無し 投稿日:2014/04/30 00:49 ID:31Ihz4Hn
 イリヤ「折角、士郎の卒業式に行ったら士郎がいないんだもん」

 イリヤ「アヤコを捕まえて聞いたら大河が事故に遭ってそのショックで士郎は卒業式に来てない」

 イリヤ「その後病院に行ったけど、結局面会謝絶だったわ」

 アーチャー「そうか。なんなら私と一緒に藤村大河のいる病院に向かうかね?」

 イリヤ「うん」

 リズ「イリヤ、セラが車に乗れって言ってる」

 イリヤ「あと五分待ってて」

 イリヤ「それとアーチャーも一緒に乗るって言っといて」

 リズ「分かった」

  花を買った二人はセラの運転する車に乗り込み、大河のいる病院へと向かっていった。
158 名前:名無し 投稿日:2014/05/08 21:44 ID:PLu8zNYa
おわり?
159 名前:名無し 投稿日:2014/05/08 23:40 ID:NEv1kLg3
伏線回収終わってないだろまだだ
160 名前:名無し 投稿日:2014/05/16 22:58 ID:rpWVWW3t
病院の受付

受付「ですから、藤村大河さんは面会謝絶となっています」

イリヤ「えーっ、折角お見舞いに来たのにダメなの?」

受付「はい。誠に申し訳ありません。藤村さんの意識が戻るまでは面会謝絶は解けません」

イリヤ「そう、わかったわ。ありがとう看護婦さん」

受付「どういたしまして」

イリヤ「アーチャー、アーチャー聞こえる?」

アーチャー「霊体化していても君の声は聞こえているよ」

イリヤ「それでタイガの病室はどこにあるのか分かった?」

アーチャー「最上階の708号室だ」

イリヤ「まさかそこまで立ち入り禁止ってオチじゃないでしょうね?」

アーチャー「大丈夫だ、問題ない」

イリヤ「そ、じゃあ行きましょうか」
161 名前:名無し 投稿日:2014/05/16 23:12 ID:rpWVWW3t
大河の病室

アーチャー「こうして見ると、彼女の寝顔は昔からちっとも変っていないな」

イリヤ「そうね。ぐーすか寝ている大河を見てこれほど胸が締め付けられる日が来るなんて...」

 面会謝絶の病室に忍び込んだアーチャーとイリヤスフィールが見た藤村大河は、彼らの知っている

藤村大河の面影を残した、けれども彼女が彼女である証が消えてしまった大河がいた。

アーチャー「ゴメン...ゴメン藤ねえ」

イリヤ「実はね、セラにお願いしてタイガのことを調べてもらったの」

イリヤ「タイガね、右足が壊死しちゃったんだって」

イリヤ「ここからはあまりいい話じゃないんだけど、タイガもう長くないんだって」

アーチャー「もう十分だ、イリヤスフィール」

アーチャー「ただでさえ、右足を切断したふ、藤村、た、大河を見てショックを隠せないのに」

アーチャー「更に、更に悪い知らせを、聞かせないでくれ」

 錬鉄の英霊は彼自身が歩んできた見果てぬ旅路に置き去り、枯れ果てた涙を流していた。

後悔は既に出尽くしたにもかかわらず、それが自分から生じたものなら、尚更悔やんでも

悔やみ切れない。

 この時程アーチャーは衛宮士郎を憎んだことはなかった。

162 名前:名無し 投稿日:2014/05/16 23:36 ID:rpWVWW3t
午後六時、衛宮邸

セイバー「し、シロウ、今、なんと言いましたか?!」

士郎「だから、俺は藤ねえを置いてロンドンへと留学にはいけない」

士郎「だからセイバーには遠坂と一緒に倫敦に行ってくれと頼んでいるんだ」

 アーチャーが大河の病室で涙を流しているのと同じ時、衛宮邸でも一悶着が起きていた。

凛「士郎、自分が言っていることがどういう意味なのか分かってる?」

士郎「遠坂...ああ、分かっているさ。十分自覚している」

 目を真っ赤にした凛と普段の凛々しい佇まいが鳴りを潜め、おろおろしているセイバー。

普段の衛宮士郎ならばそんな状態に彼女達が陥っていれば、少なくとも真摯に向き合って

納得のいくまで根気強く付き合い、問題の解決を一緒にはかった。

 しかし、今回の問題を解決するには時間も心の整理も何一つ十分ではなかった。

セイバー「それでは士郎はどうするのですか!」

士郎「俺は...藤ねえのことを見捨てられない」

セイバー「そんな、じゃあ私と凛、サクラは...」

凛「セイバー、そこまでよ」

凛「確かにここら辺が潮時かもね...」

 遠坂凛、18歳。彼女は既に処女ではない。

しかし、性交渉の経験も両手両足の数以上はしていない。

つまるところ彼女は恋愛に対して億劫な上に、初心でもあった。

凛「オーケー、要するに彼女面した寄生虫どもを一気にまとめてお払い箱」

凛「それで万事大団円で収まるっていうのが、士郎の主張ね」

士郎「遠坂!どうしてわかってくれないんだよ」

士郎「俺はただ家族を、藤ねえにしたことの償いをしなけりゃいけないんだ」

士郎「遠坂だって桜が藤ねえの様になったら、俺と同じ気持ちにならないのか」

凛「桜って誰よ?少なくとも遠坂桜は十年前以上に間桐桜になったわ」

凛「血を分けていない姉弟同然の士郎が我を忘れて取り乱すのに」

凛「どうして私が同じじゃないっていうのよ」

凛「私が言いたいのは、私が士郎に求めているのはただ一つ」

凛「士郎が私の家族になってほしい。私を一人にしないでよってことなのよ!」

凛「どうしてわかってくれないのよ!」
163 名前:名無し 投稿日:2014/05/17 00:03 ID:FRT1s4q1
セイバー「リン、それは」

 嘗ての主従が驚愕の表情を浮かべ、目の前の遠坂凛を見遣る。

 士郎は知っていた。自分を取り巻く女性達の過剰なアピールが何を意味するのかということを。

理解しているが故に、士郎はあえて黙認した。

 それは彼女たちの優しさに甘えるなどと言う陳腐な理由ではなく、彼女達が自分に失望して自分の

下から去らないようにするための士郎なりの精一杯の方策だった。

 士郎は予知していた。

自分が誰か一人を選べば、心の拠り所を失った残りのメンバーが、それこそ自分を

再び選ぶように選ばれた一人と生死の決着がつくまで白黒をつけるということを。

セイバー「それでは私はどうなるのです!」

セイバー「一番聞きたくなかった形で、リンの本心を聞いてしまいました」

セイバー「リン、これから私はどうすればいいのか答えてください!」

セイバー「ブリテンとは何もかも乖離した世界に取り残された私の想いは!」

セイバー「シロウ、答えてください」

セイバー「私は生きていていいのですか?それとも死すべき存在なのですか?」

士郎「うわあああああああああ!!!!」

士郎「俺に何もかも乗っけないでくれええええ!!!」

士郎「なんだよなんだよなんだよ!!!じゃあ俺がプラナリアみたいに分裂して、
   一家に一台の掃除機みたいに皆のニーズに答えりゃいいのかよ!」

士郎「さっきから言っているだろうが!俺は藤ねえの事を見捨てられないって」

士郎「全てが一段落したら、その時また遠坂とセイバーと一緒に倫敦に行くって」

士郎「既に答えを出してるのにどうしてわかってくれないんだよおおおおお!!!」

凛「分かりたくないから、士郎のことが好きだから私は引き下がらないのよ!」

凛「お父様は綺礼に殺された」

凛「残されたお母様は間桐のマスターに殺されかけ、脳に重い障害を患ったわ」

凛「思い出の中でしか残された時間を生きられなかった。私を見てくれなかった」

凛「両親が死んだ後、私に残ったのは魔術と心の傷」

凛「そして血を分けながら袂を分けてしまったたった一人の妹よ!」

凛「私はともかく桜には絶望しか残ってないじゃない!」

凛「だから、私は士郎を逃がさない。絶対に逃がさない!」

164 名前:名無し 投稿日:2014/05/17 00:09 ID:FRT1s4q1
 疲れ果てながらも瞳の奥底に指した黒い光だけがその輝きを増し続けている。

遠坂凛はこの時、嫉妬に狂い国を滅ぼした女達の心の根底にある情動を完全に理解した。

凛「何もかも手に入らないのなら...何もかも手に入れてやるーーーっ!!!」

凛「令呪を以て、セイバーに命令する!」

セイバー「やめろおおおおおおおお!!」

 セイバーが絶叫と共に凛のしようとしていることを止める前に、彼女は最大の禁句を口に....
165 名前:名無し 投稿日:2014/05/17 00:20 ID:FRT1s4q1
アーチャー「凛、一体何をしているんだ君は!」

凛「離して、離しなさいよ!アーチャー!」

アーチャー「断固拒否する!セイバー、早く彼女を気絶させろ」

セイバー「は、はっはい!」

 アーチャーに拘束された凛はじたばたともがいていたが、セイバーの当身により気を失った。

セイバー「はぁはぁはぁ...凛、もうなにもかもがおしまいです」

 まるで明日世界が滅ぶかのような表情をしたセイバーはそのまま泣き崩れた。

士郎「ハハハ、アハハハハハハハハ!!!」

士郎「ヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」

イリヤ「そっか。士郎は凛とセイバー、サクラよりも家族を選んだんだ...」

 壊れかけた兄を抱きしめたイリヤスフィールの顔には憐憫と憐みが浮かんでいた。

 だが、彼女は知らない。彼女自身が気が付いていないうちに浮かべていた表情が

いつの間にか嘲笑へとその姿を変えていたということに...。

166 名前:名無し 投稿日:2014/05/17 00:32 ID:FRT1s4q1
アインツベルン城、午後九時

士郎「ここは?アインツベルン城か」

 士郎が気が付いた時にはすべてが様変わりしていた。

リズ「ヤッホー」

士郎「リズか...、遠坂は?セイバーは」

セラ「遠坂嬢とセイバーはアーチャーが責任を以て遠坂邸にて監視しています」

士郎「セラ...そっか、全部俺のせいだよな」

セラ「傷口にハバネロをぶち込んでも足りないくらいの最低な行為を貴方は
   自分の事を好いている彼女達にしでかしたのです」

セラ「私としては正直な話、お嬢様まで巻き込まないでほしいのですがね」

士郎「リズ、少し席を外してくれないかな?」

リズ「シロウ、何をする気なの?」

士郎「お腹が減ったんだ。何かあったかいスープか飲み物が欲しい」

リズ「分かった。十分くらい待ってて」
167 名前:名無し 投稿日:2014/05/17 00:53 ID:FRT1s4q1
 去っていくリズを見やりながらセラはフンと鼻を鳴らし、士郎へと向き直った。

セラ「それで?なにか私に話でもあるのですか?」

士郎「ああ、そろそろセラに言いたいことがあったんだ」

士郎「いい加減、俺を毛嫌いするのはやめてほしい」

セラ「別に毛嫌いなどではありませんよ」

セラ「元から貴方の事は好きではありませんから」

士郎「...セラ、君から見た俺は加害者なのか?それとも被害者なのか」

セラ「第三の選択肢として犯罪者とだけ答えておきましょう」

セラ「裏切り者の衛宮切嗣のせいでお嬢様は苦しんだ」

セラ「確かに貴方は被害者です。それは私とて理解しています」

セラ「ですが」

士郎「一つだけいいか?セラに覚えておいてほしいことがある」

 セラの嫌悪感に満ちた全てを受け流した士郎は音もなく席を立ち、あっという間に

セラの背後を取った。当の本人が気が付いた時には首筋に一筋の赤い線が走っていた。

士郎「俺は、衛宮切嗣の息子だ」

士郎「イリヤはイリヤの母さんと衛宮切嗣の娘だ」

士郎「俺は第二の切嗣じゃない。イリヤはイリヤの母さんの複製じゃない」

 投影した剣製の中から殊に切れ味に定評のある脇差をセラの首筋に当てながら

士郎は更にその押し当てる強さを強めた。

リズ「シロウ、スープとパンだけ持ってきた」

士郎「ありがとう。リズ」

 セラが気が付いた時には、既に士郎は向かいのソファに座っていた。

リズ「セラ、イリヤがそろそろ来るから私達は休もう?」

セラ「え、ええ。そうですね」

 首筋に手を当てる。首筋を伝う生暖かい血液は出ていない。

底知れぬ殺気を飛ばしてきた衛宮士郎は、いつもと変わらない穏やかさを浮かべて

パンとスープを夢中になって食べていた。

リズ「セラ?早くしよ」

 セラはリズと共に士郎のいる一室を後にした。
168 名前:名無し 投稿日:2014/05/17 22:31 ID:FRT1s4q1
イリヤ「どう、少しは落ち着いたかしら?シロウ?」

士郎「イリヤか...さっきのは、その凄くえーっと、お、大人の事情で....」

 不意を突くような形で部屋に入ったイリヤを見るなり、ばつが悪そうな顔をした

士郎は手に持っていた食器とパンを置いて、イリヤの方に向き直った。

イリヤ「なに言ってんのよ。私の方がお姉ちゃんなんだぞ?」

イリヤ「タイガの事聞いたよ。ショックだった」

 肩をすくめたイリヤはベッドの近くにある椅子に深く腰掛け、弟に話を促す。

士郎「イリヤ....ってことはもう全部何から何まで知ってるのか?」

イリヤ「まーね、方々から色んな噂が流れてるわけだし」

士郎「そっか、そうだよな...藤ねえがああなったのは全部俺のせいだ」

 どこか遠い目をしながら、そのくせ一人になりたくないという雰囲気を醸し出す

意地っ張りな士郎を見たイリヤは少しだけ安堵した。

 これから自分がしようとすることは、結構リスキーな賭けだということは自覚している。

顔馴染みの弱みに付け込むことに抵抗感は感じても、それが結果的に自分を信頼した

彼女達への裏切りになると分かっていても、イリヤには後悔する気などさらさらなかった。

イリヤ「シロウがそういうことにしたいのなら、そうすればいいと思う」

イリヤ「でも、シロウ。ここにもタイガを追い詰めた元凶がいるのよ?」

イリヤ「シロウに怒られても何も解決しないけど、それでも私も結構参ってるの」

士郎「よしてくれよ、イリヤ。もう今は一人になりたいんだ」

 完全に憔悴しきった士郎は徐に立ち上がり、近くにあったベッドに潜り込んだ。

イリヤ「シロウさえよければ、気が済むまでここにいてもいいんだよ?」

 自分の意図を気取られずに、士郎のベッドに潜り込もうとするイリヤ。

しかし、その時胸に激痛が走った。

イリヤ「~~~~~~~~!!!!!!」

士郎「イリヤ?!どうしたんだ?」

169 名前:名無し 投稿日:2014/05/17 22:49 ID:FRT1s4q1
イリヤ「う~ん、ここ最近体にガタが来ててね。なんとかここ最近は立て直したんだけど」

 苦笑いをしながら軽い咳をした。背中をさする士郎の手が

自分の体温の低さを感じ取り、驚いたようにその動きを止める。
 
 案の定、手には自分の血がこびりついていた。

士郎「イリヤ、まさかお前...」

イリヤ「えへへへ、やっぱり士郎に嘘はつけないな~」

 これから目の前の男を籠絡しようとしているのに、それを

邪魔したのが自分の崩壊寸前の身体だと思うと、イリヤは

無性に泣き出したくなってきた。

イリヤ「そ、士郎が考えている通りのことが私に起きてるの」

イリヤ「この分だと、タイガの次は私が不幸な目に遭うのは確実ね」

士郎「止めてくれよ....もう、嫌だ」

 自分にとって最も近しい人達が死んでしまうかもしれない恐怖に

耐え切れなくなった士郎は遂に泣き出してしまった。

 まるで子供の様に泣きじゃくっている士郎を力の籠らない腕で

懸命に抱きしめながら、首筋に舌を這わせていく。

イリヤ「泣かないでシロウ」

イリヤ「シロウはまだこれから先何十年も生きられるじゃない」

イリヤ「正義の味方を目指すなら、これよりもっと悲惨な光景に
     耐えなきゃいけないんだよ」

イリヤ「心を鬼にして、いま家族を、ここで私を切り捨てなきゃ」
   
士郎「できない!そんなことできるわけないだろ!」

士郎「なんでさ、なんで俺の思っている通りにならないんだよ」

士郎「俺はみんなを幸せにしたいだけなのに!」
170 名前:名無し 投稿日:2014/05/17 23:20 ID:FRT1s4q1
イリヤ「シロウのそういうとこ、私大好き」

イリヤ「けど、士郎は家族の大切さを蔑ろにしてる」

 弟を抱きしめた手を離したイリヤは、涙でぐしゃぐしゃになった弟の顔を

手で挟み込みながら、ごく自然にその唇を自分に引き寄せた。

 それは短い触れ合いだったものの、イリヤにとっては念願の一つだった。

イリヤ「シロウをここまで育ててくれたのは誰かしら?」

士郎「じいさん...」

イリヤ「キリツグはもうこの世にいないわよ」

 朦朧としながらも士郎は衛宮切嗣の名前を出した。

イリヤ「タイガのところのおじいさんとタイガのご両親でしょ?」

士郎「そうだ...うん、そうだよ」

イリヤ「シロウが小学校の時、運動会や遠足のお弁当を作ってくれたのは?」

士郎「藤ねえ、藤ねえだった」

 朦朧としながらも意図の見えないイリヤの問いかけに、まるで抗うように

士郎は答え続ける。

 しかし、その問いかけが終わる時がついに来た。

イリヤ「その時、リンやサクラ、セイバーはどこにいたの?」

士郎「どこにもいなかった....出会ってなかった」

イリヤ「そうよね?だけど私は士郎の事知ってたよ?」
171 名前:名無し 投稿日:2014/06/27 22:19 ID:7EO4omow
ドロドロだな
172 名前:名無し 投稿日:2014/07/04 21:03 ID:emj4AiGH
おそろしい…
173 名前:マサラタウン 投稿日:2014/07/06 18:28 ID:2c8rKFLA
ゾッとする
174 名前:名無し 投稿日:2014/07/17 23:11 ID:ICqnE5gy
なんつーか。あんま士郎は悪くなくね?ヤンデレ怖い。
175 名前:名無し 投稿日:2014/07/28 23:11 ID:FV1UtK9E
わあ…ガチで救いが無いじゃないか…
176 名前:名無し 投稿日:2014/07/29 23:21 ID:VwXdlfXn
イリヤ「お爺様が日本でキリツグがのうのう暮らしているって聞いた      時、私は耐えられなかった」

イリヤ「でも、お母様が死んだ後にキリツグが死んだときはもっと
    耐えられなかった」

士郎「俺も...その気持ちは大体わかるよ...」

士郎「嬉しいよな。例え血の繋がりが無くても...家族がいる」

イリヤ「そう。たったそれだけのことで私はまだ死ねないの」

イリヤ「正確に言えば、家族になるかならないかは、今此処にいる
     二人が決められる」

イリヤ「シロウ...私、シロウと本当の家族になりたい」

イリヤ「私...人間になりたい」
177 名前:名無し 投稿日:2014/07/29 23:32 ID:VwXdlfXn
士郎(イリヤの言っていることは、何一つ間違っていない)

 人間の姿を取りながら、人間ではない少女の苦悩と渇望は
士郎の心を揺さぶり続ける。

 誰が聞いても、イリヤの主張は正しい。
 正しいが故に、その正しさを士郎は認めることが出来ない。

 認めてしまえば、もう後戻りできないと分かっているから。

  だけど

士郎「イリヤ、俺は...俺じゃあイリヤを幸せにできない」

イリヤ「私が士郎を笑顔にしてあげる」

イリヤ「幸せになれなくても、一日一回笑えるようにする」

イリヤ「シロウも、一日一回私を笑わせて」

イリヤ「笑顔が幸せの始まりだから...」

士郎「でも、こんなことをしたら...」

士郎「今まで俺を助けてくれたセイバーや遠坂に顔向けできない」

イリヤ「...リンやセイバーじゃ、シロウを幸せにできない」

士郎「なんだって!」

イリヤ「私の僻み...かな」

イリヤ「もし私とヘラクレスがリンとセイバーの立場だったら...」

イリヤ「シロウを絶対に正義の味方になんかさせなかった」
178 名前:名無し 投稿日:2014/07/29 23:50 ID:VwXdlfXn
 魔術回路を全部引っこ抜いてでも、魔術から遠ざけた。
 
 そうつぶやいたイリヤの眼には涙が光っていた。

イリヤ「お願いします...シロウ」

イリヤ「私を、シロウの...家族にしてください」

イリヤ「たった一人だけの、世界に一人だけの」

イリヤ「シロウの家族になりたいの」

イリヤ「もう、一人はイヤ...」

 士郎の瞳を見つめ、ただただ自分の望みを伝える。
 
士郎「桜は...きっと泣くだろうな」

士郎「遠坂とセイバーも...ずっと恨むだろうな」

士郎「俺は、なんてあさましいんだ」

     
179 名前:名無し 投稿日:2014/07/29 23:59 ID:VwXdlfXn
イリヤ「シロウ。シよ?」

イリヤ「夢なら夢で、この瞬間が終わるまで私を犯して」

 真っ赤に泣きはらした目を姉に向けた士郎は、腕の中に抱きしめた
彼女をゆっくりと寝台の上に横たえた。

士郎「俺、約束する」

士郎「イリヤと必ず家族になるって」

士郎「どこにもいかない。誰も救えない」

士郎「そんな理想を捨てた俺を、イリヤは好きでいられるか?」

イリヤ「愛っていうのは水と同じなの」

イリヤ「どんなに姿や形を変えたとしても、またいつか、きっと
     巡り合える時が必ずやってくる」

イリヤ「私はずーっと変わらないわ、シロウ」

イリヤ「愛してる。その言葉以上に愛しているから」

士郎「イリヤ...イリヤ!!!」

~~~~~~~
180 名前:名無し 投稿日:2014/07/30 00:08 ID:ur6CvtZo
志貴「確かにイリヤさんの言っていることは正論だね」

士郎「はい。俺はイリヤを選んだんです」

士郎「セイバー、遠坂、桜」

士郎「彼女達が俺を今まで守ってきてくれた」

士郎「だけど、だけど俺はイリヤを放っておけなかった」

志貴「そうだね...。血の繋がりがなくても家族だから」

士郎「俺は、何を...間違っちゃったのかなぁ」

~~~~
181 名前:名無し 投稿日:2014/08/01 01:23 ID:MkfohXEK
面白いから待機
182 名前:名無し 投稿日:2014/08/02 00:04 ID:DtkhaJNm
凛の渡英前日

凛「イリヤ、単刀直入に言うわ」

凛「士郎を返して。お願い」

イリヤ「...わざわざご足労様」

イリヤ「けど、士郎は私を選んだの」

セイバー「...イリヤスフィール、貴女、自分が何を言って」

イリヤ「分かってるわ。だけど謝らない」

凛「...それは宣戦布告と受け取っていいの?」

イリヤ「なぁに?第六次聖杯戦争でも引き起こそうっての?」

凛「そうね。それも面白いかもしれないわね」

凛「だけど、私は今、素直に自分の負けを認めるわ」

イリヤ「そうね、身体を張ったジョークが効かない以上、
     結局はそういうことになるわね」

凛「私とセイバーはともかく、桜には気を付けなさい」

凛「多分、狂った女の狂気が士郎を襲うわ」

凛「バーサーカーがいないアンタは、格好の餌食よ」

イリヤ「返り討ちにしてあげる。いざとなれば...」

凛「ま、私もセイバーもこの恨みは忘れない」

凛「また戻って来るから」

凛「その時に、清算しましょう」

イリヤ「ええ、その時が楽しみだわ」

凛「行くわよ、セイバー」

セイバー「はい。マスター」
183 名前:名無し 投稿日:2014/08/02 00:14 ID:DtkhaJNm
空港にて

士郎「遠坂、セイバー...」

凛「士郎...よくも、不義理を働いたわね」

士郎「本当にごめん」

凛「ま、アンタがイリヤと藤村先生を選んだ理由は分かってる」

凛「家族のいない私とセイバーじゃ、全く理解の及ばない話だけど」

凛「士郎、なにがなんでも家族を守りなさいよ」

士郎「...」

凛「破門よ、アンタは私の弟子でもなんでもない」

凛「好きな所にいきなさい」

凛「冬木にいることは許すけど、これからは赤の他人」

凛「私は私の責任の下に、アンタと接する」

士郎「そっか、寂しくなるな」

凛「全くよ、それでも、私は今の状況にホッとしてる」

凛「さよなら、士郎」

士郎「さよなら、遠坂」

184 名前:名無し 投稿日:2014/08/02 00:16 ID:DtkhaJNm
アインツベルン城  午後二時

セラ「はい、こちら....えっ?」

リズ「どしたの?セラ」

セラ「リズ、お嬢様を連れてきて」

セラ「藤村さんの意識が戻ったそうです」

リズ「!わかった」

185 名前:名無し 投稿日:2014/08/02 00:35 ID:DtkhaJNm
冬木総合病院

大河「あぁ...うぁーっ、アーっ」

雷河「大河...こんな、こんなことってあるのか」

大河父「大河、僕が、僕が分かるか?」

 藤村大河の意識が戻った。

  だが、彼女から奪われたものは余りにも多すぎた。

 右足と言葉、そして記憶。
 
 彼女にとって大切な思い出の大半が、忘却の彼方へと沈んだ。

  それでも、大河は自分が生きていることを忘れなかった。

 雷河「先生よぅ、俺の孫娘は一体どうなっちまうんだ?」

 医者「右足を除く手と足は、機能を保っています」

 医者「ですが、頭蓋骨の破片が脳に突き刺さった結果、
     ウェルニッケ野、知覚性言語中枢...」

 医者「つまり、他人の言語を理解する働きをする分野が
     甚大な損傷をうけました」

 大河「つまり、娘は、もう誰とも話すことができない....と?」

 医者「その可能性は大きいですね」

 雷河「先生よぅ、なぁ頼むよ」

 雷河「どうすりゃ娘と話ができる?教えてくれ」

 医者「奇跡が起きない限り、不可能です」

 医者「藤村さんが個人的に依頼された、日本脳外科中央
     医院センター」

 医者「そこに大河さんを連れて行った時の診断結果です」

  淡々と、事務的に感情を差し挟まずに辛い現実を雷河と
大河親子に告げる院長の瞳には何も映っていなかった。

 深々と一礼して去る院長の後ろ姿を大河はなすすべもなく
見続けるしかなかった
186 名前:名無し 投稿日:2014/08/16 14:09 ID:mVEwQRIq
修羅場w
187 名前:名無し 投稿日:2014/08/24 22:28 ID:PrRNHiN2
 ゴールデンウィーク  冬木教会

ランサー「おい、坊主。ねーちゃんの容態はどうなってんだ」

士郎「あ...ランサー」

ランサー「話には聞いてたけどよ、大分ひどいんだってな」

士郎「そうだよ...医者の話じゃもう駄目らしいんだって」

士郎「俺は、もう俺じゃあ藤ねえを助けられない所まで来てる」

士郎「ところでランサー、アーチャーの奴知らないか?」

ランサー「ああん?そういえば野郎最近見かけねぇなぁ」

ランサー「っていうか何の用があるんだよ」

士郎「いや....いくつか聞きたいことがあったんだけど」

士郎「ランサーも知らないのか」

ランサー「...坊主、色々と大変なことが降りかかってるけどよ」

ランサー「しっかりとあのチビ助を守ってやれよ」

ランサー「じゃねえとお前、バーサーカーにぶっ飛ばされんぞ?」

士郎「...言われなくても、分かってるさ」

ランサー「おう、それならいいんだ」

ランサー「そいじゃあな」

士郎「ああ」
188 名前:名無し 投稿日:2014/08/24 22:39 ID:PrRNHiN2
  イリヤの病、そしてそれを救う為、バーサーカーは死んだ。

 それをきっかけに、俺の周りは少しずつ、何かがまだ見ぬ方向へと

 本来俺が辿るはずの未来を歪めながら進み始めた。

  藤ねえの交通事故を皮切りに、俺の生活は一変した。

 遠坂とセイバーを半ば裏切るような形で、俺は日本に留まり

 イリヤとアインツベルン城での同棲生活を始めた。

 朝から昼は肉体労働のアルバイト、そして昼からはイリヤと

一緒に藤ねえのリハビリ。そして夜は夕飯の後、セラに外国語を

二時間程度教わり、イリヤと一緒に寝る。

 そんな毎日が続いた。

 多忙ではないが、ここのところ一日が過ぎ去るペースがなんだか

 とても速く感じられる。

  慎二も桜もそれぞれ東京の大学に進み、色々と楽しんでいる。

  あの二人が楽しそうに電話口から近況報告をしてくるのが、

 ここ最近のイリヤと俺のささやかな楽しみだった。

  だけど、藤ねえの病状は日に日に悪化していくばかりだった...。

 そして、藤ねえの容体が悪化するにつれ、俺を取り巻く環境も

 また大きく変わりつつあった。
189 名前:名無し 投稿日:2014/08/24 22:59 ID:PrRNHiN2
どこかの場所で....

