サトシ「さあ……いこうぜ相棒」

1 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:44 ID:p3kkTtj5

鳴り止まぬ歓声……その中央には、古来からその姿を変えていない、完成された戦場がそこにはあった。



『さあ!始まりました、最高峰のポケモンチャンピオンを決める祭典!ワールド・ポケモン・グランプリ!この強者達が送る最高の協奏曲も、既に終盤に差し掛かってきました!



熱気の収まる様子を見せない、ポケモンリーグの最高峰、WPG。


司会者が叫び声を上げるかの様にマイクを握り、五万人以上はいるであろう観客達に言葉を投げかける。


『そして!ここで争うのは両者、最後の戦いの締めるに相応しい、この二人だ!!!


ド派手な炎の演出がなされて、戦場の対となるゲートに二人の男が姿を現した。


一人は帽子を深く被り、表情が伺えない、黒色のコートに身を包んだ男だ。


決して寒くはない、この気候の中でのかなりの厚着。


会場にいる観客達もこの男から感じる只ならぬオーラに飲み込まれそうになっていた。


もう一人は対照的に帽子は浅く、青色の明るい服装で、曇りのない真っ直ぐな瞳で会場全体を見渡している青年だった。


肩には愛らしい電気ポケモンのピカチュウを乗せて、屈託の無い笑顔で微笑んでいる。


そのピカチュウの背中には、イナズマの様な大きな傷跡があった。


「なあピカチュウ…
2 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:46 ID:p3kkTtj5
ピカチュウを肩に乗せている青年が、小さくつぶやく様に言った。


歓声で掻き消されそうな声を、彼の小さい相棒は聞き逃さなかった。


「ピカ?


「やっとここまで辿り着いたのか……って感じだな。もっと感動するもんかと思ったけど……案外感慨深くはないもんだぜ


「ピーカ!


そんなもんだと言いたげにピカチュウは青年の頭にポンと手を乗せる。



青年は少しばかり苦笑しながら、向かい側にいる対戦者の顔を見た。



表情の窺い知れない、未知の相手だ。
青年はそっとピカチュウを撫でた。



「……さあ行こうぜ、相棒。



『遂に!遂に我々が待ち望んでいたバトルが始まります!このバトルは、史上初となるポケモンマスターの称号を与えられる、明確な証となります!


その様子は、今まで彼を支えてくれた者、敵だった者、ライバルだった者達が、全世界の同時中継によるテレビやラジオで、詳細を余す事なく伝えられた。


やがてバトルが始まり、伝説とまでになった攻防戦を出し惜しみ無く両者繰り広げる。




やがてそれも終わり、あまりの壮絶さに観客達は圧倒され、沈黙が漂う中……今大会の優勝者はサトシという少年で幕を下ろした。
3 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:53 ID:p3kkTtj5
カントー地方、ラティアス空港126。



観光客や、帰省で人がごった返す中、人に揉まれながらゲッソリとした表情を浮かべる可憐な少女と、水ポケモンのポッチャマがトボトボと雑多なエントランスを歩いていた。



「な、長かった……カントーは人が多いのね……



「ポ、ポチャア……



可憐な少女の名前はヒカリ。



彼女はシンオウ地方をサトシと一緒に旅した仲間だった。


シンオウ地方在住の彼女が今回、カントー地方に居る訳は。


あれから六年の月日が流れ、最高峰のポケモンリーグを優勝したサトシがカントーのマサラタウンに帰省中だからである。



同じくカントーに在住の旅仲間、タケシから連絡があり、彼の激励パーティーを開くので来ないかと連絡があったのだ。



チャンピオンとして名実共にポケモンマスターとしての称号を手に入れたサトシには、ポケモンリーグ運営から一年間の休養が与えられるらしい。


警察組織と連携して、休養中の彼にポケモン勝負を挑むものは処罰の対象になるというのだから驚きだ。


一個人にそこまでの配慮が成されるのは異例中の異例である。


「高みに登っちゃったって事かあ……なんか、ちょっとサトシが遠い人になっちゃった気がして逢いづらいなあ……



「ポチャア!ポチャ、ポチャア!



寂しそうに呟いたヒカリに、ポッチャマが叱責する様に口を開く。




恐らく、お前がそんなんでどうする!と言っているのだろう。



付き合いの長い彼女にはポッチャマの言っている事がニュアンスで分かってしまう。



ヒカリは苦笑しながら、



「そうよね!浸ってるなんて私らしくないわ!何時もの大丈夫、大丈夫で行きましょう!そんでハイタッチよ!



