サトシ「さあ……いこうぜ相棒」

1 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:44 ID:p3kkTtj5

鳴り止まぬ歓声……その中央には、古来からその姿を変えていない、完成された戦場がそこにはあった。



『さあ!始まりました、最高峰のポケモンチャンピオンを決める祭典!ワールド・ポケモン・グランプリ!この強者達が送る最高の協奏曲も、既に終盤に差し掛かってきました!



熱気の収まる様子を見せない、ポケモンリーグの最高峰、WPG。


司会者が叫び声を上げるかの様にマイクを握り、五万人以上はいるであろう観客達に言葉を投げかける。


『そして!ここで争うのは両者、最後の戦いの締めるに相応しい、この二人だ!!!


ド派手な炎の演出がなされて、戦場の対となるゲートに二人の男が姿を現した。


一人は帽子を深く被り、表情が伺えない、黒色のコートに身を包んだ男だ。


決して寒くはない、この気候の中でのかなりの厚着。


会場にいる観客達もこの男から感じる只ならぬオーラに飲み込まれそうになっていた。


もう一人は対照的に帽子は浅く、青色の明るい服装で、曇りのない真っ直ぐな瞳で会場全体を見渡している青年だった。


肩には愛らしい電気ポケモンのピカチュウを乗せて、屈託の無い笑顔で微笑んでいる。


そのピカチュウの背中には、イナズマの様な大きな傷跡があった。


「なあピカチュウ…
2 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:46 ID:p3kkTtj5
ピカチュウを肩に乗せている青年が、小さくつぶやく様に言った。


歓声で掻き消されそうな声を、彼の小さい相棒は聞き逃さなかった。


「ピカ?


「やっとここまで辿り着いたのか……って感じだな。もっと感動するもんかと思ったけど……案外感慨深くはないもんだぜ


「ピーカ!


そんなもんだと言いたげにピカチュウは青年の頭にポンと手を乗せる。



青年は少しばかり苦笑しながら、向かい側にいる対戦者の顔を見た。



表情の窺い知れない、未知の相手だ。
青年はそっとピカチュウを撫でた。



「……さあ行こうぜ、相棒。



『遂に!遂に我々が待ち望んでいたバトルが始まります!このバトルは、史上初となるポケモンマスターの称号を与えられる、明確な証となります!


その様子は、今まで彼を支えてくれた者、敵だった者、ライバルだった者達が、全世界の同時中継によるテレビやラジオで、詳細を余す事なく伝えられた。


やがてバトルが始まり、伝説とまでになった攻防戦を出し惜しみ無く両者繰り広げる。




やがてそれも終わり、あまりの壮絶さに観客達は圧倒され、沈黙が漂う中……今大会の優勝者はサトシという少年で幕を下ろした。
3 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:53 ID:p3kkTtj5
カントー地方、ラティアス空港126。



観光客や、帰省で人がごった返す中、人に揉まれながらゲッソリとした表情を浮かべる可憐な少女と、水ポケモンのポッチャマがトボトボと雑多なエントランスを歩いていた。



「な、長かった……カントーは人が多いのね……



「ポ、ポチャア……



可憐な少女の名前はヒカリ。



彼女はシンオウ地方をサトシと一緒に旅した仲間だった。


シンオウ地方在住の彼女が今回、カントー地方に居る訳は。


あれから六年の月日が流れ、最高峰のポケモンリーグを優勝したサトシがカントーのマサラタウンに帰省中だからである。



同じくカントーに在住の旅仲間、タケシから連絡があり、彼の激励パーティーを開くので来ないかと連絡があったのだ。



チャンピオンとして名実共にポケモンマスターとしての称号を手に入れたサトシには、ポケモンリーグ運営から一年間の休養が与えられるらしい。


警察組織と連携して、休養中の彼にポケモン勝負を挑むものは処罰の対象になるというのだから驚きだ。


一個人にそこまでの配慮が成されるのは異例中の異例である。


「高みに登っちゃったって事かあ……なんか、ちょっとサトシが遠い人になっちゃった気がして逢いづらいなあ……



「ポチャア!ポチャ、ポチャア!



寂しそうに呟いたヒカリに、ポッチャマが叱責する様に口を開く。




恐らく、お前がそんなんでどうする!と言っているのだろう。



付き合いの長い彼女にはポッチャマの言っている事がニュアンスで分かってしまう。



ヒカリは苦笑しながら、



「そうよね!浸ってるなんて私らしくないわ!何時もの大丈夫、大丈夫で行きましょう!そんでハイタッチよ!



「ポチャア!
4 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:07 ID:p3kkTtj5

頷きあった二人は空港を後にし、マサラタウン行きのバスに乗って出発した。




流れていく外の景色をみながら、ヒカリは道中を歩くポケモントレーナーとおぼしき子供達を見て顔を綻ばせる。




「見て見て、ポッチャマ。トレーナーよ、サトシ達と旅に出たのが懐かしいね。



「ポチャア……



ポッチャマは昔を思い出す様に腕を組んでつぶらな瞳を瞑る。




その様子にヒカリはクスクス笑いながら、彼女も目を瞑って昔を思い出してみた。




ヒカリは自分達もトレーナーで旅をした時は、必要な時以外、徒歩で移動したもんだ、と振り返る。




トレーナーは基本、交通機関は使わない様にするのが常識だ。




森や山を越える時、道中で新たなポケモンに出会えるかもしれないし、バトルを挑まれたり、挑んだりして力量も磨ける。




森や山で野宿したりして、心身ともに体を鍛えるのだ。




ヒカリの中ではその時の事を鮮明に思い出せる。
嫌な事も沢山あったけど、楽しい事はもっと沢山あった。




まるでダイヤモンドやパールの様に、大切な思い出として心の中に残っている。




アレもコレもみんな、サトシやタケシ、ポケモン達のお陰だ。




彼らのおかげで今の私があるのだと、ヒカリは胸を熱くする。




「ポチャ?




ポッチャマを強く抱き締め、かつての旅の仲間達と早く逢いたい……。





ヒカリがそう思いを馳せていると……その思いを踏みにじるかの様に、期せずしてバスが勢いよく停車した。




「きゃ!




「ポチャア!
5 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:12 ID:p3kkTtj5
あまりの勢いの停車に、ヒカリは前の座席に頭をぶつけそうになったが、ポッチャマが寸前で自ら前に出て、クッション代わりとなった。


「ポ……ポチャ……


「きゃあ!ポッチャマ大丈夫?


ポッチャマは顔を赤くしながら、フラフラと立ち上がり、


「ポチャア!ポチャ、ポチャ、ポチャア!


涙目で運転席に向かって抗議した。


「も、申し訳ありませんお客様!前にポケモンの群れが出てきて……



運転手がマイクを使って、車内にアナウンスする。

外を見ると、確かに何かのポケモンが砂埃を上げながら走り去っていた。
6 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:18 ID:p3kkTtj5

「ちょっと!おばあちゃんが今ので頭を打って動かないの!


車内で悲痛な叫び声が上がった。


ヒカリは振り返ると、確かに後ろの座席でピクリともしないおばあさんが床に横たわっている。


それを確認した運転手は慌てて席に戻り、再びマイクを握ってアナウンスをした。



「すみません、お客様!緊急事態につき、先程出発した街へと引き帰らせて頂きます。何卒ご迷惑ご容赦下さい!



運転手はそう言ってバスをUターンさせ、元来た道を引き返す。



ヒカリは席を立ち上がり、床に横たわるおばあさんの元へと近寄ろうとして……


「何よ、アンタ!近寄らないでよ!


「きゃ!


横にいた女の子に突き飛ばされた。
ヒカリは頭を打たない様に、バスのポールに捕まり、態勢を立て直す。


「ちょっと、いきなり何すんのよ!


「ポチャア、ポチャア!


ヒカリとポッチャマは非難の声を女の子に投げかけると、女の子は引かずに鋭い目でヒカリを睨みつけた。


「医者でもない癖におばあちゃんに近寄らないでよ!下手にいじられたらこっちが困るの!


「医者よ!なんなら証拠見せたげる!


ヒカリはそう言うと、バッグから医者の証明書カードを女の子に見せつけた。


ヒカリは数年前に短期スクールを出て、医者の資格を取っていた。


まだ新人研修者扱いだが、それなりの知識はある。


「私が診るから、早く退いて!


ヒカリは鬼気迫る顔で女の子に迫ると、バツが悪そうにおばあさんの横をどいた。


ヒカリは跪いておばあさんの脈拍を見てみる。


……異常は見当たらない、次は突っ伏している状態の顔を少し持ち上げ、外傷を見てみた。


本来なら頭を打った場合、動かさない方が得策だ。


しかし、救急隊が到着した時、少しでも症状を伝える必要がある。


見てみると、軽いコブはあったが、脳内出血を起こしている風には見当たらなかった。


「脳しんとうの様ね……緊急性は無いけど、一応は病院で見てもらった方がいいわ。


ヒカリはうつ伏せのおばあさんを仰向けにして、頭の下に自分のバッグの中にある、小さいマットを敷いた。


と、その時。


再びバスが急停車して大きく揺れる。


「きゃ!


「ポチャア!


頭を打たない様に近くの座席に掴まりながら、ヒカリは今度は何だと運転席を見る。



「く、クソ!またポケモンが前に!


見ると、今度はポケモンがバスの前に出て、バリアの様な技で車体をせき止めていた。
7 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 13:44 ID:z0btr4Tp

空間が大きく揺らめいて、存在を視認出来ないほどの強力なバリアだ。


並々ならぬオーラとパワーをヒカリは感じた。


「ポチャア!ポチャア!


ポッチャマに声をかけられ、ヒカリはハッと我にかえる。


ポッチャマは床に横たわるおばあさんを指差していた。このままじゃあ早く病院に行けないって事だろう。


ヒカリは意を決して運転席へと歩みを進めた。


「運転手さん!バスの扉を開けて!


「お、お客様!?今外に出るなんて無茶ですよ!


「大丈夫!私こう見えてもトレーナーだったんだから!ポッチャマと私であのポケモンを何とか引き付けるから貴方は早く町に向かって!


「で、でも……


なおも食い下がる運転手に、ヒカリは胸ぐらを掴んで叫ぶ。


「良いからお願い!私に任せて!


運転手はコクリと頷いて外へと出るドアのボタンを押した。


ピーッと音がして、扉が開く。


ヒカリは幾つかの小銭を料金入れに放り投げ、勢いよく外に出た。
8 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 00:08 ID:bP7hQiuw
支援
9 名前:ジョー 投稿日:2017/01/10 00:33 ID:NALpbdma
ポケモンSS描いてるジョーと言います

主さんの作品面白いですね。支援させてください
10 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:10 ID:YZUxHW7I

「ッ!このポケモンは……!?



それは真っ赤な瞳をした、ルカリオだった。
片手からバリアーの様な技を発生させ、バスをせき止めていた。



ルカリオは落ち着いた様子で、ヒカリとポッチャマを見つめている。



「ルカリオ!貴方何でこんな事を!怪我人がいるの!早く退いてよ!


「……



返ってきたのは返事では無く、強烈な悪の波動だった。



ポッチャマはヒカリを蹴飛ばして、悪の波動の軌道上から逸らさせた。



そして自らは蹴飛ばした反動でくるくると回転しながら技を避ける。



トライポカロンで鍛えたポッチャマの身のこなしは、既に完成されたレベルだった。



後ろからは悪の波動が炸裂し、岩の破片がパラパラと降ってくる。


「ポッチャマ!冷凍ビーム!


「ポッチャア!


そして、その動きをある程度予測していたヒカリが尻餅をついた状態で指示を出す。



ポッチャマはすかさず、ルカリオへと向けて冷凍ビームを繰り出した。



「!?


ルカリオは驚きながらも、大きくジャンプをしてそれを避けた。



せき止めてられていたバスが、動き出す。


ポッチャマの冷凍ビームが少しばかりバスの車体にかかったが、大きな問題は無かった。



運転手はヒカリ達に大きく頭を下げながら、猛烈な勢いで町へと向かって行く。



ルカリオはそうはさせまいと思ったのか、空中でまた悪の波動を作り出し、バスに向かって撃ち込んだ。



それをポッチャマが冷凍ビームで食い止める。
ルカリオはそれを受け、今度はヒカリ達に敵意の視線を向けた。



完全にターゲットが切り替わった様だ。
11 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:13 ID:YZUxHW7I

大きく唸り声を上げながら地面に着地し、猛烈なスピードでこちらに向かってきた。



「ハハッ……ちょっと後悔。ポッチャマ!地面にバブル光線!



「ポッチャア!



ポッチャマがバブル光線を地面に放つと同時に、砂埃がもうもうと上がり、その場の視界がゼロになる。



ヒカリは立ち上がり、ポッチャマと一緒に近くの森へと駆け出した。



「グルァァアアア!!!



「る、ルカリオってあんな鳴き声だっけ!?



「ポ、ポッチャア!


違う気がする、とポッチャマは首を振りながら猛然と走る。



ヒカリもまた、息を切らしながら猛然と走りながら、新入した森の地形を見ていた。


「クッソォ……何でこんな日に限ってこんな目にあうかな!トラブルメーカーのサトシ達と別れて平穏な日々を過ごしていたのに!サトシの故郷に近づいたからかな!?


「ポチャ、ポチャア!


後ろから幾つもの悪の波動が飛んでくる。



近くの木々に命中し、とてつもない炸裂音が響き渡る。



木々の破片が飛び散り、それがヒカリの脇腹に一つ突き刺さった。



「カハッ……


「ポチャ!?


ヒカリはその場に倒れこむ。


ポッチャマが慌ててそれを受け止めた。
12 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:15 ID:YZUxHW7I

後ろを見てみると、ルカリオがゆっくりとした歩みでこちらに近づいて来ていた。



心なしかその口元は笑って見える。



ルカリオは両の手から、轟々と燃える炎を出した。


「ウッソォ……あんな技ルカリオって使えたっけ?……ポッチャマ、私の事は良いから早く逃げてって……逃げる訳ないか、貴方の事だから。



「ポチャポチャ!!



当然だ、とでも言いたげにポッチャマは涙目で胸を張る。



ヒカリはこんな状況でありながら、クスクスと笑みをこぼしながら、小さな相棒を抱きしめた。



「じゃあ……アイツを倒して、一緒にサトシ達に会いに行こっか?



「ポチャポチャ!



望みはハッキリ言って薄い、だが、賭けるしか無かった。



ヒカリはポッチャマを放し、ルカリオと対峙しようとした時、ルカリオが一瞬ブレ、そして姿を消した。



「エッ?……



数瞬の時が流れ、突然ルカリオが目の前に現れる。



まるでエスパータイプのテレポートの様だった。
ルカリオはポッチャマを蹴り飛ばし、遠くへと吹っ飛ばす。



「ポチャア!!



「ポッチャマ!



ヒカリが叫ぶと同時に、ルカリオはヒカリに対し、拳を上げていた。



拳を天高く上げ、作り出しているのは悪の波動だ。



今まで見た事の無いくらい、大きい悪の波動だった。



「あーあ……サトシ達にもう一度……会いたかったな……



ヒカリは涙を浮かべていた。



そして覚悟を決め、ゆっくりと目を瞑ろうとした時……聞き覚えのある声と、見覚えのある黄色い小さな背中が見えた。
13 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:18 ID:YZUxHW7I

「ピカチュウ、アイアンテール!



「ピッカァ!



ルカリオは横からの乱入者に思いっきり弾き飛ばされる。



凄まじい威力のアイアンテールだった。



あまりの衝撃に、ヒカリの体は少しばかり吹き飛んだ程だ。



「きゃあ!



「よっと、間に合ったみたいだな……



聞き覚えのある声。
吹き飛んだヒカリの体を優しく受け止めた人物から聞こえた。


ヒカリは自分でも無意識に涙を流しながら、その方向を向いた。



その人は……。



「サトシ!!