アーチャー「もう一度聞く」

アーチャー「三月十五日。あの夜お前は冬木図書館前の交差点で

        女をひき逃げした」

犯人「ちっ、違う。俺は...親父の命令に従っただけだ!」

犯人「大体、あの藤村組が悪いんだ」

犯人「俺達○×組の三次団体のくせに、俺達のシマをぶん盗り、

    挙句に、挙句に俺の組を潰しやがった!」

犯人「ははっ、ははははは!ざ、ざまあみやがれ」

犯人「アンタもあの女の身内か?だったらご愁傷様だな」

犯人「ニュースでみたぜぇ、もう右も左もわからないような

   身体障碍者になったんだ。胸がスカッとするぜ」

犯人「はぁはぁ、カタギが、いきがってるんじゃねぇぞっ!」

犯人「ヤクザやってるんならこうなることくらい覚悟の上だろうが!」

アーチャー「親の因果が子に移る。確かに間違っていないな」

アーチャー「だが、生憎私も人殺しには慣れていてね」

アーチャー「私怨でお前に贖罪させることにするよ」

犯人「へっ、さっさとやりやが...」

アーチャー「はぁ...全く私怨で剣を振るうと大抵碌な目に遭わないな」

アーチャー「ま、衛宮士郎には苦しみぬいてもらわなければ困る」

アーチャー「さてと、冬木に戻る前に...」

PRRRRR

アーチャー「あ、警察ですか...はいはい。実は...」
190 名前:名無し 投稿日:2014/08/24 23:18 ID:PrRNHiN2
魔術協会にて 

幹部A「さて、全員そろいましたかな?」

幹部B「ええ、そのようですな」

幹部C「近頃、アインツベルンに暗雲立ち込めるとの噂を耳に

     したのですが、その真偽のほどを伺いたいものです」

ボス「卿等の疑義については、彼に事情を話してもらう」

ボス「埋葬機関補佐位、入ってきたまえ」

??「はい、埋葬機関補佐位です」

幹部D「して、件のアインツベルンに暗雲立ち込めるとは?」

??「聖杯戦争のなんたるか、と言う説明は省略させて頂きます」

幹部F「確か時計塔に、その当事者が留学していますな」

幹部F「確か、遠坂凛という始まりの御三家の末裔だったと思うが」

??「ええ、そしてその戦場となった冬木に聖杯の器となった

   アインツベルンのホムンクルスと留学前まで一緒に居ました」

??「彼女たちの間には共に友好関係が築かれていました」

??「ですが、遠坂凛は魔術協会に対し、ある途方もない事実を
  
   隠匿していました」

ボス「それについては、私が卿等に分かりやすく説明しよう」
191 名前:名無し 投稿日:2014/08/24 23:27 ID:PrRNHiN2
ボス「結論から言おう。アインツベルンの聖杯の器の状態が非常に
   
   不安定になりつつある」

ボス「更に、アインツベルン家がその不安定な器を取り返すため」

ボス「その権力と野望を結集させつつあるという、不穏な動きを

   ここにきて隠すそぶりを全く見せなくなってきた」

ボス「彼らの狙いはただ一つ」

ボス「自らが作り出した、聖杯<核兵器>を取り戻すことだ」

ボス「そして、我々はそのアインツベルンを秘密裏に討ち取り、

   その全てを簒奪し、魔術協会に確固たる土台を作る」
192 名前:名無し 投稿日:2014/08/24 23:37 ID:PrRNHiN2
幹部G「既に我々が行動するための大義名分は揃っている」

幹部G「そうですな、鉱石学科教授」

教授「ええ、トオサカの後見人はあのロード・エルメロイⅡ世です」

教授「ですが、彼女をこちら側に引き込むための段取りは既に

   整っております」

教授「ですが、ロード。本当に彼女の後見人になると?」

ボス「無論、そのつもりだ」

ボス「後嗣にも恵まれなかった私だが、ここにきてようやく芽が
  
   出てきた」

ボス「受け入れるだけの愚者ではない彼女には、私も期待している」

ボス「さて、諸君。くれぐれも忘れて欲しくないのだが、このやりとりは

    秘密裏のものである」

ボス「全てが露呈すれば、我らは積み上げた全てを失う」

ボス「勝ち目が二割を切る厳しい戦いになる」

ボス「それでも諸君らは私についてきてくれるか?」

幹部たち「誓います!」

ボス「よろしい。ならば各自準備を整え時を待て!」
193 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 00:04 ID:KA4igrgF
冬木 間桐邸にて

慎二「えーと、これとこれは要らなくて....あとはこれとこれを残して」

ライダー「慎二、帰省してからずっと書庫に籠りきりですが...」

ライダー「一体何をしているのですか...」

慎二「ああ、爺の残した書物を全部売り払うんだよ」

ライダー「桜から聞いていましたが、本気ですか?」

慎二「今更だろう?それ」

慎二「僕にはもう魔術回路はない。桜もあっちで男を見つけた」

ライダー「?!本当ですか」

慎二「ああ、衛宮とのことが後を引いていると思っていたけど

    どうやらアイツもメンヘラじゃなかったんだ」

慎二「いやぁ、それがうれしくってさ」

慎二「爺も死んで、桜もようやく魔術からの呪縛から解き放たれた」

慎二「...あとは間桐の魔術に直系の僕が幕を下ろせばいい」

慎二「未練たらたらだけどさ、これが僕なりの清算だ」

ライダー「慎二...貴方は本当に...」

慎二「な、なんだよ、別にお前の為じゃないぞ!」

慎二「ふん、今は衛宮も大変だろうけどさ」

慎二「将来、アイツと一商売やろうと思ってんだよ」

慎二「なんだかんだ言っても、やっぱりアイツの隣が一番

    居心地がいいんだよね」

ライダー「た、大変です。し、慎二がこ、壊れてしまった」

ライダー「慎二、まさか湖に落ちたんですか?!」

ライダー「それとも貴方は金の慎二ですか?銀の慎二ですか?」

慎二「だーっ、もううるさいなぁ!」

慎二「おいライダー、飯作れよ」

ライダー「ふふっ、わかりましたよ」



194 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 00:26 ID:KA4igrgF
大河の誕生日

大河「あ...しどぉ....きだ」

士郎「藤ねえ、お誕生日おめでとう」

イリヤ「タイガ、これプレゼント」

 藤ねえが事故に遭ってから四ヶ月後の今日。

 彼女は二十六歳の誕生日を迎えた。

大河「こ・れは...ふくろ、ぅ」

イリヤ「うん。ふくろうの置物」

イリヤ「あとはね....」

 手に抱えた箱から藤ねえの為に選んだプレゼントを次々に

取り出して、ゆっくりと手渡していくイリヤ。

 理学療法士の先生や、烏滸がましいけど俺やイリヤの助けも

 あって、少しずつ藤ねえには笑顔と言葉が戻り始めてきた。

 だけど、それは。

 必ずしも第三者にとって常に最善である結末を導き出す為の

行動ではないと、俺は気が付けなかった。

 いや、イリヤはもしかしたら気が付いていたかもしれない。

 藤ねえが、病院の上のベッドで何を考えていたのかを...。

大河「いりゃ、ちゃ...。しろ、たと...話したい」

イリヤ「た、タイガ...」

士郎「...イリヤ、セラとリズのところに行ってくれ」

イリヤ「早まらないで、シロウ」

イリヤ「そんなの...誰も望んじゃいない」

士郎「分かってる。でも、それが藤ねえの気持ちなら...」

大河「ありがとぉ、イリーヌちゃ、ん」

イリヤ「えっ?」

 聞き間違いではなかった。

 藤ねえには、もう...。

 俺達にとっての藤ねえでいられる時間が、尽きていたのだ。
195 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 14:23 ID:32fPVYtW
期待しまくり
196 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 16:27 ID:KA4igrgF
イリヤが出て行ったあと

大河「士郎、こっち」

士郎「ああ、藤ねえのすぐそばにいるよ」

 藤ねえは俺を手招きし、俺は藤ねえと額が触れ合うまで近寄った。

大河「ん、ちゅ」

 何の脈絡もなく、俺に柔らかな唇が押し付けられた。

 俺もまた彼女の求めに応じ、過去何度も遠坂やセイバーと

交わしたように藤ねえへと口づけをかわした。

大河「おはなし、聞いて」

 短い言葉、そして切迫した表情が...。

いかに藤ねえが追い詰められ、孤独であるのかを物語っていた。

士郎「うん。うん」

大河「私、もう疲れ、ちゃった」

大河「病院のベッド、じゃなく、て士郎と一緒に寝。たい」

士郎「大丈夫、きっとすぐ退院できる...。退院できるよ」

大河「た、退院?だめ、私時間がなく」

士郎「なんでさ!どういうことだよ」

 失われたものは帰ってこない。

 たとえセイバーのアヴァロンであっても、それは不可能だ。

 だけど、今失われつつあるものをみすみす自分の掌から

零れ落ちていくことは絶対に俺は看過できない。

大河「すー、はぁあああ」

大河「あああ、あな、君...誰」

士郎「へ?」

大河「あっ、かわいいふ、くろー」

士郎「藤ねえ?!ははっ、なにボケてるんだよ」

士郎「お、俺のこと...忘れてない、よな」

 がくがくと身を振るわせた後、藤ねえは焦点の合わない瞳で

俺を見つめた後、まるで近所の子供に接するような口調で

語りかけてきたのだった。

 藤ねえ、いや...大河はこの時が来るともう分かっていたのだ。

 失われた脳の機能でも、ある程度は他の脳の分野がカバーを

してくれる。
 
 それにより補われた脳の機能、その全てを自分の伝えたいことに

費やすことが出来れば、きっといえる筈だ。

「さようなら」

 ただ一言の、堪えようのない悲しみを生み出す言葉を...。


197 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 16:37 ID:KA4igrgF
大河「あ、いいところに、いい男のこがいるぅ」

大河「ねえ、聞いてくれないかな?」

大河「わたし、の、夢と思い出の話」

士郎「はい、ぜひ聞かせて...下さい」

 あれだけ昼には晴れていた空は、いつの間にか暗く暗く染まり、

大河「わたしの、夢、はね...」

 あれだけ明るかった、姉が変わり果てたのと同じように...。

大河「キ、リ、ツ、グさんと白と家族...になるこ、と」

 全てを押し流す雨が、俺と藤ねえの別れの始まりを告げていた。
198 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 16:48 ID:KA4igrgF
 それから俺は涙をボロボロと流しながら、ずっと藤ねえの話に

耳を傾けていた。

 じいさんと過ごした日、剣道の大会で優勝したこと。大好きな

雷画じいさんと早くに死んでしまった母親の事。

 かけがえのない思い出を、まるで紙に書くように念入りに

俺へと藤ねえは記し始めていた。

 藤ねえの青白い手を握っている右手に、俺ではない

もう一つの右手が重ねられていた。

 イリヤだった。

大河「ふふっ、嬉しいなぁ。またお客さんが来てくれた」

イリヤ「おねーさんのお話、もっと聞いていたいな」

大河「うーんとね、次は...キリツグ、あれ?」

大河「エミツグさんだっけ?」

 一つの事を話し終えるたび、藤ねえは大切な思い出を

深い深い海の底に置いて行ってしまった。

 けど、その失った思い出と引き換えに自分の気持ちを伝える

言葉が徐々に戻りつつあった。
199 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 17:05 ID:KA4igrgF
大河「ふぅ、ようやくちゃんと話せるようになったわ」

士郎・イリヤ「「藤ねえ・タイガ?!」」

大河「やれやれ、手のかかる弟と妹だなぁ...」

士郎「藤ねえ、ああ元に戻ったんだな!」

士郎「ははっ、夢みたいだ!」

士郎「早速、早速みんなに電話しなきゃ」

士郎「雷画じいさん、それとも...それとも」

イリヤ「たいがああああああ~」

 残酷すぎる...。
 
 俺も、イリヤも...、雷画じいさんを初めとする藤ねえの家族にも

その時が来る覚悟なんか何一つできてないのに...。

大河「いやぁ~、参るなぁ~」

大河「誕生日に自分の遺言残す羽目になるなんてさ」

大河「士郎、イリヤちゃん。よーく聞いてね?」

大河「今から私が話すのは、私の遺産」

大河「決して忘れちゃいけない、私からのプレゼント」
200 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 17:17 ID:KA4igrgF
大河「まず最初に、イリヤちゃん」

イリヤ「はい」

大河「なんていえばいいのかなー?」

大河「遠坂さんとセイバーちゃんと修羅場ってるでしょ?」

イリヤ「ど、どうしてそれを?!」

大河「これでも先生なのよ?私」

大河「いい?何があっても士郎の傍に居なさい」

大河「私の様に、二人を置いて早死にするような目に遭っても

    絶対に好きな男の子を手放さないこと」

イリヤ「当然じゃない!」

イリヤ「血が繋がってなくても、私は士郎が大好き」

イリヤ「私が...シロウより」

イリヤ「早く死ぬような目に遭ったって、絶対に変わらない」

イリヤ「変わらないんだから!」

大河「うん、大変よろしい」

大河「悔しいなぁ、士郎のお嫁さんはイリヤちゃんかぁ...」

大河「いっけね、なんだか涙でてきた」

大河「シロウにいーっぱい幸せにしてもらいなさい」

大河「今まで幸せになれなかった分けも、これから生まれる

    イリヤちゃんと士郎の子供の分も...ね?」

イリヤ「うん、うん」

201 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 17:40 ID:KA4igrgF
大河「さてと、次は士郎!」

士郎「ふ、藤ねえ...」

大河「なぁに?そんなにびくついちゃって」

大河「大方私がこうなったのは自分のせいだって思ってるんでしょ」

士郎「俺が、俺が優柔不断だったせいで...藤ねえを、遠坂を

    セイバーを、桜を傷つけちまった」

士郎「藤ねえ、俺あの後遠坂とセイバーを捨て」

大河「もういい、それ以上言わなくていい」

大河「士郎、私はもう全部知ってるから」

士郎「えっ?」

大河「切嗣さんが何者で、士郎や遠坂さんが魔法使いだって

    ちゃーんと私は知ってるんだから...」

士郎「うそ、だろ」

大河「まぁ、知ったところでどうこうできないんだけどね」

大河「いい士郎。私が話すことをよく聞きなさい」

大河「まず、イリヤちゃんを幸せにしなさい」

大河「遠坂さんはともかく、セイバーちゃんは士郎のことを

    心の底から愛していた」

大河「けど、士郎は...士郎はそれを粉々に壊した」

大河「許される事じゃないし、最低なことだと思う」

大河「それが世間様からは到底理解できない爛れた関係だって

    言われようと、彼女達は士郎の隣に居たかった」

大河「だからこそ、士郎の家にいたのよ」

大河「陰口叩かれながらも、ずーっとね」
202 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 17:45 ID:KA4igrgF
士郎「俺は、怖かったんだ...」

士郎「守るべきものも、家族もいない空っぽの俺に、いきなり

    俺を必要とする女の子達が現れたんだ」

士郎「だけど、セイバーを選べば遠坂と桜が...」

士郎「遠坂を選べば、桜とセイバーが...」

士郎「桜を選べば、遠坂とセイバーが」

士郎「藤ねえを選べば、遠坂、セイバー、桜が」

士郎「傷ついたまま、どこかにいっちまう」

士郎「俺を置いて、どこかに行ってしまうんだ!」

士郎「俺は、皆の事が大好きなんだ!」

士郎「みんなと一緒に居たい!」

士郎「ただそれだけなのに...」
203 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 17:59 ID:KA4igrgF
大河「士郎はバカだなぁ...笑っちゃうよ」

大河「いくらステーキが美味しいからって、それと同じ位おいしい

    お寿司とかチキンと一緒に食べる人はいないでしょ?」

大河「人生で一つしか選べないものを、欲張って手に入れて

   自分の懐にしまいこんでも」

大河「結局、また捨てる羽目になるんだよ?」

大河「ましてや、女三人集まれば姦しいって諺があるくらい

    女っていうのは、想定外の生き物なの」

大河「小悪魔のような魅力があるって言われている女の子だって

    年を取れば本当の悪魔になるかもしれない」

大河「兄弟当然の間柄で、強い絆を感じた相手よりも、

    ぽっと出の新参者に奪われたりすることもある」

大河「士郎が解決したと思っても、その女の子の心と身体には

    予想している以上に虐待の傷跡やトラウマが残ってる」

大河「恋をするのは万人の権利だけど、愛っていうのは世界で

    ただ一人の人間が受けることが出来る権利なの」

大河「なあなあの言葉と、彼女たちの悩みを吹き飛ばすだけの

    力を手に入れた士郎には、そこを理解してなかった」

大河「だからこそ彼女達は、士郎にすがった」

大河「なぜなら士郎が三人を三人とも、歪な形であっても、

    無条件の愛を施してくれていると勘違いしたから」

大河「士郎はね、彼女達にもっと不平等であるべきだったと思う」

大河「私を選んで、彼女達を追い出すとか」

大河「えへへ、ひがんじゃった」

大河「でも、それでいいんだ」

大河「そうやって回り道して、おっきくなっていくんだからさ」
204 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 18:13 ID:KA4igrgF
 それきり藤ねえは黙りこくってしまった。

  次に藤ねえが口を開く時、本当に俺とイリヤは藤ねえと最後の

 別れを覚悟しなければならない。

  俯いた藤ねえの顔は良く見えなかったけど、ベッドシーツに

ポタポタと透明なしずくが垂れ落ちていた。

士郎「藤ねえ、泣かない...で?!」

 涙を拭おうと、引き出しの上に置いてあったハンカチを手に取った

俺は藤ねえの顔を凝視してしまった。

 涙だと思っていたのは、

 藤ねえの開いた口から垂れ堕ちる唾液だった。

大河「ま...だ、だいじょう。ぶ~」

 呂律の回らない口で、懸命に何かを伝えようとする藤ねえ。

士郎「イリヤ!ナースコールを!先生を呼べ!」

 だけど、イリヤは...。

イリヤ「シロウ、お別れの時間だよ」

士郎「ふざけるな!折角藤ねえが元に戻ったんだぞ!」

士郎「だから、だから...助けなきゃ!助け...」

 涙で視界がぼやける。

 だけど、どんなに叫びだしたくても喉から出るのは声にならない

そんな嗚咽しか出てこなかった。

大河「士郎...ッ!はや、く」

 ぜぇぜぇと荒い息を吐き出しながら、藤ねえは最後の一言を

懸命に絞り出そうと苦しんでいた。

士郎「藤ねえ、藤ねえ!」

 助けて、死にたくない!

 心のどこかでそんな言葉を待ち望んでいた自分がいた。

 がむしゃらにやれば、道はきっと開けると信じていた俺がいた。

 だけど...藤ねえは

 大河「私の頭の中の消しゴムが...自、朗を消す前...に」

大河「死にたい」

 大河「士郎の...手の中で」

  既に俺に看取られて、死ぬことを決めていた。

205 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 18:34 ID:KA4igrgF
 できない、藤ねえを見殺しにすることなんて...。

 できないよ、だって藤ねえはまだ...。

 大河「もー、おもぃ出せなくなる」

 大河「士郎...きりつぐさんのことを...」

 大河「脳の損傷、激しいから..でも士郎心配で」

  青ざめた顔に、死相を浮かべながらも藤ねえは懸命に

 自分に訪れる最後の時を引き延ばそうとしていた。

 士郎「死なないでくれぇ、藤ねえ!」

 大河「殺し...て、私を」

 大河「抜け殻になった私は、私じゃない」

 大河「だから、士郎...私を忘れないように...」

 士郎「できないよ...できない!」

 士郎「俺の、俺の家族を殺す事なんて!できないよ」

 士郎「あああああああああああ!!」

  頭をグシャグシャにかきむしり、藤ねえの身体を乱暴に

 揺さぶる俺を華奢な手で止めるイリヤ。

  そこには覚悟の差が如実に表れていた。

 大河「士郎...最後に士郎に夢をあげる」

 大河「私の...できなかったこと、士郎が...」

 士郎「わ、かった。言って、くれ」

 大河「足とか、手のない人達の為に...安くて頑丈な義手を

     作ってあげなさい」

 大河「病院、暮らしで一番苦痛、だったのが」

 大河「足がないせいで、剣道が出来なくなったことだったから...」

 大河「正義の味方じゃなくても、誰かを助けてあげられる」

 大河「忘れな...いで、わ、わ...たしを」

 大河「イリヤ。守れ」

 士郎「ふ、藤ねえ?」

 士郎「ああ、ああああああ...」

 士郎「うわああああああああああああああああああ」
206 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 18:40 ID:KA4igrgF
~~~~~

琥珀「藤村さん...さぞや無念だったでしょうね」

士郎「ええ、その通りだと思います」

士郎「藤ねえはあの後、意識を失い脳死になりました」

士郎「そして、その後...葬式が...」

志貴「士郎君...」

アルク「...ねぇ、犯人は?ひき逃げ犯はどうなったの?」

士郎「藤ねえを殺した犯人は...依然逃亡中です」

士郎「藤ねえを追い詰めたのは俺です」

士郎「だけど、犯人は捕まらなくって...」

志貴「それで、イリヤさんはどうしているんだい?」

士郎「はい、それは...」
207 名前:名無し 投稿日:2014/08/25 19:21 ID:KA4igrgF
  藤ねえの死は俺達に大きな影響を与えた。

 穂群原学園の生徒は言うに及ばず、藤ねえと関わりを持った人が

 彼女の死を悼み、遠方より冬木へと足を延ばしてきた。
 
  藤ねえの葬式は密やかに、しめやかに行われた。

  俺とイリヤだけが、藤ねえの最後を看取った。

  だけど、雷画じいさんはそれが気に食わずにことあるごとに

 辛辣な一言を投げかけてきた。

  けど、霊柩車が藤ねえを乗せて火葬場に行くとき、人目を

 はばかることなく大泣きしていた。

 『大河、大河-ッ!なぜ死んだ!何故だーっ!』

  俺とイリヤはその一言を聞いた途端、今まで抑えてきた

 感情が爆発し、泣き崩れてしまった。

  藤ねえが最後に俺に託した夢。

  その頃にはもう俺の頭の中から『正義の味方』になる、という

 理想は既に消え去っていた。  

  今の俺には『正義の味方』よりも、藤ねえから託された夢を

 何としても叶えることが何よりも重要だと思ったからだ。

  だけど、

  俺が思っていた以上に、俺は道を踏み外し過ぎたらしい。
  
208 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 18:20 ID:oMscWbEN
 俺が歩む道があるべき未来を逸脱したその結果、遠坂凛を

初めとする、衛宮士郎というかけがえのない存在を欠いてしまった

彼女達は、自分の思い描いた未来を手に入れることが出来なくなり、

同時に悪の魔手に囚われてしまったのだった。

 イリヤを選んだことに後悔はない。

 だけど、彼女達の未来を捻じ曲げてしまったこと。

 そして、

 自分の中にあるどうしようもない甘さを今でも俺は後悔している。
209 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 18:47 ID:oMscWbEN
イギリス 時計塔

凛「どうして...またルヴィアに負けた」

セイバー「....リン」

 藤村先生とのいざこざで、士郎が日本に残ることを決めた為、

私とセイバーは不本意な形でイギリスへ渡英した。

 言うまでもなく、時計塔に置いて遠坂家という魔術師の家系は、

単なる辺境の魔術師の家でしかない。

 だからこそ、最初のインパクトが大事だった。

 勝者なき聖杯戦争の初めての勝利者として、由緒と家柄だけの

ボンボンたちに張り合える絶対的王者としての風格を引っ提げて

時計塔へと留学する必要があった。

 最上級の使い魔と言うべき英霊と、異端の魔術使いにして

固有結界の保持者を弟子に持つ。

 そんな魔術師がどこにいる?いないだろう。

 私には士郎が必要不可欠だ。

 それは、家族を知らない妹の桜も聖杯戦争での戦いを共にした

セイバーも言うまでもなく同じだろう。

 だけど、私の愛した男は家族を選び、私達を切り捨てた。
210 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 19:00 ID:oMscWbEN
  そして、精神的に士郎に依存していた私とセイバーは留学早々
 
 窮地に立たされていた。

 ~~~~

 凛「どこが悪いのよ...」

  時計塔の特待生である私には、当然他の生徒の模範たれ

という意味合いでテストの成績は常にA+以上を求められる。

 だけど、その上の首席になるには100点満点+α+家柄が

絶対的にモノをいうのだ。

 必修科目である全体基礎を初めとして、鉱石学部は勿論

後見人であるロード・エルメロイⅡ世の「現代魔術論」の授業にも

出席し....etc,etc

 とにかく多忙なのだ。

 そして半端なくストレスがたまる。

 例えば100点満点が確実なテストで97点しか取れなかった。

 私のライバルが僅かながら私を上回っているとか...。

 そういう心労が、私の精神と肉体を徐々に侵略している。

 
211 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 19:18 ID:oMscWbEN

~~~~

講師「独創的かつ創造的な解答です。コングラチュレイション」

講師「しかし、既にキャパシティが定められ、なおかつ外部からの
  
    後付けで宝石にの魔力貯蔵量を拡張、再貯蔵すると言うのは
  
    些か無理があるように思えます」

遠坂「しかし、それは複数のサブの魔力貯蔵のある宝石の魔力
   
    振動波の共鳴を用い、疑似的に合一することで...」

講師「ミス・トオサカ。貴女は教授のテストの出題の趣旨からは

    少し外れています」

講師「教授はテストに置いて『汎用性に優れ、尚且つ安定した

    魔力供給を非常時においても活用できる方法』と

    出題してます」

講師「ですが、貴女の回答はそのリスクを軽視している」

講師「その点、ミス・ルヴィアゼリッタの回答は貴女に比べ

    多少の類似点は散見されますが、貴女の回答よりは

    少しだけ実用性が見いだせました」

遠坂「でも!」

講師「焦る気持ちはわかります。ですが...」

講師「首席候補が二人とも初期のテストでS-とSを出すのは

    この学科始まって以来の快挙です」

講師「テストの結果だけで首席の座が決まるわけではない」

講師「焦りは禁物ですよ。ミス・トオサカ」

~~   
212 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 19:27 ID:oMscWbEN
セイバー「リン、リン!」

セイバー「起きてください!大丈夫ですか?」

 耳元でセイバーの大声が聞こえ、眠い目をこすりながら起きる。

セイバー「うなされていましたよ?大丈夫ですか?」

凛「えっ、ああ大丈夫、なわけないか」

凛「ちょっとね、悪夢にうなされてたわ」

セイバー「リン、少しは休まないと...」

セイバー「いくらなんでも仮眠時間が日に3時間と言うのは

      私の目から見ても異常です」

セイバー「兵士でもない貴女が、敵襲に備える兵士と同じ

      リズムで生活すれば寿命を縮めてしまいます」

セイバー「お金がなければ、私が...」

凛「ストップ、それ以上は言わないの」

凛「また近いうちにまとまったお金が入るわ」

凛「大丈夫、大丈夫だから...」

 そうだ...明日はロード・エルメ....。

セイバー「凛?凛!」

 突如襲われた頭痛により、私はそのまま昏倒してしまった。
213 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 19:47 ID:oMscWbEN
 桜の日記 ある日の数ページから抜粋

 藤村先生が事故に遭った。

  先輩はともかく、兄さんや私にとって恩師である先生が不倶の

身となったことは私にとって強い衝撃的な出来事だった。

 卒業した兄さんの後を追い、私は一緒に東京の高校に転校した。

 この前帰省した時、美綴先輩と兄さんと一緒にお見舞いに行った。

 だけど、その時の先生は藤村先生ではなくなってた。

  あの優しかった先生が、あそこまで変わり果ててしまったことに

 あの兄さんがボロボロと涙を流していた。

  犯人は逃走中。早く捕まればいいのに...。  
214 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 19:50 ID:oMscWbEN
 ~~~

 病院の帰り道、先輩の家に寄った。

 熱い七月の陽射しを避けるように、あの大きな門をくぐる。

 だけど、そこには先輩はいなかった。

  そこにいた藤村先生のお父さんがいうには、姉さんと

 セイバーを先輩が先生を追いやったケジメとして縁を切った。

 とだけ私達に答えてくれた。

  ついでに君の顔も見たくないとはっきり言われた。

  今、先輩はイリヤさんのお城に厄介になっているそうだ。

  随分と答えるのに渋っていたけど、姉さんとセイバーが

 しっぽを巻くようにしてロンドンに行ったことが少なからず

 私にプラスになった。

  多分、先輩はイリヤさんに誑かされてあの二人をイギリスへ

 追いやったんでしょう。

  だけど、私はそうはいきませんよ。

  先輩とのことを諦めるつもりはありませんが、『非常事態』に

 いつでも備えられるように準備を整えなくては...。

  
215 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 20:05 ID:oMscWbEN
九月  アインツベルン城

慎二「おーい、衛宮!」

士郎「慎二!ああっ。久しぶりだな。元気にしてたか」

 残暑の残る九月に慎二が冬木に戻ってきた。

  なんでもセラとリズが買い物をしている時に、向こうから

 声をかけてきたらしく、結局、訝しんだセラをリズが宥め、

 慎二を連れてきたのだった。

 慎二『藤村先生の墓に線香をあげたい』

 慎二『それにひきこもりがちの親友と積もる話をしたい』

 慎二『駄目なら駄目でいいから、携帯電話の番号を教えろよ』

  そこまで言われれば、私も引き下がります。

  めずらしく苦笑いを浮かべたセラにそう言われた俺は城の

 客室の一つに籠って、色々な話をしていた。

  久々に見る親友の顔は、どことなくひねくれてはいたものの

 吹っ切れたような表情を浮かべ、快活さすら感じさせる

 笑顔がなんだかまぶしかった。

慎二「僕はお前ほど暇じゃないからね」

慎二「お前と違って、毎日が満ち足りてるよ」

士郎「そっか...そうだよな」

士郎「半端者の俺と違って、慎二はもう夢を見つけたんだな」
216 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 20:10 ID:oMscWbEN
慎二「夢っていうより、過去を清算したんだ」

士郎「清算?」

慎二「ああ、近々間桐の魔術に関する書籍を売り払おうと

    考えているんだ」

士郎「慎二、お前...」

慎二「まぁ、聖杯戦争のことは悪い夢だと思うことにするよ」

慎二「あのジジイも死んだし、桜もまともになり始めてる」

慎二「間桐の忌まわしい魔術を僕で終わらせる」

慎二「未練は残るけど、これが一番手っ取り早いあのジジイへの

   復讐だからさ...」

 慎二が此処まで変わるとは思ってもいなかった。

  びっくりして口をパクパクしている俺を可笑しそうに見やった

 慎二は、次にこう持ちかけてきた。
217 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 20:21 ID:oMscWbEN
 慎二「あのな、衛宮」

 慎二「僕は将来、何か商売を立ち上げようと思ってる」

 士郎「へぇ、どんな商売にするんだ?」

 慎二「それは、まだいくつかアイディアが出てるだけだけど」

 慎二「取りあえず、当座の金が必要になるんだ」

 慎二「そのために、あのジジイの書いた魔術書を高値で

     買ってくれる魔術師の家に渡りをつけて欲しいんだ」

 士郎「それは...うーん」

 慎二「勿論、ただでとは言わない」

 慎二「売れた金の三割を仲介料としてお前に渡すからさ」

  確かに聖杯戦争を考案した一族とだけあって、間桐の家は

 ある意味でいえば遠坂やアインツベルンに並ぶ大家ともいえる。

  門外不出の聖杯戦争関連の魔術書。

  それも間桐臓硯本人や、歴代の間桐の当主の書いた本なら

 その筋の人間なら、大枚叩いてでも全部を買い取るだろう。

  下手をすれば数十億もの大金が手に入るかもしれない。

  慎二の目論見も確かに悪くはない。

  
218 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 20:28 ID:oMscWbEN
 士郎「でも、渡りをつけるって言ったってなぁ」
 
  確かにカレンとかバゼットのような関係者...。

  バゼット?

 慎二「ほら、あの脳筋女。バゼットっているじゃん」

 慎二「あの女、魔術協会ではそれなりの立場じゃん」

 慎二「家はそんなに権力はもっていないだろうけど...」

 慎二「それでも...僕が連中に取引を持ちかけるよりかは

     ことはだいぶ楽に運ぶだろう?」

 士郎「確かにバゼットっていうのは考えたんだけど...」

  バゼットだからなぁ。

 慎二「まぁ、今年中にちょっとバゼットに話を通してくれよ」

 慎二「売れなきゃあんな本、役立たずのちり紙以下だからな」

 慎二「なんなら古紙回収のトラックに乗せるのもいいかもな」

 士郎「ハハハ。魔術書がトイレットペーパーに生まれ変わる。

     慎二の冗談でここまで笑ったのは初めてだよ」

 慎二「ま、一つ目の頼みごとは終わり」

 士郎「なんだよ、まだ二つ目とかあるのか?」

 慎二「ああ、あるさ」
219 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 20:38 ID:oMscWbEN
 慎二「二つ目の頼みごとっていうのはな、衛宮、お前だよ」

 士郎「俺?」

 慎二「ああ、お前に用があるんだ」

 慎二「衛宮、もしよかったら...」

 慎二「僕の会社で働いてくれないか?」
 
  えっ、

  予想外の事に思わず固まってしまった。

  目の前には深々と頭を下げる慎二がいる。

 士郎「えっ、えっと...どういうこと、なのかな...」

  イリヤの事もあるし、遠坂やセイバーのことだって...。

  今は遺恨や未練が渦巻いているけど、彼女達の為にも

 近いうちに答えを出さなければならない。

 慎二「メイドからは、あのチビの病気の事も聞いてるよ」

 慎二「お前が遠坂を裏切ったことも...」

 士郎「痛いとこ、つくなぁ...」

 慎二「だけど、いつまでもガキじゃいられないんだよ」

 慎二「男なら尚更だ。そうだろ?衛宮」

 士郎「そうだけどさ...」

  慎二から打ち明けられた夢に、俺は心が躍った。

  なんだかんだ言って慎二は、遠回りしながら前に進む。

  癖はあるけど...。それも徐々に丸くなり始めている。

 慎二「まぁ、見てくれよ」
 
 慎二「大学の商学部で、僕が作った未来設計図だ」
220 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 20:54 ID:oMscWbEN
  慎二がビジネスバックの中から取り出し、俺に手渡したのは、

 何百ページにもわたる慎二の夢の結晶だった。

 士郎「これは...障害者の為のスポーツ用品を作る会社?」

 慎二「まだ...会社を作るかどうか決めかねている」

 慎二「決心がついていないのもあるし、あまり前例のない

     ビジネスモデルだから、人が集まりにくい」

  おおよそ慎二には、なんというか、似つかわしくない事業

 企画書だったが、これを作り出すのに、果たして慎二は

 どれだけの苦労と決意をしたんだろうか?