「ポチャア!
4 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:07 ID:p3kkTtj5

頷きあった二人は空港を後にし、マサラタウン行きのバスに乗って出発した。




流れていく外の景色をみながら、ヒカリは道中を歩くポケモントレーナーとおぼしき子供達を見て顔を綻ばせる。




「見て見て、ポッチャマ。トレーナーよ、サトシ達と旅に出たのが懐かしいね。



「ポチャア……



ポッチャマは昔を思い出す様に腕を組んでつぶらな瞳を瞑る。




その様子にヒカリはクスクス笑いながら、彼女も目を瞑って昔を思い出してみた。




ヒカリは自分達もトレーナーで旅をした時は、必要な時以外、徒歩で移動したもんだ、と振り返る。




トレーナーは基本、交通機関は使わない様にするのが常識だ。




森や山を越える時、道中で新たなポケモンに出会えるかもしれないし、バトルを挑まれたり、挑んだりして力量も磨ける。




森や山で野宿したりして、心身ともに体を鍛えるのだ。




ヒカリの中ではその時の事を鮮明に思い出せる。
嫌な事も沢山あったけど、楽しい事はもっと沢山あった。




まるでダイヤモンドやパールの様に、大切な思い出として心の中に残っている。




アレもコレもみんな、サトシやタケシ、ポケモン達のお陰だ。




彼らのおかげで今の私があるのだと、ヒカリは胸を熱くする。




「ポチャ?




ポッチャマを強く抱き締め、かつての旅の仲間達と早く逢いたい……。





ヒカリがそう思いを馳せていると……その思いを踏みにじるかの様に、期せずしてバスが勢いよく停車した。




「きゃ!




「ポチャア!
5 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:12 ID:p3kkTtj5
あまりの勢いの停車に、ヒカリは前の座席に頭をぶつけそうになったが、ポッチャマが寸前で自ら前に出て、クッション代わりとなった。


「ポ……ポチャ……


「きゃあ!ポッチャマ大丈夫?


ポッチャマは顔を赤くしながら、フラフラと立ち上がり、


「ポチャア!ポチャ、ポチャ、ポチャア!


涙目で運転席に向かって抗議した。


「も、申し訳ありませんお客様!前にポケモンの群れが出てきて……



運転手がマイクを使って、車内にアナウンスする。

外を見ると、確かに何かのポケモンが砂埃を上げながら走り去っていた。
6 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:18 ID:p3kkTtj5

「ちょっと!おばあちゃんが今ので頭を打って動かないの!


車内で悲痛な叫び声が上がった。


ヒカリは振り返ると、確かに後ろの座席でピクリともしないおばあさんが床に横たわっている。


それを確認した運転手は慌てて席に戻り、再びマイクを握ってアナウンスをした。



「すみません、お客様!緊急事態につき、先程出発した街へと引き帰らせて頂きます。何卒ご迷惑ご容赦下さい!



運転手はそう言ってバスをUターンさせ、元来た道を引き返す。



ヒカリは席を立ち上がり、床に横たわるおばあさんの元へと近寄ろうとして……


「何よ、アンタ!近寄らないでよ!


「きゃ!


横にいた女の子に突き飛ばされた。
ヒカリは頭を打たない様に、バスのポールに捕まり、態勢を立て直す。


「ちょっと、いきなり何すんのよ!


「ポチャア、ポチャア!


ヒカリとポッチャマは非難の声を女の子に投げかけると、女の子は引かずに鋭い目でヒカリを睨みつけた。


「医者でもない癖におばあちゃんに近寄らないでよ!下手にいじられたらこっちが困るの!


「医者よ!なんなら証拠見せたげる!


ヒカリはそう言うと、バッグから医者の証明書カードを女の子に見せつけた。


ヒカリは数年前に短期スクールを出て、医者の資格を取っていた。


まだ新人研修者扱いだが、それなりの知識はある。


「私が診るから、早く退いて!


ヒカリは鬼気迫る顔で女の子に迫ると、バツが悪そうにおばあさんの横をどいた。


ヒカリは跪いておばあさんの脈拍を見てみる。


……異常は見当たらない、次は突っ伏している状態の顔を少し持ち上げ、外傷を見てみた。


本来なら頭を打った場合、動かさない方が得策だ。


しかし、救急隊が到着した時、少しでも症状を伝える必要がある。


見てみると、軽いコブはあったが、脳内出血を起こしている風には見当たらなかった。


「脳しんとうの様ね……緊急性は無いけど、一応は病院で見てもらった方がいいわ。


ヒカリはうつ伏せのおばあさんを仰向けにして、頭の下に自分のバッグの中にある、小さいマットを敷いた。


と、その時。


再びバスが急停車して大きく揺れる。


「きゃ!