「ひ、ヒカリ。間に合って良かった。丁度、近くにいたら妙な爆発音が聞こえてさ……きてみたらこんな状況に……



サトシだった。



サトシは何故かヒカリの顔を見て赤くなりながら、自分の現れた経緯を説明する。



そして、サトシはヒカリをお姫様抱っこすると、妙に息を荒くしながら、ピカチュウに指示を出した。



「ピカチュウ、ルカリオがまた起き上がるぞ。適当に暫く動けなくしてやれ。



「ピッカァ



ピカチュウは倒れているルカリオに近寄ると、今度はエレキボールを作り出し、ルカリオの顔面に叩きつける。



もうそれは、爆発だった。
こんな技は……威力は見たことが無い、それ程の迫力だった。


「あ、あれがポケモンマスターのピカチュウ……



思わず呟くと、サトシは照れた様に笑いながら、静かに頷いた。


「ああ……最強で、最高の相棒さ。



爆煙が晴れ、ピカチュウの後ろ姿が見えた。



もはや世界中で知らないものはいない、背中に大きなキズのトレードマークを背負った最強のピカチュウ。



畏怖の象徴とまで言われたその背中は、とてつもなく、頼りに見えた。
14 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:28 ID:YZUxHW7I
支援ありがとうございます。作者です。実を言うとポケモンあまり詳しく無くて、最近アニメにどハマりして書き始めた感じです。なので自分の想像で書いてしまう場合が多々あるかもしれません。何卒ご容赦ください。
15 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 22:52 ID:x992BiqI
ゴォォォッと未だに爆煙が舞う森の中、ヒカリとポッチャマは無事サトシに救出され、近くの川のほとりで治療を受ける事となった。



先ほどのルカリオはサトシがモンスターボールで捕まえ、現在は彼のバックの中で眠っている。



「いてて……



「む、無茶しやがって……ほ、ほら。傷はどうだ?


「それが……まだ脇腹に突き刺さったまんまで……結構木片が大きいから病院に着くまでこのままにしとくわ……



「見してくれ



サトシは大きく息を吸い込むと、意を決した様にヒカリの服を捲って傷を見た。




ヒカリはお腹とはいえ、初めて男性に服を捲られた為に少しだけビクッとしたが、羞恥心より痛みが優っていた。




黙ってサトシに傷を見せる。




「やっぱりか……コリャまずいな



「えっ、どうしたの




気になってヒカリはサトシの顔を見ると、真剣な眼差しで傷跡を凝視していた。



暫くして目があうと、サトシは顔を赤くしながら顔を背ける。



ヒカリが首を傾げていると、サトシがハッと何かを思い出した様にヒカリに向き直った。



「な、なに?どうしたの?



「ヒカリ……あんま傷口痛くないだろ?



「ま、まあ……確かにこの傷ならもっと痛いかな〜と思ったけど、何でかそこまで痛くないわ。大丈夫よ。でも……どうして分かったの?



「ルカリオの毒技のせいだ、感覚が麻痺してるから今はあんま痛くないだろうけど……このままじゃあ毒が広がって死ぬぞ



「ええ!?毒技!?なんで……



ヒカリが驚くのも無理は無い、なんせ毒技など浴びた覚えは無いからだ。




しかも刺さっているのはルカリオの悪の波動で散った木片。確かな医療とポケモンの知識を持っているヒカリには到底信じられなかった。
なんせ……ルカリオには毒の特性は無い。



「サトシ……ルカリオには



「さっきのは遺伝子操作された改造ポケモンだ。最近ああいうのが多いんだよ



ヒカリは耳を疑った。
遺伝子操作?改造ポケモン?しかもそれが最近多いって?
ヒカリは困惑しながら口を開く。
16 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 23:05 ID:x992BiqI

「その……遺伝子操作って本当?だ、誰が何の為にそんな事を……


「それより今は治療だ。ヒカリ、ポケモンに乗ってマサラタウンまで行くぞ



困惑するヒカリを他所に、サトシはモンスターボールを取り出してポケモンを出した。
そのポケモンは大きな翼を持った鮮やかな橙色のリザードンだった。



「わあ……



思わずヒカリ感嘆の声をあげると、リザードンは誇らし気に背中を見せた。
乗れという事だろう。



ヒカリはサトシに抱えられて、リザードンの背に乗り、あっという間に空高く天空へと飛び上がった。
17 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 23:39 ID:x992BiqI

ここはマサラタウン。
人口も少なく、ポケモン研究の大権威のオオキド博士のいるオオキド研究所と、寂れた植物園くらいしか目新しいものは無い、静かな街だ。




その為か野生のポケモンも近辺に沢山垣間見え、のんびりとした空気感が漂っていた。




そこに、凶悪そうな古傷を沢山持つ、サトシとヒカリ、ピカチュウを乗せた(ポッチャマはヒカリのボールの中)リザードンがオオキド研究所のポケモン広場に降り立った。



サトシはリザードンをモンスターボールに戻し、ヒカリの手を取る。



「ヒカリ、少し持ち上げるよ……ハアハア



「サトシ?……どうでもいいけど何でさっきから鼻息が荒いの?




「えっえっ?……ご、ゴメン



ヒカリは赤面しながら謝るサトシを不思議に思いながら、言葉に甘えてサトシに身を預けた。
サトシはヒカリを軽々と持ち上げ、オオキド研究所の中に入っていく。




ヒカリは必死に鼻息を抑えて呼吸をするサトシを見ながら、背が伸びて、体もより一層逞しくなったサトシを頼もしく思っていた。


『……サトシ、何だか逞しくなっちゃって……





しばらく行くと、建物のキッチンの様な部屋に入った。
その部屋にはガッシリとした体型には不相応な、可愛らしいピンクのエプロンを着た男が鼻歌を歌いながら流し場で炊事をしていた。



周りにはその炊事を見届ける沢山のポケモン達の姿がある。



ヒカリにはその後ろ姿に、確かな見覚えがあった。




「よーし、みんな。もうすぐタケシ特製スペシャルポケモンフーズが出来上がるぞ!……はあ、たくっ、それにしてもサトシの奴、朝っぱらから外をほっつき歩いて……パーティーにちゃんと間に合う様に帰ってくるのか?




「聞こえてるぞタケシ。ちゃんとお客さんを連れて帰ってきたぞ!



ん?と振り向いた男は……ヒカリの思った通り、かつての旅仲間、タケシだった。
タケシはサトシを見ると、呆れた様な表情を浮かべて……




「あ!おい、サトシ。お前どこ行ってたんだよ?パーティーの主役がその辺ほっつき……って!その抱き抱えられているのはヒカリか!?その傷どうしたんだ!
18 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 00:09 ID:sannKG9M
タケシはヒカリを見るなり、慌ててこちらに走り寄ってきた。


ヒカリ「タケシ……久しぶり


タケシ「久しぶりじゃないだろうヒカリ!……ああ、ひどい傷だ……サトシ!何があったんだ!?



サトシ「散歩してたらポケモンに襲われているヒカリを見つけたんだ、ヒカリは今そのポケモンのせいで毒状態になってる……タケシ、悪いけど研究所の倉庫から薬を持ってきてくれないか?




タケシ「何!?分かった、すぐ、持ってくる!



タケシはそういうと、キッチンを風の様に飛び出していった。



サトシ「さてと……ヒカリ、悪い



ヒカリ「えっ!?何?



サトシ「ちょっと痛むぞ



そういうとサトシは、ヒカリの脇腹に刺さった木片を勢いよく引き抜いた。




ヒカリ「っ!!?




あまりの痛みにヒカリは意識が遠くなり、すぐ様意識を失った。
19 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 01:15 ID:sannKG9M
微睡みの中、ヒカリは夢を見ていた。
まだかなり幼かった、子供の頃の夢だ。



近所のスーパーで母親に連れられ、ヒカリは沢山の商品棚にキラキラとつぶらな瞳に星を浮かべて視線をめぐらしていた。



ヒカリは自分の好物を見つけ、母親の持っているカゴにお菓子を放り込もうとして怒られる。
それを数回繰り返して、見兼ねた母親にカゴの上に乗せられ、監視下に置かれた。



そんな夢。


今覚えば恥ずかしくも、思い出せば微笑んでしまう様なそんなエピソード。
そんな中で、ヒカリは誰かからの呼びかけで目が覚めた。



………………………………

……………


?「ヒカリ……ヒカリ……大丈夫?


ヒカリは意識が完全に覚醒し、自分に声をかけてきた人物へと視線を送る。
それはベリーショートの髪型をした、背の低い、とても可愛らしい同年代くらいの女の子だった。



ヒカリ「……え?あなた……だれ?



ヒカリの質問に女の子は目をパチクリさせ、ヒカリにおかしなモノを見る目を向けた。



?「何行ってんのさ?……ボクは……ってあれ?……またボクはいつの間にこの姿に……ま、いっか



女の子はピョコッと立ち上がり、ヒカリに背を向けて歩き始める。



ヒカリ「ちょっと!待ってよ、あなた一体……て、え?


呼び止めたヒカリは、女の子がスッポンポンの全裸な事に気がついた。
そして背中には、目立つ大きな傷が見えた。



ヒカリ「……



言葉を失っているヒカリを他所に、女の子はガチャリと音を立てて、部屋から出て行った。



……暫く放心してから、ヒカリは改めて自分が寝ていた部屋を見回してみる。



ポケモンのポスターやら、モンスターボールのレプリカやら、トロフィーなんかが飾ってある如何にも男の子らしい部屋だった。
ヒカリはその部屋のベッドで寝ていたのだ。



イマイチ状況が掴めずにヒカリは戸惑っていると、ガチャリと音を立てて部屋の扉が開いた。



「あら、起きてたの?



ドアノブに手をかけ、心配そうに声をかける女の子だった。




彼女はヒカリを見つめたままゆっくりと歩み寄ってきて、ヒカリの寝ていたベッドに腰をかけて座った。
20 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 22:32 ID:KAClwio9
ユーチューブにopとed付きでアップしてみました。宜しければご覧下さい。
21 名前:名無し 投稿日:2017/01/13 00:02 ID:lzPYphSM
支援
22 名前:名無し 投稿日:2017/01/14 14:13 ID:lXBbwuZm
支援です
23 名前:僕◆K17zrcUAbw 投稿日:2017/01/18 15:52 ID:VwLtWKE1
支援
24 名前:名無し 投稿日:2017/01/19 01:04 ID:xJIuRuZw
支援
25 名前:名無し 投稿日:2017/01/20 00:34 ID:n1vvs5sG
ヒカリ「貴方は……誰?




少女は短めな髪を横に束ねただけのシンプルな髪型をしていた。
色は鮮やかな薄オレンジ色。

暗い色の髪型を持つヒカリからしたら、少し羨ましかった。




少女はヒカリを見つめたまま、にっこりと微笑んで口を開く。



カスミ「カスミよ。ハナダジムのジムリーダーやってんの。サトシとタケシとは昔の旅仲間って感じかな。




カスミ……聞いた事ある、と。
ヒカリは脳の淵に眠る、深層の記憶を呼び起こしてみる。




やがてヒカリは、夜の森で野宿をするときに、火を囲んで月明かりに照らされながらサトシとタケシから聞かされた、かつての旅仲間についてのエピソードを思い出した。




自称、おてんば人魚のカスミ。
少し強気な性格で、タケシの暴走を止める当時はいなかったグレッグルの役割を担当していたのだとか。



ヒカリ「カスミさん……あ!昔タケシから聞いた事あるわ!一番最初の旅仲間だって。





カスミ「まあ、そうなるのかな?久しぶりに会ってみたけど、サトシもタケシも随分変わってたわ。特にサトシはポケモンの事しか脳にないバトルマシーンみたいな奴だったけど……





ヒカリ「ああ、確かに!サトシってば旅してる時も休んでる時もポケモン、ポケモン言ってソワソワしてた!





カスミ「だ・け・ど……今はアイツも思春期真っ盛りの飢えたグラードン……いや、ヒコザルね。ヒカリさんも気をつけてね、貴方とっても可愛いから油断していると襲われちゃうわよ?





カスミはやれやれといった感じで肩をすくめながら言った。
対して、ヒカリは不思議そうに首をひねる。





ヒカリ「思春期……ヒコザル?……サトシが私を襲う?どういう事ですか、カスミさん?




カスミはずるっと体勢をオーバーに崩しながら、ヒカリを見つめる。




カスミ「まさか……気づいてないの?貴方、サトシに負けず劣らずの鈍感系ね?




ヒカリ「えっ?……どゆこと?
26 名前:名無し 投稿日:2017/01/20 01:30 ID:96xUC1X7
支援
27 名前:名無し 投稿日:2017/01/20 07:48 ID:IrCcCWzO


カスミは半ば呆れを含んだ溜息を漏らした。




カスミ「いい?サトシはね、今思春期真っ盛りなの。思春期にはね……男は女の子を意識してしまってしょうがなくなるのよ、それで毎日エッチな事しか考えなくなるの。




ヒカリ「ええっ!!あのサトシが!?……毎日エッチな事ばかり考えているの?



ヒカリはにわかに信じられなかった。
あのポケモンバトルばかりに傾倒していた、バトルマシーンのサトシが女の子を意識してしょうがなくなっているなんて。

しかも、今では日がなエッチな事を考えているのだとカスミは言うのだ。




ヒカリ「うーん……でもさすがにそれはないんじゃないの?



カスミ「タケシを思い出してみてご覧なさいな。アイツはいつも綺麗なおねぇさんを見ると、走り寄って愛の告白してたでしょ?アイツは当時十五歳、サトシも今は十五歳。年齢的に、タケシと同様の思春期を発動させてもおかしくないと思わない?男は十三歳から十八歳までにかけて思春期を爆発させて変態になるって言われているわ。





ヒカリ「そんなに長い期間!?変態に!?……でもやっぱりサトシはその……『思春期』なんかじゃないと思うなあ……だって今日も再開した時、目も合わしてくれなかったし。私、妙に避けられてるような感じがしたんだけど?タケシと同じとは思えないな。




カスミは目をパチクリさせた後……はあ、と溜息を漏らした。
そして、今度はヒカリに向け、諭すような口調で口を開く。
28 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 13:47 ID:0qXxjUJX

カスミ「いい、ヒカリ?男の思春期には沢山の種類があるの。一つはタケシみたいな、ガッツリ女の子に擦り寄るタイプ。そして、もう一つは奥手で女の子と会話する事が出来なくなってしまうムッツリスケベ、タイプね。




ヒカリ「む、ムッツリ?




カスミ「そう。そりゃもうムッツリスケベタイプは厄介よ、ちょっと話しかけても恥ずかしいのか返事してくれないし、挙動不振になりがちなの。どう?サトシに当てはまるでしょ?





ヒカリ「ま、まあ……確かに。





半ば強引な説だと思ったが、顔を赤らめながら逸らすサトシを思い出し、ヒカリはなんだか納得した。
29 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 20:40 ID:biwggiHC
それと同時に、ヒカリは自分がルカリオに襲われて深手を負ったのを思い出す。
ーーーーそうだ、私は脇腹に大きな木片が刺さっていたのだ。
あの後どうなったのだろうか?





ヒカリは恐る恐る脇腹を見てみるが……無かった。
無かったのだ。
ヒカリは混乱して頭を抱えた。
無い、無いのだ……あの深手を負ったハズの傷が。





カスミ「えっ?……ど、どうしたのよー?




ヒカリ「カスミさん……私、ここに運ばれてくるまでの記憶がないんですけど……何があったか聞いてますか?





カスミ「そ、そりゃ気絶してたから記憶がないのも当然よ。貴方はバスの旧ブレーキで頭を打って気を失っていたの。たまたま通りかかったタケシとサトシがオオキド研究所で脳に影響が無いか見たんだけど……何も異常は無かったみたい。それにしてもこんな日に限ってこんな事が起こるなんてね。




ヒカリ「ち、違う……





カスミ「へっ?





ヒカリ「る、ルカリオは?脇腹の傷は?私一体どうしちゃったの!?なんで……あれ全部夢だったって言うの?






カスミ「ちょっ、ちょっと落ちついてよヒカリ……。大丈夫?頭を強く打ったから混乱しているだけよ。


30 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 22:37 ID:0qXxjUJX
ヒカリ「私……ちょっとサトシに聞いてくる!



カスミ「ちょっと!ヒカリ!?



ヒカリはそう言うとベッドから飛び起きて、カスミの制止を振り切りながら部屋の外に出た。




…………………………………

…………………



タケシ「まさかお前がこんなに女に興味を持つなんてな……俺は嬉しいぞサトシ!