 士郎「話を、聞かせて欲しい」

 慎二「本当か?!」

 士郎「俺も、慎二と同じでまだ保留し続けている問題がある」

 士郎「魔術の事、家族の事」

 士郎「これらが全部終わらなけりゃ、いや仮に終わったとしても」

 士郎「...ごめん。話を続けてくれ」

 慎二「あ、ああそうだったっけな」
221 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 22:09 ID:oMscWbEN
 慎二「取りあえず、お前に見せた紙の束は、まぁこれは

    事業計画書じゃない」

 慎二「とあるボランティア活動の活動を日本国内でやれば

     どうなるのか?そのシュミレーションのようなもの」

 慎二「これは僕の通っている大学では来年から始動する

     プロジェクトでもある」

 慎二「僕はこのプロジェクトで学生たちの取りまとめを任された」

 慎二「まぁ、大学では大企業の下で僕達学生が企業の新しい
  
     ビジネスモデルを手伝う形になる」

 慎二「各方面から色々な人材が集まる」

 慎二「僕はこのプロジェクトで、色々なノウハウを培って

     卒業までに必要な人材を確保する」

 士郎「もし俺が加わる時は...何を任せてくれるんだ」

 慎二「そうだな、商品の製造に関わってもらうことになる」

 慎二「まだ、未来予想図だからさ...」

 慎二「どうなるか分からないけど」

 慎二「一度、このことをお前に話したくてさ」
222 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 22:36 ID:oMscWbEN
  慎二が今までに見せたことのない真剣な眼差しで俺を見つめる。

  だけど、今の俺にはそれを直視することが出来なかった。

  薄汚くて、浅ましい俺が...

  ようやく前に進みだした慎二の夢に果たして相応しいのか?

 慎二「...衛宮、悪いことはいわない」

 慎二「魔術とはこれきり縁を切った方がいい」

 慎二「少なくとも家族と冬木を出ていくことくらいはできるだろ」

 慎二「ここに居れば遠坂とセイバー、言いたくないけど桜も

     お前に危害を加える危険があるんだよ!」

 慎二「魔術を捨てたくなければ捨てなきゃいい」

 慎二「だけど、悪いことは連続して続くぞ」

 慎二「....今度、冬休みにまた冬木に戻るよ」

 慎二「その時に、また聞くからな」

  慎二の説得を否定しきれなかった。
 
  俺は、なんて救いようがないんだ。

  自分を好いてくれていた女の子達を『敵』と看做すなんて...。

 
223 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 22:53 ID:oMscWbEN

  これ以上の話はできそうにないと判断した慎二が、カバンの中に

 書類をしまい始めた。

 士郎「慎二!」

  ドアノブに手を駆けた親友に、俺は絞り出すように伝えた。

 士郎「...今は、まだ答えが出せない」

 士郎「その...藤ねえのことも、イリヤの事もあるから」

 慎二「分かってるよ」

 士郎「でも、でも、いつか必ず答えを出す」
 
 慎二「ま、衛宮の癖にこの僕の手を煩わせるなんて

     十年早いんだよ」

 慎二「いいさ、お前の返事は気長に待つよ」

 慎二「心の傷が癒えたら、その時にでもまた会おう」

 慎二「じゃあな、衛宮」

  結局俺は、何もできずに慎二の話を聞いただけだった...。
224 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 23:12 ID:oMscWbEN
 その日の夜

 イリヤ「シロ~、ごはんだよー」

 士郎「ああ、うん...」

 イリヤ「どうしたの?何かあった」

  藤ねえが死んだ後、俺は住み慣れたあの家を引き払い、

 イリヤのアインツベルン城に移り住んだ。

  セラは俺のことを一方的に敵視しているけど、リズが何かと

 宥めてくれているお蔭か、最近は幾分か柔かくなった様な

 気がする。

  藤ねえが死んだ後、イリヤと俺は夕食を二人だけで

 摂るようになった。

 イリヤ「今日はサバの照り焼きと、ハマグリとホウレンソウの

      酢味噌和え、カジカ汁。あとは...」

  イリヤと俺が仲睦まじく過ごせるのは実質彼女達のお蔭だ。

 士郎「北寄貝の炊き込みご飯」

 士郎「うん。よくできました」

 イリヤ「えっへん」

  嬉しげに笑う姉の笑顔が、今の俺の唯一の心の拠り所だ。

 士郎「頂きます」

 イリヤ「いただきます」

  二人で手を合わせ、ゆっくりと夕飯に手を付ける。
225 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 23:42 ID:oMscWbEN

 イリヤ「自分でいうのもなんだけど、うまくできた」

 士郎「ああ、そうだね」

  炊き込みご飯を頬張る自信満々のイリヤに対して

 合槌をうちながら、その口に着いた米粒をティッシュで拭う。

 士郎「イリヤ...」

  箸を置き、茶碗を置いたイリヤの身体を抱き寄せる。

 イリヤ「士郎、まだ辛い?」

 士郎「つらいよ...」

  藤ねえが死んだ影響は、俺が精神的に不安定になるという

 形で如実に表れてきた。

  底抜けに明るかった藤ねえの最後。

  そして藤ねえが最後に俺に託した夢。

  託されながらも、俺は前に進むことが出来なくなっていた。

 イリヤ「タイガ、いっつもシロウのご飯をとっても美味しそうに

      食べてたよね」

 イリヤ「こう、お茶碗を持って」

  強く力の籠った俺の腕を振りほどき、茶碗を持ちなおして

 藤ねえの真似を始めるイリヤ。

 士郎「ああ、『士郎のご飯はわたしのだあああああ!』」

 士郎「そう叫びながら、あの時は食べてたなぁ」

 イリヤ「げほっ、げほっ」

  藤ねえの真似をしてご飯が喉に詰まったのか、イリヤは

 せき込み始めた。

 士郎「こら、そんなに掻き込んで食べるからだよ」

 イリヤ「えへへ、ごめんなさい」

  小さな背中をさすりながら、俺も食事を再開する。

  藤ねえの次は、イリヤが...。

  そう思うと、俺は

 イリヤ「士郎、大丈夫だからね」

 イリヤ「いざとなったら...」

  耳元でイリヤの優しい声がした。

  はっ、となって振り返るとイリヤは何食わぬ顔で味噌汁を

 静かに啜っていた。

 
226 名前:名無し 投稿日:2014/08/26 23:52 ID:oMscWbEN
 イリヤ「ところで、さっきワカメと何を話してたの?」

 士郎「ん、ああ。さっき話してたのは...」

  セラに食器を下げて貰い、俺とイリヤはベッドの上に寝そべる。

 イリヤ「へぇ~、あのワカメが会社を立ち上げるなんてね...」

 士郎「うん。それで慎二が間桐臓硯の書いた本を全部どこかに

     ちゃんとした人に売り払いたいっていうんだよ」

 イリヤ「うーん、確かに価値はあるけど間桐の家自体が

      既に没落してるからなぁ」

 士郎「慎二が言うにはバゼットにも頼んでもらって、先方に

     それなりの額を出してもらえれば満足らしい」

 イリヤ「うーん、いいよ」

 イリヤ「その仲介、私がする」

 士郎「いいのか?」

 イリヤ「うん。やることないし」

  早速、慎二の問題が一つ解決した。
227 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 00:09 ID:bxQzlwGd

 イリヤ「ねぇ、シロウはさ」

 イリヤ「ワカメの会社で働きたいの?」

 士郎「うーん、どうなのかな...」

 士郎「でも、魔術は捨てられないな...」

 士郎「いざって時に、イリヤを護るために」

 イリヤ「ありがとう。私の王子様」

  そう、俺にはもうイリヤしかいないんだ。

  遠坂もセイバーも、全部切り捨てた俺には...。

 イリヤ「シロウ、これだけは覚えておいて」

 イリヤ「私はシロウのお姉ちゃんだけど、同時にシロウの

      人生においては、一つの選択肢でしかない」

 イリヤ「私と結婚するのも、私以外の女の子に目移りして

      その子を守るのもシロウの自由」

 イリヤ「だけど...私は私よりシロウに幸せになってほしい」

 士郎「俺には、そんな価値...」

 イリヤ「あるの!だって私がシロウの傍にいるじゃない」

 イリヤ「大丈夫、どんな形になっても私はシロウを忘れない」

 イリヤ「だから....ふぁ~」

  最後の一言を言い終える前に、イリヤは突然大あくびを

 して、コテンと眠ってしまった。

 士郎「....イリヤ、俺の方こそ」

  薄いイリヤの胸に耳を当て、その心臓の音を聞く。

  ドクドクと鼓動を刻む俺の心臓と比較して、イリヤの心音は
 
 とても頼りなく、か細い音だった。

 士郎「なぁ、どうすればいいんだ...じいさん」

  月を見上げながら、俺は今は亡き義父へとそっと問いかけた。
228 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 00:19 ID:bxQzlwGd
 桜の日記 抜粋

  今日、カレンさんからとんでもないことを聞いてしまいました。

 近いうちに魔術協会が冬木に視察でやって来るそうです。

  名目上は査察ですが、本当の狙いは先輩を誑かした

 あのイリヤさんをひっとらえるという剣呑な話でした。

  一応、余計なことをしなければ私や先輩に危害は

 加えないそうです。

  ライダーの身に危険が迫っている。

  そして先輩の身にも...

  だからこそ、私が先輩を助けなければならない。

  どんなことがあっても、どんなことをしても...。
  
 
229 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 20:32 ID:bxQzlwGd

 ~~~~

 セラ「お嬢様、本当によろしいのですか?」

 イリヤ「...あまり時間がないの、煩わせないで頂戴」

 セラ「エーデルフェルトにはフラガ経由というのはまだ頷けます」

 セラ「しかし、門外不出のアインツベルンの名を用いて

    死徒27祖と独断で取引...」

 イリヤ「別にアインツベルンの錬金術に関するものを黙って

     売るわけじゃないのよ?」

 イリヤ「それに、今頃イギリスの魔術協会ではアインツベルンを

     ぶっ潰そうって動きがあるみたいだし」

 セラ「...お嬢様、もうおやめください」

 セラ「セラはお嬢様のことが世界で一番大好きです」

 セラ「あの衛宮の血脈のせいで、お嬢様が苦境に陥るところを

    再び看過することはできません」
230 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 20:42 ID:bxQzlwGd

イリヤ「ふーん、私も一応衛宮の血脈なんだけどな」

セラ「従者として逸脱した進言を、私は心より恥じております」

セラ「ですが、貴女が苦しむのは...もう見たくないのです」

イリヤ「随分と饒舌ね。いつからセラは私の生き様に口出しが

    できるほど、偉くなったのかしら?」

イリヤ「どうせ私は人間じゃない。シロウの子供も産めない...

    女にもなりきれない最悪の失敗作よ」

イリヤ「リンもセイバーも桜も、認めたくないけど」

イリヤ「私よりかはずっとシロウにふさわしい」

イリヤ「後にも先にも、私が道理をすっ飛ばして無理を通すのは

    これだけにするから、いい加減従いなさい」

イリヤ「やっと、私の夢が叶った...」

イリヤ「だから、私の生きているうちには...」

イリヤ「もう誰にもシロウは渡さない」

セラ「...」

イリヤ「もう一度言うわ。私に従いなさい」

イリヤ「従わなければ、分かってるわよね?」

セラ「...お嬢様、わかりました」    

セラ「このセラ、従者の務めに則り、万事仔細滞りなく...」

セラ「最後の時が来るまで、お嬢様にお仕えいたします」

イリヤ「...無理言ってごめんね」

セラ「私も覚悟を決めました」

セラ「お嬢様、どうかくじけないで下さい」

231 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 20:57 ID:bxQzlwGd
 セラ「もう、私から申し上げることはありません」

 セラ「ですが、お嬢様に一つ訂正して頂きたいのです」

 イリヤ「なにかしら?」

 セラ「先程、お嬢様はご自分が女にもなりきれない失敗作。

    とおっしゃられました」

 イリヤ「だって、もう死んじゃうじゃない」

 セラ「確かに、私やリズもその通り『失敗作』でありましょう」

 セラ「ですが傍から見れば卑怯卑劣で、誰にも理解されない

    愚行であったとしても...」

 セラ「好きな相手の為に命を張り、形振り構わず前進するのは

    お嬢様が遠く及ばないと断じた人間そのものの在り方です」
 

 セラ「お嬢様は、もう恋敵と同じ土俵に立っているのです!」
    
232 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 21:14 ID:bxQzlwGd

 セラ「たとえ、敵となった彼女達と刺し違えようと...」

 セラ「どうか、奥様と...旦那様の二の舞にならないで...」

 イリヤ「うん。ありがとセラ」

 イリヤ「最後まで頑張るから...」

 セラ「衛宮士郎は衛宮切嗣とは違う...」

 セラ「だけど...お、奥様を裏切った男の息子だから、きっと...

    きっとあの男もいつかお嬢様に仇なすと....」

 イリヤ「泣かないで、セラ」

 イリヤ「しょうがないよ。うん、しょうがないんだもん」

 イリヤ「走り出した男を、女は止められないんだから」

 イリヤ「それが、愛した相手ならなおさらよ...」
233 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 21:20 ID:bxQzlwGd
 ~~~
 
 イリヤ「それじゃあ、やってくれるわね?セラ」

 セラ「一応、すべての準備は整っています」

 セラ「が、本命のエーデルフェルトとフェムについては

    先方の出方に細心の注意を払わねばなりません」

 セラ「護衛兼立会人として、ランサーとバゼットには同席して

    もらいますが、よろしいですね?」

 イリヤ「うん」

 セラ「では、私めはこれで失礼します」

 

    
234 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 21:25 ID:bxQzlwGd

 イリヤ「ゲホッ、ゲホッ」

 イリヤ「血は、ちょっとだけ出ちゃったか...」

 イリヤ「私の身体が小康状態の内に、せめて...全部がうまく」

 イリヤ「はぁはぁ、もう少しだから...」

 イリヤ「もう少しだけでいいから...持ちこたえて」

 イリヤ「死んでも、死にきれない...」

 イリヤ「シロウ...だい、す」

  き....。

 
235 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 21:52 ID:bxQzlwGd

 10月 モナコ

 フェム「なに、アインツベルンからの親書だと?」

 手下「はい。ボス」

 手下「正確に申し上げれば、アインツベルンの当主ではなく

     アインツベルンが擁する聖杯の器が今回の依頼主です」

 フェム「その依頼とやらが、書かれた手紙を見せて貰おうか」

 フェム「....聖杯戦争に関する書物を売りに出す?」

 フェム「ついては、近日中に蔵書の一部をそちらに送ります...」

 フェム「どうか色よいお返事を...」

 手下「この手紙が送られてきたのが、小一時間前です」

 手下「そして、おいもってこい!」

 フェム「手の速いことだ、ホムンクルスの癖に...」

 手下「手紙の中で取り上げられた魔術書なのですが...」

 手下「間桐臓硯本人が書いた著書、そしてアインツベルンの

     錬金術に関わる書籍が合わせて七十冊ほど届きました」

 フェム「?!」

 フェム「アインツベルンめ、一体何を考えている?」
 
236 名前:名無し 投稿日:2014/08/27 21:57 ID:bxQzlwGd
 フェム「まぁ、いい」

 フェム「捨て値をつけるにはあまりにも惜しすぎる数々だ」

 フェム「おい、筆をここに」

 手下「はっ」

 フェム「モノがモノだ。内密に事を運ばなければならぬ」

 フェム「オーテンロッゼや聖堂教会に知れたら大事になる」

 フェム「前金?一括で二十億程送ってやればよかろう」

 フェム「アインツベルンには残りの蔵書を小分けにして

     こちらに全て送るように指示するのだ」

 フェム「誰にも気が付かれない内に、速やかに取り掛かれ」

 手下「了解」

      
237 名前:名無し 投稿日:2014/09/18 21:32 ID:txm1Qhnv
長い遅い面白くない
238 名前:名無し 投稿日:2014/09/24 02:10 ID:rZEFOIVQ
少なくとも俺は楽しみにしてるから続きがきたらうれしいな
239 名前:名無し 投稿日:2014/09/28 21:39 ID:ZGqY9NV4
wtkr
240 名前:名無し 投稿日:2014/10/12 02:28 ID:ViMZ3RyC
※237そりゃ面白くないだろうな自分が妄想する糞以下のオナニーssの方が面白いもんね〜。
241 名前:名無し 投稿日:2014/10/18 15:44 ID:0ntTniQJ
待ってるの辛い、書かないならそう書いてくれ
242 名前:名無し 投稿日:2014/11/01 04:20 ID:5PQS0mcs
続きが気になる
243 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 20:43 ID:KMQ2KQea
11月 東京某所

桜「いやっ!なにをするんですか」

男「へっへっへ、間桐桜だな、お前」

男2「俺達はなぁ、お前を攫ってこいって言われてるんだよ」

桜「ふざけないでくださっ?!ゲボァッ....」

男「うっせーんだよ、バーカ」

男3「おい、こいつどうする?輪姦しとこうか?」

男「いや、金だけもらってさっさと逃げようぜ」

男2「だな、性病持ちとかいってたしな」

男「しっかし、割がいいよなぁ」

男「女一人運んで、一人当たり50万」

男3「おら、とっとと立てや」

桜「ううっ」

男「ま、安心しろや。お嬢さん」

男「バツ食って泡吹いてるキチガイんとこに連れてく訳じゃねえ」

男2「ま、五体満足で日常生活が送れることは保証してやる」

男2「ただし、ちょっとばかり痛い目に遭うだけさ」

男「んじゃ、車出すか」
244 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 20:58 ID:KMQ2KQea
~~~

 目が覚めた桜の眼にはアイマスクが被せられ、自分が今どこで

何をされているのかと言うことを全く把握できない状態だった。

桜「ううっ、ここはどこ...ですか」

?「お目覚めかね、間桐桜君」

?「ああ、私が誰だという質問はこの際なしにしてくれ」

 呻く桜に優しげな女の声が、彼女の疑問を一つずつ解いていく。

桜「私を...どうするつもりですか」

 心と肉体の痛みと拷問にはもう慣れ切っていた。

 耐え忍ぶことに於いて、間桐桜はその方法を熟知しすぎている。

 故に、彼女は現時点で自分の四肢がはたして、解放される頃には

何本ほど残っているのだろうかと言うことを考えている。

 だが、

?「いや、拷問というのはなしにしよう」

?「君はそういうのに凄い強い耐性がある」

桜「だから...」

?「そう、だから」


?「私は君を、一生涯幽閉することにするよ」


 
245 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 21:13 ID:KMQ2KQea

桜「どういう...ことですか?」

?「うーん、それはね...君のお姉さんが原因だと断言しよう」

?「彼女が今、留学している所は知っているよね」

桜「イギリス...時計塔」

?「そう、そこで彼女は苦境に立たされているんだ」

?「端的に言えば、精神不安定で日常生活が送れない」

?「人目を憚る事無く魔術を行使し」

?「画を通し過ぎては、周囲の人物と多々衝突する」

?「かくいう私も、彼女に手酷くやられてね」

?「時計塔を放逐されたんだ」

桜「私に、姉さんの事で何をしろっていうんですか?」

?「なにをしろっていうわけじゃないんだ」

?「用があるのは君の魔術回路」」

?「まぁ、それを根こそぎ引っこ抜けば君は用済みだ。OK?」

 それは、桜にとってのある種の救いでもあった。

 魔術の世界から足を洗い、日の当たる世界で幸せな日々を送る。

 だが、間桐桜にはその選択肢を拒む理由があった。

桜「いやっ!やめてください」

?「そうはいかない」

246 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 21:21 ID:KMQ2KQea

 桜の悲痛な叫びは、届くことはなかった。

?「やれやれ、面倒くさい仕事を押し付けてくれたものですね」

?「ねぇ、間桐慎二さん」

慎二「妹を返してもらおうか、いますぐに」

?「ええ、お望み通り...彼女の魔術回路は全部引っこ抜きました」

?「彼女はこれから先、魔術を行使することが出来ません」

?「だけどいいんですか?妹とはいえ義理ですよ」

慎二「僕は僕の代で間桐を終わらせる」

慎二「だから間桐と名のつくものは、全て終わらせる」

?「まぁ、間桐の蔵書はこちらでも受け取りました」

?「フェムも喜んでいましたよ」

247 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 21:27 ID:KMQ2KQea

?「それでは、彼女の魔術回路は貴方に渡すとしましょう」

?「どうぞご自由にお使いなさい」

?「それでは、これにて私は失礼させていただきます」

 後に残された間桐信二は、気を失った妹の携帯電話を開き、

アドレス帳にあった転校先のクラスメートにメールを打ち始めた。

慎二「まったく、損な役回りだよなぁ」
248 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 21:35 ID:KMQ2KQea
慎二「僕がお前の考えていることを分からない訳がないだろう?」

慎二「衛宮にとって、お前は風景と同じなんだよ」

慎二「アイツの幸せなんてのは、とどのつまりエゴの延長線上だ」

慎二「来る者は拒まず、去る者も拒まず」

慎二「そんな奴が、お前を救えると本気で思ってるのか」

慎二「自分を救えるのは、自分だけなんだよ。桜」
249 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 21:38 ID:KMQ2KQea
慎二「だけど、お前が不幸になった原因の一端は僕にある」

慎二「間桐さえなければ、お前は多分幸せになってた」

慎二「遅すぎる贖罪だけど、許されるとは思っていないけど...」

アーチャー「...」

慎二「じゃあな、桜」

250 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 21:51 ID:KMQ2KQea
12月 飛行機の中

凛「Zzzz」

セイバー「思えば、随分と遠い所まで来てしまいましたね」

セイバー「士郎、今...貴方は何をしているのですか」

 イギリスから日本に戻る空の便の中で、やつれたマスターの

横顔を見やりながら、悲しい微笑みを浮かべていた。

セイバー(女として生きるのは、難しいものです)

セイバー(剣を取り、戦場を駆け回り続けたころに戻りたい)

セイバー(貴方と共に過ごしたあの頃に戻りたい)

 セイバーと凛の帰国にはいくつか理由がある。

 妹と正月を過ごす為、もう一つは士郎の様子を確認する為。

セイバー(士郎...リンは貴方の事をずっと好いています)

セイバー(イリヤスフィールを憎み、貴女を憎みながらも...)

セイバー(なおも貴方に焦がれている、貴方を欲している)

セイバー(かくいう私も、貴方とやり直したい)

 セイバーは微睡の中で願い続けていた。
 
251 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 21:57 ID:KMQ2KQea
 自分の手を取り、優しく微笑みかけてくれたあの温もり。

それは、本来彼と最も近しい自分のモノなのだ。

 誰にも渡さず、自分だけが独占し、一身に受け貪るものなのだ。

 セイバーの無意識化にて、その思考が蛇の如く鎌首をもたげる。

  それと同時に子宮の甘い疼痛が迸る。

セイバー「ぅんっ」

 疼く体の火照りは、彼に鎮めて貰おう。

 日本まであと6時間、セイバーは徐々に正気を失い始めていた。

セイバー(アイリスフィール...私はどうすればいいのですか)
252 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 22:46 ID:KMQ2KQea
11月2日 アインツベルン城

 凛とセイバーが帰国する前、冬木市でも一騒動が起こっていた。

 まだ桜が、魔術回路を失う前の出来事だった。

イリヤ「久しぶりね、サクラ」

桜「イリヤさん!貴方って人は...」

 大河の事故と入れ違いに、桜は東京へと旅立っていった。

 桜にとって期せずして起きてしまった大河の事故は不幸な

出来事であり、彼女の心にも暗い影を落としていた。

 だが桜は冬木で起きた凛とセイバー、イリヤの断絶について

知ることはついぞなかった。

 士郎がイリヤを選んだことも...

桜「返してッ、先輩を返して下さい!」

 我を失い、目の前のイリヤに掴みかかろうとする桜をライダーが

全力を以て阻止する。

ライダー「サクラッ、堪えて」

桜「ううっ、だって...だってこんなのってあんまりじゃないですか」

 桜の痛涙の理由は推し量るに余りある。

 彼女の最大の理解者であるライダーもまた、イリヤの裏切りに

心から憤り、なんとかして自分を自制しているのだから...

セラ「...心中お察しします」

ライダー「なら、桜の頼みを聞くこともたやすいはずです」

ライダー「衛宮士郎を、ここに」

セラ「それはできません」

ライダー「なぜですか?やましいことがなければ可能でしょう」

セラ「衛宮士郎...いいえ旦那様は貴女方にお会いするつもりは...」

桜「道理を通してください!」

 イリヤスフィールはかつての恋敵を冷めた目で見ていた。

 士郎と手をつなぎ、買い物をしていたところを桜に見られた。

 何も言わず、その場から立ち去ろうとした矢先の発作だった。

 体が痙攣し、気を失った。

 その時に桜は悟ったのだろう。

 だからこそ、こんな日付が変わる時間帯に主従共々自分が

逃げられないようにするためにやってきたのだ。

イリヤ「もう夜遅いし、明日また来たほうがいいんじゃない」

イリヤ「士郎はリズと一緒に出掛けてるわ」

 嘘は言っていない。

 士郎はリズと一緒に柳洞寺に行っている。

ライダー「どこですか、そこは」

イリヤ「いい加減現実を認めたら?」

イリヤ「士郎は貴女じゃなくて、私を選んだの」

桜「うそっ、嘘よ。どうやってあの先輩を」

イリヤ「後味の悪い方法だから、士郎も桜に顔を合わせ辛いのよ」

イリヤ「聖杯戦争終わった後も士郎は誰とも付き合ってなかったし」

イリヤ「もたもたしてる桜やセイバーが悪いのよ」

253 名前:名無し 投稿日:2014/11/04 22:57 ID:KMQ2KQea
ライダー「~~~~~~!」

 イリヤの心ない一言に激情したライダーは、自分の獲物を素早く

取り出し、イリヤの喉首めがけて打擲した。

セラ「お嬢様ッ!」

??「秘剣・燕返し!」

ライダー「そうですか...柳洞寺に行っていたのですね、士郎」

アサシン「すまぬなライダー、本意ではないのだがこれも務め」

 気配遮断によって、姿を潜めていたアサシンが現れる。

桜「嘘...でも、イリヤさんの手には令呪が...」

イリヤ「偽臣の書くらい、こっちにもあるのよね」

イリヤ「どうする?サクラ」

 ライダーが気が付いた時には、リズが背後を取っていた。

リズ「動かないで、動くとサクラの首が飛ぶ」

 桜の命を盾に取られては、ライダーも引き下がるしかない。

士郎「リズ、アサシン。もういいよ」

アサシン「従おう、我がマスターよ」

 ライダーが振り返ると、そこには士郎がいた。




254 名前:名無し 投稿日:2014/11/05 18:09 ID:xRqH1pL5
wktkするけど悲惨過ぎ
255 名前:名無し 投稿日:2014/11/05 23:16 ID:dT0xl42K
 作者です、こんばんは。

 久々にここにきたら、続きを待ち望む方のコメントを見、続きを

 ちゃんと書くことにいたしました。

  井上敏樹と某修羅場スレに影響を受けたので、その二つを

 両立した内容で書いていきたいと思います。

  コメントを下さった皆様、長い間申し訳ありませんでした。
256 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 16:16 ID:MhNOTLaG
いつまでも待ってるぜー乙
257 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 20:26 ID:y8e4PIFT

イリヤ「シロウ...来ないでって言ったじゃない」

 嘯きながらもまんざらでもない顔をしたイリヤ。

 最愛の人に近づいた士郎は、その華奢な体をだきしめる。

 その光景は、既に完成された男女の在りようであり、

桜「せん...ぱい、どうして?ねぇ!どうしてですか」

 機を逸した桜にとってはこの上なく残酷な現実でしかなかった。

桜「貴方に、まだ...私の気持ちを伝えてないのに」

桜「どうして...イリヤさんを選んだん...ですか」

 あの日、全てがうまくいけば...

士郎「そうだな、家族の大切さに気が付いちまったんだ」

 夢見た理想は、既に手の届かない場所へと置き去りにされた。

 士郎は、理想を捨てたのだ...。

 桜をの心を救った、小さな英雄は藤村大河と共に死んだのだ。


 
258 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 20:37 ID:y8e4PIFT
士郎「少し、口を閉じてくれないか?」

士郎「なぁ、ライダーからも桜に言ってくれよ?」

桜「お願い...先輩、なんでもするから」

 譫言のように自分を見捨てないでくれと哀願する桜を見たセラと

ライダーはその光景に涙を流した。

 惨すぎる。

 ライダーは桜の恋路の果てに対して...

 セラは、理想を捨てた衛宮士郎の残酷さに対し、そう思った。

士郎「実は、イリヤが近いうちに死んじまうんだよ」

 まるで今日の天気を気軽に聞く様に、本題をズバリと士郎は

切り出した。

ライダー「桜を捨てた理由ですか?」

士郎「その通りだよ、ごめんな桜」

 ライダーは士郎を憎悪した。

 だが、憎悪したと同時に悟ってしまった。

ライダー(士郎...貴方には、私達の言葉が届かないのですね)

 士郎は、イリヤに狂ってしまっている。

 正気を保ったまま、狂っていたのだ。

  理想を失い、大切だったものを切り捨てた彼にとって、眼前の

 女二人は、そんな追い求めた理想の残骸でしかないのだ。

 だからこそ、ライダーは涙を流すしかなかった。

  それだけしかできなかったのだ。
259 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 20:53 ID:y8e4PIFT
ライダー「タイガの死が貴方を変えたのですか?」

士郎「ああ、多分そうだ」

士郎「好きなように受け取ってもらっても構わない」

ライダー「そう、ですか」

 あの日と変わらない笑顔を浮かべながら、衛宮士郎は語る。
 
 ただ、手を伸ばせば届いた太陽は、

 いつの間にか、手の届かない空へと昇ってしまったのだ。

 自分が照らすべき、月を見つけたが故に。

 心の底から愛し、愛を育む相手を彼は見つけたのだ。
 
桜「許さない、裏切り者ッ!」

 イリヤに向け、血走った視線を向けた桜。

 この世全ての嫉妬をかき集めた『ソレ』は、今にも形をとり

イリヤスフィールの首を捩じ切ろうとする。

士郎「...やめろよ、それやったら本当に『忘れる』ぞ?」
260 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 20:59 ID:y8e4PIFT

 少女の見苦しい悪足掻きはここで終わりを迎えた。

 士郎の最後の一言が、文字通りの意味だと知ったからだ。

桜「帰りましょう...先輩」
 
  何もない虚空に向け、桜は話しかけた。

ライダー「ええ、そうですね。シロウ」

ライダー「サクラ、よかった...ですね」

ライダー「士郎は貴女を、っ選んだんです」

セラ「お引き取りを...っ、どうかお引き取りを、お願いします!」

 大粒の涙をボロボロとこぼしながら、セラは二人を部屋から

急いで追い出した。

 礼儀作法も何もなっていない、その這う這うの体が彼女自身が

いかに精神的に追い詰められているのかの証そのものだった。
261 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 21:15 ID:y8e4PIFT
桜とライダーが去った後の一室には、後味の悪い雰囲気が...

アサシン「さて、主よ、これからどうする?」

士郎「取りあえず、俺が呼ぶまで自由に過ごしてくれて構わない」

士郎「用がある時は、呼ぶから」

アサシン「了解した、では羽を伸ばさせてもらおうか」

 姿を消したアサシンは、夜の冬木へと繰り出した。

リズ「シロウ、さっき言ったこと、ホンキ?」

士郎「ああ、本気だよ」

 無垢なる瞳に見据えられた士郎は、先ほどの桜への仕打ちを

振り返り、短く答えた。

 ばつが悪そうに、頭を掻く仕草は何一つ変わってなくて

 それが、たまらなく悲しいとリズは思った。

士郎「幻滅した?」

リズ「しない。それよりも」

 イリヤにも、自分にも背を向けて立ち尽くす彼は笑っていた。

 その笑顔は、万人にとっては到底受け入れられないもの。

 だからこそリズは、直に戻って来るセラの為に、少しでも

 士郎の心の底に残っている良心を呼び起こすために、彼を

 ゆっくりと抱きしめた。
262 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 21:29 ID:y8e4PIFT
リズ「辛すぎるよ、シロウ」

リズ「お願いだから、もとに戻って?」

 あたたかな彼女の温もりは、士郎をゆっくりと眠りに誘う。

士郎「リズ...俺は、間違ってるんだよ」

士郎「だけど...これがみんな」

士郎「あああ...うわあああああああああああああ」

 子供の様に泣きじゃくる士郎は、我を失った。

 自分を抱きしめ、慈しんでいるリーゼリットを...

 いつの間にか、自分を後ろから抱きしめているイリヤを...

 桜達の見送りから戻ってきたセラを...

  まとめて押し倒し、獣の様に犯し続けたのだった。
263 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 21:43 ID:y8e4PIFT
~~~~

 朝起きた時、股にこびりつく鮮血と零れ落ちる白濁した液体に

生理的嫌悪感を催さず、むしろ愛おしさを感じた自分がとても

穢れた女のような気がした。

セラ「どうして...私は、こんな男を」

 泣き腫らして、真っ赤になった衛宮士郎の瞼。

セラ「どうして...拒めなかったの」

 思い出したくもないのに、思い出してしまう。

 部屋に戻ったとき、散乱した衣服が最初に目に入った。

 次に目にしたのが、衛宮士郎が腕一本でイリヤを抱きかかえ

激しいキスを交わし、リズがその下半身に群がり、一心不乱に

その『ケガラワシイ』ものを吸い上げていた光景だった。

 

264 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 22:01 ID:y8e4PIFT
セラ「なっ、何をしているのです衛宮士郎!」

セラ「い、いっ今すぐお嬢様とリズから...離れなさい!」

 なけなしの勇気と廊下の甲冑から拝借してきた槍を構え、

私は奴を殺そうとした。

士郎「イリヤァ...もっと、もっと深く吸ってごらん?」

イリヤ「ほっ、ほう?」

 だが、私は衛宮士郎を甘く見ていた。

士郎「セラ!」

 自分の名前を呼ばれたと同時に左脚が跳ね上がり、手の槍を

弾き、それは天井へと突き刺さった。

士郎「脱げよ、セラ」

 背中を向けながら、一切の感情を排した声で衛宮...様が

私に屈従を命じた。

セラ「..そんなことをするくらいなら、舌を噛み切って死にます」

 私は、舌を噛み切った。

 だが、噛み切った舌は私の舌ではなかった。


 
265 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 22:11 ID:y8e4PIFT
士郎「で、精一杯の抵抗がそれかよ?」

セラ「ぁう、ううっ、この野獣!外道!」

 噛み切られた舌からダラダラと流れる血を全く意に介さず、

衛宮士郎は、後ずさる私をゆっくりと追い詰めた。

士郎「リズ、言った通りにしろ」

 壁際に追い詰められた私は、遂に逃げ場を失った。

セラ「ひっ、な、なにをするんですっ!」

士郎「なにをさせる?おいおい...まだわかんないのかよ」

 今まで見せたことのない表情...