「ポチャア!


頭を打たない様に近くの座席に掴まりながら、ヒカリは今度は何だと運転席を見る。



「く、クソ!またポケモンが前に!


見ると、今度はポケモンがバスの前に出て、バリアの様な技で車体をせき止めていた。
7 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 13:44 ID:z0btr4Tp

空間が大きく揺らめいて、存在を視認出来ないほどの強力なバリアだ。


並々ならぬオーラとパワーをヒカリは感じた。


「ポチャア!ポチャア!


ポッチャマに声をかけられ、ヒカリはハッと我にかえる。


ポッチャマは床に横たわるおばあさんを指差していた。このままじゃあ早く病院に行けないって事だろう。


ヒカリは意を決して運転席へと歩みを進めた。


「運転手さん!バスの扉を開けて!


「お、お客様!?今外に出るなんて無茶ですよ!


「大丈夫!私こう見えてもトレーナーだったんだから!ポッチャマと私であのポケモンを何とか引き付けるから貴方は早く町に向かって!


「で、でも……


なおも食い下がる運転手に、ヒカリは胸ぐらを掴んで叫ぶ。


「良いからお願い!私に任せて!


運転手はコクリと頷いて外へと出るドアのボタンを押した。


ピーッと音がして、扉が開く。


ヒカリは幾つかの小銭を料金入れに放り投げ、勢いよく外に出た。
8 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 00:08 ID:bP7hQiuw
支援
9 名前:ジョー 投稿日:2017/01/10 00:33 ID:NALpbdma
ポケモンSS描いてるジョーと言います

主さんの作品面白いですね。支援させてください
10 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:10 ID:YZUxHW7I

「ッ!このポケモンは……!?



それは真っ赤な瞳をした、ルカリオだった。
片手からバリアーの様な技を発生させ、バスをせき止めていた。



ルカリオは落ち着いた様子で、ヒカリとポッチャマを見つめている。



「ルカリオ!貴方何でこんな事を!怪我人がいるの!早く退いてよ!


「……



返ってきたのは返事では無く、強烈な悪の波動だった。



ポッチャマはヒカリを蹴飛ばして、悪の波動の軌道上から逸らさせた。



そして自らは蹴飛ばした反動でくるくると回転しながら技を避ける。



トライポカロンで鍛えたポッチャマの身のこなしは、既に完成されたレベルだった。



後ろからは悪の波動が炸裂し、岩の破片がパラパラと降ってくる。


「ポッチャマ!冷凍ビーム!


「ポッチャア!


そして、その動きをある程度予測していたヒカリが尻餅をついた状態で指示を出す。



ポッチャマはすかさず、ルカリオへと向けて冷凍ビームを繰り出した。



「!?


ルカリオは驚きながらも、大きくジャンプをしてそれを避けた。



せき止めてられていたバスが、動き出す。


ポッチャマの冷凍ビームが少しばかりバスの車体にかかったが、大きな問題は無かった。



運転手はヒカリ達に大きく頭を下げながら、猛烈な勢いで町へと向かって行く。



ルカリオはそうはさせまいと思ったのか、空中でまた悪の波動を作り出し、バスに向かって撃ち込んだ。



それをポッチャマが冷凍ビームで食い止める。
ルカリオはそれを受け、今度はヒカリ達に敵意の視線を向けた。



完全にターゲットが切り替わった様だ。
11 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:13 ID:YZUxHW7I

大きく唸り声を上げながら地面に着地し、猛烈なスピードでこちらに向かってきた。



「ハハッ……ちょっと後悔。ポッチャマ!地面にバブル光線!



「ポッチャア!



ポッチャマがバブル光線を地面に放つと同時に、砂埃がもうもうと上がり、その場の視界がゼロになる。



ヒカリは立ち上がり、ポッチャマと一緒に近くの森へと駆け出した。



「グルァァアアア!!!



「る、ルカリオってあんな鳴き声だっけ!?



「ポ、ポッチャア!