現在、サトシの家の庭では香ばしい炭特有の匂いが充満していた。

サトシはバーベキューコンロの下を団扇で扇ぎながら、火力調整をしている。
タケシは上から炭を入れながら、大げさに涙を流していた。



今庭にいるのはこの二人だけだ。
パーティーが始まる時間は午後6時、現在は3時半。
パーティー開始までだいぶ余裕があるが、コンロを何台も設置している為、火起こしにかなりの時間を要するのだ。



サトシ「な、泣く事ないだろうタケシ。そりゃ俺も年頃の健康な男子だ。そりゃ……女の子とチョメチョメしたいと思わないハズがないだろう



タケシ「そうだろ!そうだろうなあ!……でもなあ……お前絶望的なまでに奥手になってるよな?バトルマシーンだった頃はよく女の子ともケンカしてたのにな。なんで今はそんなに女耐性なくなったんだ?



サトシ「う、うるさいな!誰がバトルマシーンだ!山に篭ったりしてたらいつの間にかこうなっちまってたんだよ。今じゃあ女の子と視線も合わせるだけで赤面しちゃうんだ……


タケシ「……重症だな


タケシは袖を捲り上げながらお試しで肉を網に乗せてみる。
ジュージューと音を立てながら、香ばしい匂いを漂わせて、近くで遊んでいたポケモン達までもがよだれを垂らしていた。

フードカンパニーが作ったジャガイモとコンニャクで合成された人工の肉だ。
古代人はポケモンの肉を食べて力を強めたなんて話もあるが、今そんな事をしたら死刑では済まされない。この世界ではポケモンを殺す事は殺人よりも罪が重いのだ。




ご家庭用の人工肉とは違い、かなりお高めの肉だが、ポケモンマスターとなったサトシには莫大な賞金が手に入っていた。
サトシが庭に噴水まで作ろうとしたくらいだからこれ位の出費は痛くも痒くも無い。




二人の作業しながらの談笑は続く。
タケシはサトシと男特有の会話ができるのが嬉しくて堪らないらしい。
ニコニコしながら話を続けていた。




タケシ「よーし!そんじゃあ経験豊富な俺が人肌脱いでやるか!サトシ、お前に女のなんたるかを教えてやる!



サトシ「ま、まじで!?



タケシ「ああ……ていうかお前、何たってポケモンマスターだし、ルックスも悪くないから世界中に女の子のファンがいるのを知らないのか?俺の所にも紹介しろって何人も来たしな。お前に必要なのは今は相手じゃない、女の子に対しての耐性だ!



サトシ「ええ、まじで!しかも具体的!さすがタケシ!……でも耐性って言ってもな……どうすりゃいいんだ?
31 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 23:23 ID:xkizqGTQ
うえーい!
いい感じ メガ支援‼
32 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 23:29 ID:0qXxjUJX
タケシ「そうだな、まずはーーーー



ヒカリ「サトシ!!



サトシ「ほえっ?



タケシとサトシは揃って声のした方向に顔を向ける。そこには裸足のまま、寝かせていたサトシの部屋から庭に出てきたヒカリの姿があった。



サトシ「ひ、ヒカリ!?



タケシ「おいおい……どうしたんだよヒカリ?いきなり動くと頭に響くぞ




ヒカリ「頭じゃ無い!!



サトシとタケシはヒカリの大きな声にビクッと身を震わせる。
そして、二人で顔を見合わせた。



タケシ「お前……なんかヒカリを怒らすような事をやったのか?




サトシ「そんな筈はないだろう?俺たち二人でバス事故から気絶しているヒカリを連れ出したから、怒らすどころか、一度も会話してないじゃないか。




タケシ「えっ?……バス事故?……そういやそんな気も……ああ思い出した。そうだったっけな。そうだよな。



サトシ「ひ、ヒカリ。どうしたんだよ?裸足で出てきて。



ヒカリ「サトシ、あの遺伝子操作されたルカリオは!?私の傷はなんで治っているの?



ヒカリが尋ねると、サトシは一瞬顔を強張らせ、直ぐに何時もの笑みに戻った。



サトシ「ははっどうしたんだよヒカリ、ルカリオってなんだよ。お前は多分気を失っている間に夢でも見たんじゃないのか?



ヒカリ「ゆ、夢?えっ……あれ?……どっから……夢だったの?


あんなにリアルで痛い思いをしたのに……全てが夢だったのだろうか?
確かにある筈だった傷は綺麗サッパリ無くなっている。ヒカリは混乱しながらサトシの至近距離に走り寄った。



ヒカリ「襲ってきたルカリオの事本当に覚えてないの!?サトシとピカチュウが助けてくれたじゃない



サトシ「ひ、ヒカリ……ち、近いよ。落ちつけって。だから俺はルカリオなんか知らないよ



33 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 23:33 ID:xkizqGTQ
31からの引き続き支援
34 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 00:13 ID:cfkYtvW2
ヒカリ「……本当に夢だったの?


サトシは赤面しながら後ずさって、ヒカリから離れた。大袈裟に呼吸を荒くし、ヒカリのまっすぐな視線から目をそらす。



サトシ「そ、そうだよ……なんならポッチャマとピカチュウにも聞いてみようか?おーいポッチャマ、ピカチュウ!!ちょっと来てくれ!!



ピカチュウ「ピカ?



ポッチャマ「ポチャ?



遠くの方で遊んでいたポッチャマとピカチュウがドドドドッと地響きを鳴らしながら走り寄ってきた。



ポッチャマはヒカリを見つけ、元気よく彼女の胸に飛び込んできた。



ポッチャマ「ポチャア!!


ヒカリ「ポッチャマ!……ポッチャマ、ルカリオの事覚えてない?毒技とか手から炎を出すルカリオなんだけど……



ポッチャマ「ポチャア?



お前は何言ってんだ、という様な瞳でポッチャマはヒカリを見つめる。
ヒカリはそれを受け、周りにいたサトシ、タケシ、いつの間にか庭に姿を現していたカスミの反応を伺う。


カスミ「毒技を使うルカリオ?


タケシ「手から炎?


ピカチュウ「ぴーか?


サトシ「ぶはっ


サトシが吹き出したのにつられ、タケシとカスミも豪快に笑い出した。
ポッチャマまでもが地面をバンバン叩いて爆笑している。
それを受け、ヒカリはだんだん頰が赤くなっていくのが自分でも分かった。



ヒカリ「ええー!全部本当に夢だったのー!?


カスミ「はっはっやばい、ヒカリ面白すぎ!初めて会った気がしないわ!ていうか寝ぼけ過ぎ!



タケシ「あっはっは!やっぱりお前は何かとやらかしてくれるよな?最高だ!最高のキャラだぞ!



ヒカリ「も、もう〜!やめてよ、恥ずかしいよ!



「おーい、みんな!!


ひとしきりみんなで笑い会っていると、遠くからサトシ達に呼びかける声が聞こえた。ド派手なロードバイクに乗った男女だ。
背の高い、女の方が運転していた。

彼らはサトシ達の家の前に止まると、赤と黒のフルフェイスヘルメットを脱ぐ。



ハルカ「ちょっと早く来すぎたかも



マサト「そうだけど世界初のポケモンマスターに会えるんだから待ちきれなくてね!久しぶり、サトシ、タケシ!



タケシ「おおーマサトか!デカくなったなあ……なあサトシ……ってあれ?



ハルカ「サトシはあそこにいるけど……なんで木陰からこちらを覗きこんでるの?



見ると、サトシは庭にある木陰からこちらをもじもじチラチラと盗み見ていた。
タケシはそれを見てため息を吐く。



タケシ「はあ……訳あって今サトシは人見知りなんだ。俺たち男衆はパーティーの準備で火起こししてるからカスミ達は暫くの間サトシの家で休んでてくれ。ママさんも勝手に入って勝手に使ってくれって言ってたから。



ヒカリ「えっ?手伝うよ、料理の下ごしらえとかあるでしょ?



ハルカ「私も手伝うよ



タケシ「そこらへんは抜かりない、すでに前日から仕込んであるからな!



タケシが胸を張って答えると、カスミがヒカリとハルカの背中を押しながらサトシの家へと誘導する。



カスミ「そうしましょ、料理なんて男の仕事なんだから!ハルカ、さっきヒカリがね、寝ぼけてーー



ヒカリ「もう〜!!その話は無し!



ハルカ「かなり気になるかも
35 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 00:56 ID:cfkYtvW2
マサト「ていうかサトシが人見知りって……本当なの!?タケシ、あのサトシだよ!?



タケシ「あの木陰からこちらを伺うサトシを見たらわかるだろう?おーい、サトシ!カスミ達は家に入ったぞ、そろそろ出てこいよ!




サトシは辺りを見回した後、ため息を吐きながら出てきた。



サトシ「ふう……やばかった。ハルカのやつ、無駄に色々成長してやがったな……



マサト「さ、サトシ……久しぶり。


マサトは恐る恐るといった感じでサトシに喋りかける。サトシはマサトを見るなり顔をパァと、輝かせて近寄ってきた。




サトシ「おお!マサト!ポケモントレーナーになったんだってな?どうだ、強くなったか?




それを受け、マサトはホッと胸をなでおろすのと同時に、タケシに近寄って耳打ちをした。



マサト「……タケシ、本当にサトシは人見知りなの?何時ものサトシに見えるんだけど……



タケシ「男相手は平気なんだけどな……女の子を相手にすると奥手になってしまう心の病だ



マサト「な、成る程……思春期というヤツか。あのサトシがまさか女の子に臆病になるなんてね。



タケシ「理解が早いな……さすが頭脳系だ。思春期は事あるごとに気を持ってしまう恐ろしい病だ。今のサトシならハルカに気を持ってくっつくかもしれんぞ?



マサト「別に全然構わない、むしろ最高だよ!姉ちゃんなんかにはサトシは勿体無いくらいだと思うけど、もしそうなったらサトシが僕のにいちゃんになる訳だよね?ポケモンマスターが僕の兄か〜これは色々自慢できる様になるね。



サトシ「な、なんだよ二人とも……コソコソ喋りやがって
36 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 11:34 ID:s3Q0hMYR
タケシ「お前の将来についてだ



マサト「そうだよ!



サトシ「なんだよ、俺の将来って……



タケシ「あ、談笑している間に炭の火が弱まってる!サトシ、マサト、ほらほら団扇だ。扇げ扇げ!



三人は慌てて団扇を持ってそれぞれ別々のバーベキューコンロの火力調整を行う。
三人は背を向けながら、談笑を再開した。



マサト「本当にサトシがポケモンマスターなんだよね?僕、未だに信じられないよ、世界一名誉で有名人が僕の目の前にいるなんてね。



タケシ「全くだ……長年一緒に旅した俺としても未だに信じられないな。あのガキでバトルマシーンだったサトシがな……



サトシ「お前ら褒めてるのか、けなしてるのかハッキリしてくれ!俺だって大変だったんだぞ?山に篭って2年ほど自給自足の生活してたりな……そりゃもう地獄だった。



タケシ「そうだ!お前二年も音信普通だったのは山に篭ってたからなのか!お前が連絡しなくなってから俺たちはどれだけ心配したと思ってるんだよ。何故かママさんだけは大丈夫でしょってケロッとしてたけどな。本当は心配で心配でたまらなかった筈だ。



サトシ「うっ……お説教は後にしてくれよ



マサト「ねえ、ねえサトシ。山に篭ってたって言ってたけど何でなの?修行なら街でトレーナーとバトルした方が強くなると思うんだけど。



サトシは困った様に頰をポリポリと掻いて、口を開く。
37 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 18:41 ID:s3Q0hMYR
33さん、支援ありがとうごさいます!励みになります。今日の夜中も時間が空いているので8時くらいから書き始めようと思います。
38 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 19:27 ID:dhdA2XEV
支援
39 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 19:54 ID:UtYXO1C2
サトシ「どこまで話たらいいのか……うーん。まあ、成り行きってやつだな。ロケット団の三人組が深く関係してるんだ。今日あいつらが来るから詳しい事は奴らも交えて皆んなに話すよ。



タケシ「おお、アイツらも来るのか。楽しみだな。



マサト「へっ?ろ、ロケット団?



マサトは和気あいあいと喋るサトシとタケシを他所に、体を硬直させ、フリーズする。
それをサトシとタケシはおかしな物を見る様な視線を送った。



タケシ「マサト、まさか覚えてないのか?あの喋るニャースと男女の二人組だ。あんなキャラの濃い奴らを忘れる訳ないよな?



サトシ「一々丁寧に自己紹介する笑えるやつらだよ、本当に覚えてないのか?




マサト「わ、忘れる訳ないだろ!僕が驚いたのは何で敵のロケット団がパーティーに来るんだよ!



マサトが地団駄を踏みながら訴えると、サトシとタケシはお互いに顔を見合わせる。



サトシ「あれ……言ってなかったっけ?変だな……アイツらも結構巷じゃ有名人な筈だろ?



タケシ「まだカントーではの話なんじゃないのか?違う地方には知名度が行き渡ってないのかもな。
40 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 20:14 ID:UtYXO1C2
マサト「もう何がなんだか……



マサトが混乱しているのを見て、サトシは慌てて説明を始めた。



サトシ「ロケット団の三人な、今は引退して飲食店を経営してんだよ。元々アイツら器用だから飯も美味いし店は綺麗で繁盛してさ。ホワイトホールって店なんだけど今やカントーに何店も店を構えるチェーン店にまで発展してんだよ。



タケシ「サトシが帰ってきてからカスミと三人で食いに行ったんだが……ありゃ俺も舌を巻くほど美味かったぞ。それに店員のニャースが喋りながら料理を運んで来るんだ。そりゃテレビにニュースで大騒ぎだったんだぞ?喋るニャース店員の店、ホワイトホールってな。



マサト「そ、そんな事が……



サトシ「そうだよ。アイツらとは成り行きで一緒に二年ほど山に篭ってたからさ、仲良くなってWPGに行くまで一緒にいたんだ。元々アイツら悪党の素質がなかったし、途中で組織を裏切っちまってロケット団はクビ。俺も関わったりして一悶着あったんだ。まあ……結構色々あったんだよ



タケシ「俺も最初聞いた時は驚いたが……店に行ったらサービスしてくれたしな。まあ、クーポンくれただけだけど。



サトシ「はっはっは!まあ、あの流れはタダにしてくれても良かったよな!セコイとこは本当に変わってなかったぜ。
41 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 20:57 ID:UtYXO1C2
マサトはそうやって談笑する二人の姿を見て、確かな年月の経過を感じていた。
二人とも、以前とは比べ物にならない位、落ちついている。



そしてマサト自身は知らない事を沢山経験し、それを話して笑いあっているのだ。
年齢の壁、経験の壁。
それをマサトは寂しくも思い、昔との確かな違いをを感じた。



あれから六年ーーーーあの時の旅の思い出はマサト自身にとって人生で一番楽しい時期だった。
マサトも仲間を集めて旅に出た事がある。



しかし、意見の食い違いなんかでバラバラになり、何度もマサトは一人の孤独を味わった。
自分にはポケモンがいるからと言い訳しながら一人を貫いた。



結果、マサトは強くなったが、後には何も残らなかった。
周りで喜んでくれる仲間、叱ってくれる仲間、祝ってくれる仲間がいなかったからだ。




そこでようやくマサトは気がついた。
あの時の仲間達は僕にとって一番の仲間だったんだと。
笑い合い、喧嘩したり、遊んだり。



そうした事ができる仲間は他にいない。
だけどサトシやタケシは違っただろう。
僕との旅の思い出より、もっと楽しいことや、苦しい事を違う仲間達と経験した筈だ。




マサトはその事を脳裏に浮かべて、ブンブンと必死に振り払った。

ーーーーよそう。今は今で精一杯楽しむのだ。



なんせ憧れのポケモンマスター、サトシが目の前にいるのだから。



マサト笑顔を作り、火力調整を終えて二人の会話に加わった。
42 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 21:27 ID:UtYXO1C2
なんじゃこりゃ
43 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 22:37 ID:s3Q0hMYR



………………………

………………

ここはトキワシティーのほぼ中央に位置する最近流行りの飲食店『ホワイトホール』
テレビに紹介された事もあり、連日大勢の客で賑わっていた。




その厨房にいるスタッフは皆んな鬼気迫る表情で料理を作り、大きなコック帽を被った主任に指示を受けていた。



コジロウ「三種盛りとお子様ランチ追加!客は待ってくれないぞ、皆んな気合い入れろ!