 衛宮士郎が、私を見てさげすみの表情を浮かべている。

士郎「俺は何もしない、セラが...自分からするんだよ」

 その瞬間、生ぬるく鉄の匂いがするものが口に入ってきた。

リズ「んむっ!」

 気が付いた時、私の口の中には衛宮...士郎、様の精液と

噛み切られた舌から溢れた血液が一杯に詰め込まれていた。
266 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 22:32 ID:y8e4PIFT
士郎「零すなよ...」

 乱暴に、豪快にメイド服を引きちぎった衛宮様は、手始めに

私の両足を抱え込み、その上から覆いかぶさってきた。

セラ「むぐーっ、むぐぐぐ~」

士郎「イリヤ、セラを犯せ」

 更に信じられない事に、彼はお嬢様を脅して私を犯させたのです。

リズ「ねー、シロウ~、私は?」

士郎「そうだな、じゃあリズは四つん這いになろうか」 

 雌犬が雄犬に媚びるように、その白い尻を突き出したリズは

今までの無表情が嘘のように、娼婦のような淫蕩さ溢れる

悦楽に身を落としていた。

士郎「そうそう、で、そのままセラのマ〇コとケツ穴に擦り付けちゃえ」

リズ「オッケー」

 先程まで下半身をずっといじっていたリズのあそこは、既に

淫らなに滑り、テラテラと光沢を放っていた。

セラ「~~~~~!」

 ぬるるるるる、とリズミカルに前後に揺れ動くリズの愛撫は

性に対し、何の抵抗する術を持たない私を確実に犯していく。

 お嬢様は執拗に私の乳首を、吸っては噛み続けている。

イリヤ「セラぁ...気持ちいいでしょ」

 ダメです、それこそが奴の思うつぼなのです。

 しかし、口に含む精液と血の混ざった液体がそれを阻む。

267 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 22:50 ID:y8e4PIFT
イリヤ「シロ~、もうそろそろじゃない?」

士郎「そうだな、じゃあ二人とも少しどいててくれ」

リズ「はーい」

 なにがそろそろなのだろう?

 そう思った矢先...

セラ「ひぅっん!」

 猛烈な尿意が、私の身体の中心を貫いた。

士郎「ははっ、やっぱりだと思ったよ」

 紅潮した顔の士郎様は身体を左右に必死に揺らし、余す所なく

私にその匂いを擦りつける。

 擦れるたびに漏れる荒い喘ぎ声がたまらない。

 口の中に在った、あの液体は飲み込んでしまった。

士郎「貧乳の感度っていうのは、巨乳の倍あるんだってさ」

セラ「しっ、しりません!」

セラ「大体、胸が大きくなったといって、何があるというんです」

 私の右の乳首を士郎様が一気に吸う。
 
 舌をチロチロ動かすのと同時に、全力のバキュームが、未開発の

私の身体を刺激する。

 嫌いだった男に組み敷かれ、抵抗できずに自分のの乳首が

なすすべもなく吸われているという状況が、僕の脳を麻痺させる。
268 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 23:06 ID:y8e4PIFT
士郎「何もないと思うよ?」

 執拗な下腹の愛撫の末に、遂にそれが見つけられてしまった。

 快感の為の突起。クリトリス。

 通常時はマッチ棒の先端くらいしかないのにも関わらず、今はもう

その4倍ほどに膨れ上がっている。

 そして士郎様はそこを、ピンッと指で弾く。

セラ「いやああっ…くう…。そこ、そこぉ私の、大事なとこなのお…」

士郎「…そうなんだ。じゃあ、やめとく…?」

セラ「ひっっ!ああああんっ!さわっちゃらめっ…!」

セラ「そこはぁ…そこはぁ…」

士郎「ん?ココがどうかしたの?」

 ただでさえ尿意を堪えている最中なのに、敏感なクリトリスを

思い切りよくつねられる。

セラ「にゃああんっ!やんやんっ!もう…イっちゃうのおおおお!」

セラ「はぁ……あぁん……なんでこんな…ぁ、きもちいーの…?
   おかしいよぉ……頭、おかしいぃぃ」

 ろれつが回らず、それどころか痴態を曝け出してしまった私は

もうなにがなんだかわからなくなっていた。

 互いの腕の動きが激しくなる。

 士郎様は指先を限界まで動かし、クリトリスを攻め続ける。

 擦るように、潰すように、クリトリスを弄り倒す。

 私の手も一層いやらしく、激しくなって、腕全体を動かし、士郎様の

大きなお、おち〇ち〇へと快感を与えている。
269 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 23:22 ID:y8e4PIFT
 そして、絶頂の寸前、士郎様は目の前の――ブラジャーの下で

小さく盛り上がるおっぱいに吸い付いた。

 布越しに強く、強く吸う。

 ダムが決壊するように、私の箍はその時、完全に外された。

セラ「「はにゃあああっ!すごくきもちいーよおおお…!」

士郎「ううっ、…ごめんっ、セラッ...イく!」

 反りあがった士郎様の陰茎の先から、精液が勢いよく飛び出す。 
 
 射精の標的となったのは、太ももと内股だった。

 とっさに挟み込んだおち〇ち〇が暴れ馬の様に跳ね回るのを

じかに感じながら、私は全身の力が抜けていくのを感じた。

 どくんっ、どくんっと吐き出されるスペルマ。

 全身の力が抜けた途端、私の膀胱が全て決壊した。

セラ「でりゅううううう!おしっこでるのおおおおおおお」

 ぷしゃああああああと透明なアーチを描いて迸った尿が

そこかしこに飛び散る。

セラ「いやああああああっ!なにをしているんですかー!」

 股の下にオレンジ色の頭がある。

 彼はあろうことか、私の尿を啜り、飲み干しているのだ。

セラ「やああああああ!らめぇっ!らめなのおおおおおお!」

 じゅるじゅると音を立てながら私の尿は吸われ続けている。

セラ「んおおおおおっほおおおおおお!いぐううう、いぐうううう!」

 私が覚えていたのは、そこまででした。
270 名前:名無し 投稿日:2014/11/06 23:41 ID:y8e4PIFT

~~~

セラ「全く、ケガラワシイにも程があります」

士郎「誰が汚らわしいだって?」

 いつの間にか、お嬢様たちは目を覚ましていた。

セラ「ひぃっ、こ、来ないで下さい!」

士郎「なんでさ、昨日のセラの方が淫乱ドスケベじゃないか」

リズ「いつものしかめっつらより、昨日のアへ顔の方がずっといい」

 散々な言われようにも拘らず、私は士郎様を拒むことが

出来なくなっていた。

イリヤ「セラ、シロウの事が許せないならそれでもいいわ」

イリヤ「だけど、私が死ぬまではシロウの事を...」

士郎「ごめんな、セラ」

士郎「イリヤにも、セラにも、リズにも迷惑をかけちまって」

 だけど、お嬢様はこの男の事を愛している。

 私もこの男の性格や性癖はともかく、一度だけ信用してみよう。

 それでだめならば、最終手段をとるしかない。

セラ「...分かりました」

セラ「私は、小うるさいし、戦いになれば全く役に立ちません」

セラ「その上、ヒステリックで癇癪持ちです」

セラ「それでもいいなら、どうぞなんなりとお命じ下さい」


セラ「衛宮さま...いいえ、士郎様」


士郎「ありがとう、セラ」

 こうして、私は渋々ながら衛宮士郎と言う男を認めたのです。

 
271 名前:名無し 投稿日:2014/11/08 23:29 ID:cZmwl8uS

~~~その日の夕方

アーチャー「...」

 アーチャーが冬木に戻ったのは、士郎が桜を捨てた三日後だった。

ライダー「アーチャー、お願いです...桜の、傍に」

 新都にあるホテルの一室に呼び出された彼は、士郎に捨てられた

事により自失状態にある桜と、いつ自殺してしまうか分からない

彼女を見守るしかないライダーの姿を見た。

 他人事ではないのだ。

 何もかも全部、自分のしてしまったことなのだから...。

アーチャー「ライダー、一体何があった」

アーチャー「衛宮士郎が凛とセイバーを捨てたのは知っている」

アーチャー「奴がイリヤスフィールを選んだのも知っている」

アーチャー「だが、一つ聞かせてくれ」

アーチャー「何故君と彼女は藤村大河の死後、冬木を去った?」

 そう、まずはそこから聞き出さねばならない。

 凛やセイバー以上に士郎への愛が強かったのは、桜だ。

  その彼女が、士郎にとっての家族同然の大河が死んだ後に

 付きっ切りで傍にいなかったことが腑に落ちない。

  噛み締めた唇から一筋の血が流れ落ちる。

  ライダーはアーチャーの質問に答え始めた。
272 名前:名無し 投稿日:2014/11/08 23:40 ID:cZmwl8uS
ライダー「サクラは...あの日、大河が事故に遭った日に」

ライダー「シロウに告白して、前に...進もうとしていました」

アーチャー「ああ、そうだな」

アーチャー「全く、奴と関わった女性は不幸になるな」

ライダー「サクラは...聖杯戦争時、常々こう言っていました」

ライダー「自分は、いつまでも羽化できない蛹、と」

ライダー「幼いころから、凄惨な環境に身を置いてきた彼女です」

ライダー「心を殺し、絶望に同調することでしか身を護れなかった」

アーチャー「だが、彼女も変わった、皮肉にも衛宮士郎のお蔭で」

ライダー「そうです。だから、彼女は人間に戻ることが出来た」

アーチャー「随分な贔屓だな」

アーチャー「知っていると思うが、奴の成れの果てが」

アーチャー「弓兵のサーヴァント、この私だ」

アーチャー「聞きたいかね?私が冬木を去った時のことを」

ライダー「聞かせてください」
273 名前:名無し 投稿日:2014/11/08 23:47 ID:cZmwl8uS
アーチャー「そうだな、じゃあ桜と大河から話そうか」

アーチャー「藤村大河は、幸せだった」

アーチャー「結婚したんだよ、俺がイギリスに行った後すぐにね」

ライダー「天寿を...全うされたのですか」

アーチャー「ああ、俺が死んだ後も健やかに生きていた」

ライダー「よかった、本当に、よかった」

アーチャー「遠坂と一緒にイギリスから戻ったのがその二年後だ」

アーチャー「その頃、桜は慎二とできていた」

ライダー「...」

アーチャー「慎二も心を入れ替えていた、と思う」

アーチャー「桜は彼と幸せに、冬木の家で暮らしていた」

アーチャー「それで...あー、凛と一緒に尋ねたんだ。二人を」

アーチャー「失敗だったよ。桜は何一つ変わっていなかった」
274 名前:名無し 投稿日:2014/11/08 23:53 ID:cZmwl8uS
アーチャー「桜は、慎二に絶望していた」

アーチャー「慎二はな、乏精子症だったんだ。不運なことに」

アーチャー「子を成す幸せが、大半の女性の望みらしい」

アーチャー「女として満たされない、その欲求の吐け口は...」

アーチャー「常に自分の先を行く、姉へと向かった」

ライダー「慎二は、どうなったのですか?」

ライダー「ハッピーエンドにはならなかったのですか」

アーチャー「ある意味では、幸せだったのだろう」

アーチャー「慎二は、知らなかったんだよ。そのことを」

アーチャー「桜は凛と殺しあったんだ」

アーチャー「俺を寝取ろうとして、失敗して...」

アーチャー「それがだめなら、せめて奴の子供だけでも...と」

275 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 00:01 ID:GQ4nU0BL
アーチャー「見てられなかったよ」

アーチャー「凛はきっと...こうなることを予期していた」

アーチャー「だからこそ、凛は....」


アーチャー「桜の全身の、魔術回路を全部引き抜いたんだ」


ライダー「そんな!」

ライダー「桜はっ!どうして桜だけが...惨すぎる、あんまりです」

「愛してます、先輩」

「ずっと、望みが叶うことなくても...私、愛しています」

アーチャー「聖女と呼ばれる人々に似ていた、あの言葉だけは」

アーチャー「凛を突き放した後も、ずっと俺の心の中に残っている」

276 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 00:06 ID:GQ4nU0BL

アーチャー「まぁ、別の次元の俺も似たり寄ったりなんだろう」

アーチャー「桜は、その後奴の子供を身籠った」

アーチャー「残念なことに、その子供は流産したよ」

アーチャー「桜の最後は、自殺だった」

アーチャー「注射器で自分の血を全て抜いてな」

ライダー「ううっ、ぐすっ」

アーチャー「さて、長くなったがこれで半分だ」

アーチャー「残りは凛とイリヤの二人だ」

アーチャー「それも聞きたいかね?」

ライダー「いえ、もう結構です」

アーチャー「...そうだな、不快極まりない話だからな」

277 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 00:24 ID:GQ4nU0BL
ライダー「...桜が冬木を去ったのは、大河の死が原因です」

ライダー「あのまま冬木に居れば、きっと自分は押し潰される...」

ライダー「自分に近しいものを失う恐怖に耐えきれなかったのです」

アーチャー「そうか...、彼女は家族を失い続けたからな」

ライダー「大河の家族に否定されたのが、決定的でした」

ライダー「中学校の時から、ずっと気にかけてくれた人たちが」

ライダー「悪意の矛先を自分に向けてきたのです」

ライダー「あの病院からの帰り道、桜からそう聞きました」

278 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 00:31 ID:GQ4nU0BL
アーチャー「私に何をしろと言うのだね?」

ライダー「桜の傍に、つきっきりでいて欲しいのです」

アーチャー「最終的には、断ることになるぞ」

ライダー「桜を、また見捨てるのですか?」

アーチャー「じゃあ、聞くがね」

アーチャー「遠坂も桜も、俺が正義の味方になった時には」

アーチャー「それをずっと後悔していたよ」

アーチャー「俺も、数えきれないほど後悔した」

アーチャー「だが、今になって衛宮士郎は...ようやく」

アーチャー「そのくびきから脱することが出来たんだ」

アーチャー「なぁ、ライダー。桜は一体どっちなんだろうな?」

アーチャー「衛宮士郎を愛しているのか、それとも」

アーチャー「衛宮士郎を愛している自分を愛しているのか?」

アーチャー「それをはっきりと、彼女の口から聞きたい」

アーチャー「はっきりしない以上、俺は彼女の望みを聞く事はない」
279 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 00:39 ID:GQ4nU0BL
 アーチャーとライダーの長いやり取りが終わった。

アーチャー「さて、私もぼちぼち帰らせてもらおう」

アーチャー「今の彼女を見て、奴に思う所がないわけでもない」

ライダー「すいません、アーチャー」

アーチャー「悪いことは言わない。今後、奴とはかかわるな」

アーチャー「凛とセイバーを捨てるあたり、奴は本気だ」

ライダー「貴方は、これからどうするのですか」

アーチャー「...冬木から離れようと思う」

 それを最後に、アーチャーは姿を消した。

 ライダーは、壁に頭を打ち付け始めた桜を抱きしめながら

これからどう過ごしていけばいいのかを考え始めた。
280 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 00:52 ID:GQ4nU0BL

アサシン「おう、これは久しぶりよな、アーチャー」

アーチャー「アサシン、そうか...キャスターは逃げたのか」

アサシン「それは少しばかり違うぞ?」

アサシン「あの女狐は世界一周旅行とやらに出掛けているらしい」

アサシン「戻って来るのは当分先だが、まぁそうとも限らない」

アーチャー「それで、お前は自由に出歩いている訳か」

アサシン「応、あの女狐が気前よくおいて行ってくれた金のお蔭で」

アーチャー「成程、随分と現代的な格好だな」

アーチャー「流行の服に、コンビニスナック」

アーチャー「アサシンのサーヴァントにしては酔狂が過ぎるな」

アサシン「ま、精々楽しませてもらうとするさ」

アサシン「ところで、アーチャーよ」

アサシン「最近セイバーやギルガメッシュ達を見かけないのだが」

アサシン「お主、何か知っていることはないのか?」

アーチャー「ギルガメッシュが?」

アサシン「うむ、教会がここ一週間ほど閉まっているのだ」

アサシン「虫の知らせと言うほどでもないが、胸騒ぎがしてな」

アーチャー「いや、何も知らない」

アサシン「そうか、邪魔したな」

アーチャー「ランサーたちが、いない?」

281 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 21:10 ID:8Kdful2S
これはどう転ぶか予想できない。
wktk
282 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 22:55 ID:GQ4nU0BL
 夜 アインツベルンの森

士郎「何の用だよ、アーチャー」

アーチャー「お前、一体何を考えている」

士郎「心にもない心配か?大丈夫さ、もう目が覚めたんだ」

アーチャー「目が覚めた?」

士郎「そ、俺はこれからイリヤの為だけに生きるんだ」

士郎「聖杯戦争が終った後も、なんで俺がセイバーや遠坂、

    桜達を選ばなかったのか」

士郎「...俺だって、色々と考えたさ」

アーチャー「それで、今になって家族愛に目覚めたか」

士郎「藤ねえが気が付かせてくれたんだ」

アーチャー「お前は、これからどうするつもりだ?」

士郎「なぁ、アーチャー」

士郎「藤ねえの遺言なんだけど、聞いてくれるか?」

アーチャー「...聞かせてくれ」

  「足とか、手のない人達の為に...安くて頑丈な義手を

   作ってあげなさい」

 「病院、暮らしで一番苦痛、だったのが」

 「足がないせいで、剣道が出来なくなったことだったから...」

 「正義の味方じゃなくても、誰かを助けてあげられる」

 「忘れな...いで、わ、わ...たしを」

 アーチャー「くっ....!」
283 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 23:07 ID:GQ4nU0BL
 士郎「俺は、近いうちに義肢について勉強することにした」

 士郎「なぁ、アーチャー。ようやく俺の投影魔術が役に立つんだ」

 アーチャー「あ、ああ。それはきっと喜ばしいことだ、な」

 士郎「今はまだ、形も何も定まっていないけど」

 士郎「やれるところまでやってみようと思う」

 士郎「おかしいかな、俺には分不相応かな?」

  理想を捨て、眼を輝かせながら新たな夢を語る士郎に

 アーチャーは知らず知らず期待し始めていた。

  どの並行世界上においても、己の行く末は世界と契約した

 霊長の守護者にしかなりえない。

  だが、那由多の確率でこの世界の士郎はその因果から

 解き放たれたのだ。

  自分をこの世界に誘った凛への感謝の念や交わした愛を

 アーチャーは覚えている。

  今でもその気持ちは褪せていない。

  だが、遠坂凛は自分を止めることが出来なかった。

  壊れた機械の様に、ひたすら人を救い続けた自分を。

  それ故に、アーチャーは今此処にいる自分を否定できない。

  なぜなら、今の士郎の姿こそが彼の思い描いた最善の

 未来そのものだったからだ。

284 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 23:15 ID:GQ4nU0BL
アーチャー「...そうか、それほどまでに考えているのなら」

アーチャー「俺は、これからのお前に何も言えないな」

 どうやら思ったよりも、衛宮士郎の精神状態はまともらしい。

 だが、アーチャーは桜の事をあえて切り出した。

アーチャー「ところで、お前は桜に何を言った?」

アーチャー「あの三人の中で、桜はお前と一番付き合いが長い」

アーチャー「その彼女が、正気を失う寸前までに憔悴している」

アーチャー「一体何を言ったんだ、お前は」

 士郎の回答は、実にシンプルだった。

士郎「イリヤがもう長くない」

士郎「藤ねえの事があって、イリヤが俺を支えてくれたんだ」

士郎「だけど、桜はそれが気に入らなかったらしい」

士郎「物凄い形相でイリヤを睨み付け、飛び掛ろうとしてた」

士郎「だから俺は、『忘れる』っていったんだ」

士郎「ただ、単純に桜に関わる全てを...ね」
285 名前:名無し 投稿日:2014/11/09 23:28 ID:GQ4nU0BL
アーチャー「お前、なんでそこまで言う必要があった?」

士郎「そこまで言わなきゃ、桜は諦めない」

士郎「遠坂も、セイバーも裏切って捨てたんだ」

士郎「今更桜だけ特別扱いすることはできない」

アーチャー「そうか、夜分遅くに邪魔したな、帰る」

士郎「ああ、できれば今度は日の出ているうちに来てくれ」

士郎「夜はできるだけイリヤと居たいから」

 アーチャーが去った後、士郎は森の中に一人佇んでいた。

士郎「俺は、間違ってない」

士郎「愛する人を護る為に、剣を取るのが男なんだろう?」

士郎「しっかりしろ、衛宮士郎」

士郎「お前以外に、誰がイリヤの為に剣を取って戦うってんだ」

 もはや、自分にはそれ以外の道が残されていない。

士郎「力が、欲しい」

士郎「投影魔術だけじゃ、イリヤを護るのが難しい...」

~~~

286 名前:名無し 投稿日:2014/11/10 00:04 ID:f0UU1fIG
更新ありがとうございます。楽しみに待っています。
287 名前:名無し 投稿日:2014/11/10 08:03 ID:xzkZVLJV
乙ー

あかん、士郎あかーーん!
288 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 00:03 ID:o7s2r9GY
昼ドラもびっくりなぐらいドロドロだな
289 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 01:46 ID:Cb3eZXiE
これは期待
290 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 19:57 ID:3XIY2rvs
三日後

 その日は快晴だった。

 イリヤスフィールは、独自の情報網を駆使し、アインツベルン家が

魔術協会にとって排除すべき対象となっていることを察知した。

 どのみち、命が助かって封印指定に落ち着くのだ。

 だが、彼女はそれをできるだけ最大限利用しようと考えた。

イリヤ「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです」

イリヤ「死にかけのホムンクルスですが、どうかよろしく」

 イリヤスフィールの傍らには、フラガ家当主にして、魔術協会が

誇る封印指定執行者、バゼット・フラガ・マクレミッツ。

 そして、右側にはクーフーリン。 

 この錚々たる主従が並び立つのは、とても稀であった。

 逆に言えば、これ以上にない程、目の前の女魔術師が

 並み以上の存在だということが分かる。

ルヴィア「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトですわ」

ルヴィア「堅苦しいのは、私、嫌いですの」

ルヴィア「なので、今日は私なりの流儀を貫かせて戴きますわ」

 サーヴァントと封印指定執行者を目の前に、気圧されることなく

優雅な佇まいを崩さないのは、流石エーデルフェルトの若当主と

イリヤは脱帽を禁じ得なかった。

 間桐慎二の申し出は、まさに天佑だった。

 詳細すら知られることのない、魔術師たちによる万能の願望器の

奪い合いの顛末、そしてその魔術の一端について記された書物を

破格の値で譲渡する。

 それが、どれほどの事か分かっているからこそ...

 イリヤは、なんとしても彼女に士郎を託したかった。
291 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 20:06 ID:3XIY2rvs
ルヴィア「さて、まずはこちらの本題を済まさせて頂きましょう」

イリヤ「そうですわね、では...改めて検分の方をお願いします」

 デスクの上にある小さな呼び鈴を鳴らしたイリヤ。

 間を空けず、応接室に入ってくるセラとリズ。

イリヤ「こちらのほうで、解呪は済ませておきました」

ルヴィア「結構、では二時間ほどお時間を頂きましょうか」

ルヴィア「マクレミッツ氏を同伴したいのですが、構いませんか」

イリヤ「ええ、では私達は隣室にて控えていますので」

イリヤ「なにかあれば、外に待機している侍女たちに...」

 一礼して退出するイリヤとランサー。

 それを一瞥したルヴィアゼリッタとバゼットは、イリヤが事前に

自分に譲渡する内容を詳しくまとめた書簡を元に、選別を開始した。
292 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 20:21 ID:3XIY2rvs
一時間半後

ルヴィア「検分、全て終わりましたわ」

ルヴィア「エーデルフェルトにも、断片的に聖杯戦争に参加した際の

      資料や文献が残されていました」

 セラの入れたオレンジペコーを飲みながら、ルヴィアゼリッタの

謝辞に応じつつ、イリヤは自分の知りうる限りのことを彼女に

伝え始めた。

ルヴィア「ですが、それは手記程度のものであり、聖杯戦争の

      根幹に関わるほどの情報ではありませんでした」

イリヤ「私もアインツベルンに幼少期から身を置いていますが...」

イリヤ「エーデルフェルト陣営のサーヴァントに、私達が召喚した

    サーヴァントが破られたということは聞いています」

イリヤ「勝者なき第三次聖杯戦争の顛末についてご存知ですか?」

ルヴィア「というのは?」

イリヤ「エーデルフェルトの当主以外、他の陣営のサーヴァントも

    マスターも皆、死に絶えたのです」

ルヴィア「...あまり、後味のいい終わり方ではありませんわね」
293 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 20:32 ID:3XIY2rvs
イリヤ「元々、私と母の前の聖杯の器であるホムンクルスは幾分

    戦闘用に調整されていたらしいのですが」

イリヤ「聖杯の器としては、ぎりぎり合格ラインだったそうです」

イリヤ「ユーブスタクハイトは、それを踏まえたうえで私の母を

    創造したのです」

ルヴィア「なるほど、では...お聞かせ願いましょうか」

ルヴィア「勝者なき聖杯戦争が、いかにして終結を迎えたのか?」

ルヴィア「その結末を、貴女の口から」

 ポーカーフェイスを崩さないルヴィアゼリッタの眼に映るのは

何もない虚無だった。

 代々、争いがあれば喜んで顔を出し、常に一番美味しい所を

掻っ攫うエーデルフェルト家が唯一苦汁を舐めさせられた聖杯戦争。

 その過去の遺物に大枚を叩いておきながらも、なおも興味を

持たないのが、エーデルフェルトの真骨頂なのだろう。

 来日したルヴィアゼリッタの興味はただ一つ。

 アインツベルンで最も価値のある、ホムンクルスだけなのだから。

 
294 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 20:55 ID:3XIY2rvs
イリヤ「ではまず、聖杯戦争の仕組みとアインツベルンが何に

    関わったのかについてお話ししましょう」

ルヴィア「...」

イリヤ「名目上、聖杯戦争は聖杯に選ばれ令呪を宿した7人の

     マスターが聖杯を巡って殺し合い、最後の1人がその

     所有権を手にするというものです」

イリヤ「ですが、その実際の目的は失われたアインツベルンの

    第三魔法、つまり魂の具現化...ヘブンフィールを再現する

    為に作られた儀式なのです」

ルヴィア「聞き伝えられている情報によると..」

ルヴィア「アインツベルン、遠坂、マキリの始まりの御三家が

      魔術師の悲願、万能の力である根源 へ辿り着く為の

     「孔」を作ろうとしたのでしたわね」

 イリヤもまた、語りに熱が入ってきた。

イリヤ「土地と降霊魔術の術式は遠坂、令呪等使い魔行使の術式は    
     マキリ、そして聖杯の器はアインツベルンが提供しました」

ルヴィア「なぜアインツベルンは聖杯戦争を始めたのです?」

イリヤ「それは、時の七代目当主ユスティーツァの望みが
 
    色濃く反映されているからですわ」

イリヤ「この世の悪の根絶という悲願成就と、失われた第三魔法、

    それを再び会得すべく、アインツベルンは根源への到達を

    狙っていました」

ルヴィア「魂そのもののエネルギーを自在に扱い、人間を超越する

      存在へと昇華するのが第三法でしたわね」

イリヤ「ええ、錬金術の命題にして未だ成就されぬ呪いです」
295 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 21:08 ID:3XIY2rvs
イリヤ「いうなれば、第三法は精神体でありながら単体で物質界に
     干渉できる高次元の存在を作る業」

イリヤ「天使や悪魔の如き存在に己を成すものです」

ルヴィア「では、聖杯戦争における聖杯の器と言うのは?」

イリヤ「貴女の言っている聖杯の器と言うのは、この私のこと」

ルヴィア「な、なんですって?」

 ここにきて、眉一つ動かさず静を保っていたルヴィアゼリッタが
初めて自分の感情を表した。

 イリヤは、静かに自分が一体どういう存在なのかを丁寧に、
時間をかけて話し始めた。

 小聖杯と大聖杯。

 聖杯と言う願望器がどのように願いを叶えるのか?

 第三次聖杯戦争における、アインツベルンのルール違反と、

それにより変質しきってしまった願望器が汚染され、もとの

存在から変質しきってしまった欠陥品へとなり下がったこと。

 イリヤは只管にありとあらゆる全ての真実を語り続けた。
296 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 21:16 ID:3XIY2rvs
 小一時間かけ、イリヤが全てを語り終えた時、ルヴィアゼリッタは

遠坂凛に負けないほどの聖杯戦争についての知識を得ていた。

ルヴィア「次を、次のお話を聞かせてくださいまし!」

ルヴィア「イリヤスフィール、さぁ次のお話を!」

 目を爛々と輝かせ始めたルヴィアゼリッタ。

 そこには怜悧な佇まいを崩さずに話を聞く令嬢の姿はなく、

地上でもっとも優雅なハンターの本性をむき出しにした

エーデルフェルトの若当主がいた。

イリヤ「ええ、このままお話をするのは吝かではありませんが」

イリヤ「その前に、少しお時間を頂けませんこと?」

イリヤ「お客様の知的探究心と空腹を満たす役割を、疎かには

     できません。お時間を頂けますか?」

ルヴィア「いいですわ。とびきり上等なものを用意なさい」

 
297 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 23:04 ID:3XIY2rvs
 イリヤとルヴィアがあれこれとやり取りをしていた時、士郎はリズと

セラと共に厨房にこもり、料理を作っていた。

セラ「士郎様、盛り合わせが終わりました」

 士郎が捌き、セラが握り、リズが整える。

 魚介類を中心にした士郎の本気の料理が完成を迎える。

士郎「セラ、できたものから先に運んで行ってくれ」

士郎「汁物は俺が持っていくから」

セラ「かしこまりました」

 セラが厨房から退出した後、士郎は足元のクーラーBOXから

とらふぐを取出し、一心不乱にさばき始めた。

 
 
298 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 23:13 ID:3XIY2rvs
 じたばたともがくとらふぐを鷲掴みにし、まな板の上に包丁を

何度も何度も叩き付ける。

 五度ほど叩き付けた後、その動きが一瞬止まったのを見計らった

士郎はフグの鼻の包丁を入れ、そのまま口を叩き切った。

 ひれと尾を切り落とした後は、えらの近くに切れ目を入れ

全身の皮を引きはがす。

 左の切込みから包丁を走らせ、背中からその皮をはぐ。

 肛門の皮の薄い場所にも切れ込みを入れ、そこから

腹の皮をはいだ後には、綺麗に皮を剥がれたふぐが完成する。

 後は頭を叩き割り、両目を抉りだして切り落としてあらにする。

 最後は毒成分のテトロドトキシンの含まれる内臓部分を

取り除いて下拵えは完了。

 残りの四匹に同様のことをして、かかった時間は五分強。

 リズが部屋を出たと同時に、士郎はフグの皮をひき始める。

 腹の皮と背の皮にあるぬるぬるとした粘膜を取り除いた後は、

皮下組織と皮そのものを別々にし、計四枚に分けられる。

 そして、それらをアイスピックでまな板の角に、背鰭を取った後の

穴の部分をひっかけ、固定してから皮に付いた棘や鱗を

そぎ落としていく。

 一匹に付き、一分のペースでさばき終えた後は、沸騰させた

湯の中に皮ひきを終えた全ての皮を湯の中へと入れ、一分ほど

放置する。

 氷水と塩を用意した士郎は、湯引きした皮をその中に移して

〆の作業に入った。

 冷水から引き揚げた後は、包丁で2㎜から4㎜の間隔で切刻み、

先程さばいた一匹の身と併せてざく切りにし、器へと盛り付ける。

 二十分後、フグ刺とフグの皮の和え物が完成していた。

セラ「士郎様、そろそろ...」

士郎「ああ、ついさっき出来たとこだ」

士郎「ワゴンを貸してくれ、俺が持っていくよ」

 ワゴンの上に料理を乗せた士郎は、イリヤ達のいる部屋へと

歩き出した。


299 名前:名無し 投稿日:2014/11/11 23:23 ID:3XIY2rvs
~~~