違う気がする、とポッチャマは首を振りながら猛然と走る。



ヒカリもまた、息を切らしながら猛然と走りながら、新入した森の地形を見ていた。


「クッソォ……何でこんな日に限ってこんな目にあうかな!トラブルメーカーのサトシ達と別れて平穏な日々を過ごしていたのに!サトシの故郷に近づいたからかな!?


「ポチャ、ポチャア!


後ろから幾つもの悪の波動が飛んでくる。



近くの木々に命中し、とてつもない炸裂音が響き渡る。



木々の破片が飛び散り、それがヒカリの脇腹に一つ突き刺さった。



「カハッ……


「ポチャ!?


ヒカリはその場に倒れこむ。


ポッチャマが慌ててそれを受け止めた。
12 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:15 ID:YZUxHW7I

後ろを見てみると、ルカリオがゆっくりとした歩みでこちらに近づいて来ていた。



心なしかその口元は笑って見える。



ルカリオは両の手から、轟々と燃える炎を出した。


「ウッソォ……あんな技ルカリオって使えたっけ?……ポッチャマ、私の事は良いから早く逃げてって……逃げる訳ないか、貴方の事だから。



「ポチャポチャ!!



当然だ、とでも言いたげにポッチャマは涙目で胸を張る。



ヒカリはこんな状況でありながら、クスクスと笑みをこぼしながら、小さな相棒を抱きしめた。



「じゃあ……アイツを倒して、一緒にサトシ達に会いに行こっか?



「ポチャポチャ!



望みはハッキリ言って薄い、だが、賭けるしか無かった。



ヒカリはポッチャマを放し、ルカリオと対峙しようとした時、ルカリオが一瞬ブレ、そして姿を消した。



「エッ?……



数瞬の時が流れ、突然ルカリオが目の前に現れる。



まるでエスパータイプのテレポートの様だった。
ルカリオはポッチャマを蹴り飛ばし、遠くへと吹っ飛ばす。



「ポチャア!!



「ポッチャマ!



ヒカリが叫ぶと同時に、ルカリオはヒカリに対し、拳を上げていた。



拳を天高く上げ、作り出しているのは悪の波動だ。



今まで見た事の無いくらい、大きい悪の波動だった。



「あーあ……サトシ達にもう一度……会いたかったな……



ヒカリは涙を浮かべていた。



そして覚悟を決め、ゆっくりと目を瞑ろうとした時……聞き覚えのある声と、見覚えのある黄色い小さな背中が見えた。
13 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:18 ID:YZUxHW7I

「ピカチュウ、アイアンテール!



「ピッカァ!



ルカリオは横からの乱入者に思いっきり弾き飛ばされる。



凄まじい威力のアイアンテールだった。



あまりの衝撃に、ヒカリの体は少しばかり吹き飛んだ程だ。



「きゃあ!



「よっと、間に合ったみたいだな……



聞き覚えのある声。
吹き飛んだヒカリの体を優しく受け止めた人物から聞こえた。


ヒカリは自分でも無意識に涙を流しながら、その方向を向いた。



その人は……。



「サトシ!!



「ひ、ヒカリ。間に合って良かった。丁度、近くにいたら妙な爆発音が聞こえてさ……きてみたらこんな状況に……



サトシだった。



サトシは何故かヒカリの顔を見て赤くなりながら、自分の現れた経緯を説明する。



そして、サトシはヒカリをお姫様抱っこすると、妙に息を荒くしながら、ピカチュウに指示を出した。



「ピカチュウ、ルカリオがまた起き上がるぞ。適当に暫く動けなくしてやれ。



「ピッカァ



ピカチュウは倒れているルカリオに近寄ると、今度はエレキボールを作り出し、ルカリオの顔面に叩きつける。



もうそれは、爆発だった。
こんな技は……威力は見たことが無い、それ程の迫力だった。


「あ、あれがポケモンマスターのピカチュウ……



思わず呟くと、サトシは照れた様に笑いながら、静かに頷いた。


「ああ……最強で、最高の相棒さ。



爆煙が晴れ、ピカチュウの後ろ姿が見えた。



もはや世界中で知らないものはいない、背中に大きなキズのトレードマークを背負った最強のピカチュウ。



畏怖の象徴とまで言われたその背中は、とてつもなく、頼りに見えた。
14 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:28 ID:YZUxHW7I
支援ありがとうございます。作者です。実を言うとポケモンあまり詳しく無くて、最近アニメにどハマりして書き始めた感じです。なので自分の想像で書いてしまう場合が多々あるかもしれません。何卒ご容赦ください。
15 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 22:52 ID:x992BiqI
ゴォォォッと未だに爆煙が舞う森の中、ヒカリとポッチャマは無事サトシに救出され、近くの川のほとりで治療を受ける事となった。



先ほどのルカリオはサトシがモンスターボールで捕まえ、現在は彼のバックの中で眠っている。



「いてて……



「む、無茶しやがって……ほ、ほら。傷はどうだ?