スタッフ「「「うす!!」」」



この店の料理長はコジロウだった。
元ロケット団で行き場を失った連中やアウトローを従い、この店の炊事を担っている。
コジロウは誇らしげにスタッフ達の奮闘ぶりを眺めていると、不意に後ろからスパンと頭を叩かれる。



後ろを振り向くと、私服に着替えてコジロウを睨みつける、ムサシとニャースの姿があった。


ムサシ「ちょっとコジロウ、時計見て見なさいよ


ニャース「今日が何の日か忘れたのかニャ?


コジロウ「んあ?……しまった!もうこんな時間か!
44 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 23:01 ID:UtYXO1C2

コジロウ「皆んなすまない!今日は俺達は先に上がるから、お前達任せたぞ!


スタッフ「俺達の事は心配しないで下さい!


スタッフ「いつも最後まで残って下さってるんだ、たまには羽を伸ばしてきて下さいよ、我らがボス!



コジロウ「お、お前ら……



コジロウがウルウルと感動していると、またもやムサシが後ろから頭を叩く。



ムサシ「いいからさっさと行くわよ!



ニャース「後はまかしたにゃ!


スタッフ「「「うす!!!」」」


ムサシとニャースはコジロウが着替えるのを待ってから、店の横に停めてある、ホワイトホールの名前が入った白いワンボックスカーに乗り込んだ。
運転はいつもコジロウの担当だ。
ニャースは後部座席、ムサシは助手席に座った。



ムサシ「今何時だっけ?



ニャース「4時半ニャ、120キロで飛ばせばギリギリ間に合う距離だニャ



ムサシ「まぁったく……コジロウのせいだかんね!久々にジャリジャリ軍団に会えるってのに、遅刻したら面目もクソもないでしょ。



コジロウ「わ、わかってるよ。でも安全運転だ。ここで捕まったら折角の苦労がパァーーー、



ムサシ「!?ッコジロウ、ブレーキ!!



コジロウ「!!なんだ!?



走り出そうとした車は勢いよく停車し、シートベルトをつけようとしていたニャースはフロントガラスに叩きつけられた。



ニャース「ニャース!!!



コジロウ「うわっ!だ、大丈夫かニャース!?ムサシ、いきなりなんだ?



ニャース「危ないニャ!一体なんだってんだニャ!



二人からの批判を浴びたムサシはそれを物ともせず、無言のままシートベルトを外して外に出た。



ムサシ「人がいんのよ……車の前に倒れてる。



コジロウ「ええっ!?……まじかよ!



ニャース「どこだニャ!?



慌てて二人も車から飛び出すと、十五歳くらいの年齢の赤い帽子を被った少年が、車の前で倒れていた。
45 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 23:20 ID:UtYXO1C2

三人はとりあえず少年を車に乗せ、トキワシティーを軽快に走っていた。
ムサシはイライラとしながらダッシュボードに足を乗せている。


ニャースはパタパタと少年を団扇で扇いで介抱していた。


ニャース「おーい、生きてるかニャ?


少年「……う、うーん……め、メシ


ニャース「……どうやら行き倒れみたいだニャ


ムサシ「クッソ……面倒なことになったわね、あそこの病院ってまだ空いてるっけ?



コジロウ「おいおい、車に乗せたらまずくないか?ジュンサーが来るまで待った方が……。



ムサシ「私らただでさえ指名手配から一転、ジャリボーイと一緒に警察と取引して一般人の身になったばかりよ?目の敵にされてんだから、なっがい乱暴な取り調べなんか受けたらパーティーに間に合わなくなっちゃうじゃない。



ニャース「確かにそうだニャ、カントーのジュンサーにはニャー達かなり嫌われてるニャ……ニャーなんか胸倉掴まれて『繰り返してきた罪は消えないから覚えておきなさい』って言われたニャ



コジロウ「おお、こっわー。お前本当にそんな事言われたのか?そりゃ待たないほうが得策だぜ。



ムサシ「そうよ、だから病院にでも連れてって置いてった方が利口なの。
46 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 23:50 ID:UtYXO1C2

少年「それは……困りますね。僕はこの世界の身分を証明する物は持ってません。病院にいって治療を受けてもその後は国営管理局に送られてしまいます……そしたら、僕は目的を果たせなくなってしまう……


ムサシ「んあ?


ニャース「ニャ?


コジロウ「えっ?


三者三様に三人は声を出し、急に起き上がって喋り始めた少年を見た。
少年はグキュルルルッと豪快に腹を鳴らしながらお腹をさすっている。



ニャース「ニャンだお前……身分を証明できないって……訳ありかニャ?



少年「まあ……そんなところですかね。



ムサシがダッシュボードに乗せていた足をバンッと鳴らした。
コジロウとニャースはビクッと身を震わせる。



ムサシ「なら尚更アンタに構う必要は無いわね。コジロウ、車を止めて。こんな身分も証明できないとか言うヤバそうなガキ……トラブルの元はほっぽり出して行くわよ。


コジロウ「えっ、いいのかよ?



ムサシ「こんだけペラペラ喋れるんなら大丈夫でしょ?私達は本物の飢餓を味わってきたから分かるはずよ。



ニャース「それもそうだニャ!おい、ガキ。さっさと降りるニャ!



少年「それが立つのもやっとで……。すみません、何か食べ物をくれませんか?食べ物をくれたら僕は貴方達の望む様に直ぐ消えます。



ニャース「がめついガキだにゃ……がめついのはキライじゃないニャ……



コジロウ「パーティー様に沢山料理が積んであったろ?ちょっと分けてやったらどうだ?



ムサシ「やらんでいい!


再びムサシはダッシュボードに足を叩きつける。
47 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 00:08 ID:A3ldUxU5

ムサシ「アンタ達分かってんの!ポケモンにエサをやるのとは訳が違うのよ!相手は人間、しかもガキ!これ程厄介な事は無いわ。



少年「まあまあ……落ち着いて下さい。本当に食べ物をくれたら直ぐに立ち去りますから……。いいんですか?このままほっぽり出されたら僕はホワイトホールという店の店員三人から轢き逃げされて道中で置き去りにされたと証言するしかありません……。



ニャース「な、なんてガキだニャ。がめついのを通り越して悪党だニャ



ムサシ「アンタには身分を証明できるモノが一つもないんでしょう?なら警察の取り調べでフリになんのはアンタの方よ。カントーの不法滞在者は厳しく取り締まられてんだから、ガキであろうと豚箱行きよ。



少年「さっきから話しを聞いていましたが……あなた方は警察から良く思われていないんでしょう?例え僕が不法滞在者だとしてもフリになるのはお互いさまかと……



車内に沈黙が流れる。
それを破る様に、コジロウがピューッと口笛を吹いた。



コジロウ「こりゃガキに一本取られたな。どうすんだ、ムサシ?


ニャース「駆け引きの上手い奴は嫌いじゃないニャ


ムサシは体を持ち上げ、後部座席に振り返って少年の顔を見た。


ムサシ「アンタ……名前は?どっから来たの?



レッド「レッドです。こことは別次元の異世界から来た……って言ったら信じて貰えますか?
48 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 01:16 ID:A3ldUxU5


……………………………

………………

サトシ「おっムサシからだ



サトシは懐に入れていたポケギアの揺れを感じとり、手にとって耳に当てた。



サトシ「もしもーし、何やってんだ?パーティーもう直ぐ始まるぜ。お前らが来たら皆んなビックリすと思うから早く来てくれよ。



ムサシ『……ちょっとトラブルでね、厄介事に巻き込まれたから少し遅れるわ……ああ、もう!そんなに食ったらパーティーで出すもん無くなるじゃないの!このクソガキ!



サトシ「はっ?



ムサシ『ああ、こっちの話よ。今300キロで飛ばしてるから十分くらいで着くわ。



サトシ「おいおい、ジュンサーさんに捕まるなよ?お前らただでさえ目の敵にされてんだから



ムサシ『分かっるわよ、それじゃあね



電話が切れると、サトシはポケギアを懐にしまい、パーティーの会場となる庭を二階のサトシの部屋から眺めていた。
タケシの計らいで、皆んなが到着して並べられたテーブルの席に着いてから、タケシの司会進行で登場する手筈となっている。

もう既に、ロケット団の三人以外は殆どの顔ぶれが揃っていた。


高鳴る鼓動を抑えながら、サトシは会場にいるかつての旅仲間の女の子達に視線を巡らしていた。
カスミ、ハルカ、ヒカリ、アイリス。


セレナ……は来てないか。
当然だよな、とサトシは肩を落とす。
あんか事があったのだ、来るはずが無い。


セレナを除く、カロスの面々は揃っていた。
シトロンにユリーカ。
ユリーカは身長が伸び、より女の子らしくなっていた。
サトシは三年後が楽しみだ、と下卑た笑みを浮かべる。


サトシ「ああクソっ!……なんてこった、俺はあんな可愛い女の子達と旅してたってのか。自分の愚かさが憎らしいぜ。



?「でもそれが分かった今でも手出しできないでしょ?絶望的なまでに奥手なんだから。


背後から声が聞こえ、サトシは一瞬で身構えた。
そこには……ヒカリの前にも姿を現していた、素っ裸でベリーショートの可憐な少女が立っていた。


サトシ「な、なんだ、何でまたその姿に!ってか前隠せよ!ち、乳首見えてんぞ!


サトシは目を瞑りながら、その女の子に布団のシーツを剥ぎ取って渡す。



?「別にいいよ、もう直ぐ元の姿に戻るし……ていうかいつも見てるじゃん



サトシ「す、姿が違うだろ!その格好は俺的にちょっとヤバイ!



?「はあ……サトシってば、全く。長年連れ添った相棒なのにさ……まあいいや。そんな事より、マズイんじゃないの?



サトシは女の子に背を向けながら、ピクリと反応した。



サトシ「あん……ヒカリの事か?


サトシは窓から庭の様子を伺ってみる。
ヒカリはカスミ達と固まって女子グループの輪の中で赤面していた。
今日の事でイジられているのだろう。


?「そうだよ……何でか師匠の力でも忘れてなかったじゃん。今回は夢だったとか言って何とか誤魔化したけど……。


サトシ「今日皆んなが寝静まった頃に聞いてみるよ……それより



サトシが言い切る前に、ドンドンと階段を登る音が聞こえた。
サトシと女の子は後ろを振り返り、顔を見合わせる。サトシは女の子の顔を見てボンッと赤面したが、振り絞って声を出した。



サトシ「か、隠れる場所は?



?「大丈夫だよ、もう戻るから



ダダダダッと廊下を走る音が聞こえた。
それはサトシの部屋の前で止まり、勢いよくドアノブを捻った。
49 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 01:47 ID:A3ldUxU5


……………………………

…………

ユリーカ「サットシー!!タケシがもう降りてきていいだって、さあ行きましょ。主役のポケモンマスターさん!


ピカチュウ「ピッカァ!


扉を開けたのはユリーカだった。
ユリーカは扉を開けるなり、飛び出してきたピカチュウをキャッチして顔を輝かせる。
頬ずりしながら、甘えた声を出すピカチュウにうっとりしていた。



ユリーカ「久しぶり〜ピカチュウ!途中でいなくなったと思ったら此処にいたのね?ああやっぱ可愛い!これが世界中の猛者達を葬ってきた『ガーディアン』の異名を持つピカチュウとは思えない〜



サトシ「葬ってきたとか人聞きの悪い事言うなよ……それよりユリーカ……デカくなったなあ……


ユリーカ「バカね、女の子はデカくなったな。じゃあ、なくて可愛いくなったって言うの!はい、言い直し!



サトシ「ゆ、ユリーカ。可愛いくなったなあ。



ユリーカ「前は可愛いくなかったって言うの!?酷い、サトシ!

50 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 02:46 ID:tWiBX00h
支援
51 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 12:35 ID:Pzf2HXhi
主です。皆さん支援ありがとうございます。そして、誤字脱字が多くてすみません……他にも何か気づいた事や、気になる事があればドシドシ質問してください。因みに今日の夜から毎日睡眠時間を削って書き進めたいと思います!大分長くなる予定ですが、暇つぶしにでも楽しんでいただけたら幸いです。
52 名前:名無し 投稿日:2017/01/24 00:27 ID:DJJNZVkV
やっと仕事が終わりました、そろそろ書いていきたいと思います。
53 名前:名無し 投稿日:2017/01/24 01:32 ID:DJJNZVkV

サトシ「何でだよ!?


サトシが叫ぶと同時に、ユリーカはケラケラと笑い声を上げながら歩み寄ってサトシの腕を取る。
サトシは不覚にも成長して女の子らしくなっているユリーカにドキッとしてしまった。



ユリーカ「さあ、行きましょ。皆んな待ってるから



サトシはゆっくりと頷いて、ユリーカと腕を組んだまま、皆んなの待つ、会場の庭にと向かった。




……………………………………

……………………


タケシ「さあさあ、そろそろ登場してもらいましょうか!今現在、世界一のポケモントレーナー……ポケモンマスターとなったサトシ選手の入場です!


タケシの司会で、サトシは少々慌てながら庭へと続く窓をユリーカと共に、置いてあった靴を履いて外に出る。


サトシがユリーカに腕を引かれながら登場すると、直ぐ様仲間達からは歓声が上がり、田舎であるマサラタウンには隅々まで響き渡っているんじゃないかと思えてしまう程の声が上がった。



サトシは頭をさすって照れながら、ポケモン達とタケシが協力して作った簡易のステージに上がる。
ステージにはオオキド研究所から拝借した講義用のマイクとスピーカーが備えつけられていた。


サトシはマイクを握ると同時に、無性に緊張してきて手が震えてきた。
ポケモンリーグの世界大会時より、サトシはるかに緊張していた。


サトシ「あーあー……み、皆さん。こ、こんにちわ



シゲル「声が震えてるぞ!それでもチャンピオンか?サートシ君!



サトシはいつのまにか会場に現れていたシゲルに野次を入れられ、会場は笑い声に包まれた。
サトシ自身も思わず笑ってしまい、そのせいか、いくつか緊張がほぐれたのを感じてサトシはシゲルに感謝の視線を向ける。



シゲルは昔と変わらない、憎たらしい笑みを浮かべながらテーブルに座って踏ん反り返っていた。

隣にはニッコリと微笑むオオキド博士も居る。
後でアイツと博士とは久しぶりに話をしよう。

そう、サトシは心の中で誓いながらマイクを握る。
もう手が震える事は無かった。



擦り寄ってきたピカチュウの感触を足に感じ、確かな安堵感を覚えながらサトシは口を開く。
54 名前:名無し 投稿日:2017/01/24 02:07 ID:KnUi1F2j
支援です
55 名前:名無し 投稿日:2017/01/25 23:30 ID:c8qmXOsm
サトシ「皆さん……俺は……いや、俺達は皆さんの応援や叱責。そして返そうにも返せない様な数かずのご恩で……最強の称号……ポケモンマスターという、憧れだった大きな夢を叶えさせてもらいました。……そして今まで、いや、今でも支えてくれる仲間、家族、友達の前で、こうやってマイクを握っていると考えると……感無量です!本当にありがとう!



サトシがマイクを握り、一つ一つ噛み締める様に喋り始めると。
ずっと忙しなかった会場がシーンと、波打つ様に静まり返った。全員が全員、サトシと深い関わりを持っていた物達だ。
彼らは一様に深い喜びと賞賛の意を持って、サトシの語る心情に内心、大いに心震わせながら耳を傾けていた。



それからサトシは5分ほどでスピーチを終了させ、タケシの司会進行でパーティーの出席者達に乾杯の音頭をとった。



皆んながグラスを合わせて、入っていた飲み物をカラにすると、騒がしくも、とても楽しいパーティーがようやく始まりを告げた。
56 名前:名無し 投稿日:2017/01/27 12:05 ID:RMORDbXF
支援
57 名前:名無し 投稿日:2017/01/27 23:14 ID:kGzF4tZ5
しえん
58 名前:名無し 投稿日:2017/01/27 23:30 ID:pHsZBeOt




…………………………

……………

パーティーも始まり、集まっていた観客達も料理に手をつけ始めた頃だった。
サトシは旅で出会った旧友達に囲まれ、サトシは女の子に質問されると顔を赤らめたりもしながら、世界大会のWPGに出場するまでの音信不通だった二年間の経緯を質問され、簡単に説明していた。



サトシ「それがさ、俺とポケモン達で旅してる時にさ、悪さしてるロケット団を見つけて何時ものノリでそれを止めようとしてたんだよ『何してんだロケット団!悪さは辞めろ!』てな。




マサト「それでそれで!?