士郎「なぁ、セラ。イリヤのお客様ってどんな人だ?」

セラ「魔術協会絡みの人です。確か貴族の方だとか」

士郎「そっか、まぁ箸くらい使いこなせるだろ」

セラ「お言葉ですが、それはどうかと思います」

士郎「どうしてそうなるのさ?」

セラ「今日のお客様は、筋金入りの日本嫌いの方ですから」

士郎「でも、大丈夫だよ。そんな心配してないから」

セラ「どうしてですか?」

士郎「常識の通じない場所に、丸腰で来る貴族はいないから」

 取り留めのない会話は、イリヤ達のいる部屋の前で終わった。

セラ「士郎様、まずは私が先に戸を開けます」

セラ「その後、ゆっくりと入ってきてくださいまし」

士郎「そうする。ありがとな」

 セラが扉を開け、士郎はその後に続き部屋に入っていった。
300 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 00:03 ID:QLCCNeuX
 ワゴンを押しながら応接室に入った士郎の目に飛び込んた

光景は、ホムンクルスと大食い競争をしている金髪のいかにもな

育ちのいいお嬢様だった。

 優雅にして、怜悧な印象を見る者全てに与えるであろうその美貌。

 だが、それを今の光景が殆ど台無しにしていた。

 ただ一人、事の真相を知るイリヤだけがくすくすと笑っている。
 
イリヤ「あっ、ようやくメインディッシュが出来たのね」

士郎「イリヤ、そちらの方がお客様かい?」

 だが、こんな光景は衛宮士郎にとっては日常茶飯事である。

 士郎の存在にようやく気が付いたルヴィアは、慌ててご飯を

飲み込み、居住まいを正した。

イリヤ「紹介するわ、士郎」

イリヤ「夢中になって、ご飯をモリモリ食べているこのお嬢様」

 机の上に転がっているお茶碗が五杯を越しているあたり、単純に

最低でも二合以上のご飯がその華奢な体に入っていることになる。

 食欲だけ見れば、とんでもない怪物だ。
 
ルヴィア「ルヴィアゼリッタ・エーデ、ううぇっふ!」

ルヴィア「げほげほげほっ!」

士郎「ぶふぉっ?!」

 不覚にも、自己紹介に失敗したその姿がなぜだかドジを

踏んだ時の自分にそっくりなような気がした士郎は思い切り

噴き出してしまった。

士郎「セラ、頼む」

 経験上フォローしなければならないと悟った士郎だったが、

既に時は遅し、際は投げられてしまった。

リズ「大丈夫?ご飯つぶが鼻から飛び出てるよ?」

セラ「んふふふふっw」

イリヤ「アハハハハハ」

ルヴィア「~~~~~~!」

 鉄面皮のセラが噴き出してしまうような一言に俺とイリヤが

耐えられるわけもなく、また当の本人のお嬢様もこればかりは

どうしようもなかった。

 顔を赤らめ、手足をじたばたさせながら悔しがるその姿に、

一瞬だけ、堪えようのない悲しみを覚えた。
 
301 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 00:13 ID:39k6Pv8B
これでルヴィアも凛の差が縮まるわけなのだよ!!
302 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 00:29 ID:QLCCNeuX
 なんやかんやあったが、自己紹介を無事に終えた俺達は

楽しくワイワイと料理を食べ始めた。

 特にフグの刺身は皆に好評だった。

ルヴィア「シェロは随分と料理が達者なのですね」

士郎「いえ、俺なんかまだアマチュアの域を超えてないですよ」

 ルヴィアゼリッタさんは、とても物腰が柔らかでフランクな人だった。

 だが、それでも俺と同い年で魔術協会にその名を轟かしている

名門の若当主を張っているあたり、やはり身に纏っている気品が

半端なものではなかった。

ルヴィア「イリヤスフィールとは、確か義姉弟とききましたが?」

士郎「確かに俺とイリヤは、血の繋がっていない義理の姉弟です」

士郎「彼女の事を初めて知ったのが、去年の今頃なんですよ」

士郎「初めて会ったときは、ぎくしゃくしてたんですけど」

士郎「時間をかけて、分かりあって、結ばれたんです」

イリヤ「もうっ!シロウったらなにいってるのよ!」

ルヴィア「まぁ...///」

 何を言ってるんだと思ったのは束の間だった。

 失言だと思っていた言葉が、彼女にとってなにか感じ入る響きが

あったのだろう。勝気な笑みを浮かべていた顔がみるみるうちに

紅潮していった。

リズ「シロウがフラグを建てた」

セラ「この一級フラグ建築士!」

 いつの間にか、俺の中で張りつめていた緊張が消えて行った。

イリヤ「二人とも、私が呼ぶまで下がってなさい」

セラ「分かりました」

 メイド二人が退出した後、俺はイリヤの隣に座り、ルヴィアさんに

聖杯戦争についての話をすることになっていた。 
 

 
303 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 00:36 ID:QLCCNeuX
ルヴィア「さて、先ほどのお話の続きですが...」

ルヴィア「イリヤスフィール、まず前回の聖杯戦争について話して
      くださらないかしら?」

イリヤ「ええ、第五次聖杯戦争を語る上で前回の聖杯戦争は
    欠かすことが出来ないくらい重要だから」

イリヤ「じゃあ、話すわよ」

イリヤ「第四次聖杯戦争がどうなったのかを」
304 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 00:46 ID:QLCCNeuX
イリヤ「私も前回の聖杯戦争について知らないことがある」

イリヤ「だから、あくまでも推測になってしまうんだけど...」

イリヤ「私が9歳の時、アインツベルンはセイバーの聖遺物を
    コーンウォールから発掘し、アーサー王を召喚した」

イリヤ「アインツベルンのマスターは衛宮切嗣」

イリヤ「悪名高き魔術師殺しと呼ばれた、私の父よ」

イリヤ「御三家の内、間桐からはバーサーカー」

イリヤ「遠坂からはアーチャーのサーヴァントが召喚された」

イリヤ「キャスターとライダー、ランサーのマスターについては
    わからないわ」

イリヤ「だけど、時計塔から二人くらい日本に来ていたらしいわ」

ルヴィア「その一人は時計塔に居ます」

ルヴィア「名をウェイバー・ベルベットといい」

ルヴィア「現在彼は、時計塔で生徒たちに教鞭をとっています」

ルヴィア「そして、時の時計塔一級講師のロード・エルメロイ」

ルヴィア「おそらくこの二人が参戦したのでしょう」

イリヤ「なるほどね」


305 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 00:51 ID:QLCCNeuX
イリヤ「アサシンのマスターは監督役の息子」

イリヤ「キャスターのマスターは正体不明」

イリヤ「十年前に聖杯を奪い合ったのは、この面々」

ルヴィア「結果から言いますと?」

イリヤ「冬木市が聖杯のせいで大災害に見舞われたわ」

イリヤ「前回の聖杯戦争で生き残ったのはアサシンのマスター
    言峰綺礼とライダーのマスター、そして私の父」

イリヤ「キリツグは病死して、言峰綺礼は士郎が殺した」

イリヤ「だから、第四次聖杯戦争の当事者はウェイバーだけよ」

306 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 01:03 ID:QLCCNeuX
ルヴィア「ふむ、ではどのサーヴァントが一番強かったのですか?」

イリヤ「アーチャーのサーヴァントが一番だったわ」

イリヤ「だって、英雄王ギルガメッシュだもの」

ルヴィア「ですが、遠坂のサーヴァントはアーチャーではなくて?」

イリヤ「ああ、それは言峰が遠坂のマスターを裏切ったのよ」

イリヤ「恐らくそう、アーチャーのマスターを殺し英雄王と再契約」

イリヤ「本人の口から聞いた真実よ」

ルヴィア「下馬評ではセイバーのサーヴァントが最優とありますが」

ルヴィア「消去法で行くと...」

アーチャー

セイバー

ライダー

バーサーカー

ランサー

キャスター

アサシン

ルヴィア「と言う順番になったのでしょうね」

イリヤ「ええ、先ほども話したように小聖杯を通して大聖杯に
    通じる「孔」ができていた」

イリヤ「だけど、キリツグは聖杯を拒んだ」

イリヤ「その後、変質しきってしまった大聖杯の魔力を帯びた泥が
    冬木の街に降り注がれた」

イリヤ「大勢の人が死に、シロウの家族も死んでしまった」

307 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 01:08 ID:QLCCNeuX
イリヤ「その後、キリツグはシロウを助けた数年後に死んだ」

イリヤ「言峰綺礼も去年の聖杯戦争で死んだ」

イリヤ「これが第四次聖杯戦争の顛末」

イリヤ「どう?何か質問はある」

308 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 22:45 ID:QLCCNeuX
ルヴィア「いえ、大体予想していた通りでしたわ」

ルヴィア「ですが、イリヤスフィール」

ルヴィア「大聖杯はまだ冬木の中にあるのですか?」

イリヤ「ここから数㎞位のところに柳洞寺ってお寺があるの」

イリヤ「そこの地下に大聖杯はあるわ」

ルヴィア「...そんな危険なモノを放置する者の気がしれませんわ」

イリヤ「ま、うかつに触らない方が身の為よ」

イリヤ「時計塔や魔術協会が参加するのも時間の問題だから」

ルヴィア「一応私も協会よりの魔術師なので、隠匿されていない
      しかも、それが大規模な魔術となると...」

イリヤ「放置できない、でしょ?わかるわよ」

イリヤ「でも、そんなことよりも聞きたいことがあるんじゃないかしら」
309 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 22:56 ID:QLCCNeuX
ルヴィア「聖杯戦争は、もう終わった筈...ですわよね」

イリヤ「ええ、終わったわ」

ルヴィア「召喚された英霊たちの魂は、終了したと同時に
      聖杯の中へと還元されるはず...」

イリヤ「だから言ったでしょ、大聖杯がバグっちゃってるって」

イリヤ「色々と世界が混ざっちゃってるんじゃないのかしら?」

ルヴィア「つまり、多層同位的に可能性としての今があると?」

イリヤ「というより、私達が何を「観測している」かに焦点を当てて」

イリヤ「別に観測者というものの介入を考える必要はないわ」

イリヤ「大聖杯が残っている以上、その残りの魔力で消失した
    サーヴァントを再召喚し、契約したと言っておきましょう」

ルヴィア「なるほど、それでトオサカは剣の英霊を使い魔として
      今も行使しているのですね」

イリヤ「厳密に言えば、まだ聖杯戦争は終わってないのよ」

イリヤ「私が生きている限り、大聖杯が存在する限り...ね」
310 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 23:13 ID:QLCCNeuX
 休憩を挟んだとはいえ、ぶっ続けで話し続けたからか、少し疲れた。

イリヤ「シロウ、ちょっと...つかれちゃった」

 だ、め...まだ眠っ、ちゃ...

 意識を保てなくなった私は、そのまま士郎の膝へと倒れこんだ。
311 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 23:21 ID:QLCCNeuX
士郎「イリヤ...そっか、今日はここまでか」

 衛宮士郎、と名乗った青年は姉であるホムンクルスに労りの

眼差しを投げかけ、膝に乗ったその頭をなで始めた。

ルヴィア「一体、どうしたのかしら?」

 秀麗とは言えないが、朴訥で一本気な印象を受ける。

 魔術とは縁や関わりが皆無だった一般人だったのだろう。

 にも拘らず、錬金術の大家であるアインツベルンにその名を

連ねていることに、私は痛く興味をひかれた。

ルヴィア「とても、大切にしていらっしゃるのね」

士郎「ええ、イリヤは...俺の大切な人だから」

 うっすらと涙を浮かべた彼は、姉の代わりに第五次聖杯戦争が

どのような結末を迎えたのかを語り始めた。
312 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 23:32 ID:QLCCNeuX
 第四次聖杯戦争の災禍により、ただ一人生き残ってしまった
とある青年は自分を救ってくれた養父の理想に憧れを抱いた。

 救われぬ者に救いを等しく与える『正義の味方』という理想に。

 全ては彼が生き残ったことにより始まりを迎える。

 魔術を使うその意味も意義すら知らなかった青年は、自分の中に在った唯一の『強化』と『投影』魔術をひたすら続けてきた。

 唯一の師が死んだ後も、毎日彼はそれを続けたのだった。

 全ては、全てを救う『正義の味方』へ己が至る為に...。

 そして、運命の夜が彼を導き始める。
313 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 23:44 ID:QLCCNeuX
 剣の英霊の少女との出会い、未来の自分との衝突。

衛宮士郎は聖杯戦争の中で、遂に自分の本質を理解する。

 この身は、剣でできていた。

 シロウ、貴方が私の鞘だったのですね...

 対照的な主従が、迷いながらも辿り着いた答え。
 
 それは、今まで聞き知ったどんな英雄譚よりも激烈で

 だからこそ、目の前の衛宮士郎と言う人間がいかにして
英雄に憧れたのかをまざまざとルヴィアゼリッタは魅せつけられた。

 勝者なき聖杯戦争は、善よりも悪を好み、万人が美しいと
感じる物よりも醜いものを「幸福」と感じる異常欠陥者、
言峰綺礼と人類最古の英雄王、ギルガメシュを打ち破ったことで
終焉を迎えた。

 そして、衛宮士郎は遠坂凛とともにセイバーを現世に留めた...。
314 名前:名無し 投稿日:2014/11/12 23:55 ID:QLCCNeuX
士郎「すいません、なんか途中から自分語りみたいになっちゃって」

ルヴィア「いえ、そんなことはありませんことよ?」

ルヴィア「貴方でなければ、きっと聖杯戦争に幕を下ろせなかった」

ルヴィア「迷い続け、悩み続けた末の結論に醜さなど無いのです」

 自分の口から、無意識に飛び出してきた掛け値なしの褒め言葉。

 庶民でありながらも、ルヴィアゼリッタを引き付けるのは士郎が

士郎である所以でもあった。

 だが、ルヴィアゼリッタは士郎の本質が自分を犠牲にし、
他を幸せにするというところにあるとすぐに看破した。

 加えて、遠坂凛がルヴィアゼリッタに立ちはだかったことも

ルヴィア(エーデルフェルトに、是非欲しいですわ...)

 地上でもっとも優雅なハイエナが狙わない訳がなかったのだ。
315 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 00:13 ID:O5XYm1uT
ルヴィア(それでは、少しつついてみましょうか)

 人間として、破綻しつつも曲がりなりにも超えてはいけない一線を
超えることがなかった男。
 ルヴィアゼリッタは、そんな男の心変わりに愉悦を見出した。

ルヴィア「シェロ、貴方の魔術を見せて頂ける?」

士郎「いいですよ、同調、開始」

 ものの数秒で、士郎はいくつもの剣を投影し終えた。

 カリバーン、干将・莫邪、物干し竿、ゲイボルグetc,etc

ルヴィア(随分とまぁ、精巧な張りぼてですこと)

 時計塔でも投影魔術を使う魔術師はいるが、それは儀式において道具が揃えられなかったときの代用品として、 すぐに消える複製を用意するためくらいにしか使われない。

 投影は虚影といわれるほど意味がない。それが常識なのだ。

 だが、その認識はいつまでたっても消えない剣製にあっという間に
粉々に打ち砕かれた。
316 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 00:33 ID:O5XYm1uT
ルヴィア「…貴方、魔術回路は何本ですの?」

士郎「二十七本です」

ルヴィア「…平均よりは上かも知れませんが…異常すぎますわ」

ルヴィア「えっと、先ほど投影したものは?」

 内心の動揺を悟られないよう、努めて平静に会話を続ける。

士郎「えーっと、選定の剣と干将・莫邪、ゲイボルグです」

ルヴィア「いいいいい、一体な、何者なのですの!?貴方」

ルヴィア「それで、実際にどれくらい使えるのです?」

士郎「えーっと、実物に比べて1ランクダウンする位かな?」

士郎「あくまでも限りなく本物に近くても、偽物だから...」

ルヴィア「投影以外にも、何か魔術を使うことはできて?」

士郎「アハハ、それが投影以外はからきし駄目で」

 なんとしても、この魔術師を手に入れなければならない。
敵の多いエーデルフェルト家にとって、彼の力は必ず役に立つ。

 聖杯戦争に関係する貴重な魔導書の全てと引き換えにしても、
この年若き異端の魔術師をどんなことをしても手に入れなければ
ならないとルヴィアゼリッタは決意した。
317 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 00:38 ID:CKpqbwBo
これはさらに状況が面白くなってきましたね
318 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 21:25 ID:O5XYm1uT
イリヤ「ん、寝ちゃった...」

 興奮を遮るように、イリヤスフィールが起きた。

士郎「イリヤ、大丈夫なのか?」

イリヤ「ん~、大丈夫。心配ないわ」

 心配げな彼をよそに、彼女はのびのびと身体を伸ばす。

ルヴィア「シェロ、少し部屋を空けてくれませんこと?」

士郎「え、ああ。別にイイですけど」

イリヤ「多分すぐ終わると思うから、呼んだら来てね」

士郎「はいはい。わかったよ」

 なんの疑問を持たずに、士郎は退出した。

 残された二人の女は、いよいよ本題を切り出した。

ルヴィア「イリヤスフィール、率直に言わせて頂きます」


ルヴィア「あの青年を、私に預けてみませんか?」


イリヤ「ええ、こちらこそ是非お願い致しますわ」
319 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 21:34 ID:O5XYm1uT
 それは、実に重要なことでありながら即決された。

 ルヴィアゼリッタは歓喜の表情を隠すことなく、イリヤスフィールは

対照的に喜色満面の笑みを浮かべ、ルヴィアゼリッタの手を取った。

イリヤ(やった、やったよシロウ)

イリヤ(これで...あとはシロウが幸せになれば...大団円)

 この自分のちっぽけな命が、弟の未来に希望を与えることが
できた。
 それだけで、イリヤスフィールは満足だった。

 先のない命で、一つでも多くの事を残せるのであれば...

 せめて愛した男の進む道に、幸を願う。

 イリヤスフィールの女の意地が、遂に実を結んだ。

 だが、ルヴィアゼリッタはそんなイリヤスフィールの喜びの表情が
とても気に食わなかった。

 だからこそ、彼女も一人の女としてイリヤスフィールにあれこれと
色々なことを言いたくなってきたのだった。
320 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 21:40 ID:O5XYm1uT
ルヴィア「ちょっと、お話しましょうか。イリヤスフィール」

 先程とは打って変わり、冷徹な魔術師然とした表情を浮かべた
ルヴィアゼリッタ。
 イリヤスフィールも、それに呼応するように気を引き締める。

ルヴィア「貴女、私に隠していることがおありでしょう?」

イリヤ「シロウを寝取った事、寿命が尽きかけてる。この二つだけ」

 自分の質問に、あっけからんと答えるイリヤにルヴィアは違和感を
感じつつも、追及を止めることはなかった。

ルヴィア「尽きかけの命を、どう永らえているのかは知りません」

ルヴィア「ですが、なぜ?」

ルヴィア「何故、貴女は自分が幸せになろうとしないのですか?」
321 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 21:49 ID:O5XYm1uT
イリヤ「...私もね、諦めてたの」

イリヤ「いくら義姉弟といっても、私は人間じゃない」

イリヤ「それに、私が居なくてもシロウの傍には支えてくれる味方が
    一杯いたから...出る幕なんかないって、そう思ってた」

 イリヤスフィールは、ルヴィアゼリッタに大河の事を話した。
彼女の死から、全てが始まった。
 その間、ルヴィアゼリッタはイリヤから目をそらさず、正面から
ずっと向き合っていた。

ルヴィア「なるほど、そういうことあったのですね」

ルヴィア「では、今度は私の一族についてのお話をしましょう」

 幸せとはなにか?
 それをイリヤスフィールに完全に自覚させる為、ルヴィアゼリッタは
一肌脱ぐことにした。
322 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 21:59 ID:O5XYm1uT
ルヴィア「私の一族の祖は、ヴァイキングでした」

ルヴィア「まぁ、私の身体には征服者の血が流れている訳です」

ルヴィア「魯迅の様に、人々が歩いた地が道になるではなく、
      殺した屍を己の歩く道としたのです」

ルヴィア「犯して、奪うことが日常でしたから...大多数の方が愛や
      幸せとは無縁の日々を過ごしていました」

 幼い頃、両親から聞いたエーデルフェルト家の成り立ちを滔々と
諳んじるルヴィアゼリッタ。
 イリヤスフィールは、その全てに注意して耳を傾ける。

ルヴィア「故に、彼らは運命や神託、愛を大切にしたのです」

ルヴィア「エーデルフェルトがどうして、天秤と呼ばれるのか?」

ルヴィア「貴女は知っていますか?」

イリヤ「...うまく言えないけど、何となくわかるかもしれない」

イリヤ「常に自分と自分にとって大切な者を秤にかけるからかしら」
323 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 22:09 ID:O5XYm1uT
ルヴィア「左の皿に乗せるのは、己の矜持と美学」

ルヴィア「右の皿に乗せるのは、己を変えうる可能性を秘めるもの」

ルヴィア「初代エーデルフェルトの当主は征服者の生き様こそが
      最も尊いと捉え、一族全てがかくあるべしと考えたのです」

ルヴィア「故に、私達一族は戦いの最中に身を投じ、略奪と戦いを
      至純の喜びとしているのです」

イリヤ「脈々と、気高さと誇りが受け継がれている訳ね」

イリヤ「羨ましいわ、私たちホムンクルスとは大違いね」
324 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 22:33 ID:O5XYm1uT
ルヴィア「かくいう私の母も、苛烈な人でした」

ルヴィア「父に想い人がありながらも、その想い人を殺し、
      父を略奪し、私をその腹からひねり出したのです」

ルヴィア「父も並ぶもの無き剛の者でしたが、最終的には
      母の色に染められ、母を愛するようになったのです」

ルヴィア「二人は五年前に死徒27祖の一祖と戦い、果てました」

 ルヴィアゼリッタは、ここでいったん話を打ち止めた。

 イリヤスフィールもルヴィアゼリッタの隠された出自を聞き、色々と
思う所があった。

 他人の幸せを奪ってまで、幸せになることは人倫に反する。
 
 だが、他人の幸せと己の幸せの重みはいわずもがなである。

イリヤ(私の幸せってなんだろう?)

 士郎を手に入れた後、イリヤスフィールはそれを考え続けていた。

 毎日士郎に抱かれ、その睦みあいの中で心が震えるような
愛の言葉を囁かれても、それが醒めたもののように感じてしまう
自分がいた。

 欲しくて欲しくてたまらない家族がようやく手に入ったのに...
イリヤはその価値を未だに見出すことが出来なかった。

 そんなイリヤを見たルヴィアゼリッタは、ある問いを投げかけた。

ルヴィア「母上の最後の言葉は、心を満たせ。でした」

ルヴィア「父上の最後の言葉は、渡されたものを受け入れろ」

ルヴィア「では、私から貴女に問います」

ルヴィア「貴女は一体、彼から何を貰ったのですか?」
325 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 22:37 ID:O5XYm1uT
イリヤ「なぁに、どんな質問なのよ、それ?」

 頭を捻りながらも、イリヤの答えはとっくに決まっていた。

イリヤ「いいわ、答えてあげる。それは...」

ルヴィア「ストップ、その前に用意してほしいものがありますの」

 得意げな笑みを浮かべたルヴィアゼリッタは、イリヤに士郎を
呼ぶように要求し、紙とペンを持ってくるように頼んだ。

 そして、ものの一分もしない内に士郎が部屋へとやってきた。
326 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 22:55 ID:O5XYm1uT
士郎「イリヤ、来たよ」

イリヤ「紙とペンは持ってきた?」

士郎「ああ、便箋と万年筆を持ってきた」

 士郎の手には、便箋と万年筆が二人分あった。

士郎「ところで、イリヤはルヴィアさんと何を話していたのかな?」

ルヴィア「いえ、私の話に付き合ってもらっていましたの」

ルヴィア「貴方にも付き合ってもらうことになるのですが、宜しくて?」

士郎「ええ、大丈夫ですよ」

ルヴィア「では、」

 事情が飲み込めず、手持無沙汰に立つ士郎にイリヤが先程の
質問と同じことを伝える。

イリヤ「じゃあ、最初に私が書くわね」

士郎「...分かった」

 何かを決心した表情を浮かべ、イリヤは部屋の片隅に移動し、
あっという間に戻ってきた。

士郎「...イリヤ」

イリヤ「なぁに?」

士郎「ありがとう」

 笑みを浮かべ、士郎の唇に軽くキスをしたイリヤは部屋から出た。
 それを追うようにして、ルヴィアゼリッタも部屋を出た。

士郎「俺はイリヤの何を受け入れたいのか?」

 呟いた一言は、イリヤからのSOSだった。

 
327 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 23:17 ID:O5XYm1uT
士郎(思えば、遠くまできたもんだ)

 継ぎはぎだらけの理想を切嗣から受け継ぎ、前へ前へと進んだ。

運命を変える出会いがあった。出会った人々の運命を変えてきた。

 それはきっと間違いなんかじゃない。

 だけど、それでも...

士郎「俺は、一体みんなの何を受け入れてたんだろうな?」

 大河の死に伴い、凛とセイバーを傷つけて捨てた。

 あれだけの死線を潜り抜け、これから先もずっとその絆は
断ち切られることはないのだと思っていた。

 だけど、セイバーと凛を捨ててから、自分に何が足りないのかを
士郎はようやく自覚した。

士郎(俺は、からっぽだったんだ)

 夢を叶えることが幸せの実現とは限らない。
 叶えたことによって、誰かを傷つけ、涙を流させることもあるのだ。

 衛宮士郎は、気が付いていなかったのだ。

 自分が生きているだけでも辛い人間だということに。

 背負いきれないほどの想いに押しつぶされそうになりながら、
それでも浮かべる笑顔が、いかにイリヤの思い描いている幸せと
かけ離れているのかと言うことにすら気が付けなくなるほどに...。

 強さと引き換えに涙を、

 人の不幸がなければ、自分の正義に意義を感じられないように、

 そんな破綻した衛宮士郎の心を満たす者は、誰もいなかったのだ
328 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 23:25 ID:O5XYm1uT
士郎(だから、藤ねえとイリヤには感謝しなきゃな)

 剣の丘でただ一人、孤独な最期を迎えることが怖くなった。

士郎(愛する人と家族を天秤にかけたとき、俺は...)

 かつての切嗣とは異なる未来へと士郎は歩き出した。

士郎「そっか、空っぽなら埋めていけばいいんだ」

 そして、士郎は便箋に大きく答えを書いたのだった。

329 名前:名無し 投稿日:2014/11/13 23:55 ID:O5XYm1uT
イリヤの視点

ルヴィア「では、まずはシェロの答えから見せて貰いましょう」

 多分、私は今生まれてこの方、かつてない程に緊張している。

 士郎の事を愛していても、近いうちに私は死んでしまう。

 もっと生きていたい、もっと幸せになりたい。

 そんな人並みの望みすら叶えられないような女を、士郎は
果たして愛し続けてくれるのだろうか?

イリヤ(怖い、シロウの事を信じたいのに信じられないのが、怖いよ)

 知らず、シロウの手の上に私は自分の手を重ねていた。

士郎「大丈夫だ、イリヤ」

士郎「俺は、イリヤの事を愛してる」

 でも、私は臆病だから...

 キリツグとお母様が私のセカイのすべて。

 それ以外は知らないし、知りたくもない。

 家族愛しか知らない私は、シロウの愛を受け入れることが
どれほど困難で勇気がいるのかを理解できていなかった。

 求めあうことだけを愛と盲信することがどれほど楽だろう。

 今なら自分の醜さだけで、首を括ることもできる気がした。

イリヤ「そんな、そんな言葉だけじゃ...満足できないよ」

イリヤ「ねぇシロウ、本当にそう思ってくれているの?」

 感情が爆発し、魔力が暴発する。

 だめ、抑えなきゃ!

イリヤ「私、もう少しで死んじゃうんだよ?」

 クリスタルの置物が、シロウの頭に落下する。
間一髪でよけるも、シロウのこめかみから一筋の血が流れた。

イリヤ「私を愛したって死んじゃったら何もならないじゃない!」

 落ち着け、イリヤ。
 そういいながら、私の身体を抱きしめるシロウ。

 
イリヤ「捨てないでよ!私だけを見てよ!」

イリヤ「助けて...私をもう...一人にしないでよ」

 結局、声にならない嗚咽が私の答え。

 伝えたいことや信じて欲しいことが何一つ伝わらず、泣いて
時が過ぎるのを待つしかないのだ。

士郎「俺はさ、ずっと自分が幸せになっちゃいけないと思ってた」

士郎「十年前の冬木の大火災で、唯一生き残ってしまった俺は...
    自分を優先する資格がないと思いながら、生きてきた」

 でも、ようやくそこからぬけだせそうなんだ。

士郎「イリヤ、もうこういうのはさ、今日で終わりにしよう」

士郎「俺の答えが、そこにある」

士郎「イリヤが何を求めているのか、それを俺に教えてくれ」

 涙を拭った私は、腹を括った。 
330 名前:名無し 投稿日:2014/11/14 00:16 ID:qqoBldm3
 士郎は『受』を、イリヤスフィールは『心』をそれぞれの答えとした。

 渡されたものを受け入れ、心を満たす。

 二つの答えは、重ね合わせることにより『愛』となった。

イリヤ「私は...」

士郎「俺は...」

 やがて、沈黙を破り、堰を切ったように二人は話し始めた。

イリヤ「シロウに私の全部を受け入れて欲しい」

イリヤ「人見知りで臆病なところも、一人じゃ何もできないことも」

イリヤ「ホムンクルスで、あと短い命だっていうことも」

イリヤ「シロウのためならなんだってする。努力する」

イリヤ「だから、私を幸せにしてください」

 目を潤ませながら、渾身の愛を語り続けるイリヤ。

 かつてアイリスフィールに切嗣が心を与えたように、士郎の存在がイリヤの心を満たしていく。
 それは士郎に対しても同様のことが起こっていた。

士郎「俺さ、この先イリヤ以外の女の子にクラってくるかもしれない」

士郎「誰かの為に、自分を犠牲にしてイリヤを泣かせるかもしれない」

士郎「汚い手を使って、卑怯者になり下がるかもしれない」

士郎「権力の犬になって、無様な所を見せるかもしれない」

士郎「でもさ、イリヤの不安は全部ぶっ壊すから」

士郎「俺が、イリヤとセラとリズを護るから」

士郎「だからさ、幸せになろう」


士郎「二人で仲良く年取って、子供を育てて、笑って死のう」


士郎「全力で、俺が君を護るから...」

士郎「どんなときも、一緒に居るからさ」
331 名前:名無し 投稿日:2014/11/14 00:35 ID:qqoBldm3
士郎「ルヴィアゼリッタさん」

士郎「俺とイリヤを、買ってください」

士郎「俺、ようやく生きがいを見つけたんです」

士郎「借り物の夢に己を殉じさせるんじゃなくて、心から望む
    自分だけの夢を見つけられたんです」

士郎「投影しか使えないし、魔術の魔の字もしらないけど」

士郎「俺、本気なんです!イリヤの為に生きたいんです!」

332 名前:名無し 投稿日:2014/11/14 00:45 ID:qqoBldm3
ルヴィア「分かっていらっしゃるのかしら?」

ルヴィア「今日会ったばかりの人間に、アインツベルンと敵対しろ、
      ということがどれだけの事か理解しているのです?」

ルヴィア「非現実的で、かつ実に愚かな物の頼み方ですわね」

ルヴィア「ですが...」

ルヴィア「私もそんな馬鹿野郎の夢に乗りたくなってきましたわ」

ルヴィア「私の夢は、下克上ですわ」

ルヴィア「まだ、その内容を打ち明けるつもりはありませんが」

ルヴィア「貴方には私の翼になってもらいましょう」

ルヴィア「過去を捨てなさい、そして忠誠を誓いなさい」

ルヴィア「この私に、そしてイリヤスフィールにも」

333 名前:名無し 投稿日:2014/11/16 10:10 ID:RNTOkhyR
続きが気になってきましたよー
334 名前:名無し 投稿日:2014/11/17 22:08 ID:aiWOw7nN
そして、彼女は一枚の紙を俺に差し出した。

ルヴィア「それに、貴方が私とイリヤスフィールに負う責任の全てを
      書きなさい」

ルヴィア「自己強制証明。破れぬ誓いですわ」

ルヴィア「そして、貴方がこれを破棄しない限り....」

ルヴィア「私は、貴方達二人とその家族を庇護しましょう」

 その言葉に偽りはなかった。

 今日会っただけの、素性の知れない人間にここまで手を
差し伸べてくれる人がはたして、どこにいるのだろうか?