「それが……まだ脇腹に突き刺さったまんまで……結構木片が大きいから病院に着くまでこのままにしとくわ……



「見してくれ



サトシは大きく息を吸い込むと、意を決した様にヒカリの服を捲って傷を見た。




ヒカリはお腹とはいえ、初めて男性に服を捲られた為に少しだけビクッとしたが、羞恥心より痛みが優っていた。




黙ってサトシに傷を見せる。




「やっぱりか……コリャまずいな



「えっ、どうしたの




気になってヒカリはサトシの顔を見ると、真剣な眼差しで傷跡を凝視していた。



暫くして目があうと、サトシは顔を赤くしながら顔を背ける。



ヒカリが首を傾げていると、サトシがハッと何かを思い出した様にヒカリに向き直った。



「な、なに?どうしたの?



「ヒカリ……あんま傷口痛くないだろ?



「ま、まあ……確かにこの傷ならもっと痛いかな〜と思ったけど、何でかそこまで痛くないわ。大丈夫よ。でも……どうして分かったの?



「ルカリオの毒技のせいだ、感覚が麻痺してるから今はあんま痛くないだろうけど……このままじゃあ毒が広がって死ぬぞ



「ええ!?毒技!?なんで……



ヒカリが驚くのも無理は無い、なんせ毒技など浴びた覚えは無いからだ。




しかも刺さっているのはルカリオの悪の波動で散った木片。確かな医療とポケモンの知識を持っているヒカリには到底信じられなかった。
なんせ……ルカリオには毒の特性は無い。



「サトシ……ルカリオには



「さっきのは遺伝子操作された改造ポケモンだ。最近ああいうのが多いんだよ



ヒカリは耳を疑った。
遺伝子操作?改造ポケモン?しかもそれが最近多いって?
ヒカリは困惑しながら口を開く。
16 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 23:05 ID:x992BiqI

「その……遺伝子操作って本当?だ、誰が何の為にそんな事を……


「それより今は治療だ。ヒカリ、ポケモンに乗ってマサラタウンまで行くぞ



困惑するヒカリを他所に、サトシはモンスターボールを取り出してポケモンを出した。
そのポケモンは大きな翼を持った鮮やかな橙色のリザードンだった。



「わあ……



思わずヒカリ感嘆の声をあげると、リザードンは誇らし気に背中を見せた。
乗れという事だろう。



ヒカリはサトシに抱えられて、リザードンの背に乗り、あっという間に空高く天空へと飛び上がった。
17 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 23:39 ID:x992BiqI

ここはマサラタウン。
人口も少なく、ポケモン研究の大権威のオオキド博士のいるオオキド研究所と、寂れた植物園くらいしか目新しいものは無い、静かな街だ。




その為か野生のポケモンも近辺に沢山垣間見え、のんびりとした空気感が漂っていた。




そこに、凶悪そうな古傷を沢山持つ、サトシとヒカリ、ピカチュウを乗せた(ポッチャマはヒカリのボールの中)リザードンがオオキド研究所のポケモン広場に降り立った。



サトシはリザードンをモンスターボールに戻し、ヒカリの手を取る。



「ヒカリ、少し持ち上げるよ……ハアハア



「サトシ?……どうでもいいけど何でさっきから鼻息が荒いの?




「えっえっ?……ご、ゴメン



ヒカリは赤面しながら謝るサトシを不思議に思いながら、言葉に甘えてサトシに身を預けた。
サトシはヒカリを軽々と持ち上げ、オオキド研究所の中に入っていく。




ヒカリは必死に鼻息を抑えて呼吸をするサトシを見ながら、背が伸びて、体もより一層逞しくなったサトシを頼もしく思っていた。


『……サトシ、何だか逞しくなっちゃって……





しばらく行くと、建物のキッチンの様な部屋に入った。
その部屋にはガッシリとした体型には不相応な、可愛らしいピンクのエプロンを着た男が鼻歌を歌いながら流し場で炊事をしていた。



周りにはその炊事を見届ける沢山のポケモン達の姿がある。



ヒカリにはその後ろ姿に、確かな見覚えがあった。




「よーし、みんな。もうすぐタケシ特製スペシャルポケモンフーズが出来上がるぞ!……はあ、たくっ、それにしてもサトシの奴、朝っぱらから外をほっつき歩いて……パーティーにちゃんと間に合う様に帰ってくるのか?