サトシ「するとアイツらさ、いつになく必死で『今度ばかりは止められる訳にはいかない!』っとか言い出すんだよ。あまりにも必死だったからピカチュウのボルテッカーでぶっ飛ばした後にさ、軽くわけを聞いてみたんだ。




ユリーカ「あはははっ!ぶっ飛ばした後にって!目に浮かぶー!




マサト「それで!?



アイリス「早く続き!




サトシ「アイツらが言うにはさ、今世界中の地下組織が集結してて、ソイツらは特に危険な集団だからロケット団が強い戦力を持たないとカントーが危ないってんだよ。俺は言ったよ『人のポケモン盗もうとする奴らも同じだろ?』ってさ。だけどアイツら一歩も引かなくて『今集まってるのはポケモンも人も殺す様な奴らだぞ、今までは強い力を持ったロケット団の庇護があったから助かってたんだ』何て言うんだ。



マサト「えっ!?そんな危ない奴らが居たの!?




ユリーカ「ど、どうなったの!?




サトシ「なら俺も協力してそんな奴らぶっ飛ばしてやる!ってロケット団と約束してさ。今まで旅してた中でも特に強いポケモンを博士に送ってもらってロケット団の三人と協力しながらそのヤバイ組織の連合とやらを倒して回ってたんだ。結構手強い奴らでさ、尚且つポケモンバトルじゃ敵わないってなったら普通に武器を使って襲ってくるんだ。それでピカチュウも背中に傷を背負っちまってさ………




話を聞いていた全員の視線がピカチュウに注がれる。ピカチュウは視線を感じると、何時もの愛らしい笑顔を見せながら、皆んなに見せる様にそっと振り向いて背中を見せた。




現在のトレーナー界隈での畏怖の象徴とさえされる、そのイナズマの様な傷跡が露わになった。



衝撃的な話に皆んな言葉を失う中、黙って話を聞いていたヒカリがピカチュウに近寄って、その傷跡にそっと触れる。




ヒカリ「……かなり深い傷ね……命に関わる様な。
59 名前:名無し 投稿日:2017/01/27 23:50 ID:pHsZBeOt

アイリス「ヒカリ、分かるの?



カスミ「ヒカリは看護スクール出だから医療の知識があるのよね?



ヒカリ「うん……資料で色んな患者を見てきたけど……こんな深い傷は初めて



シゲル「それ程悲惨な現場だったんだな……



サトシ「ああ……それでコイツは一回死にかけたんだ……そりゃ俺達も焦ってさ。戦ってたのがヒミダ山脈っていう未開の地で、組織の連合が集まってた本元の基地だったから……近くにポケモンセンターも無いし、居たのはロケット団の派遣したエリナっていう若い看護担当だけでさ、急遽ヒミダの敵の基地で治療を行なったんだ……。



誰かがゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
誰もそれが誰かなど確かめず、サトシの語る真実に耳を傾ける。
60 名前:名無し 投稿日:2017/01/28 00:44 ID:BeP1e9GL
サトシ「ま、色々あったけど結果無事にピカチュウは助かったしな。皆んなもコイツが世界大会で強敵をぶっ倒していくのを見たろ?今じゃ元気有り余り過ぎて困ってる位さ。



ピカチュウ「ピッカピー♪



ピカチュウが陽気にジャンプして自分の姿を皆んなに見せつけた。皆んなはその愛らしさと、負ったであろう傷を感じさせない元気さに安堵して口元を綻ばせる。




マサト「それでそのヤバイ奴らの連合ってどうなったの?


マサトが尋ねると、サトシは表情を曇らした。



サトシ「それがな……




ムサシ「まだ残ってるわ、組織しての力は弱いけどね……一番生かしちゃいけない奴が逃しちゃったのよ……てーかあんたらパーティーだってのに何て話をしてんのよ。ジャリボーイもアンタ空気読めないわね。



コジロウ「おいおいおい、俺達が来たのはお通夜かよ?パーティーは呑んで騒いでだろ?



ニャース「シンミリしちゃって会場が陰気くさいニャ。ここらで一番美味いもん食わしてやるからニャーをもっと楽しませるニャ




皆んなが聞き覚えのある声に驚愕しながら声の聞こえた後方へと視線を向ける。
そこには、私服姿をした元ロケット団の三人組が立っていた。



アイリス「ろ、ロケット団!?




ユリーカ「ど、どうして此処に!?




他の皆んなが騒ぎ出す中、サトシや事情を知っている物達は柔らかな笑みを浮かべて彼らに声を掛けた。




サトシ「遅ぇーじゃねぇか!この落とし前どうつけるんだよ?




タケシ「お前らが来ないからパーティーの予定が大分狂ったんだぞ?




カスミ「こりゃクーポンじゃ済まされないわよアンタら。
61 名前:ジョー 投稿日:2017/01/28 09:50 ID:u3AehrB5
お疲れ様です

いつも楽しく拝見してます

ロケット団のソーナンスはまだみたいですね
62 名前:名無し 投稿日:2017/01/28 14:34 ID:T9qfQfl4


驚く面々にサトシは事情を説明し、ロケット団の三人とは既に和解して、彼らはもう一般人になった事を告げた。



最初は動揺していた皆んなも、次第に元ロケット団の三人の陽気な人柄と、持参した料理の美味しさに驚きつつも次第に受け入れていった。




パーティーは進む。
次第に暮れていった夕日は完全に姿を消し、会場はサトシ達によって設置された照明が明かりを照らし出していた。
もう数時間が経過していたが、皆んなは休む事なく、サトシやかつての仲間達との談笑を楽しんでいた。




サトシ「こいつらとは今までで一番長く旅したかもしれないな。だって最初の旅から六年間、ずっと俺のピカチュウを狙ってついてきたんだぜ?



タケシ「俺とサトシが別れてからも追い続けていたのか……よく飽きないなって感じだ。


ユリーカ「何でサトシのピカチュウをそこまで追いかけ続けたの?言っちゃ悪いけどピカチュウはカントーなら沢山いるんでしょ?


ユリーカが尋ねると、ムサシを一体何を言っているのか分からない、と言った表情を見せた。


ムサシ「はっ?何いってんのよチビジャリ?



ユリーカ「誰がチビジャリよ!



ユリーカが地団駄を踏みながら抗議すると、その様子を見ていたニャースが歩み寄り、近くのステージに上がって彼女を見下ろしながら口を開く。



ニャース「おみゃーの事だニャ。ニャー達がピカチュウ追い続けた理由聞きたいって?なら教えてやるニャ。実際、ジャリボーイのピカチュウはどうなったニャ?




ユリーカ「あっ!!……。



ユリーカが気づくと同時に、会場にいた者達も驚いた表情をみせる。
そうだ。
サトシは実際世界チャンピオンになった。



そしてその最強になるピカチュウを長年バカみたいに狙っていたのは間違いではなかった。
元ロケット団の三人はそう言いたいのだろう。



酒瓶を片手にコジロウがサトシにフラフラと近寄り、バンバンと背中を叩く。


コジロウ「今や世界最強ポケモンの一角……ジャリボーイ、ありがとな。



サトシ「……あ?なんだよ急に…



ニャース「決まってるニャ、ニャー達がピカチュウを追い続けていた意味を見出してくれたのニャ




サトシ「……




サトシが黙っていると、ムサシが酒の入ったグラスを揺らしながら、テーブル席の上で頬杖をつきながら喋りかけてきた。




ムサシ「あんたは誇りを持ちなさい。私達のピカチュウを追い続けた六年は、決して軽くなかったわ。私達が走ってきた道は、アンタを追い続けていた六年は、決して間違いじゃなかった。もっとよ……もっとそう思わせるくらい、デカくなんなさいよ、ジャリボーイ。



サトシ「……!ああ!



カスミ「ちょっとストーップ!!




会場にシンミリとした空気が漂っていた時、突然カスミが声を荒らげた。
当然、視線はカスミへと向けられる。



カスミ「なんかいい感じに終わらそうとしてるけど……タダのポケモンを狙った泥棒の話じゃない!!



コジロウ「おいおい、何とか正当化しようと思ってたけどやっぱりバレたか




ニャース「それは言わないお約束だニャ!




ムサシ「ジャリンコを世界仕様に鍛えてやってたのよ、感謝されんのはコッチだわ!




一転して言い訳を始めた元ロケット団の三人に、会場は大きな笑い声に包まれた。


パーティーの中心となって盛り上げてくれる三人を見ながら、アイツらを呼んでよかったとサトシは心から感謝していた。





………………………………

……………………



パーティーは続く。
そして夜も更けていく。


途中で、サトシとタケシが企画したビンゴゲーム大会やちょっとしたゲームも大いに盛り上がり、サトシ達は一様に時の流れを忘れて、今この瞬間を最高に楽しんでいた。


だが、楽しい事にも終わりはやって来る。
あっという間に時は過ぎ、午前の2時を過ぎた頃。皆んなにも確かな疲れが見え始め、サトシとタケシは頷いてパーティーのお開きを宣言した。



皆んな名残惜しそうにしつつも、疲労には勝てず、まだ遊びたい!と元気だったのはユリーカとアイリスだけだった。




もう、道も真っ暗な為、皆んなはサトシの家の前に設置された沢山の簡易テントに泊まっていく手筈となっている。
田舎のために空き地は豊富にあるのだ。




もうヘトヘトで眠る組と、シャワーだけは浴びたい組が別れ、解散となった。
63 名前:名無し 投稿日:2017/01/28 14:37 ID:T9qfQfl4
すみません、ソーナンスはナチュラルに忘れてました笑
また機会があったら出そうと思います。
64 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 15:48 ID:RfnjVu0s
支援
65 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 16:06 ID:RfnjVu0s
セレナの来ていない理由のあんなことの内容がが気になる…。
66 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 18:58 ID:pSYqaGTF

セレナとのあんな事については今日の夜中に全貌を書き進めたいと思ってます。仕事の為、結構遅い更新になるかもしれません。
67 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 20:07 ID:f9KN9yu8
皆んなが一時解散してから、サトシはタケシと一緒にパーティーの最低限の片付けをして、俺たちもそろそろ寝るかと話をしていた時。



不意に背後から元ロケット団の三人からサトシは声をかけられた。



ムサシ「ジャリボーイ、ちょっと良い?



サトシはタケシをチラリと見て、先にテントに行っててくれと目で合図する。
タケシは短く手を振ると、アクビをしながらテントに向かって行った。



サトシ「場所を変えるか。裏庭に行こうぜ



コジロウ「そうしたいが……他にもお客さんだ、サトシ



サトシはコジロウに言われてその方向を向くと、思い立って足を止めた様子のシトロンが居た。



シトロン「あっ……用があるようなら僕はこれで



シトロンが立ち去ろうとするとニャースが待つニャ、とシトロンを止めた。



ニャース「別にニャー達は急ぎじゃないニャ。明日でも構わないから遠慮するなニャ。



ニャースはそう言ってムサシとコジロウに目で合図を送り、背中を見せる。
不意にニャースは何かを思い出したかの様に振り返り、サトシに歩み寄ってA4サイズの茶封筒を手渡す。




ニャース「新メニューニャ、レシピありの企業秘密だから他の奴には見せるなニャ。ニャー達はバンで一晩明かしてから店に帰るから朝の8時までにコレを見とけニャ。




サトシ「……了解。



サトシは顔を曇らしながらそれを受け取ると、立ち去るニャース達を見送ってからシトロンに向き直る。



サトシ「どうしたシトロン?まあ、まだ俺もお前とは話し足りなかっから調度良いや。




シトロン「……僕もです、サトシ。
68 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 20:24 ID:f9KN9yu8

サトシはシトロンを裏庭へと誘導し、設置された木製のベンチへと座る。
サトシはベンチの下から灰皿を取り出して、腕かけの上にそれを置いた。



サトシは懐からタバコを取り出して口に加えると、シトロンにも一本それを差し出す。



サトシ「吸うか?



シトロン「いえ……ていうかサトシ、タバコ吸うんですね。未成年のタバコは法律違反ですよ?



サトシ「人を殺さなきゃ何やっても可愛いもんさ……それで?まあ、だいたい何の話か分かるけど……



サトシはタバコを蒸かしながら、空を仰ぐ。
対してシトロンはサトシをジッと見ていた。



シトロン「ええ……ご察しの通り、セレナの事ですよ。彼女とはここ暫く連絡が取れませんでした。それで気になって、僕はユリーカと様子を見に行ったんですよ。そしたら……


サトシはそこまで聞いてからシトロンに止めろ、と手を差し出す。



サトシ「……聞きたくない。



シトロン「えっ?……何でですか?かつての仲間の事ですよ?サトシにとってはどうだっていいって事ですか?



シトロンが目に怒りを覚えながら、サトシを見る。
サトシはフーッとタバコの煙を吐き出してから、泣き笑いの様な笑顔を見せた。




サトシ「アイツに嫌われてっから……俺。
69 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 21:08 ID:qZFNMOnw
シトロン「え?……嫌われてるって……どういう事ですか?サトシ



シトロンは呆気にとられた様にサトシを見る。
サトシはタバコを一気に吸い込むと、ため息と煙を両方吐き出して、口を開いた。



サトシ「セレナとは俺、結構頻繁に連絡取り合ってたんだよ……俺、どうもセレナにされたあの時のキスからアイツを意識し始めてさ……二年間、外部との連絡を絶って山に篭って修行を終えた後に、アイツの顔が見たくて小型のテレビ電話まで買ってさ、久しぶりに電話したんだよ……そしたら……。



シトロン「……そしたら?



サトシ「知らない赤髪のイケメンな男が出てさ……俺の女に何か用か?って言うんだよ。俺その時結構ショック受けてさ……ほら、アイツすっげぇ可愛いじゃん?二年間も音信不通だったら別にその間に彼氏がいてもおかしくはないけどさ……けどさ……




シトロン「……あの〜サトシ?



サトシ「俺はまあ、セレナに彼氏がいても元仲間なのは変わらないって自分に言い聞かせてさ……涙目を堪えながら『セレナ居ますか?』って聞いたんだよ……そしたらその男何て言ったと思う?『オメェがサトシか?オメェのヘタレっぷりはセレナからよ〜く聞いてるぜ。それと二年間も音信不通にするなんて有り得ない、仲間なんかじゃないともな。ま、そのお陰で寂しがってるアイツを俺の女に出来たんだ、ありがとな!』だとよ!結果、俺は怒りのあまり七万八千円したテレビ電話をポケモンセンターの二階からぶん投げてた。




シトロン「……サトシ、あの



サトシ「なあ、シトロン……二年間頑張ってピカチュウ達と血を吐きながら修行してさ……強くなった俺をセレナに見てもらおうとしたら……情けないもんさ……結果がこれ。笑ってくれ、この甲斐性もない俺を




シトロン「……そういう事でしたか……それでセレナにはパーティーの招待券を送らなかったんですね?



サトシ「……いや、招待券は送ったよ。結果はどうあれ、元旅仲間だしな。ご丁寧に彼氏さんもどうぞとまで書いたんだ。なのに来ないって事は……そういう事だろ



シトロン「サトシ……あなたはとてつもなく、大きな勘違いをしていますよ。
70 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 23:53 ID:qZFNMOnw

サトシ「あ?……なんだよ勘違いって?


シトロン「それはーーー


ユリーカ「ああっ!サトシ、タバコ吸ってるー!!


シトロンが口を開こうとしたその瞬間、ベンチの裏から甲高いユリーカの声が聞こえた。
シトロンは驚きのあまり、ベンチから飛び跳ねて地面に尻餅をつく。
ユリーカはどうやら風呂上がりの様で、湯気を立てながら首元にタオルをかけていた。


サトシは灰皿にタバコを押し付けながら、ユリーカに向かって口元に一本指を立てた。


サトシ「皆んなには内緒な?


ユリーカ「え〜どうしよっかな〜?