 おそらく、世界中探しても見つからないだろう。

 イリヤをこの手で護る為に...。

 大河から託された夢を叶えるために。

 士郎は、もう迷わないことにした。

 今ある機会を最大限生かし、より高みへと昇ることにした。

 
335 名前:名無し 投稿日:2014/11/17 22:48 ID:aiWOw7nN
 時間にして、10分。

 その間に、己が懸けられる全てをそこに刻んだ。

ルヴィア「では、それをイリヤスフィールに」

イリヤ「士郎...」

士郎「イリヤ...聞いてくれ」

 束縛術式対象:衛宮士郎

 誓約:衛宮切嗣が養子、衛宮士郎はイリヤスフィール・フォン・
アインツベルン、並びにルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの両人に
以下の誓約を遵守し、これを永久的に破棄することを禁じる。

・衛宮士郎はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、そして
 リーゼリット、セラ、そして家族に命の危機が迫った時、これを
 最優先で護り、その敵を討ち果たすものとする。

・衛宮士郎はルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトに忠誠を誓い、
 己の魔術を其の忠義の証として、以降は振るうものとする。

・衛宮士郎は対象両名に対し、全ての虚言や隠し事をすることなく、 正直に打ち明ける。

・この先、衛宮士郎が得た魔術におけるその全ての技術、ならびに
 収得した全てはルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトへと譲渡され、
 以降は対象に所有権を委ねるものとする。

・また不測の事態や契約の不備が発生した場合、緊急時において
 契約対象に自分に関わる束縛術式の変更を実現可能な範囲内で 委ねるものとする。

・以下の五つを命ある限り衛宮士郎は遵守することを誓うものなり。 
336 名前:名無し 投稿日:2014/11/17 23:10 ID:aiWOw7nN
ルヴィア「いいでしょう」

ルヴィア「貴方が己に課したギアス。受諾しましょう」

 この瞬間、俺の未来は完全に変貌した。

 己の極致である、剣の丘への道は閉ざされたのだ。

イリヤ「ちょっと、いいかしら?」

ルヴィア「なにかしら?イリヤスフィール」

イリヤ「私はシロウほど、お人よしではないから」

イリヤ「貴女が保護して下さる、私とシロウに対して負う責任を
    今ここで、明文化して頂けませんこと?」

イリヤ「シロウと同じ形で」

ルヴィア「いいでしょう。ただし...」

ルヴィア「それが貴女の想像と食い違っても、私の傘下に入った
      以上は、泣き言を言わずに誓ってくだされば」

ルヴィア「喜んで、私は誓約しますわ」

イリヤ「ええ、悔いも泣き言も弱音も吐かないわ」

ルヴィア「では、少々お待ちになって...」

 今度はイリヤが自己強制証明の契約書をルヴィアゼリッタへと
差し出した。

 彼女はそれを受け取った後、猛然とペンを走らせ始めた。

ルヴィア「このような条件でよろしいかしら?」

 
337 名前:名無し 投稿日:2014/11/17 23:41 ID:aiWOw7nN
束縛術式対象:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、衛宮士郎

誓約:エーデルフェルト家現当主、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、並びに衛宮士郎の
両名に以下の誓約を遵守する。

・庇護対象は衛宮士郎並びにイリヤスフィール。そしてその実子及び
 メイド二名とする。

・庇護対象は今後、エーデルフェルト家の一員としてそれに相応しい
 教養と自覚を持ち、行動する。

・庇護対象は今後、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの近侍として
 その研究及び、実務を補佐すること

・庇護対象が庇護対象であり続け、かつ、誓約を破棄しない限り、
 契約者は両名における生存並びに倫理、人的権利を全面的に
 これを保障する。 

・この誓約は、束縛対象の両名が死亡するまで続くものとする。

・不測の事態において、束縛対象が死亡した場合、残された一人は
 契約の破棄を申し出ることが出来る。

・エーデルフェルト家において、後嗣無き場合、束縛対象の同意を
 得た場合のみ、束縛対象との実子を一代限りで当首の座に据え、
 次代の後継者が出るまで、その実権を持たせるものとする。

・以下の七つを命ある限りルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトは
 遵守することを誓うものなり。
338 名前:名無し 投稿日:2014/11/17 23:54 ID:aiWOw7nN
イリヤ「...驚いた、ここまで」

ルヴィア「これが飲めなければ、この話はご破算ですわ」

イリヤ「ううん、是非この条件でお願いいたしますわ」

 彼女に見せて貰った条文は、何も知らない俺が傍から見ても
全部が全部俺達にとって願ってもいない破格の条件だった。

 普通、ここまでうまく行きすぎている厚意だと裏があるものだと
疑ってしまうものだが、イリヤによるとこれが魔術師にとっての
最大の譲歩らしい。

 自己強制証明。
 それは権謀術数の入り乱れる魔術師の社会において、決して違約不可能な取り決めをする時にのみ使用される、もっとも容赦のない呪術契約の一つ。

自分の魔術刻印の機能を用いて術者本人にかける強制の呪いは、いかなる手段用いても解除不可能。

 我ながらとんでもないものに手を出してしまったが、それでも俺が
これからイリヤを護る為には必要不可欠なものだ。

 下手をすれば自分の命すら脅かされるリスクを恐れずに背負ったルヴィアゼリッタさんには本当に頭が上がらない。
339 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 00:40 ID:vFmtV2Nq
続きが楽しみ
順調に行き過ぎてて怖いがイリヤと士郎に幸多からんことを祈る
340 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 00:55 ID:17ASoUmY
ルヴィア「エーデルフェルトですもの、これくらいは朝飯前ですわ」

ルヴィア「さて、これからどうしましょうか?」

 時が過ぎるのはとても速く、気が付けば午後八時を回っていた。

士郎「どうするっていうのは?」

ルヴィア「私としては、すぐに荷物をまとめ渡英してほしいのです」

ルヴィア「シェロ、貴方は何ヶ国語を話せて?」

士郎「英語は一通りマスターしました」

士郎「ドイツ語とフランス語を今は勉強してます」

ルヴィア「その二つはどれほど理解できて?」

士郎「ドイツ語は医学書を普通に読めるレベルで、フランス語は
    まだ分からない所が多いです」

ルヴィア「ビザとパスポートは?」

士郎「取得済みです」

ルヴィア「なるほど、でしたら早いに越したことはありませんわね」

ルヴィア「二週間後に日本を出、私の実家に来なさい」

ルヴィア「三ヶ月の間に五ヶ国語をマスターし、来年の四月から
      イリヤスフィールと共に時計塔に来なさい」

 こうなった以上、もはや冬木に留まる必要はなくなった。

 新天地への出立は早ければ早いほどいい。

 一抹の後悔は、フィンランドにでも行った時にすればいい。

イリヤ「本当に、何から何まで...感謝してもし足り無いですわ」

 感極まったイリヤは、うるんだ目でルヴィアさんを見つめていた。

ルヴィア「堅苦しい敬語はよしてほしいですわ」

ルヴィア「公式の場において、従者や近侍として然るべき態度と
      礼節さえなっていれば、別にそれで構いません」

 最後まで優雅な佇まいを崩すことのなかったルヴィアさんに
俺は心底敬服させられた。

ルヴィア「では、これにて私は失礼させていただきますわ」

 セイバーとも遠坂とも桜とも違う、優雅でありながら多様な面を
魅せる彼女の傍に居たいと、そう思えるほどに...

イリヤ「士郎、お客様をお送りしなさい」

士郎「わかった。すぐ行く」

 まだ、あの人はそう遠くに言っていない筈だ。

 明日帰ってしまうのなら、せめて後少し俺の話を聞いて欲しい。

アサシン「マスターよ、ちと厄介なことになりそうだぞ」

 だが、ここですんなりと上手くいくほど現実は甘くなかった。

士郎「アサシン、敵の数は?」

アサシン「ほう、随分と獣のような精悍な顔つきになったものよな」

アサシン「ライダーとそのマスター、そして魔術師の類が5名」

士郎「斥候は殺せ、その後....頃合を見計らい」


士郎「ライダーのサーヴァントに、止めを刺せ」


アサシン「了解した、マスター」

士郎「魔力の事は心配するな、全力で叩き潰せ」

アサシン「...一つ、無駄口を叩かせて貰ってもよいか?」

士郎「なんだよ」

アサシン「ようやく人らしさというものを身につけたな」

アサシン「その餓狼の如き眼差しと心が、お主には全く足りなかった」

 魔力消費が少ないアサシンならば、俺程度の魔力でもライダーと
短期決戦であれば、普通にやりあえるだろう。

 だが、問題がある。
 
 騎兵の手綱の前には、アサシンは太刀打ちできない。

士郎「やられる前に、こちらから仕掛ける...」

 俺のイリヤに害をなそうというなら、かかってこい、桜。

 ただし、そこから先に待ち受けるものを予測できればな。

士郎「トレース、オン」

 一対の夫婦剣を投影した俺は、急いで正面玄関へと駆け出した。
341 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 01:15 ID:99ouuL8K
期待せざるを得ない
342 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 12:53 ID:eqqrkqQu
凛とセイバーを敵に回したわけか
343 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 19:51 ID:17ASoUmY
アインツベルン城 正面玄関

桜「せんぱぁい」

士郎「...何をしにここに来た、桜」

 三日前にあった時よりも、桜はなんだかやつれていた。
艶やかだった髪はぼさぼさに乱れ、瞳の光は妖しいまでの輝きを
放っている。

ルヴィア「ちょっと、貴女方は一体...」

士郎「ルヴィアゼリッタさん、下がっててください」

 懐から獲物を取り出そうとする彼女を留める。
 遠坂の言う通りになっちまったな...。

ライダー「シロウ...サクラの話を、聞いてください」

ライダー「まだ、サクラはあの日の答えを聞いていません」

 顔に痛々しい青痣を浮かべたライダー。
おそらく、桜に鈍器か何かでずっと殴られ続けたんだろう。
 ライダーが受けた痛みに、俺の良心は...疼かなかった。

士郎「そうだよな、その通りだよ」

士郎「ライダー、先に聞かせてくれ」

士郎「イエス以外の答えを出したら、君はどうなるんだ」

 俺の質問に、いままで顔を伏せていた桜が答える。
344 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 20:02 ID:17ASoUmY
桜「その時は、ライダーが真の姿へと変わります」

桜「それで、姉さんとセイバーさんを殺して...」

桜「うーんと、他のサーヴァントも皆殺しにして....」

桜「最後は...イリヤさんの中に在る小聖杯で願いを叶えるんです」

 零れ落ちた狂気の塊は、呪詛よりも遥かに悪辣だった。

士郎「桜、ごめんな」

 もっと、こうなる前に桜に向き合ってやればよかったなと思う。
 地を這う虫は、空を飛べると驕ることもある。

 だが、その翼は太陽の光で焼き尽くされる羽に過ぎないのだ。

士郎「でも、俺はさ...イリヤを護るって決意したんだ」

士郎「さらに言えば、これから俺の進む道に桜はいない」

士郎「世界で一番最低なサヨナラだけどさ、これが俺の返事さ」


士郎「サヨウナラ、桜。
    俺は死ぬまで、君の事を忘れることにするよ」

 賽は投げられ、袂は分かれた。
 これより先は、引き返すことが出来ない修羅の道。

 それでも、俺は前に進むのみ...
345 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 20:29 ID:17ASoUmY
桜「ふーん、そっかぁ」

桜「そういうことを言っちゃうんですね、シロウ先輩」

桜「そこの金髪の外人さんは新しい拠り所なんですか?」

桜「なんだか、姉さんを思い出しそうでムカついてきました」

 このヒモ野郎、とかつての後輩に遠まわしに言われた。
 別に、俺に対して悪罵の限りを喚き散らすのはかまわない。

 だが、俺が原因の醜態をさらすことはこれ以上避けたかった。

士郎「ルヴィアゼリッタさん、やめてください」

士郎「あとは俺がけりをつける問題です」

 何を考えたのか、あろうことかルヴィアゼリッタさんは気が触れた
桜とライダーの前に、傲然と胸を張りながら歩み出した。

 しかし、彼女は俺の制止を振り切り、遂に二人の目の前に立った。

ルヴィア「貴女、遠坂凛の妹といいましたわね」

桜「貴女に名乗った覚えはないんですけど」

ルヴィア「私のライバルである姉とは大違いですわね」

ルヴィア「見れば見るだけしょぼくれた面構え」

ルヴィア「常に誰かの顔色を伺い、陰でこそこそ陰口すらいえない
      内向的、かつじめじめしたナメクジのような女ですわねぇ」

 見ず知らずの、それでも桜にとって最大のコンプレックスである
遠坂のライバルを名乗り出る金髪女は、桜の劣等感をこれでもか、
とばかりに煽っては刺激し続けた。

桜「死にたいんですか、貴女?」

ルヴィア「死にたくないに決まってるでしょう?」
346 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 20:52 ID:17ASoUmY
 だが、桜にとっての予想外はこれだけではとどまらなかった。

ルヴィア「ふんっ!」

桜「ぎゃんっ!」

 魔術行使の機すら見せず、魔力によって倍増された身体から
繰り出される連続プロレス技。

 パイルドライバーからのパワーボム。

 まともに受けたら普通の女子高生は一発で死ぬ大技。
にもかかわらず、桜が悶絶程度で済んでいるあたり、だいぶ力を
抑えて、手加減されたのだろう。

ライダー「おのれええええ!」

 魔眼封じの眼鏡を外し、ライダーの魔眼が俺達を捕えようとする。

ルヴィア「Drómi」

 聞きなれない言葉が聞こえたと同時に、ライダーの全身が鈍色に
光る大きな鎖によってがんじがらめにされた。

ライダー「ぐううううううう!」

ルヴィア「しばらくそこでもがいていなさい」

 全身を襲う悶絶から未だに立ち直れていない桜は、本能的に
目の前にいる遠坂以上に危険な宿敵から距離を取ろうとした。

 頼りのライダーが拘束されている以上、逃亡以外の選択肢が
桜には残されていなかった。

ルヴィア「これでギブアップですの?姉とは大違いですわね」

 いたぶるような笑みを浮かべながら、尚も追い打ちをかけるように
桜を何度も何度も投げつけるルヴィアさん。

桜「ひゃめて...もう、ひゃめてくださっ!ひゃわああああああ」

ルヴィア「オーホッホホホ」

 赤い悪魔なんか目じゃない。

 青い魔王だ、いや青いサタンだ
347 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 21:01 ID:17ASoUmY
 このとき俺は、どうしてエーデルフェルトが世界でもっとも優雅な
ハイエナだなんて呼ばれているのかを理解できた気がする。

 圧倒的なジャイアニズムの塊なのだ、エーデルフェルト一族は。

 お前の物は俺の物、俺の物は俺の物。

 それを優雅に華麗に、誰もが納得できるほど美しく物事を完璧に
仕上げ、他人の成果を掻っ攫うからこそ、彼の一族に敗北した
一族が蔑みと畏敬を以て名づけたのだ。

ルヴィア「さぁ、選択肢を差し上げますわ」

ルヴィア「貴女の持つサーヴァントを私に譲渡するか」

ルヴィア「私の新たな家族に売った喧嘩を、何倍もの高値で私に
      買ってもらうか?」

ルヴィア「さぁ!返事をするのです!」
348 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 21:11 ID:17ASoUmY
 できるわけがない。
 
 だが、もう桜には選択肢がそれ以外にないのだ。

桜「げほっ、がはっ」

アサシン「マスター、斥候共をひっとらえたのだが...」

 アインツベルン城をうろついていた魔術師達を始末し終えた
アサシンがようやく戻ってきた。

士郎「アサシン、そいつらはどうした?」

アサシン「どうしたもこうしたもない、会話ができるほどに半殺しよ」

アサシン「どうやらお主の女絡みの問題で差し向けられたようだ」

士郎「手足の腱を切って、地下牢にぶちこめ」

士郎「情報を全部引き出した後、魂喰いで魔力補給しておけ」

 それから俺は手短に魔術師たちの特徴を聞きだし、アサシンは
霊体化してイリヤの下へと行こうとした、が...

 ついに拘束を破ったライダーが、俺に襲い掛かってきた。
349 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 21:38 ID:17ASoUmY
ライダー「シロオオオオオオオオ!!!」

 眼にも止まらぬ速さで、ルヴィアさんを壁にのめりこませたライダーは
そのまま一直線に俺を仕留めようとかかってきた。

士郎「アサシン、一発で決めろ!」

アサシン「応ッ!」

 佐々木小次郎が必勝の構えから繰り出される秘剣・燕返し

 それは、確かに過たずライダーを切り裂いた。

 だが、それすらもライダーは最低限のダメージで回避し、尚も
執拗に俺達を狙ってくる。

アサシン「終わりだ、ライダーよ」

 振り向きざまの0.0001秒の交差。

 だが、振りぬかれたアサシンの長太刀の煌きに、一筋の鮮やかな
朱が差していた。

 ライダーの動きが鈍る。

 それを逃すアサシンではない。

アサシン「消えろ...」

 幽玄のごとく、その気配が静謐を帯びる。
 目視すら不可能になった暗殺者のサーヴァントは、その兇刃を
ふりかざし、一刀両断にライダーを切り伏せる。

 煌めく刃は音速を超える風と同等の速さで六連の斬撃となり、
ライダーの身体を切り刻んでゆく。

ライダー「サ...サクラ」

アサシン「秘剣・燕返し!」

 絶対不可避の斬撃に、ライダーは斃れた。

アサシン「ライダーよ、悪く思うな。これも主君の宿痾というやつだ」

アサシン「蛇足だが、お主の敗因は宙を舞う燕よりも重すぎたことよ」

 アサシンは優雅な足取りで、壁にのめりこんだルヴィアさんを抱え
イリヤ達の部屋へと走って行った。
 
350 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 21:51 ID:17ASoUmY
桜「ラ...ライダー」

 倒れ伏し、瀕死の重傷を負ったライダーを護ろうと桜がその上に
覆いかぶさる。

桜「ごめん...ね、私のわがままのせいで」

 桜の言葉に、ライダーが答えることはなかった。

 次いで、桜もほどなくしてから意識を失った。

士郎「桜、ごめんな」

士郎「今になってから白状するけど、桜と居た時くらいだよ」

士郎「俺が、人間らしく自分以外の誰かと接することが出来たのは」

 ズタボロになった桜とライダー。

士郎「セラ、セラはいるか!」

 声を荒げ、セラを呼び出す。

セラ「はっ、ただいま参りました」

士郎「ライダーに魔力を分け与えてくれ」

セラ「承知しました」

 セラの体内の魔力が、ライダーの身体に浸透してゆく。

 アサシンに傷つけられた斬撃による傷が、徐々に癒えはじめる。

セラ「一応、これで最低限の治癒は施しました」

セラ「あの、士郎様...この二人は、いかように」

士郎「責任を持って、俺が家に帰すよ」

 もう、これが最後だろう。

 俺が桜の事を、女の子としてみることが出来るのは。
351 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 21:57 ID:17ASoUmY
 もう、俺が心を休めることが出来るあの場所はなくなった。

 セイバーがいて、遠坂が居て、藤ねえも桜もイリヤも全員揃った
あの暖かい温もりに溢れた日々は、俺が全て壊した。

 ここから先は、イリヤを護る為の人生になる。

 その為なら、俺はいくらでも悪魔に心を売り飛ばそう。

士郎「でも、償いだけは桜に残しておくことにするよ」

 それを先に桜に言えれば良かった...。

 今になって遅すぎる贖罪の代わりに、俺は意識を失った
桜の唇に己の唇を重ね、涙を流した。
352 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 22:39 ID:17ASoUmY
桜の視点

桜「ここは...先輩っ!」

 私が気が付いた時には、既に四日も経過していました。
アインツベルン城で、金髪縦ドリルの姉さんに似た泥棒猫に
プロレス技を何度も掛けられたせいで、身体が凄く痛い。

慎二「ようやく起きたか、このバカ」

桜「兄さん...ライダーは?ライダーはどこ」

慎二「ライダーなら、お前の傍につきっきりでいたんだよ」

慎二「ついさっき、シャワーを浴びに行ったばかりだ」

 よかった...ライダーは無事だったんだ。

 だけど、兄さんはあまりいい顔をしていなかった。

桜「兄さん?」

慎二「桜、お前衛宮に一体なにされたんだ?」

桜「せんぱ...い」

 そうだ、私...

桜「せんぱ...い、にすてられたんだ」

慎二「そっか、お前でも駄目だったんだ」

 涙を流す私とは対照的に、兄さんは落胆こそすれどこか淡々と
していた。

慎二「桜...もう、衛宮のことはほっといてやれよ」

桜「兄さんなんかがっ!兄さんなんかに私の想いがどれだけ....」

桜「どれだけ、私が先輩に救われたかったのか分からないくせに!」

桜「お父さんのせいで、私は穢れた体になってしまった」

桜「おじい様のせいで、私の人生は生き地獄そのものになった!」

桜「兄さんに魔術回路がなかったせいで、私は兄さんに疎まれた!」

桜「誰も私を見てくれない孤独に、私はどう耐えればいいの!」
 
353 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 22:47 ID:17ASoUmY
慎二「ライダーがいるだろうが!」

慎二「美綴も弓道部の連中だって!」

桜「あんな人たちなんかが、先輩の代わりになれるわけがない!」

桜「兄さんは、心の底から人を愛したことがないから...」

桜「だから、軽々しく人の傷を踏みにじることが出来るんですよ」

慎二「...桜、お前それ本気で言ってるの?」

桜「本気です、私はまだ先輩の事を諦めてない!」

桜「先輩は、私の夫になってくれるかもしれない人なんです!」

桜「諦めきれるわけ、ないじゃないですか...」

桜「これ以上、私から...先輩を奪わないでよ...」
354 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 23:11 ID:17ASoUmY
 桜の叫びは、痛切なものだった。

 彼女の境遇自体が、物心ついた時から銃を持たされ、大人の
エゴに振り回されて、使い捨てにされて死んでいく子ども兵
そのものだった。

 子供兵が10万人いれば、五体満足で成人を迎えられるのは
その中の...最大で5%以下だ。

 間桐桜は、その5%の中に入ることが出来た。
このままいけば、幸せだって掴めたかも知れない。

 だが、その幸せは零れ落ちてしまった。
 もう、自分の手にはなにもないのだ...。
355 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 23:15 ID:17ASoUmY
慎二「だってさ、衛宮」

 自分の部屋の扉を、面倒くさそうに開けた桜の目の前には

桜「イリヤさん...なんで」

 自分から衛宮士郎を奪った憎き敵が立っていた。

イリヤ「ライダーには話を通したわ」

イリヤ「悪いようにはしないわ。どうか私の話を聞いて、サクラ」

 怒りよりも、驚きが勝った。

 どうして、彼女がここにいるんだろう。

 桜はそれを理解することができなかった。

慎二「言っとくけど、殺されても知らないからな!」

慎二「衛宮に見捨てられても、知らないからな!」

 鼻息も荒く、慎二は桜の部屋から退出した。
356 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 23:19 ID:17ASoUmY
桜「どういうつもり...ですか、イリヤさん」

桜「なんで、なんで貴女なんかに憐れまれなければならないの!」

 鬱々とした行き所のない感情を自分にぶつける桜の怒りを、
あくまでもイリヤは真っ向から受け止めようとする。

イリヤ「サクラ...単刀直入に言うわ」

イリヤ「シロウの子供を産む気はない?」

 絶望に囚われている桜の心に、一筋の光が差した。
357 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 23:24 ID:17ASoUmY
桜「そんなこと、あるわけないじゃないですか」

桜「ど、どこまで悪趣味なんですか!イリヤさん」

桜「どうせ、どこかの浮浪者の精液でも私にぶち込む気でしょう」

桜「いいですよね、私と姉さん、セイバーさんを出し抜いて先輩を
  先輩の愛をこれからもずっと独占出来るんだから!」

 震えながらも、桜はイリヤに対してすがるように手を伸ばした。

イリヤ「...私は、私のやった事を悔いるつもりはないわ」

イリヤ「サクラも私も結局の所、シロウのことになると自己正当化で
    話を進めるしかないのよ」

イリヤ「だから、これは私からの譲歩」

イリヤ「シロウを愛する者同士、嘘はつかないわ」
358 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 23:31 ID:17ASoUmY
 イリヤの言葉を否定することが、桜にはできなかった。

イリヤ「女は愛が無くても、母親になれる」

イリヤ「男は愛が無くても、女を抱いて父親になる」

 これから、士郎と二度と会えなくなってしまうのなら...

 ずっとこのまま孤独に耐えきれず、死を選んでしまいそうならば、

 いっそのこと、イリヤの提案に乗るのも悪くない。

イリヤ「私の提案に乗るなら、条件がいくつかあるわ」

 沈黙を肯定と受け取ったイリヤは、いけしゃあしゃあと桜に対して
その条件を述べ始めた。

イリヤ「一つ、士郎の事を諦める事」

イリヤ「二つ、私もシロウも桜の子供を認知しないことを認める」

イリヤ「三つ、生まれた子供に魔術を金輪際関わらせない」

イリヤ「四つ、セイバーと凛にはその子の存在を隠す事」

イリヤ「五つ、これから先、私とシロウの下に二度と現れない事」

イリヤ「これだけ守れば、シロウの子供をあげる」

 
359 名前:名無し 投稿日:2014/11/18 23:55 ID:17ASoUmY
桜「本当ですか?嘘じゃ...ありませんよ、ね」

イリヤ「本当よ」

桜「嘘じゃ、ないですよね」

イリヤ「この話を持ち出してきたのは、シロウよ」

イリヤ「じゃなきゃ、私が恥を忍んでここに来るわけないもの」

 階下から、慎二と誰かが言い争う声が聞こえてきた。

慎二「ふざけるな!これ以上桜にかまうなよ!」

慎二「桜が子供を産んでも、絶対に飽きるに決まってる」

慎二「男の子ならともかく、女だったら間違いなくアイツはいびって
   いびって、挙句の果てに捨てる可能性の方が大きいんだぞ!」

士郎「じゃあ、教えてくれよ!慎二」

士郎「金で解決すればいいのか?」

士郎「それとも桜を妾にすればいいのか!」

慎二「お前の言ったことなんか誰も望んじゃいないぞ!衛宮」

士郎「それは桜が決める事だろうが!」

 言い争いは激しい口論になり、暴力を伴い始めた。

360 名前:名無し 投稿日:2014/11/19 00:06 ID:Y5wQCSr9
慎二「僕はな、お前とは違って小悪党だよ!」

慎二「けどな、曲がりなりにも僕の親友が義理の妹を孕ませて
   外国へトンズラこかれて黙って見逃す訳にはいかないんだよ!」

士郎「だったら、何もできないまま桜を自殺させるつもりかよ!」

士郎「友達もいない、俺に依存し続けてた桜を支えてやれるのは
   家族だったお前の役目だったんだろうが!慎二!」

士郎「大切な妹に暴力を振るい続けた挙句、今になって兄妹愛に
   目覚めたとかほざくのか?!兄貴面も大概にしろよ!」

 もみ合いを制し、士郎は慎二を押さえつけて馬乗りになった。
 そして、慎二の身体に拳の雨を降らせ、滅多打ちにし始めた。

ライダー「やめなさい!二人ともやめてください!」

慎二「ひっこんでろ!ライダー」

慎二「お前は桜の傍にいて、アイツを裏切るんじゃないぞ!」

慎二「ここにいる偽善者以下のクズ野郎なんかになるな!」

 何とか拳の雨をかいくぐり、慎二はライダーを出しにして士郎を
あざけり続けた。

士郎「このっ...言わせておけば!」

 痛い所を衝かれた士郎は、慎二を黙らせて、その発言を撤回
させるべく、更にその拳の勢いを強めた。

 
361 名前:名無し 投稿日:2014/11/19 00:21 ID:Y5wQCSr9
桜「やめてーっ!もうやめてください、先輩」

桜「兄さんを...私の兄さんを傷つけないでーっ!」

 痛む体をひきずりながら、玄関で殴り合いの乱闘を続ける士郎と
兄の下に駆け付けた桜は、士郎に対して思い切りタックルをかまし、
これ以上慎二が士郎の暴力にさらされないように、覆いかぶさった。

桜「にいさん...ごめん、なさい」

桜「私のせいで、いつも、いつも辛い目に遭って」

 号泣する桜の背中に手を回した慎二は、フラフラになりながら
何とか立ち上がり、士郎の下へと歩き出した。

 結局、妹が衛宮士郎の子供を産むことは確定済みのようだ。
 どうあったって、間桐慎二は衛宮士郎に勝てない。

 それでもなお、自分の足にしがみつく桜に対して慎二はため息を
つきながら、乱暴に桜を諭した。

慎二「バカやってる親友の目を覚まさせてる...途中なんだよ」

慎二「どけよ...桜」

慎二「これからなんだからさぁ...邪魔するなよ!」

 いつもの二倍に腫れ上がった顔に、柔かな笑みを浮かべて
慎二は士郎に向かって走り出した。

士郎「シンジッ!この、大馬鹿野郎がああああああっ!」

慎二「衛宮アアアアア!!!!」

 交差する拳。

 倒れたのは、士郎だった。


362 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 08:55 ID:3Je9t0zz
たのむよー続きたのむよー
363 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 18:34 ID:wVKm1bqK
倒れた士郎が目を覚ましたのは、それから一時間後だった。

士郎「イリヤ...どこにいるんだ?」

桜「イリヤさんなら、アサシンさんが連れ帰りました」

 どうやら、慎二の部屋のベッドに寝かされていたらしい。

士郎「痛ってぇ...」

 口の中が血まみれだったようだ。

 奥歯がぐらぐらしている。

士郎「慎二の野郎、思いっきり殴りやがって...」

 だけどあの慎二が全力で誰かを殴ること自体が、俺のやった事の
重大さを証明してしまった。

 なんてこった...桜を、桜を正視できない。

桜「先輩、私を見て?」

桜「ねぇ、私を見てよ!士郎」

 腹の底から響く桜の怒声が、俺を逃れようのない現実に引き戻す。
364 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 18:43 ID:wVKm1bqK
士郎「さ、桜...」

 唇をギュッと真一文字に引き結び、眼に涙をいっぱいため込んだ
桜が俺の目の前にいた。

 いつも柔らかな桜色のカーディガンではなく、どこまでも限りなく
黒に近い紺色のセーターに身を包んだ桜は初めて見る。

 そんな桜が、どうしてか無性に怖くて...

士郎「.....」

 だけど、それ以上に彼女をそんな風にしてしまった罪悪感が
俺を苛み続ける。

桜「黙ってないで、何とか言いなさい!このっ」

桜「人の気持ちを...踏みにじって!馬鹿にして」

桜「何とか言ってよ!どうして何も答えてくれないの!」

 桜の往復ビンタが容赦なく俺の顔をボコボコにする。

士郎「...かった」

士郎「すまな...かった」

 絞り出した謝罪は、俺が踏みにじった桜の怒りに到底釣り合わず、

桜「どうして、ねぇどうしてよ!」

桜「どうして私が...日陰の女にならなきゃいけないのよ!」

 桜は俺によって再び深い闇の中へと追いやられていった。
365 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 18:58 ID:wVKm1bqK
 それから後は、無様な俺が無様に自分のしたことの言い訳を
桜に懇切一から説明することになった。

 セイバーと凛を捨てた経緯。

 イリヤの懇願。

 ルヴィアゼリッタさんとの自己強制証明の契約。

桜「どうして、どうして...勝手に先輩は先に進んじゃうんですか」

士郎「そうするしか...なかったんだ」

桜「バカなこと言わないで!」

桜「これから一生先、あの金髪に飼い殺しにされる羽目になって、
  ボロ雑巾のように使い捨てられるかもしれないんですよ!」

桜「イリヤさんが邪魔になったら殺すかもしれない人と、よくもそんな」

桜「よくもそんな誓いを...交わせたものですね」

 全身から懸命に、桜は枯れ果てた怒りを絞り出しながら、俺を
詰り続けた。

士郎「じゃあ、桜に聞きたい」

士郎「もし、もし桜が遠坂の立場だったら...」

士郎「俺を聖杯戦争から遠ざけるために、一体何をする?」

桜「セイバーさんと協力して、早期に聖杯戦争を終わらせます」

士郎「自分を、あんな目に遭わせた魔術を許容すると?」

桜「だって、それ以外の選択肢なんてないじゃないですか...」

桜「先輩が、私に希望を与えてくれた」

桜「だから、私は先輩の為に戦うことを選びます」

 ああ、桜...君もその答えに行きついてしまったのか。

366 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 19:07 ID:wVKm1bqK
イリヤ『もし私とヘラクレスがリンとセイバーの立場だったら...』

イリヤ『シロウを絶対に正義の味方になんかさせなかった』

イリヤ『魔術回路を全部引っこ抜いてでも、魔術から遠ざけた』

 イリヤ、君の言ったことがようやくわかった気がする。

 思えば、俺達は似た者同士だったんだろうな、桜。

 家族の形すら知らない俺や桜、遠坂は依存と言う形でしか、
自分の居場所を確立できなかったんだ。

 切嗣が魔術を俺に教えたがらなかったのも、

 雷画じいさんが俺の事を、魔術から遠ざけようとしたことも...

 イリヤが十年間、顔を知ることのなかった俺を憎んだのも...

 そこに、俺への愛があったからなんだ。

 無償の愛で、俺を導いてくれようとしたからなんだ。
367 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 19:28 ID:wVKm1bqK
桜「せーんぱい」

 桜のほほえみも

セイバー「シロウ、行きましょう」

 セイバーへの愛も

凛「士郎ったら、もうっ...」

 遠坂との関係も...

 俺が彼女達と過ごした全てが、愛ではなく依存だとしたら?

 本当の愛と言うものに気が付かないで、そのまま誰かを選ばずに今の幸せを現状維持できればいいなんて、そんな烏滸がましいことが当然の権利だと勘違いしていたら?

士郎(ああ、俺... 疲れっちまったんだ)

 そのことに、ああ...気が付いちまった。

 ごめんな、桜。

 もう、俺は戻れないみたいだ。

 遠坂の下にも、セイバーの下にも、君の下にも...

イリヤ『愛してる。その言葉以上に愛しているから』

 だって、もう俺の心の中には、もうイリヤしかいないから...。

 俺の心を全て占めているのは、イリヤだから。

 イリヤを想うだけで、空っぽだった俺の心が満たされる。

イリヤ『シロウの子供を産みたいなぁ...』

イリヤ『ねぇ、シロウ?』

イリヤ『生まれる子供の名前、なんにしよっか?』

 あの笑顔を護る為に、セイバーを引き換えにできるか?

 イリヤの命と遠坂の命を天秤にかけられるか?

 切嗣が出来なかったことを俺が出来るのか?

士郎(ああ、できるさ。もう、俺は怖くない) 

 その愛に狂うことが出来るのなら、それ以外を全て捨ててしまえ。

 命果てるその時まで、ずっとイリヤの愛に溺れてしまえばいい。

士郎(だから、やっぱり桜には諦めて貰おう)
368 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 19:37 ID:wVKm1bqK
桜「せんぱい?」

士郎「桜、よく聞いてくれ...」

士郎「あの日、桜が俺に伝えた想いにどう答えようとしたのかを」

桜「...どうしちゃったんですか?なんだか、怖いです」

士郎「俺、ずっとあの日々が続いていればよかったと思ってた」

士郎「気が付いてたわけじゃなかったんだ、みんなの想いに」

士郎「だけどさ、俺自身愛ってのがよく分からなかったんだ」

桜「私はっ、先輩を愛してます!」

桜「私はっ、先輩に救われた」

桜「私を変えてくれた先輩に、私は近づきたかった!」

桜「妄執に近い形であっても、それが私の心理です」

桜「私は...先輩の傍に居られればそれでよかったのに」
369 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 19:47 ID:wVKm1bqK
士郎「それじゃあ、ダメなんだよ」

士郎「桜、それじゃあ俺は満足できない」

桜「せ...んぱい」

士郎「俺、多分誰かに抱きしめて欲しかったんだ」

士郎「セイバーに百回愛してるって言われても、遠坂と何度も
    セックスしたとしても、それだけじゃ全然満足できなかった」

桜「えっ?えっ」

士郎「そうすることで、幸せになったのは俺じゃないから」

士郎「ただ、理想に燃えてた俺は自分に関わる全部を蔑ろに
    しすぎてた」

士郎「誰かに言われて、自分のやってることが異常だと気が付かず」

士郎「藤ねえが死んだときに、ようやく自分が間違ってたことに
    気が付いたんだ」

士郎「人は、自分の行動に責任を持たなくちゃいけないって」
370 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 19:59 ID:wVKm1bqK
桜「あ、ああ...先輩は、先輩は...捨ててしまったんですか」

桜「理想も、私達も...なにもかもを」

士郎「イリヤに全て、捧げたんだ」

士郎「俺、もしかしたらって期待してたんだ」

士郎「いつの日か、本当に心の底から誰かを愛せるようになる事を」

士郎「だけど、遠坂もセイバーも桜も...できなかった」

桜「じゃあ、何のために...私はこんな辛い目に....」

桜「これじゃあ、叔父さんと同じ...アハハ」

士郎「桜、餞別だ。あの日の答えは」


士郎「俺は誰も愛せない。だから、待っててくれ。答えが出る時まで」


 ようやく、桜から俺への全てが断ち切られた。

 残ったのは、俺と過ごした三年ばかりの過去だけ。
371 名前:名無し 投稿日:2014/11/23 20:30 ID:wVKm1bqK
ライダー「シロウ、もう出ていって下さい」

ライダー「これ以上桜を苦しめるのは、もうやめてください」

士郎「ライダー...俺はもう謝らない」

士郎「やるべきことが見つかった以上、俺には時間がないんだ」

ライダー「もう、桜には二度と関わらないで下さい!」

ライダー「貴方もイリヤスフィールもこれからは敵です」

ライダー「次、あいまみえた時...私は貴方を殺す」

士郎「俺を殺せるまで生き延びられればいいな、ライダー」

士郎「イリヤの提案を呑むか呑まないかは、桜の自由意志だ」

士郎「腹を括ったら、ここに行けばいい」

士郎「精子バンクに俺の精子を残してきた」

士郎「桜に言っといてくれ」

士郎「俺の事を愛してくれてありがとうって...」
372 名前:名無し 投稿日:2014/11/24 21:10 ID:k0gBBcXP
やべーぜ士郎さん状況を刻々と悪化させてくぜ!
373 名前:名無し 投稿日:2014/11/25 01:05 ID:m3Kn8TVx
これで桜との間柄は清算できたのか?
374 名前:名無し 投稿日:2014/11/26 02:13 ID:hEck36e9
絶望しかないけど、楽しみだ
375 名前:名無し 投稿日:2014/11/27 03:39 ID:uLkkFFll
なんだかんだみんな幸せになった月姫陣営とは逆にFate陣営やべぇよ・・・やべぇよ・・・
376 名前:名無し 投稿日:2014/11/29 23:54 ID:8GCNZeSz
えんだあああああぁぁぁぁ……
377 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 02:36 ID:ksb1saQq
いやぁぁぁぁぁぁああああ。・゜゜(ノД`)
378 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 21:34 ID:sckoC5g1
士郎(俺の子供が、桜にとってどれだけの贖罪になるか分からない)

士郎(だけど、できることならその子を憎まないでくれ)

士郎(愛することを恐れずに...喪失から前に進んでくれ...)

 自分勝手な妄想から、いきなり引き戻された。

 気が付いたら、俺の首は桜の両手で絞められていた。

桜「いやっ、いやよ...」

桜「置いてかないで...置いてかないでよ、先輩」

 このまま、桜に殺された方がよかったのかもしれない。

 だけど、ここで俺が死ぬとイリヤも死ぬ。

 そんな何もしない内に、過去に囚われたまま死ぬのはごめんだ。

士郎「...帰ろう、イリヤ。俺達の家に」

イリヤ「うん、そうしよう。シロウ」

 ライダーが、桜を無理矢理俺から引きはがす。

桜「許さない、許さない...」

桜「イリヤさん!貴女の望みが叶うことなんかこれから先、絶対に
  ありませんからね」

桜「先輩も、先輩がイリヤさんを救おうとした時にはイリヤさんが
  死んでいるように願っていますからっ!」

桜「憎悪と絶望の中に、叩き落としてやる!」

 桜が血涙を流しながら、俺達を呪う。

イリヤ「桜、サクラは一つだけ思い違いをしてるわ」

イリヤ「死ぬことで始まることもあるのよ?」

桜「アハハハ!死んだら終わりじゃないですか、全部、ぜーんぶ!」

 支離滅裂な会話を続ける桜とイリヤ。

 だが、イリヤの言っていることの真意は俺に伝わっていた。

士郎「綺麗なサヨウナラなんて...どこにもありはしないんだな」

 イリヤ...辛い目に遭わせ続けて本当にゴメンな。

 でも、ようやく俺、君に兄貴らしいことが出来るかもしれない。

士郎「可能性が少しでも残ってるなら...俺は闘う」

 お前は絶対に死なせやしない。

 何があっても、俺が...君を護りぬく。

 君に、新しい命を与えるまで。

379 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 21:43 ID:sckoC5g1
~帰り道~

士郎「どうしたイリヤ?浮かない顔して」

イリヤ「...ねぇ、シロウ」

イリヤ「今の私って、醜い?」

士郎「なに言ってんだよ?!そんなわけあるもんか」

イリヤ「情が移ったとか、そういうのじゃないんだ、と思う」

イリヤ「けど..やっぱり私、辛いよ」

士郎「...イリヤ、変なことを考えてるんだったら今すぐ止めるんだ」

士郎「経緯はどうあれ...俺はイリヤを幸せにすることを選んだ」

士郎「最初は贖罪とか、義務感めいたものがあったけど」

士郎「イリヤが俺を求めてくれることが、凄くうれしいんだ」

士郎「一日でも長く、イリヤに生きていて欲しい」

イリヤ「シロウ...ありがとう」
380 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 21:52 ID:sckoC5g1
ランサー「よう坊主、随分としけたつらしてんなァ」

士郎「ランサー...久しぶりだな、ここ数日見なかったけど...」

ランサー「ああ、カレンの野郎と一緒に割のいい派遣仕事してたぜ」

士郎「へぇ、どんな仕事だったんだ?」

ランサー「なんてこたぁねぇ、聖堂教会絡みの仕事さ」

ランサー「ところでよ、どうしたんだ?その首の痣」

士郎「え、ああ。たいしたことないから、気にすんなよ」

ランサー「...バーサーカーも、これじゃあ浮かばれねえわ」

イリヤ「シロウ、先帰ってて」

士郎「イリヤ?何言ってんだよ」

イリヤ「バーサーカーが消えた時の話をしたわよね?」

イリヤ「ランサーにはその時の借りがあるの」

イリヤ「これに限っては、シロウでも譲れないの」

士郎「分かった...けど、」

ランサー「大丈夫だ、坊主」

ランサー「テメェの首の痣の理由をを見通せねぇ程」

ランサー「俺は耄碌してねぇんだよ」

イリヤ「そういうことだから、安心して帰って。ね?」

士郎「分かったよ」
381 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 22:12 ID:sckoC5g1
ランサー「はぁ、なんだってこんなに女ってのは面倒くせェのかねぇ」

イリヤ「宿痾って奴よ」

イリヤ「化粧以外にも色々とトラブルがつきものなのよ」

ランサー「へぇへぇ。随分御大層なこって」

ランサー「やっぱり、坊主絡みで修羅場が起きてんのか」

イリヤ「うん、シロウをセイバーと凛とサクラから寝取ってやった」

イリヤ「随分と渋ったけど、桜を諦めさせることには成功したわ」

ランサー「...本格的だな、冷や汗が止まらねぇ」

イリヤ「バーサーカーには、もう顔合わせらんないや」

ランサー「一体、何をしようってんだよ、お前とあの坊主は」

イリヤ「簡単な話よ」

イリヤ「全てを丸く収める為、それだけの為に私は生きるの」

ランサー「...どう転んでも、穏やかに終わりそうな話じゃねえわな」

イリヤ「ランサーだって、分かってるんでしょ?」

イリヤ「だからキャスターに余計なことを吹き込んだ、違う?」

ランサー「はぁ?何言ってんだよ」

イリヤ「アサシンって、結構ペラペラ話すのよね」

ランサー「ったく、主従揃って碌でもねぇな」

イリヤ「そのお蔭で、私は生きながらえてるんだけどね」

382 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 22:32 ID:sckoC5g1
ランサー「出ていくのか?ここから」

イリヤ「一週間あるかないかくらいよ。それで冬木とはさようなら」

イリヤ「なんなら、ランサーも一緒に来る?」

イリヤ「カレンの下でこき使われ続けるのもイヤでしょ?」

ランサー「ゲイボルグが泣いているってか?はっ、お断りだね」

ランサー「俺は俺の気が向くままに生きるんだよ」

ランサー「誰の指図も受けねぇ、誰にも屈さねぇ」

ランサー「とまぁ、言えりゃあいいんだがな」

ランサー「もうそろそろ、俺達サーヴァントも潮時かもしれん」

イリヤ「できることなら、穏便に済ませたいんだけどね」

イリヤ「もう、後には引けないの」

イリヤ「ランサー、次会ったときは...」

ランサー「もう、それ以上言うな。嬢ちゃん」

ランサー「初めてできたダチを裏切った挙句、その心の整理が
      つかねえまま、突っ走り続けるんだろ?」

ランサー「死ぬぜ?いや、死んだって目論見通りにあの坊主が
      うまいこと動くとは限らねえんだぞ?」

イリヤ「かもしれない」

ランサー「新天地へ旅立ったって、そこで殺されねえとも限らねぇ」

ランサー「アイツがお前を捨てる可能性だってある」

ランサー「それでも、信じるのか?」

イリヤ「信じる」

ランサー「...もう、これ以上俺から言うことはねぇよ」

ランサー「アサシンとあの坊主に言っとけ」

ランサー「次にテメェらをここで見た時は」

ランサー「必ず、心臓二つ貰い受けるってな」

イリヤ「アサシンが喜びそうな話ね」

ランサー「じゃあな、精々死ぬまでにやり残したことやっとけよ」

ランサー「ガキ生むんだったら、なるべく早いうちに名前を決めとけ」

イリヤ「バイバイ、ランサー」
383 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 22:45 ID:sckoC5g1
ランサー「おう、じゃあな」

 この時、ランサーは自分が何をしたのかを理解していた。

ランサー「バーサーカー...悪りぃな、約束守れそうにねぇよ」

 託された命の重みと、日を経るごとに薄れゆく己の矜持。

 選び取ったのは、己の矜持だった。

ランサー「けどよ、アンタに対してこれで引け目はなくなった」

ランサー「惜しむらくは、アンタと戦えなかったことだけさね」

ランサー「さてと、そんじゃまぁ...やりますかねぇ」

 ランサーの足は、自然と教会へと向いていた。
384 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 22:55 ID:sckoC5g1
カレン「おや、随分と遅かったですねランサー」

ランサー「ったく、テメェの無理な注文のせいだろうがよ」

ランサー「ここから五駅乗り継いだ所にある、限定プレミアムケーキ」

カレン「あれは結構おいしいんです」

カレン「私の舌に合うケーキはそうそうありませんからね」

ランサー「はっ、下呂牛乳なんてもんを使ってるあたり」

ランサー「ゲテモノのバケモノケーキじゃねぇかよ」

カレン「とにかく、さっさとしなさいランサー」

カレン「特別に好きなだけ食べさせてあげましょう」

ランサー「いらねぇよ」

385 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 23:00 ID:sj5Dkf1X
ランサーーー!!!
386 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 23:06 ID:sckoC5g1
 箱に入ったケーキを取出し、そのまま切り分けるランサー。

ランサー(焦るな、焦るんじゃねぇぞ)

 機は熟した。

 カレンは珍しく、マグダラの聖骸布を身に着けていない。

ランサー「おえっ、なんだよこのミルクの濃さはよぉ!」

カレン「はむっ、ん~デリシャス」

 ゲロを吐きそうなくらいゴテゴテなケーキに悶絶するランサー。

 カレンは対照的に上機嫌でケーキを頬張っている。

カレン「あっ」

 フォークをポロリと落としてしまったカレンは、だれもが当然

やるべきこと、しゃがみ込み、テーブルの下に落ちたフォークに

手を伸ばし...

ランサー「許せ、カレン」

 背中から、ランサーにルールブレイカーを突き刺された。
387 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 23:29 ID:sckoC5g1
カレン「えっ?!」

カレン「痛っ」

 背中に突き刺された刃の痛み。

 次いで手の甲から令呪が剥奪された痛みがカレンを襲った。

カレン「あっ、聖骸布」

 今までなら、聖骸布があった。

 けど、今日は聖骸布を洗濯していた為、身に着ける事はなかった。

ランサー「悪いな、カレン」

カレン「ラン、サー?どうして」

 怯えた表情で、それでもランサーに近寄るカレン。

 だけど、ランサーはカレンとの距離を空け続ける。

ランサー「もう、うんざりなんだよ。お前の横暴には」

ランサー「毎日毎日、丁稚奉公の真似事」

ランサー「暇さえあれば、嫌味を言ったりいびりのオンパレード」

ランサー「挙句の果てには、犬って呼ぶなって言ってるのに犬って
      何度も何度も呼ぶしな」

カレン「逃げたって、貴方を待ってるのは死だけですよ」

 ようやく、いつもの調子を取り戻しかけたカレンはランサーに

魔力切れと言う逃れようのない問題を突きつける。

 だが、ランサーはそれを軽く超えることをしていた。

ランサー「だな、けど...その前に俺からも仕返しさせてくれや」

ランサー「なんか外がよ、焦げ臭くねぇか?」

カレン「まさか...」

 さぁーっ、と顔を蒼褪めさせたカレンが慌てて外にでると...

カレン「ああっ?!聖骸布が、聖骸布が...燃えてる」

 世界に一つしかない、貴重な聖骸布がめらめらと燃えている。

 ガソリンの大火力の上に、火のルーンを上乗せされた炎はおよそ

1000℃の熱で聖骸布を黒焦げの灰にしてしまった。

ランサー「ま、今までの事はこれでチャラにしてやるよ」

ランサー「世話になったな、じゃ」

 風に乗りながら、ランサーは姿を消した。

 教会に残されたカレンは、ただただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

 
388 名前:名無し 投稿日:2014/11/30 23:43 ID:sckoC5g1
ランサー「はぁ...とはいったものの」

ランサー「腹は減るし、おまけに魔力は減るわ」

ランサー「はーぁ、どんだけついてないんだよ。まったく」

 ランサーが霊体化を解き、実体化したのは冬木から50㎞離れた

とある駅のトイレの中だった。

ランサー「さてと、しがらみもなくなったわけだし」

ランサー「ギルガメッシュの奴にゃ悪いが、逃げさせてもらうぜ」

 ランサーは、逃亡先をずっと心の中で決めていた。

ランサー「帰るか、アルスターに」

 運が良ければセイバーと十全にやりあう機会があるかもしれない。

 願ったり叶ったりである。

ランサー「当座の金は、あっちにつきゃ何とかなるだろ」

 願わくば、二度と冬木に戻ることが無いように。

 ランサーはそう祈りながら、電車の中に乗り込んだ。
389 名前:名無し 投稿日:2014/12/01 02:10 ID:H22fsyhx
続ききてた、イリヤいい娘!ランサーかっこいい!
続き楽しみにしてます
390 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 05:55 ID:NE1fK2gc
ランサーって単独行動持ちだったけ?
いや、この質問は無粋か…
391 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 18:58 ID:jHqSMlXL
間桐の家

慎二「桜、お前正気か?考え直せ」

ライダー「そうです、桜」

ライダー「まだ貴女は大人ではないし、将来の事を何も考えていない」

ライダー「シロ...あの男との事はきっぱりとわすれるしか...」

桜「嫌よ、それに将来の事は決めたわ」

慎二「まさかお前、本気で衛宮を殺す気でいるんじゃないだろうな」

慎二「は、ははは。よせよ、桜」

慎二「そんなことお前以外の誰も望んじゃ...」

桜「ねぇ?ライダー」

桜「貴女は...私の味方でいいのかしら?」

ライダー「ええ、私は桜の味方です」

桜「どんな事態になっても、私の期待に応えてくれる?」

ライダー「結果、桜がどん底に突き落とされる事にでもですか?」

桜「そうならないように、策を練るのよ」

392 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 19:04 ID:jHqSMlXL
桜「先輩が私の物にならないのなら、いっそ剥製にしましょう」

桜「精巣とかそういうのは丸々生かしておきましょうか」

桜「何年かかってもいい、先輩とイリヤさんの子供を誘拐しましょう」

 慎二は、この時程魔術と言うものの業の深さを思い知った。

 十年前に引き取られてきた義理の妹が、いつのまにか鬼子に
なっていようとは、死んだ桜の両親ですら想像だにしなかったろう。

桜「女の子だったら、私以上の目に遭ってもらいましょう」

桜「兄さんに強姦させて...望まない妊娠をさせて母子諸共殺すとか」

桜「男の子だったら、先輩の剥製の前でレイプするのもアリですね」

桜「助けて、助けてパパ。っていいながら剥製になった先輩の前で」

桜「みっともなく射精しながら、私を孕ませるんです」

桜「ああ、すごく甘美で絶望的な復讐よね....」

慎二「...桜、お前」

慎二「どうして、そんなふうになっちまったんだよ!」
393 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 19:20 ID:jHqSMlXL
桜「兄さん?どうしてそんなに怒ってるんですか?」

桜「大丈夫、兄さんは殺さないから」

桜「ただ、私の犯した罪をそのまま被ってもらうだけ」

桜「それだけで、私は間桐を全て許せる」

 だめだ、こいつは今ここで殺さなきゃ!

 慎二は、台所へと走った。

 刺し殺せば、目の前の悪魔が...少なくとも二度と動くことはない。

 殺せ、殺せ。

慎二「さっ、桜。ぼぼ、ぼぼぼ僕は...お前みたいなくっ、クレイジーな
   快楽殺人者を...のば、のばっなしにはで、ででできない」

 体がガタガタと震え、眼から夥しい量の涙が流れる。

桜「ひっ、に、兄さん正気に戻ってくださいっ!」

桜「いやあああああ、いやああああああ」

 ここまで狂える兄妹と言うものも、そうはいないだろう。

 桜は狂ったふりをしながら叫び続け、慎二の手から包丁を取り上げる。

桜「兄さん、いっそのこと狂いましょうよ」

桜「心が血を流す痛みよりも、身体の痛みが上回るなんて事はない」

 どろどろとしたものが桜の目を通して、自分の中に流れ込む。

 ヤンデレの放つ殺気よりも遥かに悪質なそれは...『闇』

 間桐桜の逃れようのない本質だった。 

桜「うふふ、どうしてかなぁ?先輩ともセックスしたのに」

桜「兄さん...男の人って本当に命の危機に晒されると」


桜「夥しい量の精液を、射精するんです」




 
394 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 19:30 ID:jHqSMlXL
 包丁を取り上げた桜は、自分の服をライダーに剥ぎ取らせる。

 ビリビリに破かれた服が床に全て落ち、桜の一糸まとわぬ裸体が
慎二の目の前に現れる。

桜「兄さん...今日はすごく気分がいいの」

桜「今からやる事が、絶対上手く行くって思えるくらいに」

桜「自殺寸前まで血を流しながらもSEXが出来そうなくらい」

慎二「やめろおおおおおお!やめてくれえええええええ!」

 パンパンに張った慎二のペニスが暴発を始めた。

 象牙色のチノパンの一点が物凄い勢いで濡れていく。

桜「ふふふふふふふふふふうふふふふふふふふふふ」

 桜は、そんな慎二の醜態を慈母の様な眼差しで見続けている。

桜「ところで、兄さんは私のオナニーをみた事ってないですよね?」

桜「今日は特別です、兄さんも楽しめるように考え抜きましたから」

 ライダーは、気絶していた。
 
 何百人もの人間の死体の中に在っても、平然としていられる
真正の怪物である彼女が、ただの人間の狂気に当てられ、泡を
吹いて、床に倒れている。
395 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 19:48 ID:jHqSMlXL
桜「それじゃあ、行きますよ。えいっ」

 右手首で掲げた包丁を、桜はリストカットの要領で左手首の動脈に
当て、そのまますっ、と引き抜いた。

慎二「うぎゃあああああああああ!ひぃいいいいいいいいいいい」

 ボタボタと流れる血が自分の頭の上に零れ落ちる。

桜「まだまだ行きますよ~、そ~れ。えいえい」

 ぶしゅっ、ぶしゅっと引き裂かれた桜の左腕から大量の血が
ドバドバと慎二の頭めがけ、零れ落ちる。

慎二「だれかあああああああ!たすけてくれえええええええ」

桜「兄さ~ん、何逃げようとしてるんですかぁ?」

桜「今から兄さんの子供を孕んじゃうところなのにぃ」

 かつてここまで恐ろしい男の籠絡方法があっただろうか?

 奇しくもイリヤの言っていたことは最悪の形で実現した。

 恍惚の笑みを浮かべた桜は、どこにそんな力があるのかと
言わんばかりの怪力で、慎二を押さえつけた。

慎二「わああああああああああああああああああああああ」

桜「知ってましたか?女の人が男の人を逆レイプしたとしても」

桜「法律上では、強姦罪にはならないそうです」

 慎二は必死にもがいた。

 桜は、慎二を押さえつけ、そのペニスを挿入した。

 焼き鏝を当てられたかのように、左腕が焼け付く様に痛む。

桜「あはっあはっ」

桜「先輩は逃がしちゃったけど、兄さんは逃がさないから」

桜「逃がしませんからね...兄さん」

桜「逃げちゃいやだよ?お兄ちゃん」

 躁鬱が激しくなりながらも、一向に桜の激しいレイプは終わらない。

慎二「ぎっ、がっ、あぐうっ」

 射精の快感が恐怖に屈した。

 慎二は、そこで己の意識を手放した。

 薄れゆく意識の中、慎二は桜にこう言われた。

桜「兄さんの子供、産んであげます」

桜「私、もう復讐以外に生きられないけど」

桜「せめて、先輩が望んだことを兄さんが果たして下さいね?」

桜「だから、ごめんなさい。悪い桜を許して」

 それは、余りにも儚すぎる桜の真意だった。
396 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 20:10 ID:jHqSMlXL
~一週間後~

士郎「じいさん、俺...冬木を出ることにしたよ」

士郎「ごめんな。結局、じいさんの夢を叶えるのはできないや」

 士郎とイリヤが冬木から旅立つ日がついに来た。

 二人は冬木を後にする前に、亡き父の墓参りに来ていた。

イリヤ「キリツグ、あのね...私、シロウと結婚する事になったんだ」

イリヤ「式は...当分先になりそうだけど」

イリヤ「それでも、私は幸せだよ」

 固く結ばれた手は、二度と離れることはない。

士郎「今、イリヤのお腹の中には俺の子供がいるんだ」

士郎「俺はそういうの専門じゃないからわかんないけど...」

士郎「セラが言うには、確かに妊娠してるんだって」

士郎「なぁ、じいさん。アンタは家族ってどう思う?」

士郎「まだ俺...父親になるってことがどういうことなのか」

士郎「分かんないし、実感もないんだ」

 日に日にイリヤの起きていられる時間が削られている現実。

 いつかイリヤが死んでしまう前に、彼女をなんとかして救うことが
できる時間と可能性が限られている。

 それは、如実として士郎の心を蝕んでいた。

士郎「俺の中では、もう答えは出てるんだ」

士郎「イリヤの為に、俺は世界を敵に回す」

士郎「じゃあ、行ってくるよ。じいさん」

士郎「ここに戻って来ることは、多分ないけど」

士郎「もし、戻ってこれたら、イリヤと一緒だ」

 父の墓に背を向け、イリヤと士郎は歩き始めた。

 この先、どんな困難が待ち受けていようと俺は絶対に家族を
守り切って見せる。

 士郎は、ただそれだけを胸に刻み、歩き出した。
397 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 20:27 ID:jHqSMlXL
~イギリス 時計塔~

凛「今、私のこと何て言った?」

 恫喝と共に遠坂凛は、目の前の生徒に掴みかかった。

生徒「口八丁で成り上がった、東洋のサルって言ったんだよ!」

 きっかけは些細なことだった。

 セイバーのケツをさわさわと撫でた不届きなボンボンにセイバーが
我慢の限界にきて、キレた。

 ただのボンボンならよかったものの、そのボンボンは他学部の
学部長の甥っ子、つまりロードの家系に準ずる一族だったのだ。

 凛とてバカではない。

 目の前の男が、自分のパトロンの息子であり...望まない縁談の
相手であったとしても、多少の事には目をつぶる寛容さがあった。

 だが、後に引けない凛の弱みに付け込んだこの卑劣漢は、
あろうことか衆目の中で遠坂家を貶し、聖杯戦争が嘘八百の
でたらめだと叫んだのだ。

 誇り高き凛であっても、流石にこれはキレる。
398 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 20:45 ID:jHqSMlXL
 だが、よく考えてみるとこれは周到な罠だった。

ボンボン「はっ、なんだったら聖剣でも出してくれんのかよ?」

ボンボン「聞く所によれば、英霊ってのは馬鹿みたいな力の塊で」

ボンボン「魔力の消費も半端じゃないって聞いたぜ?」

ボンボン「そんな桁外れな英霊の魔力を賄えるほどの魔力が
      お前なんかにあるわけないだろう」

 一対一なら、凛は誰にも口げんかでは負けない。

 だが、ここは時計塔の廊下。場所がかなり悪かった。

 腐った権力争いが跳梁跋扈している魔窟なのだ。

 教会をうまいこと利用する一匹狼気取りの、それも東洋の女は
時計塔の大多数の生徒にとってかなり目障りな存在だった。

セイバー「貴様、そこに直れ!」

セイバー「わが、せいけ...」

凛「セイバー、落ち着いて」

凛「私なら大丈夫。心配しないで」

 逸るセイバーを抑え、凛はガンドの準備を始めた。

ボンボン2「おっと、これ以上校舎をぶっ壊したらいけないんだろ?」

ボンボン2「それなりの誠意を見せれば、許してやってもいいぜ?」

 凛が隙を見せた途端、ボンボンの取り巻き達がでしゃばり始めた。

 万事休す。

 多分ここで引いたとしてもよくて退学。最悪の場合、肉奴隷に
されるだろう。

ボンボン「だいぶしおらしくなったじゃないか、それでいいんだよ」

ボンボン「さっ、こっちに来給え」

ボンボン「わるいようにはしな...」.