ユリーカはそう言いながら、サトシの首元に手を回した。
サトシはユリーカの予期せぬ行動に顔を赤面させながら、腕を解こうとする。
ユリーカはそれを離そうとせず、サトシの耳元でシトロンには聞こえない様に、甘く囁いた。



ユリーカ「何〜サトシ?私の事少し意識しちゃってんの?


サトシ「ば、馬鹿野郎。十三歳のガキンチョに女なんか感じるかよ。



ユリーカ「じゃあ何で赤くなってんの?サトシかわいい〜


ユリーカはサトシの耳をカプッと甘噛みし始めた。
サトシは更に顔を赤面させ、ボフッと蒸気を放出させる。
ユリーカはその様子を面白そうに眺めていた。


シトロン「こ、コラ!ユリーカ!実の兄の前で何てことしてるんですか!?まだ十三歳でしょ?そんな不純異性交友、僕は認めませんよ!



ユリーカ「お兄ちゃんうるさーい。もうめんどくさいからテントで寝よーっと。



シトロン「ま、まだ、話は終わってませんよ!ユリーカ!



ユリーカはサトシを離し、二人に背を向けて立ち去ろうとする。
シトロンがそれを慌てて追いかけ様とした時、不意にユリーカが振り返ってサトシの耳元でこう囁いた。


ユリーカ「私達、明日は用事で朝イチで帰るんだ。今度また来るから……その時はデートしようよ、サトシ。



サトシ「えっ?


シトロン「ま、また何やってんですか!



ユリーカ「ふふっまたね!



ユリーカは追いかけてくるシトロンをかわしながら、急いでテント群の方へと走っていった。


残されたサトシはベンチから体をずり落として、地面に尻餅をついた。


サトシ「マジかよ……な、なんかヤベーぞ俺


?「何がヤバイの?


サトシ「おわっ!?


サトシはまたもや背後からの声に、一瞬で身を構えた。
そこにはヒカリの前にも現れた、ベリーショートの可憐な少女がサトシを見下ろしていた。
サトシは彼女を見るなり、安心した様に息を吐き、「なんだお前か……」とタバコを一本取り出す。


?「なんだお前か……って酷いんじゃない?ユリーカには赤面してた癖に僕には無反応ってなんか腹立つよ。ロリコンなの?


サトシ「暗いからな……顔がよく見えないから女子にも多少は平穏を保てる。……さっきあんなに赤面したのは幾つだろうと女の子にあんな事されたら、ああなるだろ、普通?



?「そうかな……ていうか、どうするのさ、サトシ。


サトシ「何が?



サトシがタバコに火をつけながら質問すると、可憐な少女は肩を落としながらため息を吐いた。



?「ユリーカだよ、明らかにサトシに気が合る様な感じだったじゃん



サトシ「やっぱ、あれってそう!?いや〜どうしたんだろ、俺。最近女の子とやたら接点あるし、遂に春到来か?
71 名前:名無し 投稿日:2017/01/30 00:04 ID:fNbFt1gO
そういうわけだったんですか。
引き続きメガ支援です。
72 名前:名無し 投稿日:2017/01/30 00:33 ID:KV3KV1ZC

?「はあ……呑気なもんだね、僕の相棒は。いいかい、ユリーカはシトロンとサトシが来てから直ぐ位に君達の後ろにいたんだよ?



サトシ「ん?それが何だよ?



?「ユリーカは狙いすましたかの様に、シトロンの『サトシは勘違いしてる』からの次の言葉を遮ったじゃん。まるでセレナの現状が知られるのを自分に不都合みたいにさ。その時のユリーカはスッゴイ女の顔してたよ。……もしかしたらセレナはまだ、



サトシ「止めろ、セレナの話は。……もうアレは終わった事だ、掘り返したくない……ていうかユリーカがスッゴイ女の顔してたって?女なんだから当然だろ?



?「……はあ、もういいよ。


サトシ「おう、もういいぜ相棒。それより俺は未来の事で頭が一杯なんだ。折角未来の彼女候補が沢山集まってんだ、この機会を逃す他ない。



サトシはそう言いながら、ニャースから受け取った茶封筒を開封し始める。
少女はそれを眺めながら、また呆れた様にため息を吐いた。



?「スピーチでは仲間達に今まで支えて来てくれてありがとう、とか立派な事言いながら、頭の中ではそういう事で一杯だったんだ?全く君は……あれ、それよりその封筒、ニャースからの?



サトシ「おう、『新メニュー』だとよ、嫌な予感しかしねぇな。おっと開いた。なになに……


?「仕事かな?


サトシ「……最悪だ『転移者』だとよ、名前はレッド。ヒカリの件といい、メンドくさい事が続いてるぜ。



?「こういう時は……大抵、大きな災いが起きるよね……尚更急いで師匠に伝えなきゃ。



サトシ「ああ……皆んなが寝静まってからな。それが一番だ。
73 名前:名無し 投稿日:2017/01/30 01:05 ID:KV3KV1ZC

………………………………

…………………

サトシがシトロン達と一悶着あった同時刻。
ヒカリはシャワーを浴び終えて、外にある簡易テントへと向かっていた。
傍らには水ポケモンのポッチャマが眠そうに目を擦りながら歩いている。



ポッチャマ「ポチャア……



ヒカリ「はあー今日は楽しかったな。明日はどうしようか、ポッチャマ?一応予定では3日くらい滞在する予定だけど……って、立ったまま寝てるし!



ポッチャマは花風船を膨らましながら、その場で眠っていた。
ヒカリは苦笑しつつ、ポッチャマを起こすのは忍びないと思ってモンスターボールの中に入れる。



ヒカリ「おやすみ、ポッチャマ。私も早く寝よーっと。


ヒカリは伸びをしながら、一つのテントに入ろうとした時、ポンポンと肩を叩かれた。
振り返ってみると、いやらしい悪巧みする様な笑みを浮かべたカスミが立っていた。


カスミ「なーに寝ようとしてんのよヒカリ、夜はこれからよ!女子会するわよ女子会!



ヒカリ「女子会?なんか楽しそう!



カスミ「でしょ!ハルカのテントに行くわよ、皆んな待ってるんだから。



カスミに案内され、ヒカリは一つのテントに入っていく。
中にはランプが一つ置いてあり、体育座りをしたハルカがにこやかに出迎えてくれた。



ハルカ「ヒカリ、カスミいらっしゃい。でもアイリスが寝ちゃったかも……


ハルカが自分の背後を苦笑しながら指さす。
その方向には寝袋の上で大の字で寝る、無防備なアイリスの姿があった。


カスミ「かもじゃないでしょ、完璧寝てんじゃない。ありゃりゃ〜……さっきまで起きてたのにお子ちゃまね。場所変えましょうか?アイリス起こしちゃったら悪いし。



ハルカ「そうね、どこのテントが空いてる?



カスミ「さっきヒカリが入ろうとしてた所が私とヒカリのテントよ、其処に行きましょう。悪いわね、ヒカリ。来た矢先に出戻りになっちゃった。



ヒカリ「全然大丈夫よ。でもアイリス、お腹出したまま寝てて風邪ひかないかしら?



カスミ「あんたは優しいわね〜。大丈夫よ、アイリスは屈強なアマゾネスなんだから、アンタ一時期この子と一緒に居たから知ってるでしょ?原住民よ原住民。腹立つからちょっと私達の女子会計画を狂わしたこの子にお仕置きしましょ?



カスミはそう言いながら、何処からか取り出したマジックでアイリスの顔に落書きを始めた。



ハルカは笑いを堪えながら、ポケギアに搭載されたカメラで写真を撮る。
74 名前:名無し 投稿日:2017/01/31 22:27 ID:lv886QHR

カスミ「こんな落書きしてるとプリンを思い出すわ〜


カスミはアイリスの瞼に新たな第三の目を書きながら、しみじみとそんな事を言った。
ヒカリとハルカは首をかしげる。


ヒカリ「プリン?……人?ポケモン?



カスミ「ポケモンよ。超強力な眠りの効果のある歌を、皆んなに聞いて欲しいから急に歌い出すの。そんで途中で寝ちゃったら不機嫌になって寝てる皆んなの顔に落書きすんのよ。私とか、サトシとタケシも何度も書かれちゃった。



カスミは第四の目を書き終え、マジックのキャップを締める。
そして満足そうに頷くと、振り返ってヒカリ達に向き直る。



カスミ「さあて、行きましょうか。今回は秘密の品も用意してるわ。



ヒカリ「秘密の品?



ハルカ「いいから、いいから。早く行くわよヒカリ。



半ば強引にテントから押し出され、ヒカリ達は主の居ない、二人用のテントへと足を運んだ。
75 名前:名無し 投稿日:2017/02/01 19:00 ID:rPJvt3XZ
支援
76 名前:名無し 投稿日:2017/02/01 23:08 ID:CRj5LcjZ



………………………………

………………

カスミ「デーン!これが私の用意した秘密の品よ!



カスミは背中に掛けていたバッグから瓶に入っている液体を取り出した。
ハルカは「わあ!」と歓声を上げ、ヒカリは首をひねってカスミに質問する。



ヒカリ「何これ?ジュース?



カスミ「アンタは本当に純情よね……私がわざわざジュースを秘密の品なんて言うわけ無いでしょ?お酒よお酒。




ヒカリ「ええっ!?私達、未成年でしょ?




カスミ「構いやしないわよ、今日ぐらい。法律が怖くて命を懸けた旅なんか出来ないわ。サトシなんてアイツ、久しぶりに会ったらタケシと一緒にタバコ吸ってたわよ?今日は猫被ってたから吸ってなかったけど。




ヒカリ「ええっ!?嘘でしょ?




驚愕するヒカリを他所に、ハルカは皆んなのコップを準備する。
カスミは酒瓶の蓋を開け、それをコップに注いだ。
77 名前:名無し 投稿日:2017/02/02 23:24 ID:YOgD4P4A

カスミは全てのコップに液体を満たすと、満足そうに頷きながら笑みを浮かべる。
彼女はそれを二人に手渡すと、コップを持ち上げて乾杯をしようと合図する。



ヒカリは戸惑いつつ、ハルカは迷いなくコップを合わせ、チンッと小気味良い音を鳴らした。
一気に飲み進める二人にヒカリは少々遅れながら、コップに入ったアルコールを口にする。



口一杯に広がる何とも言えない苦味にヒカリは顔をしかめつつ、それを時間をかけてゆっくりと飲み干す。
彼女は体内で何か熱いものが駆け巡るような感覚を覚えていた。
同時に頭にも血がのぼるような感覚が巻き起こる。
ヒカリは若干気分悪げに、二人の様子を伺ってみた。




二人は問題無さげにグングンと飲み進めていた。
それを見てヒカリは呆然としながらも、新たに注がれた液体に口をつける。
ヒカリは二人に負けまいと半ばヤケクソの様に飲み進めた。




ーーーー十分後、テントの中の三人はアルコールによって既に出来上がり、顔を著しく高揚させ、ハルカに至ってはもはや別人格と化していた。



ハルカ「ヒカリ〜呑んれるー?お酒はのんれものまれるにゃ……きいつけなはれ……ヒック。



ヒカリ「……ハルカ大丈夫?



カスミ「あんたは意外ね……ヒカリ。かなり酒強いわよ……アンタ。



ヒカリ「そうなの?飲んだ事ないからよく分かんないや。ハルカみたいな酔っ払う感覚ってどんか感じなの?



ハルカ「うっさいわね……ひとをよっはらいみたいにいうにゃ……このニット帽オバケ……



ヒカリ「……



カスミ「そうよ、このカオス感……これが見たかったのよ。



カスミは顔を高揚させつつも、ハルカより出来上がってはいない様だった。
彼女はニヤニヤしながら酔った様子のハルカを楽しんでいる。
カスミはヒカリに向き直ると、ハルカと肩を組みながら口を開いた。




カスミ「ハルカとはね、前にも一回飲んだ事があるんだけど、そりゃもうやばかったわよ。泣きじゃくりながらサトシ達との旅にもう一度戻りたい!とか、ジムリーダーなんかやだ、あの頃が一番楽しかった!とかね、もうそりゃ色々終わってたわ
78 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 00:35 ID:veuerKyV
支援
79 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 08:34 ID:Huz6H3pt

ヒカリ「へー、ハルカってジムリーダーもやってんだ。



カスミ「そうよ、家業を継いでジムリーダーとなったらしいわ。今はもうイヤイヤやってるらしいけど




カスミは新たに注いだ液体を飲み干し、更にコップに注いでいく。
注ぎながらカスミはヒカリを見ながら意味ありげにニヤリと笑みを浮かべた。
ヒカリは嫌な予感を感じながら、カスミの次の言葉を待つ。



カスミ「まあ、そんな話はどうでもいいか……ここからが本題よ。



ヒカリ「……本題?
80 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 21:02 ID:SlYvGsLs

カスミ「そうよ……単刀直入に言うと、サトシについての事ね。



ヒカリ「……サトシについて?


ヒカリは何故かサトシという言葉で、自分の胸の中で何かが沸き起こる様な感覚がした。
それを見透かす様にカスミはニヤリと笑い、ヒカリに次の言葉をかける。



カスミ「サトシはこれからどんどんモテていくと思うわ……中身は思春期のアレだけど、何たってポケモンマスターだからね。収入的にも、人望的にも十六歳という若さで既にトップクラスよ?まあ、モテない訳ないわけよ。私は別にアイツに男としての興味は無いんだけどね〜もう彼氏いるし。




ヒカリ「へ、へ〜……そうなんだ。カスミの彼氏さんって、どんな人?



カスミはグラスに入った液体を見ながら返答する。



カスミ「私のこたぁ、どうでも良いのよ。もう、回りくどいのはめんどくさいから言うわね。私が聞きたいのは……ヒカリ、あんたはどうなの?って事。




ヒカリ「えっ……私?



ヒカリの胸のざわめきが大きくなった。
カスミは更に続ける。
81 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 23:25 ID:SlYvGsLs

カスミ「ハルカはね……ずっと言い出せなかったらしいんだけど……サトシの事が、旅してた時からずっと、ずっと好きだったそうよ。



ヒカリの胸のざわめきが更に大きくなる。
彼女はそれを抑える様に、胸に手をやった。




カスミ「でもそれは心の内に隠して、旅仲間としての関係を崩したくないから、仲間達との関係を崩したくないから……それを胸の中に留めてきたそうよ。




ヒカリの中でサトシとの旅の思い出が駆け巡っていた。
喧嘩したり、笑いあったり、泣いたり、励ましあったり。
そういえば誰かに言われたっけ。
『サトシっていいよね……貴方はサトシをどう思ってるの?』って。
その時、私は何て答えたんだろう。
ヒカリは胸に当てた手を強く握りしめる。


カスミ「でも今日やっと踏ん切りがついたそうよ。サトシが今日皆んなの前でスピーチをするのを見て、堂々と話す姿を見て、心に浮かぶ感情を確かめて、やっぱりサトシが好きなんだって再認識して、それで絶対にこの恋を想いだけで終わらせたくない……ってね。可愛いよね、実はハルカは恋愛にはすっごい純情で乙女で、臆病なの。私は本気で人を好きになった事は無いから、少し羨ましいわ。



ヒカリはハルカを見てみると。
彼女はカスミにもたれ掛かったまま、スーッスーッと寝息を立てていた。
カスミは愛おしそうにハルカの髪を撫でている。



ヒカリ「……私にそんな事話しても、良いの?カスミ。


ヒカリが尋ねると、カスミは穏やかな笑顔を見せた。


カスミ「貴方だから言うのよ、ヒカリ。貴方はサトシの元旅仲間で、私達は友達じゃない。もし、ヒカリがサトシを好きじゃないのなら……私達、ハルカの応援をしてあげない?



ヒカリは目を閉じた。
今までのサトシとの思い出がフラッシュバックし、心に湧き上がる感情の正体を探る。
この感情は何なのだろうか?このざわめきは……。


……そうだ。
この感情はサトシのことを思う、一人の女の子がいる事への喜びに違いない。
あのサトシに遂に春がやって来るのだ。
しかも、友達のハルカ、これは喜ばしい事だろう。



ヒカリは笑顔を浮かべながら、カスミに向かって口を開いた。
82 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 23:42 ID:SlYvGsLs

ヒカリ「勿論よ!サトシにも遂に春が来たわね、ハルカの為に私達が精一杯盛り上げてあげなくちゃ!