 ボンボンの笑みが、凍りついた。

 深々とその腹にめり込んだものを見た時、彼の目玉は飛び出さん
ばかりにぐっ、とせり出していた。
399 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 20:48 ID:jHqSMlXL
セイバー「どうだ、我が正拳の威力は?」

 残心を残したセイバーの見事な突きは、わずか一秒の間に
三人のボンボンを打倒していた。

凛「ちょっ、セイバー...はぁ」

 今月もまた、セイバーにひもじい思いをさせることになりそうだ。

 ドヤ顔で凛に微笑むセイバーを横目に、今回の後見人の
説教は何時間かかるんだろうと凛は頭を悩ませていた。

400 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 21:00 ID:jHqSMlXL
~ロード・エルメロイⅡ世の部屋~

ウェイバー「おい、そろそろいい加減にしとけよ、この馬鹿もん」

ウェイバー「創造学部と天文学部の学長からお前を退学させろ」

ウェイバー「先程からひっきりなしに、私の部屋にメールが届いてる」

ウェイバー「トオサカ...お前、トラブルを起こしにここに来たのか?」

凛「違います!ここがどういう場所か知ってきました」

ウェイバー「なら、どうして我慢できなかった」

凛「彼らは私の家と、私を不当に貶しました」

ウェイバー「代わりに、研究の費用を肩代わりして貰ったんだろう」

ウェイバー「もう、これ以上私を煩わせるな」

ウェイバー「ただでさえ、お前とエーデルフェルトの破壊工作の
       陳謝の理由探しで忙しいのに」

ウェイバー「これ以上、他学部との揉事に巻き込まれるのは御免だ」

ウェイバー「退学取り消しまではやってやる」

ウェイバー「だが、パトロンの謝罪は自分できちんとしとけ」

凛「はい...もうしわけありませんでした」

 砂をかむような表情を浮かべた凛は、後見人のロード・エルメロイⅡ世の部屋から退出した。

 魔術師の社会は白が黒へと簡単にひっくり返る世界なのだ。

 まがりなりにも、凛がここまでやってこれたのは自分の才覚と
それを後援してくれたパトロン。

 そして

凛「...士郎」

 と、アーチャーと言う心の支えがあったからだった。
401 名前:名無し 投稿日:2014/12/02 21:05 ID:jHqSMlXL
 今、士郎は一体どうしているんだろう。

 あの時、大河の親に言われたことが頭を離れず、冷静さを欠き
めったに怒る事のない士郎を、極限まで追いつめてしまった。

 あの時、士郎の主張に耳を傾けて聞いていれば、彼はイリヤを
選ぶことなんかなかったはずだ。

凛「士郎...やっぱりちゃんと向き合わなきゃダメよね」

 だが、凛の楽観的な見通しは一月後に粉々に打ち砕かれる。
402 名前:名無し 投稿日:2014/12/05 00:14 ID:pm55FOCx
桜さんが怖すぎますわ。
月姫組なんて可愛いものですね。
403 名前:名無し 投稿日:2014/12/05 21:02 ID:4Ruw2HBy
404 名前:名無し 投稿日:2014/12/05 21:02 ID:rQroJ9Wv
これは時臣氏も泣いていいレベル
キツすぎる。特に桜。( ;∀;)
405 名前:名無し 投稿日:2014/12/06 22:48 ID:pF1dJOgX
 11月18日 フィンランド

イリヤ「うわっ、寒い」

士郎「えーっと、イリヤ。待ち合わせ場所は?」

イリヤ「ここが七番出口だから...うん、あっち」

 冬木にまつわる全てを清算した俺達は、フィンランドに...
新天地へと旅立った。

 俺もイリヤも日本以外の外国に、しかも長期滞在となると
これが初めての経験である。

 そわそわと、せわしなくエーデルフェルト家からの迎えの人を
待っているセラとは対照的なリズ。

リズ「ねーねー、あの人たちがそう?」

セラ「そのようですね」

 それきたとばかりに、セラは矢と同じ速さで走り出した。

執事「おや、もしやアインツベルン様ご一行ですか?」

イリヤ「はい、そうです」

イリヤ「私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルンです」

執事「おお、これはこれは」

執事「私はエーデルフェルト家で家令頭を務めさせて頂いている
   オーギュストと申します」

執事「詳しい自己紹介は後ほどさせて頂きましょう」

執事「お嬢様が貴方達の到着を心待ちにしておりますので」

 イリヤと執事さんが自己紹介をしている。

 イリヤに続き挨拶をしようとした時、アサシンが霊体化のまま
俺に話しかけてきた。

アサシン(マスター、少々急げよ?)

アサシン(先程から、尋常ではない気配がちらほらと見受けられる)

イリヤ「此の度は私共に手を差し伸べて下さったルヴィアゼリッタ様     のご厚意に、真に感謝してますわ」

執事「お嬢様は私たちの誇りでございますから」

士郎(使い魔か?それともイリヤを殺そうとしてる連中か?)

アサシン(間諜の類だ。どうする?)

士郎(使い魔だけ切り捨て、魔術師たちは放っておけ)

アサシン(合点)

 やはり、アインツベルンが動いていた。

イリヤ「士郎?どうかしたの」

士郎「いや、なんでもないよ」

 ここでイリヤに追跡者がいることを悟られてはいけない。
そう思った俺は、後ろを振り向くことなく歩き始めた。
406 名前:名無し 投稿日:2014/12/06 23:13 ID:pF1dJOgX
リズ「イリヤ、ちょっといい?」

イリヤ「なぁに、トイレ?」

リズ「飛行機の中でジュース飲みすぎちゃった」

イリヤ「んもう、しょうがないわね」

オーギュスト「おや、どうかなされましたか?」

イリヤ「申し訳ありません、ミスター・オーギュスト」

リズ「トイレ」

オーギュスト「ああ、大丈夫ですよ」

オーギュスト「私共は、ここで待っていますので」

 まずい、リズの手元にはあの大きなハルバードがない。

士郎「あ、俺も行きます」

士郎(アサシン、イリヤの傍に)

アサシン(了解)

 これで、たぶん大丈夫だろう。

 何事もなくトイレを済ませた後、俺とリズは怪しい集団を見つけた。

リズ「シロウ、どうする?」

リズ「ここで何人かやっとく?」

士郎「派手に動いて連中をひきつけてくれ」

リズ「弓で狙うの?」

士郎「ああ、トレース・オン」

 投影した弓矢を手元に呼び出す。

 その途端、リズが走り出す。

リズ「たーおれーるぞー」

 重い鉄のベンチを軽々と持ち上げ、馬脚を現した魔術師達に
ぶん投げる。

 パララララ、とタイプライターを打つようなマシンガンの発砲音が
リズのメイド服の裾をかすめて飛び交う。

士郎「命射八節」

 大混乱に陥った人ごみを縫いながら、俺はイリヤの命を狙って
やってきた魔術師達を淡々と狙撃していった。

 急所を外し、人ごみに紛れそいつらの顔を携帯電話のカメラで
一人ずつ収めていく。

リズ「はやくして!」

 そして、どうにかイリヤと合流した俺達は黒塗りのリムジンに乗り
慌ただしく空港から逃げ出すことに成功した。

 

407 名前:名無し 投稿日:2014/12/07 08:32 ID:F4FD9UEB
皮肉にも切嗣がやりたかった、邪魔者を殺してでもイリヤをアインツベルンから連れ出す事を行う士郎。だけど詰めが甘い…
408 名前:名無し 投稿日:2014/12/07 18:54 ID:IRuqAibw
じいさんの夢はしっかりと受け継がれたんだな
409 名前:名無し 投稿日:2014/12/09 19:39 ID:EuuB0Rgv
~アイルランド ダブリン~

ランサー「ひゃ~、随分とまぁサマ変わりしたもんだ」

ランサー「ま、1000年以上も経てば当然か」

 ランサーは、再び母国の土を踏みしめていることに強い感慨を
抱いた。

 二度目の生には、とんと無頓着であった彼でもやはり自分の
生まれ育った国が昔以上に栄えていて欲しい気持ちはあった。

ランサー「しっかし、昔以上に血腥ぇな」

 適当な自転車を拝借してダブリン市街を散策している最中に声をからし、過激な発言をしている連中が何人もいた。

ランサー「はぁ、ああいう輩すらとりしまらんとはねぇ...」

ランサー「自由ってのも、ただ民に預けるだけじゃダメってことだな」

ランサー「あのメイブだったら、大激怒して首刎ねてるな」

 最後まで敗北を認める事のなかった彼女の半端でないほどのマジギレは、最終的にランサーを死に追い込むほどだった。

 とはいっても、そんな彼女も戦いの中で既に死んでいる。

ランサー「さてと、どうすっかねぇ」

 下らないことに時間を費やす暇はもうないのだ。

 人目に付かない路地裏に入り込み、人探しのルーンを刻む。

 触媒はキャスターのルールブレイカー。

ランサー「探知した場所は...こっから300㎞程度って所か」

 急げ、身体の魔力は殆ど尽きかけている。

ランサー「今日が俺の命のデスリミットってわけだ」

 だが一日あれば、なんでもできる。

ランサー「しっかし、よりにもよってコノートかよ」

ランサー「しゃあねぇか」

 そして、ランサーはキャスターが隠れ住んでいるコノートへと
走り出していった。
410 名前:名無し 投稿日:2014/12/09 20:00 ID:EuuB0Rgv
コノート地方 ゴールウェイ

ランサー「よう、キャスター」

キャスター「ラ、ランサー...どうしてここが?」

 キャスターにとっての誤算は、カレン・オルテンシアがランサーを
彼女が監督役で居続ける限り、ずっと拘束し続けられるという
錯覚を抱いたことだった。

 引っ越しから数か月、おなかの中の子供が生まれ...女の子に
対して、メディ・ロウなんて名前を付けるあたりアレだが、とにかく
キャスターは幸せの絶頂にいたのだった。

キャスター「帰ってちょうだい」

 と言えれば、どんなに楽なのだろうか?

ランサー「すまねぇと思ってる」

ランサー「そして今のお前にとって俺がどんなに邪魔かってことも        重々承知してる」

ランサー「その上で頼む。俺の頼みを聞いてくれ」

 そう、別に聞く筋合いのないランサーの頼みをここで断ればいい。

 だが、それではあまりにも彼が報われなさすぎる。

宗一郎「キャスター、どうした?」

キャスター「宗一郎さま、実は....」

 冬木にいた時と変わらない葛色のスーツに身を包んだ宗一郎の
手の中には、彼の髪の色を受け継いだ女の子が眠っていた。

 彼等もランサーが此処に来たことの意味を理解できない程、
愚鈍ではなかった。

 だが、それでもこの二人はランサーを追い返すことはないだろう。

 ここがアイルランドで、目の前の男が誰なのかを知っていれば
少なくとも無下に追い返すのは愚の骨頂である。

ランサー「......」

ランサー「おう、久しぶりじゃねぇか。葛木」

宗一郎「...キャスター、取りあえず中に通せ」

宗一郎「入れ。話を聞こう」

ランサー「おう、ありがとよ」

 いいたいこともあっただろう。

 だが、葛木は何も言わずに、ランサーを自宅にあげた。

 キャスターは、己の死の到来が速まった事に胸を痛めた。


 
411 名前:名無し 投稿日:2014/12/09 20:15 ID:EuuB0Rgv
キャスター「ランサー、お願いだから帰って頂戴」

キャスター「私は今、凄く幸せなの。坊やとセイバーの修羅場に
       余計なちょっかいを出すつもりは毛頭ないの」

 キャスターとの話し合いは紛糾を極めた。

 ランサーは冬木で起きた血で血を洗う衛宮士郎のどろどろの
修羅場の顛末を先に話し、キャスターの協力を取り付けようと
画策していた。

 だが、キャスターにとって修羅場と言うのはとんでもない鬼門、
つまり過去のトラウマを抉り出してしまったのだ。

宗一郎「キャスター、少なくともこのまま手をこまねくよりかは...」

宗一郎「今ランサーと手を組み、セイバーをここにおびき寄せ」

宗一郎「マスター諸共、始末してしまえばいい」

キャスター「もう、私はこれ以上この手を血に染めたくないのです」

キャスター「貴女との間にできた娘を、血に塗れた手で抱きたくない」

キャスター「そして、貴方という良人を失うわけにはいかない!」

 子を護る母として、その激昂は当然の物だった。

 宗一郎とて、キャスターの激情は理解していた。

 だが、それでも過去の経験上から宗一郎は事態の早期解決が
全てにおいて最善であると考えている。

ランサー「すまねぇ、本当にすまねぇ!」

ランサー「マジで最低だと思うが、今の俺にはお前に頼るしか、
      もう方法がねぇんだ」

ランサー「バーサーカーとの約束を、あのアインツベルンの
      嬢ちゃんを命懸けで守らなきゃいけねぇんだよ!」

 テーブルに頭を何度も何度も叩きつけ、ランサーはキャスターに
自分のやることを理解してもらおうと必死になっていた。

ランサー「どうか、頼む!この通りだ!」
412 名前:名無し 投稿日:2014/12/09 20:42 ID:EuuB0Rgv
ランサー「もう、俺は...目の前で子供を殺されたかねぇんだ!」

ランサー「理性のねぇバーサーカーだって、最後まで嬢ちゃんを
      守り切ったんだ!」

ランサー「同じ英雄として、親として...アイツから託されたその全てを」

ランサー「俺は最後まで守りきらなきゃいけねぇんだ!」

 だが、キャスターはランサーの哀願に心動かされなかった。

 それどころかランサーのあまりに身勝手さに、ますます腹を立て
近くにあった歩行用の杖でランサーをブッ叩き始めた。

キャスター「いい加減にしなさい!クーフーリン」

キャスター「私は貴方の嘘には騙されない!騙されるもんですか!」

キャスター「アンタの主張は、私に死ねって言っているのと同じよ!」

キャスター「あのお人形さんの中に在る小聖杯が壊れかけている」

キャスター「だけど、実際にあの子を助けるには...」

キャスター「サーヴァントを殺して、小聖杯に願うしかないじゃない!」

キャスター「イリヤスフィールをホムンクルスから人に変えろと!」

キャスター「いいえ、それでも足りなければ全部のサーヴァントを
       殺し尽して、大聖杯に願いを掛けるほかなくなる」

キャスター「それこそが、あの坊やのやろうとしていることなのよ!」

キャスター「私だって、貴方の提案の一部には協力するつもりよ!」

キャスター「だけど、それ以上に許せないのは...!」

キャスター「光の御子、クーフーリンとあろうものが」

キャスター「苦渋の決断とはいえ、誰かの謀略の片棒を担ぎ、
       あまつさえ、その誇りを自分で貶したことが許せない!」

 あまりの悔しさに身を震わせ、机に突っ伏すランサーの肩に
キャスターと宗一郎は手を置いた。

ランサー「本当にその通りだ。すまねぇ...本当にすまねぇ...」

 冬木を出る時、事態がここまで大事になるとは考えていなかった。

 だが、こうなってしまった以上...最小限の犠牲で乗り切るしかない。

 宗一郎は我が子とキャスターの為に、一肌脱いだ。

宗一郎「ランサー、私はお前の提案に乗ることにした」


宗一郎「準備ができ次第、セイバーをここにおびき寄せて殺す」


宗一郎「地の利がこちらに在り、かつキャスターは最強の魔術師だ」

宗一郎「そしてここは貴殿がその力を十全に振るえる場所だ」

 宗一郎とて、ランサーの苦悩は理解している。
 父になったばかりの自分には遥か及ばないほどに、ランサーは
自分たちの事を考え抜いて、一番の方法を持ってきてくれたのだ。

 キャスターに絆され、宗一郎の眼にはいつしか感情が宿っていた。

キャスター「宗一郎さま!」
413 名前:名無し 投稿日:2014/12/09 20:57 ID:EuuB0Rgv
宗一郎「キャスター、私は女の陰に隠れ、戦いを避ける腑抜けに
     見えるか?」

宗一郎「娘に対して、私が見せる事の出来る姿はこれしかない」

宗一郎「業腹だが、お前たちの命には代えられない」

宗一郎「バーサーカー以上に手ごわいサーヴァントが、こうして
     最悪の形とはいえ...私達を守護してくれる」

宗一郎「これほど、心強いことはない」

 キャスターは、最終的にランサーに魔力のパスを通した。

 ランサーも自分の身体に魔力の漲りを感じると同時に、
高揚感と自分のパラメーターが底上げされるのを感じた。

キャスター「この私にここまでさせたんですからね!絶対に敗北は
       許しません」

ランサー「ありがとうキャスター!ありがとうよ、葛木!」

 感極まったランサーは二人に抱きついた。

キャスター「全く、少しは自重しなさいよね」

 しかし、これで迎撃準備は整った。

 神算鬼謀で名を馳せた、コルキスの悪女が本格始動する。

キャスター(まずは、一番力のないお嬢さんから狙いましょうか)

 ランサーという最強の槍を手に入れた彼女は、まず手始めに
間桐桜に最初の狙いをつけることを考え付いたのだった....
414 名前:名無し 投稿日:2014/12/17 20:54 ID:DnEeQQsE
続きはまだですか?
415 名前:名無し 投稿日:2014/12/29 21:43 ID:VnQNNJDL
まだなのか
416 名前:名無し 投稿日:2015/01/01 12:40 ID:CJoJ0Dad
あけおめ
続き楽しみに待ってる
417 名前:名無し 投稿日:2015/01/02 21:19 ID:jHcJWxW8
ここから、どうやって話繋げるのかが想像つかない……もしかして話変わってる?
418 名前:名無し 投稿日:2015/01/07 07:35 ID:FlRMOgvr
おもしろいです。続き待っています!
419 名前:名無し 投稿日:2015/01/16 20:00 ID:BYc15wVX
続きが気になる
420 名前:名無し 投稿日:2015/01/25 16:08 ID:2lEwm7pa
作者は消されたのだ
421 名前:名無し 投稿日:2015/01/28 23:18 ID:F5TsQVVL
 みなさん、お久しぶりです。作者です

 テスト期間とか家の遺産を巡るゴタゴタのせいで、このssをちゅうぶらりんのままにしてしまいました。

 二月のはじめくらいには、また再投下できそうです。

 また、このssと同じ時期に処女作の京太郎「パラダイス・ロスト」もここに再び投下するつもりです。

  長いあいだ、放置して申し訳ありませんでした。
422 名前:名無し 投稿日:2015/02/01 13:25 ID:z0xSr8Ih
期待
423 名前:名無し 投稿日:2015/02/01 13:37 ID:b7xl6Ly2
良かった、続き楽しみ
424 名前:名無し 投稿日:2015/02/01 21:54 ID:T7fMujMj
おぉ、なんという吉報
425 名前:名無し 投稿日:2015/02/03 10:58 ID:aHkc2wLz
あっちのSSも大好きだったけどまさか同じ作者だったとは!
426 名前:名無し 投稿日:2015/02/05 20:17 ID:fvnoDaMe
京太郎「パラダイス・ロスト」の見所を教えてください。

427 名前:名無し 投稿日:2015/02/08 21:31 ID:o6Ehszym
  みなさん、長いことお待たせしました。

  今日から、京太郎「パラダイス・ロスト」を投稿しようと思います。

  見所としては、555本編で出ることのなかったファイズ・ブラスターアクセルフォームやカイザ・ブレイクフォーム、

 そしてデルタ・バスターフォームの三本のベルト全ての強化フォームがでるのが一つ。

  もう一つは、最初に投稿したやつに大幅な加筆修正を加えたので、長々とした文章に目を瞑れば、

 それなりに面白い出来になっています。

  あとは、原村和率いるiPS類という存在が、原作を書かれた人の想像を超えた悪魔になります。

 オルフェノクと手を組み、世界征服に乗り出すというまさに鬼畜の所業を軽々とやってのけます。

  大体こんな感じです。

  何部作で終わらせるのかは、まだ分かりませんが取り敢えず、五月には新作を投稿する予定です。
428 名前:名無し 投稿日:2015/03/01 14:17 ID:AFzzFW2L
2月終わってしまったけど投下がなくて悲しい
429 名前:名無し 投稿日:2015/03/02 20:23 ID:fZj9TAT4
まだぁ〜 せめて終わらせてくれ
430 名前:名無し 投稿日:2015/03/13 10:32 ID:iQq20HXm
まだ来ないか…
431 名前:名無し 投稿日:2015/03/16 00:32 ID:hShI9i9G
復活ぷりーず
432 名前:名無し 投稿日:2015/03/23 23:50 ID:So72lsU2
続き待ってます。
433 名前:名無し 投稿日:2015/04/04 20:25 ID:SCL6ax5M
そろそろ復活してくれる気がする!
434 名前:名無し 投稿日:2015/04/21 23:16 ID:2fKn80Ar
まだかな
435 名前:名無し 投稿日:2015/05/01 01:08 ID:ZRUdLFtf
まだなの?
436 名前:名無し 投稿日:2015/05/01 22:23 ID:yHBfPwEB
ふっかつぷりーず
437 名前:名無し 投稿日:2015/05/24 19:47 ID:VLC9d0bD
もうこないのかな・・・
438 名前:名無し 投稿日:2015/05/30 20:47 ID:Ljuyxwny
復活お願いします
439 名前:名無し 投稿日:2015/08/26 11:39 ID:RrBZRx49
ふっかつして〜
440 名前:名無し 投稿日:2015/08/27 00:13 ID:djrjVMe6
復活ぅ〜〜
441 名前:名無し 投稿日:2015/11/15 11:11 ID:YkC5lfl1
復活よろ
442 名前:名無し 投稿日:2015/11/18 13:19 ID:0BxjzDQP
ずっと待ってる
443 名前:名無し 投稿日:2015/11/28 06:57 ID:S2F6TDTc
さっさとしろ

444 名前:名無し 投稿日:2015/12/14 18:52 ID:oPDlvSPh
待ってる
445 名前:名無し 投稿日:2015/12/17 01:07 ID:B7ZdDGyP
復活おね
446 名前:名無し 投稿日:2016/01/26 01:36 ID:j8FgtILk
おい
447 名前:名無し 投稿日:2016/02/10 17:34 ID:8tMhoPky
まだだ まだ終わってない
448 名前:名無し 投稿日:2016/03/14 10:59 ID:7EQD0TFw
まだまだ続くよな
449 名前:名無し 投稿日:2016/03/22 09:26 ID:6LwIOhlV
待ってる人が・・・俺以外にもいた・・・・・。
450 名前:名無し 投稿日:2016/03/28 18:51 ID:sHHRckwN
まだだまだおわらんよ
451 名前:名無し 投稿日:2016/03/30 15:37 ID:S2CPcfmG
続きあくしろよ
452 名前:名無し 投稿日:2016/04/01 03:10 ID:L6LOunQS
はよはよ
453 名前:名無し 投稿日:2016/04/01 03:35 ID:hfUiHFGN
はやーく
454 名前:名無し 投稿日:2016/04/22 00:30 ID:emuCNUJx

 車で二時間近く走り続け、ようやく都心から離れた場所に俺達が

これから仕えるであろう新しい主の家が見えてきた。

士郎「ここが...エーデルフェルト邸...」

イリヤ「お、大きい...」

 セラもリズも、冬木にあったアインツベルン城以上に大きな

魔術師の大家であるエーデルフェルト邸の広大さに畏怖していた

 三重の鉄扉が開かれ、本邸の玄関に一直線の通路を車で渡る。

 そして、車が重厚な青銅の扉の前に停車した。

オーギュスト「エミヤ様、到着でございます」

オーギュスト「これから大変でしょうが、頑張って下さい」

士郎「ありがとうございます」

士郎「...行こうか、みんな」

 玄関先で待機していた使用人の方々がトランクの中にある

俺たちの荷物を運び出していく。

イリヤ「そうね。楽しんでいきましょう。セラ、リズ」

セラ「はい。お嬢様」

リズ「うん。みんなと一緒なら、どんな場所でも楽園」

 思い出しそうになる在りし日の景色を頭から振り払い、

俺達四人は開かれた新たな可能性に向かい、歩き出していった。

455 名前:名無し 投稿日:2016/04/22 00:49 ID:emuCNUJx
エーデルフェルト邸 玄関

??「ようこそ!エーデルフェルト邸へ!!」

 俺達が扉を潜った途端、盛大なファンファーレが鳴り響いた。

 声高らかに響いた来客への祝福は暖かさに溢れていた。

イリヤ「わっ?!えっ、なに?なんなの」

 まず最初に視界に飛び込んできたのは、大広間まで一直線に

のびた赤い絨毯。

 そして、通路の脇にはおよそ100人の執事とメイドからなる

小規模なオーケストラ。しかも選曲は威風堂々。

セラ「あわわ...え、士郎様」

リズ「うん。うん。楽しいね、シロウ」

 あまりにも想定外なもてなしに呆然と突っ立っていることしか

できない俺達四人だったが...

「エーミーヤ!」

「エーミーヤ!エーミーヤ!エーミーヤ!エーミーヤ!」

 熱烈な衛宮コールに押されるようにして、おぼつかない足取り

ながら、大広間へと一歩踏み出した。

イリヤ「シロウ...」

士郎「ああ、手を...」

 そのとき俺が感じていたのは結婚式の花道を歩くかのような

気分だった。

セラ「お嬢様...」

 涙ぐむセラとリズの小さな声が、俺達にとっての最愛の

親代わりだと思うと、無性に、涙が溢れて...止まらなかった。

 そして、俺達はついに大広間の扉の前にたどり着いた。

オーギュスト「では、エミヤ様。お入り下さい」

 開かれた扉の先へ向かって、俺達は歩き出した。
456 名前:名無し 投稿日:2016/04/22 01:00 ID:emuCNUJx
大広間

 俺達が入ったエーデルフェルト邸の大広間は、大きな体育館と

同じくらいの広さだった。
 
 調度品も天蓋に描かれているフレスコ画も歴史や由緒を大いに

万民に感じさせる偉容さを誇っていた。

 既に100を超えるテーブルには何百人もの来客が腰掛けていた

士郎「うわ...すごいな...」

イリヤ「綺麗...」

 イリヤの視線の先には魔術によって壁に細工されていた...

魔力の流動と化学反応を組み合わせたカレイドスコープのような

星が煌めく様を演出している仕掛けが作動していた。

 そして、鳴り響いていた音楽がぱたりと止んだ。

 マイクのこすれる音と、その接続を確かめる際に出る音が

大広間に反響していた。

「マイクテスト、マイクテスト、接続OKです」

 短い確認の後、大広間の一番奥の舞台からオーギュストさん

とは異なる執事さんがマイクを握りながらゆっくりと現れた。

457 名前:名無し 投稿日:2016/04/22 01:14 ID:emuCNUJx
 「ようこそ、みなさま」

 「本日はお忙しい中、エーデルフェルト邸にお越しいただき

  誠にありがとうございます」

 「本日の司会を務めさせて頂くのは私、デインと」
 
 「オーギュストでございます」

  不意に肩を叩かれ、何事かと後ろを振り向くと数人の

 メイドさんたちが後ろに控えていた。

 「新郎様とそのお付きの方は、こちらに」

 リズ「?」

 「新婦様方はこちらに...」

 セラ「ええっと、どちらに今から行くのですか?」

 「衣装合わせのお部屋です。さ、お早く」

 有無を言わさず手を捕まれた俺達は二手に分かれて

それぞれ別の部屋へと連れ込まれた。
458 名前:名無し 投稿日:2016/04/22 01:28 ID:emuCNUJx
士郎「えっと、これから何が始まるんですか?」

ルヴィア「もちろん第三次世界大戦ですわ」

 仮拵えの衣装部屋にいたのは、誰であろう俺達の命の恩人の

ルヴィアゼリッタさんだった。

リズ「おお、ここにもコマンドー知ってる人がいた」

ルヴィア「生憎筋肉モリモリマッチョマンではありませんが」

ルヴィア「失敬、お久しぶりね。シェロ」

士郎「ルヴィアゼリッタさん...お久しぶりです」

ルヴィア「どう?少しは緊張がほぐれたかしら?」

士郎「はい。すごく心が温かくなりました」

ルヴィア「そう思ってくれるのなら、私もこの催しを開いた

     甲斐があったというものです」

ルヴィア「さ、シェロ。そこにある一張羅に着替えなさい」

ルヴィア「聞きたいことには、私が必ず明日答えましょう」

 そう言った後彼女は、俺達を残しどこかへと去って行った。

リズ「シロウ、とりあえず言われたとおりにしよっか」

士郎「そうだな」

459 名前:名無し 投稿日:2016/04/22 01:48 ID:emuCNUJx
隣の部屋

イリヤ「わぁ...」

 士郎の頭が現実に追いついていない頃、イリヤスフィールは

セラやエーデルフェルトのメイドと協力し合いながら、純白の

ウェディングドレスの着付けに取りかかっていた。

イリヤ「本当に....本当に...夢みたい」

ルヴィア「さすがアインツベルンの姫君ですわね」

ルヴィア「どうかしら?アインッベルンの礼装には劣るけど

     それは我が家でも中々の嫁入り道具ですわよ」

 正面の鏡に映っていたのは、濃紺のパーティドレスに身を

包み、腕組みしながら自信満々に笑うルヴィアゼリッタ

本人だった。

イリヤ「本当に、なんとお礼を申せばいいのか...」

 既に着付けを終えたイリヤは、その純真な心で精一杯の

ありがとうをルヴィアへと伝えた。

ルヴィア「礼には及びません」

ルヴィア「私は貴族の流儀に則ったまでですわ」

ルヴィア「貴女は貴女の思うままに行動なさい」

 ウェディングドレスに身を包んだイリヤの頭を撫でながら

ルヴィアゼリッタは、本当に満足そうな笑みを浮かべていた。




 ああ、この二人は私を裏切らないだろう、と。



460 名前:名無し 投稿日:2016/04/27 01:54 ID:lkcxHWfP
更新きとるやん、支援
461 名前:名無し 投稿日:2016/05/12 00:36 ID:Qdw0nrzp
支援
462 名前:名無し 投稿日:2016/05/15 03:19 ID:yTQ7uQKk
支援
463 名前:名無し 投稿日:2016/06/15 20:47 ID:yxQCLISg
やったぜ
464 名前:名無し 投稿日:2016/07/05 22:54 ID:z9TbnlsA
支援
465 名前:名無し 投稿日:2016/07/09 16:14 ID:LH2CJfZn
続きはやく‼️
466 名前:名無し 投稿日:2016/07/18 02:27 ID:Xpy3cSDa
続き待ってます
467 名前:名無し 投稿日:2016/08/15 01:45 ID:T1pIGRxk
支援
468 名前:名無し 投稿日:2016/08/18 23:14 ID:GtNIlKDU
支援
469 名前:名無し 投稿日:2016/08/24 20:19 ID:5fLkLQvP
今回初めて見たが。凄く面白いです。できるなら最後まで見たいというのが本心ですので、続きを期待して待っています
470 名前:名無し 投稿日:2016/08/30 03:09 ID:AUi3UI7q
続き待ってます!
471 名前:名無し 投稿日:2016/09/16 11:35 ID:OpbdsVEC
そっか。いつの間に更新あったのか
472 名前:名無し 投稿日:2016/09/21 19:36 ID:K3A7o59d
続き待ってるよ~
473 名前:名無し 投稿日:2016/10/13 10:17 ID:dnTPLNAa
支援
474 名前:名無し 投稿日:2016/11/22 03:45 ID:sqvS2gn3
支援
475 名前:名無し 投稿日:2016/12/04 06:06 ID:OLuxUWiY
楽しみにしてます
476 名前:名無し 投稿日:2017/01/01 18:54 ID:49hXLzgZ
続きあく
477 名前:名無し 投稿日:2017/01/08 01:11 ID:6V0wMXYG
支援
478 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 11:15 ID:TTHjIiiI
完結は永遠の名作
未完は永遠の駄作
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