カスミはにっこりと微笑み、ヒカリとグッと硬い握手を交わす。
二人はそれから数時間ほど飲んで語り合い、ランプの光を消して、ぐっすりと就寝した。




……………………………

………………


数時間後、ヒカリは飛び起きる様にして目を覚ました。
と、同時に、彼女は慌てて辺りを見回してみる。
周りには寝ている筈のカスミとハルカが今ので起こしてしまったかもしれない、という配慮からだった。



幸い、二人は毛布を被ってまだスヤスヤと寝息を立てている。
彼女はホッとしながら、再び眠ろうとすると……理性だけでは抑え切れない、我慢できない程の猛烈な尿意に気がついた。



成る程、突然目が覚めたのはこのせいか、と彼女は苦笑しながら腕につけている時計を見てみた。
午前3時59分、まだあたりは真っ暗だ。
参ったな、と彼女は頭を掻きながらも、堪え切れない猛烈な尿意は彼女はテントから出して、サトシの家のトイレへと駆り立てた。
83 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 00:08 ID:Ps4dVvQv

ヒカリ「ふーっ危なかった……



ヒカリはトイレを済ませ、サトシの家を出てテントへと戻ろうとする。
すると……見知らぬ少女と何処かへ行く、サトシの姿が目に入った。




ヒカリ「……えっ?サトシ?……あの隣にいる子は誰?……。



ヒカリはカスミとのハルカの恋を応援するという、約束を思い出し、咄嗟に二人の後をつける事にした。
84 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 00:21 ID:xUUsP0T2
支援
85 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 12:10 ID:613YoEfF

ヒカリ「……何処へ行くんだろう……あれ?あの女の子……何処でみた様な……あっ!?



ヒカリはサトシの部屋で目覚めた時、自分の名前を呼んでいた素っ裸の女の子のことを思い出した。




ヒカリ「あの時の女の子!?あれ夢じゃなかったんだ……でも、あの子……一体何者なの?




謎も深まり、ヒカリは草陰に隠れながら更に後をつける。
二人はどうやら近辺の山に向かっている様だった。



ヒカリ「……あんな所に行ってどうするつもりなの?
86 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 13:11 ID:613YoEfF

ヒカリがサトシ達の後をつけ始めてから、15分。
既に三人は山のかなり深い所まで来ていた。時刻は午前四時を過ぎ、未だポケモン達の眠り声も山に響きわたっている。
ヒカリは息を切らしながら、必死について行った。



ヒカリ「はあ、はあ。……何処まで行くんだろう。




ヒカリが疑問を浮かべた瞬間、サトシと女の子は森の広場の様な所で停止する。
ヒカリはサトシ達の会話が聞こえる、ギリギリの地点の草むらで身を隠した。




サトシ「ここらで良いだろう……



サトシはそう言うと、腰に装着したモンスターボールを取り出した。
それを女の子が待って、と静止する。


?「気付いてると思うけど……良いの?サトシ。



サトシ「……まあ、師匠の力が通じない、アイツにはいづれバレる事だ。このままいく。



サトシはモンスターボールを空中に放り投げ、中に入るモンスターを出した。
そして、出てきたモンスターを見てヒカリは驚愕する。それは、明らかにポケモンと言えるには程遠いモノだったからだ。
それは……何処からどうみても、人間の女の子だった。



年齢はサトシと同じくらいか?
月明かりに照らされ、幻想的なまでに美しかった。
彼女は長い髪をたなびかせながら、切り株の上に立ってサトシ達を見下ろしていた。



??「ふむ……ワシを呼び出したって事は……相当な用事なんじゃろうな?サトシよ。



サトシ「はい……新たな転移者が現れました。



?「それにタケシ達に対して施した師匠の力が、ヒカリに対してだけは効いていませんでした。



ヒカリは自分の名前が飛び出た事に、ビクッと身を震わせる。
切り株の上の女の子は面白そうに目を細め、ヒカリの隠れている草むらの方向を向いた。



??「ほう……やはりあの小娘には効かなんだか。面白い、あやつは巫女の力を持っておるかもしれんのう……。のう小娘、そんな所に隠れとらんで出てきたらどうじゃ?ワシに顔をもっとよく見せい。



切り株の上の女の子は、ヒカリに対して手を伸ばして、人差し指でクイッと呼ぶ様な仕草を見せる。
すると草むらで隠れていたヒカリが空中に浮かび上がり、引力の様に引きつけられてサトシ達の前に放り出された。
87 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 15:09 ID:613YoEfF

ヒカリ「きゃっ!?一体何がどうなっ……痛!



ヒカリは空中から地面に落とされ、尻餅をついた。
彼女は涙目でお尻をさすりながら、立ち上がると……無言でそんな彼女を見つめる三人がいた。




ヒカリ「あ、あはは……ど、どうも〜。ちょっと夜道を散歩してたら偶然……眠たいからテントに帰るね、サトシ……




サトシ「家からつけてたのは気づいてたよ、ヒカリ。そんなお前に話しかけなかったのは……大事な話があるからだ。



サトシ達に背を向けて帰ろうとするヒカリに対し、サトシはそう言った。
ヒカリは恐る恐るサトシに振り返ると、質問をする。



ヒカリ「は、話?何の?



サトシ「お前が今日茶化されたルカリオの事だよ。ゴメンな、あれ夢じゃないんだわ。



ヒカリは自分の心臓が早く脈打つのを感じた。




ヒカリ「えっ……でもタケシ達も気絶した私をバスから運び出したって。




サトシ「上書きだよ。この切り株の上にいる師匠に手伝ってもらって、全員の記憶を改変したんだ。……何でかお前だけ記憶を保持したままだったけどな。



ヒカリ「えっ、えっ?……か、かいへん?何でそんな事が……ていうか師匠って……その女の子の事なの?その女の子モンスターボールから出てきたよね?……い、一体何がどうなってるの?
88 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 20:04 ID:613YoEfF

??「小娘、お前にはワシが何に見える?



唐突に尋ねられ、ヒカリはビクリとしながら、謎の女の子を見る。
どっからどう見てもヒカリには人間の女の子にしか見えなかった。



ヒカリ「人間……に見えます。



??「ほう……そうか、人間に見えるか。でもワシはいわゆるモンスターボールから出てきたのだぞ?それでも人間と言えるのか?




ヒカリ「……さ、サトシ。ど、どういう事なの?



ヒカリは助けを求める様にサトシを見た。
サトシは真剣な表情を浮かべたまま、口を開く。



サトシ「なあヒカリ……ポケモンと人間の違いって、何だと思う?



ヒカリ「ポケモンと人間の違い?……わ、分かんないよ、そんなの。技を使うとか?



サトシ「間違ってはいないな。でも明確に答えを出すとするならば……無いだ。答えは無い。人間とポケモンの違いなんか、名称だけだ。




ヒカリ「……
89 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 22:12 ID:613YoEfF

??「ほう……サトシ。お前、中々いい事言う様になったの。じゃがの、お前ら人間が定めるポケモンと人の違いの定義など、ワシらにとってはどうでもいい事じゃ。別に勝手に区別や差別してもらってもこっちは一向に構わんし、それが間違いとも言わん。この世に生まれ落ちたからには正解なんか追い求める事自体が無意味じゃ。のう、ピカ娘よ。



?「師匠……ピカ娘はやめて下さいよ。せめてピカチュウって呼んで下さい。……まあ、そうですね。ボクらポケモンからしたら定義とかそういう概念はありませんね、あるとすれば敵か味方か……それ位の区別です。




ヒカリ「へっ?……ピカチュウ?



ヒカリが二人の会話にハテナマークを浮かべていると、それを察したサトシが説明を始めた。



サトシ「ヒカリ……俺の隣にいるショートヘアの女の子……実はコイツ、俺の相棒のピカチュウなんだよ。




ヒカリ「へっ……え?ごめん、何言ってんのかよくわかんない。
90 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 22:28 ID:613YoEfF
一応分かりにくいから説明しときます。「」前に??二つがついてるのが、ジジイ言葉を使うロングヘアの女の子(師匠)
「」前に?一つがサトシがピカチュウと説明した女の子です。
91 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 23:18 ID:WqkQTI2I

ピカチュウ「ヒカリ……ボクは正真正銘のサトシのピカチュウだよ。五年前、君と一緒に旅したのもボクさ。……今は姿が違うけど、ヒカリの事は大好きだから信じてほしいな。



ヒカリ「……一体どうなってるの?貴方がピカチュウなのを信じたとしても……どうして人の姿に?



サトシ「その辺も踏まえて全部説明するよ、皆んなに説明した二年間音信不通で山に篭って修行してたって話……アレは半分本当で半分は嘘なんだ。



ヒカリ「嘘……



サトシ「騙したみたいで悪いけど……こっからの話はお前らの命が危うくなるからしょうがないんだよ。だから俺が今からお前に話す内容も、危険が及ばない程度に大まかな内容だ。聞いてくれるか?



命が危うくなる様な話とは……一体どんな事をサトシは体験してきたんだろう?
ヒカリは緊張して胸が苦しくなるのを感じていた。
だが、それを振り払う様に彼女は自らの頬を叩く。
そしてヒカリは決心を固めた様に、口を開いた。



ヒカリ「うん……でも、私には大まかな話じゃなくて、全部聞かせてほしいな。だって私達……大事な仲間じゃーーーー



サトシ「ダメだ。全部は話せない。



切り捨てる様にサトシは言い放つ。
その事にヒカリはショックを受けていると、サトシはそれが分かっているのか、顔を歪めながら話を続ける。
92 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/05 17:15 ID:uqfvGGLf
ペンネームを十五歳の早計として、また夜中に書いていきたいと思います。
93 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/05 20:44 ID:uqfvGGLf

サトシ「すまない……俺だってヒカリは大事な仲間だし、全てを打ち明けたい。だけど、コレはそういう問題じゃないレベルの事なんだ。分かってくれ。




ヒカリ「……




??「やれやれ……そんな事言うなら初めから端折って喋れじゃええじゃないか、バカサトシよ。回りくどい言い方するからややこしくなるのじゃ。本当は小娘に心配して欲しくて堪らんのか?女々しい男じゃのう。なあ、ピカ娘よ?




ピカチュウ「……サトシは不器用ですから。でも、師匠もそんな言い方しないで下さいよ。サトシだって色々考えてるんです。




??「おお、ピカ娘を怒らしてしまったか。すまんのピカ娘や。おい、サトシ。お前の妾のピカ娘がお前を庇護しておるぞ、情けないから早く話を進めい。



ピカチュウがギリッと、師匠と呼ばれる女の子を睨みつけ、歯を噛みしめる。
師匠と呼ばれる女の子はそんなピカチュウを見ながら面白そうに挑発的な笑みを浮かべていた。


サトシ「いや……そうだな、多分そうですよ。俺はヒカリに心配して欲しくてこんな言い方をしたのかも……ゴメンな、ピカチュウ、ヒカリ。俺、情けないよな……本当は全部背負い込むのが怖いんだよ、それでこんな言い方して、ヒカリに心配して欲しかったんだ。




ピカチュウ「サトシ……




ヒカリ「……いいや、全然情けなくなんか無いよ。むしろ、嬉しい。私は何にも出来ないかもしれないけど……危険になったっていいから……そのサトシが背負ってるモノが何なのか分かんないけど、一緒に背負う位はしたいもん。
94 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/05 22:59 ID:uqfvGGLf

??「ほら、小娘もこう言っておるぞ。バカサトシ、全部話てやったらどうだ?この世界の裏側がどうなっておるかなどな。



ヒカリ「……この世界の裏側?



??「そうじゃ、小娘。お前はこのマサラの反対側にある大陸の国の名前を知っておるか?その国の民がどんな事をしておるかとかな。



サトシ「師匠!



サトシが力強い声で師匠と呼ばれる女の子を制止する。
その女の子はサトシを見下した様に見つめ、肩をすくめた。




??「なんじゃ?話さんのならワシが代わりに話をしてやろうとしてやっただけじゃ。それが嫌なら早う決着をつけい。ワシはもうめんどくさくなってきたぞ。



女の子は切り株に座り、大きな欠伸をした。



サトシ「……そうします。ヒカリ。



ヒカリ「は、はい!




サトシ「やっぱり全部は話す事は出来ない、お前に今はそんな重荷を背負わしても俺たちにとってもプラスにはならないからだ。……すまないな、長くなって。今はこのヒカリが巻き込まれた現状の理由だけを聞いてくれ、ピカチュウが人の姿になった理由や、ルカリオに襲われた理由を。




ヒカリ「……分かった。




サトシは話し始めた。
それはパーティー会場で話していた、ロケット団と協力し、ヒミダ山脈の敵の基地でピカチュウが瀕死の重傷を負ってからの話だった。
95 名前:名無し 投稿日:2017/02/05 23:13 ID:uqfvGGLf




………………………………

………………

サトシ「ヒミダで敵にやられてピカチュウが段々冷たくなっていってさ……その背中の深い深いキズはロケット団の看護婦じゃ手に負えなかったんだ。それで俺は慌てて山を下るって言ってさ。血だらけのピカチュウを抱えて、制止するロケット団を振り払って転がる様に山を降りたんだ。




ヒカリはサトシの話に相槌を打ちながら、女の子の姿となったピカチュウを見る。
ピカチュウは満点の星空を見上げながら手を伸ばし、何か物思いに耽っている様子だった。



ヒカリはそんなピカチュウを見ながら、山を必死に駆けているサトシの姿を脳裏に浮かべた。



…………………………

……………

サトシ「頼む!しっかりしてくれ、ピカチュウ!



ピカチュウ「ピーカ……



ピカチュウは心配するなとでも言う様にさ、俺の頬にずっと手を当てていたんだ。
俺はそれをされて余計に助けてやろうって気になって、後ろから追いかけてくるロケット団の三人を無視してた。
96 名前:名無し 投稿日:2017/02/08 23:38 ID:ucAx98lo
支援
97 名前:名無し 投稿日:2017/02/09 00:45 ID:xAdmSebP

コジロウ「おいサトシ!そんな走って山を下りても1日は掛かるぞ。基地に戻って車両か何かを探そう、それしかない!



サトシ「うるせぇ!それで手遅れになったらどうする!?リザードンも負傷して動けねぇんだぞ!俺の勝手にやらせてくれ!




ムサシ「待ちなさい、バカ!そっちは崖よ!




情けなくてかっこ悪い話だけどさ、俺は焦って全然周りが見えてなかったんだ。
そのせいで優先度を見失って、挙げ句の果てにはロケット団諸共、崖から落ちてさ。




バカだろ?
そんな高くなかったから、俺たちは無事だったけどさ。
ピカチュウは息をしなくなるし、道に迷うしで、もう最悪さ。




狼狽してさ、ああ、ピカチュウはここで死ぬんだなって俺はなんと無く感じながら、歩き続けた。
ポロポロ男らしく無いけど、泣いちゃってさ。



そんな俺をアイツら三人は献身的に接してくれたっけ……。
傷に効きそうな木の実や薬草を探してくれたりさ。
ほんと、あいつらには感謝してる。




……そんでさ、終いには雨が降り始めて、死にかけのピカチュウの体を冷やさない様にアイツらの提案で近くの洞窟に入ったんだよ。
98 名前:名無し 投稿日:2017/02/09 01:12 ID:xAdmSebP

その時にはピカチュウは心臓も止まってたんだ。
毛並みが良いって自慢だったピカチュウの体もさ、ボロボロで……冷たくて……固まった血がこびり付いてて……。



もう、無理だ。
そう、思ったよ。
ロケット団も泣いてたっけ、俺は逆にその時は涙も枯れてさ。
ずっとピカチュウに、話かけてたよ。




やがて夜が明けた。
俺はずっとピカチュウを抱いたままだった。



そんで俺たちは無言だった。
言わなくても分かる、アイツらも何を思っていたか位は。




俺たち四人はそんな中、最悪な気分で山をくだろうとしてた時……。
洞窟を出てすぐ位に、急に笑い声が聞こえたんだ。
変だろ?秘境の山のど真ん中で。
しかも、甲高い女の子の笑い声なんだ。




俺は気になって振り返った。
ピカチュウが死んだのに、悲しいのに、苦しいのに、嘲笑うかの様な笑い声だったから。




その時は本気で殺してやろうと思ったよ。
99 名前:イッチ◆Whc/JdNwwk 投稿日:2017/02/09 17:23 ID:ngedzZgG

情景や状況が分かりやすくて、話も良いですね!
100 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/09 18:45 ID:Fell7wGh
まさかあのイッチさんにコメント頂けるなんて……。
あなたのssを見て自分も書き始めました、光栄です。
101 名前:イッチ◆Whc/JdNwwk 投稿日:2017/02/09 19:11 ID:TdJ5Qj0X

いや、そんな大した事ないですよ私なんて笑


更新大変なのはよく分かります!
是非最後まで書いてください、楽しみに読んでます!

102 名前:ジョー 投稿日:2017/02/09 22:44 ID:ao1LXpN7
主さん、お疲れ様です。ss楽しく拝見しています

これからも支援続けますね
103 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 01:33 ID:akiCT5ss

俺が振り向いた先には……声音通り、女の子が立っていた。
ロングヘアーでラフな白のワンピースを着ててさ、まあ、彼処で切り株に座って……寝ちまったか、寝息を立ててる師匠の事なんだけど。




師匠は殺気を出しながら睨みつける俺を気にしてない様に挑発的に笑って、ゆっくりと近付いてきたんだ。




えっ?
なんであの女の子を師匠って呼んでるかって?
まあ、もうちょっとしたら理由が分かるから少し我慢してくれ。



それでさ、師匠はピカチュウを抱いた俺を興味深そうにしばらく眺めた後、こんな事を言ったんだ。




??「ふむ……そのデンキネズミ、このレベルなら最終進化までいけるの。息を吹き返すやもしれん。

104 名前:僕◆K17zrcUAbw 投稿日:2017/02/11 09:37 ID:Vs3XCeyC
支援です‼
105 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 13:05 ID:akiCT5ss

サトシ「ぴ、ピカチュウが……た、助かるのか?




??「うむ、ある条件を満たしたらだがな




俺は絶望の中の、あり得ない救いの一言に縋ろうとした。
頭では理解してた。
ピカチュウは心臓が止まっている。
冷たい、とても冷たい……モノみたいになってたから。
助かるわけがない……。
あり得ない……。



でも、でも、もしかしたら……。




何でもいいと思った。
コイツを助けてくれる少しの希望なら、悪魔でも、幽霊でも、謎の女の子でもいいって。
俺は言った、迷わずに言った。
何をすればいいんだ。





??「そうじゃの……ちょうどワシは今、長年連れ添った召使いを亡くして一人で不便にしておった所じゃ。お前が生涯を通して、ワシの召使いになればそこの小汚いデンキネズミを最終進化によって救ってやろう。





サトシ「ああ、なんでもする!頼むからピカチュウを助けてくれ!




ムサシ「ちょっと待ちなさい!




そこで沈黙を保っていたムサシが大声を上げた。
俺を止めようとしてくれたんだ、そりゃそうだろうな。
こんな秘境の地で一人、しかもピカチュウの命を救ってやるなんて言う女の子、怪しすぎるだろ?




しかも、その女の子の提案は俺に一生奴隷になれって言ってるのと同じだった。
106 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 13:29 ID:akiCT5ss

でも、俺はそんなのぜんぜん構わなかった。
ピカチュウさえ、救えれば。
俺の命さえも差し出せた。




師匠は止めに入ったムサシを一瞥した後、嘲笑うかの様にロケット団に向けて手を振った。
するとさ、さっきのヒカリみたいにロケット団の体が突然持ち上がって、地面に叩きつけられたんだ。





俺は驚いて止めに入った。
奴らは一緒に命を懸けて戦った仲間だからな、酷いことをされるのは堪らない。
でも、不謹慎だと思うかもしれないけど、俺は俺でその時、期待に胸を膨らましていたんだ。




ミュウツーみたいな力を使う女の子だぜ?もしかしたらピカチュウも!……なんてな。
107 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 14:09 ID:akiCT5ss

師匠は俺のそんな心情を読んでいたのか、ニヤリと笑って近づいてきた。
それで俺の体に触れて、




??「我が御心の元より命捧げし、一人の若者よ。彼の者を、祭壇の儀式へと召喚する。




呪文を唱える様に言った。
すると驚く事にさ、一瞬で周りの景色が変わったんだ。
気がつくと、森の中の神殿みたいな所に立っててさ。その神殿の中は天井が高くて、ポケモンが書かれた壁画があって、そして何かの儀式をする祭壇みたいなのがあった。




サトシ「こ、ここは!?





??「さてと、お主の気が変わらん内に契約をすませるかの。お前、今歳はいくつじゃ?




サトシ「じ、13歳だ。




??「ふむ……痛みに耐えきれるギリギリのラインかの。お主がこれからデンキネズミを救うにあたって、これから契約の儀式というものする。その儀式の内容は、今までのデンキネズミの記憶をお前の脳内に送り込む。対してデンキネズミにはお前の記憶を送り込む訳じゃ。簡単じゃろ?




サトシ「ああ!早くピカチュウをたすけてくれ!





??「まあ待て、若き人間よ。何事にも美味すぎる話など存在せんぞ。記憶の交換、それ即ち痛みの交換じゃ。




サトシ「……痛み?




師匠は悪魔の様な笑みを浮かべていた。




??「今まで感じてきたデンキネズミの痛みが、記憶となってお前の脳内に送られてくる。最終進化には他者との完璧な記憶の同一化を行わなければならん。それがより親密な関係であれば尚更良しじゃ。
108 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 16:14 ID:33jmqFtV

そこで師匠はピカチュウを祭壇の上に乗せるように言った。
俺は言われた通りにしたら、師匠は満足そうに頷いてまた口を開いた。





??「お主をどうやらこの契約を甘く見ておる様じゃが……このデンキネズミが今まで感じた痛みが一気にお前に降り注ぐのじゃぞ?今までそれに耐えきれた人間は……前任の召使いだけじゃ。




サトシ「耐えきれなかった人間は?




??「死んだ。心底苦しんで止めてくれと血を吐きながらな!あれは実に愉快じゃったぞ?最初は勇ましい言葉を吐きながら、最後には自分の保身に走るのだからな!




サトシ「俺が死んでもピカチュウは助かるのか?




??「無理じゃ、最終進化を為すには他者との最後までリンクする事が不可欠じゃ。お前が死んでもただの無駄死にしかならん。どうじゃ?怖気付いたか?




サトシ「何言ってんだよ、上等だ!早くその儀式とやらを始めてくれ!





師匠はそこでニヤリと笑った。
そして、ピカチュウの頭に手をやって俺の頭にも手を乗せた。





段々と頭が熱くなってくるのが分かった。
俺は腰にあるモンスターボールからリザードン以外のポケモンを出して、心配そうに見つめる仲間達にお願いした。




サトシ「もし、俺が死んだらリザードンの入ったモンスターボールを持って山を降りてくれ……ゴメンな……これでお別れかもしれない。勝手な俺を許してくれ。
109 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 23:24 ID:wpW57tNO

俺の仲間達は涙を流しながら、頷いてくれたっけ……。



??「感動しているところ悪いが、始まるぞ人間。デンキネズミの記憶を貴様に注入する。途中で耐えきれずワシの手から離れたりしたら、全ては終わりじゃ。こやつの魂は離れ、二度と現世にまみえる事は無いじゃろうな。お前もタダでは済ままい。





サトシ「わかってる、俺はぜったーーー





そこまで言ったところだった。
突然視界がシャットアウトされて、気がつくと俺は真っ暗な空間に立っていた。
暫くすると、突然シャボン玉みたいな物体が俺の周りに浮かび上り始めたんだ。




困惑しながら覗き込んで見たら……俺の顔が浮かんでた。
ちょうど俺の肩口くらいからの視線かな?
瞬時に理解したよ、コレはピカチュウの視線だ。ピカチュウの記憶だ、ってな。



そんな感じのシャボン玉が沢山あるんだよ。
俺は順番にそれを覗きこんでいった。




バトルしてる場面もあったし、一緒に風呂に入ってる時もあったな。
何でか分かんないんだけど、その時は涙が止まらなくなってた。




シャボン玉は次々と増えていく。
俺は涙を流しながら、それを一つ一つ、噛みしめる様に見て行った。




全部見終わったくらいの時、そのシャボン玉は不規則な動きを見せ始めたんだ。
まるで誰かを探す様に……。
110 名前:名無し 投稿日:2017/02/12 23:33 ID:aobtIhcN

サトシ「おれを……俺をさがしているのか?





ユラユラしていたシャボン玉の動きが止まった。
心なしかこちらを向いた様に思えた。
球体なのにな、変だろ?
探し物は見つかった様だった。





だけどそれと同時に、酷く迷ってる様にも見えたんだ。
俺は察した。
察して喋りかけた。





サトシ「俺はここだ、ここにいる!迷うな、ピカチュウ。お前が死ぬ時は俺も一緒だ、俺はお前を絶対に一人なんかにしないぞ!さあ、来い!お前の痛みを……お前の全部を受け止めてやる!





そう言った瞬間、周りのシャボン玉が一気に俺の体に入っていった。
俺は……ピカチュウの痛みと、全ての思いを、その時しっかり受け止めたんだ。





相棒の心に隠された、本当の思いもな。
111 名前:名無し 投稿日:2017/02/14 12:48 ID:j6GpEewH


……………………………

……………


ヒカリ「隠された……想い。



サトシはそこまで話すと、懐からタバコを取り出して火をつけた。
そらに浮かぶ満天の星空を見上げながら、ゆっくり噛み締める様にタバコの火をふかす。



その悲しげな表情は、ヒカリには思いつめている様に見えた。




サトシ「師匠の言う最終進化は成功した……そんでピカチュウが再び目を覚ましたのが、あの姿だ。




ヒカリはピカチュウに目を向けた。
ショートヘアーで目のパッチリとした可愛らしい美少女。あれが最終進化後のピカチュウ……。
ヒカリはそう考えると同時に、最終進化というモノの存在に疑念を持った。




ポケモンを人の姿へと帰変える最終進化……果たしてそれは一体何なのだろうか?
進化……なのだろうか?




ヒカリは答えを求める様に師匠と呼ばれる少女を見た。
少女はヒカリの視線を感じたのか、ゆっくりと目を開いてヒカリを見る。




視線が交錯する二人を見て、察したサトシは口を開こうとして、師匠と呼ばれる少女に遮られる。



??「最終進化が何か知りたいか?小娘。
112 名前:名無し 投稿日:2017/02/15 02:33 ID:u9k7fUU5
すごい展開…。
支援です。
113 名前:名無し 投稿日:2017/02/15 08:12 ID:BpafG8A0

ヒカリ「……そりゃ……ねぇ?




ヒカリは同意を求める様にサトシを見た。
サトシは戸惑った様に師匠と呼ばれる女の子を見る。




サトシ「師匠……それは……




??「小娘に危険が及ぶと?忘れたのか、そもそもワシと創造主しか知らん事じゃ、心配いらん。おい、小娘。この世界の真実というモノの一つを教えてやろう。お主は人間とポケモンの起源が同じというのを聞いたことはあるな?スクールでそれくらいは習うじゃろ?スクールすら通わず、のうのうと旅しとるサトシとかいうバカではあるまい。


ヒカリはその話は看護スクールで聞いた事があった。ポケモンと人間のDNA因子には無視できない程の類似点が存在するらしい。
その為、テレビの特番や学会では声高々に叫ばれるのだ。『ポケモンと人間の起源は同じ。人間だけが奇妙な進化を遂げ、文明という武器で地球での覇権を手に入れている』と。
ヒカリは何故その事を引き合いに出すのか、と少女を訝しみつつ、さらなる質問を口にした。



ヒカリ「……同一起源説の事ですか?でもあれは人間が現在の姿形となる理由に説明がつかず、否定された筈ですけど?




??「そりゃつかんじゃろうな。何故ならポケモンと人間の起源が同じなのでは無く、ポケモンの起源が人間だからじゃ。
114 名前:名無し 投稿日:2017/02/15 13:08 ID:BpafG8A0

ヒカリはガンと鈍器の様な物で頭を殴られた思いだった。
……彼女は何と言ったのだろうか?
ポケモンの起源は……人間?




あの多種多様な種類のポケモンの起源が……人間?
そりゃあ人間ならばDNA情報も類似してくるし、同一起源説なんて学説もでてくるだろう。





だが、ヒカリは彼女の口にした言葉を完全には理解できていなかった。明らかに正しい発音、言語で、尚且つシンプルに説明された筈なのにだ。



看護スクールで、医学的なリアリズム思考を持ち合わしたヒカリからすれば、それは未知の言語で喋る宇宙人の言葉と等しい程、陳腐なものだった。




ヒカリ「あの……お、仰しゃってる意味が
115 名前:名無し 投稿日:2017/02/16 00:30 ID:Z7HA4TB3
支援
116 名前:名無し 投稿日:2017/02/18 00:29 ID:vp5qiTzl

??「古来……気の遠くなる様な昔の話だ。まだポケモンならざる、力を持たぬ生物と人間が共存していた時代の話をしよう。人は科学という神秘を持って、その世界の覇権を為すがままにしていた。だが、天敵を失った生物の待つ末路はいつの時代も決まっている。気に入らない組織、国家、集団に難癖をつけて、始まるのはケンカならざる同族同士の領土、資源を求めた殺し合い……戦争だ。




ヒカリ「……




ヒカリは戦争、という言葉を聞いたのは看護スクールと幼少期の頃以来の事であった。
そして国家、という言葉も、ヒカリからしたら全くと言っていいほど聞き覚えがない。
国家という概念の無い、地方で分けられた世界に生きるヒカリからすれば馴染みの無いワードだ。
それもその筈。



この世界では徹底された幼少期からの反戦教育が成されている。
この世界で育った良識的な人格と社会を重んじる文明人であれば、戦争というワードを聞いただけで忌み嫌い、拒絶反応を起こしてしまうものだろう。
117 名前:名無し 投稿日:2017/02/18 19:18 ID:tDyJ33ZR
それに、ポケモンならざる力を持たぬ生物……とは、一体何のことなのだろうか?
ヒカリは脳裏に沢山の疑問符を浮かべたまま、少女の言葉に傾注する。




??「その国家に身を置く人間達は切り札として、大いなるもろ刃の剣を持っていた。自分達の首まで落としかねない代物じゃ。在ろう事か、愚かな人間達はそれで斬り合う事を選んだ。大地は荒れ、気候は変動し、都市は消滅した。一瞬の熱線を持って、世界の殆どは蒸発したのじゃ。




ヒカリ「……それは、もろ刃の剣とは……人間の生み出した兵器、の事ですか?そんな力を持った兵器なんて……私聞いたことありません。



それだけでない。
彼女の語る歴史はヒカリが幼少期より、聞き及んだ事とは全く違っている。
ヒカリの認知している歴史とは、古来、人とポケモンが争いの果てに共存して、今の形を成しているという事だけだ。



??「そうじゃろうな、この世界に統べる人間達のほとんどがその事を知らん。知っているのは私の認知しているだけで一人だけ、創造主だけじゃ。




ヒカリ「創造主とは……神の事ですか?



??「違う。神などと存在も確かでは無い戯けた存在と一緒にするでない、創造主は創造主。人間じゃよ。人間達をポケモンの姿に変え、変動した過酷な地に順応させた慈悲深き悪友の事じゃ。変動した地から逃げる様に地下に篭り、平穏となった世界に再びノコノコと現れた人間達は大層、驚いていたぞ。自分らの知らぬ内に、地上では未知の生物達が世界を支配しているのだからな





ヒカリ「……そ、その創造主とやらが悪友とは……どういう事なんですか?それとまるで……その場で、それを見てきたかの様に話されるんですね?




??「おお、見てきたとも。創造主とは幼馴染でな、姉妹の様に仲が良かったのじゃが……。ふむ、ところで小娘、貴様にはワシが何歳に見える?




ヒカリ「は?……えーと、じゅう……ろく?




??「ふむ……若く見られるのは悪く無い事じゃ。じゃが、話の流れで察して欲しいモノじゃのう。ワシも暫く眠っとったから定かでは無いが、二千を超える年はとっておる。




ヒカリ「にせっ!?え!?
118 名前:名無し 投稿日:2017/02/20 21:15 ID:C5G93ie8
早く続き書けよ
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