「聞こえてるぞタケシ。ちゃんとお客さんを連れて帰ってきたぞ!



ん?と振り向いた男は……ヒカリの思った通り、かつての旅仲間、タケシだった。
タケシはサトシを見ると、呆れた様な表情を浮かべて……




「あ!おい、サトシ。お前どこ行ってたんだよ?パーティーの主役がその辺ほっつき……って!その抱き抱えられているのはヒカリか!?その傷どうしたんだ!
18 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 00:09 ID:sannKG9M
タケシはヒカリを見るなり、慌ててこちらに走り寄ってきた。


ヒカリ「タケシ……久しぶり


タケシ「久しぶりじゃないだろうヒカリ!……ああ、ひどい傷だ……サトシ!何があったんだ!?



サトシ「散歩してたらポケモンに襲われているヒカリを見つけたんだ、ヒカリは今そのポケモンのせいで毒状態になってる……タケシ、悪いけど研究所の倉庫から薬を持ってきてくれないか?




タケシ「何!?分かった、すぐ、持ってくる!



タケシはそういうと、キッチンを風の様に飛び出していった。



サトシ「さてと……ヒカリ、悪い



ヒカリ「えっ!?何?



サトシ「ちょっと痛むぞ



そういうとサトシは、ヒカリの脇腹に刺さった木片を勢いよく引き抜いた。




ヒカリ「っ!!?




あまりの痛みにヒカリは意識が遠くなり、すぐ様意識を失った。
19 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 01:15 ID:sannKG9M
微睡みの中、ヒカリは夢を見ていた。
まだかなり幼かった、子供の頃の夢だ。



近所のスーパーで母親に連れられ、ヒカリは沢山の商品棚にキラキラとつぶらな瞳に星を浮かべて視線をめぐらしていた。



ヒカリは自分の好物を見つけ、母親の持っているカゴにお菓子を放り込もうとして怒られる。
それを数回繰り返して、見兼ねた母親にカゴの上に乗せられ、監視下に置かれた。



そんな夢。


今覚えば恥ずかしくも、思い出せば微笑んでしまう様なそんなエピソード。
そんな中で、ヒカリは誰かからの呼びかけで目が覚めた。



………………………………

……………


?「ヒカリ……ヒカリ……大丈夫?


ヒカリは意識が完全に覚醒し、自分に声をかけてきた人物へと視線を送る。
それはベリーショートの髪型をした、背の低い、とても可愛らしい同年代くらいの女の子だった。



ヒカリ「……え?あなた……だれ?



ヒカリの質問に女の子は目をパチクリさせ、ヒカリにおかしなモノを見る目を向けた。



?「何行ってんのさ?……ボクは……ってあれ?……またボクはいつの間にこの姿に……ま、いっか



女の子はピョコッと立ち上がり、ヒカリに背を向けて歩き始める。



ヒカリ「ちょっと!待ってよ、あなた一体……て、え?


呼び止めたヒカリは、女の子がスッポンポンの全裸な事に気がついた。
そして背中には、目立つ大きな傷が見えた。



ヒカリ「……



言葉を失っているヒカリを他所に、女の子はガチャリと音を立てて、部屋から出て行った。



……暫く放心してから、ヒカリは改めて自分が寝ていた部屋を見回してみる。



ポケモンのポスターやら、モンスターボールのレプリカやら、トロフィーなんかが飾ってある如何にも男の子らしい部屋だった。
ヒカリはその部屋のベッドで寝ていたのだ。



イマイチ状況が掴めずにヒカリは戸惑っていると、ガチャリと音を立てて部屋の扉が開いた。



「あら、起きてたの?



ドアノブに手をかけ、心配そうに声をかける女の子だった。




彼女はヒカリを見つめたままゆっくりと歩み寄ってきて、ヒカリの寝ていたベッドに腰をかけて座った。
20 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 22:32 ID:KAClwio9
ユーチューブにopとed付きでアップしてみました。宜しければご覧下さい。
21 名前:名無し 投稿日:2017/01/13 00:02 ID:lzPYphSM
支援
22 名前:名無し 投稿日:2017/01/14 14:13 ID:lXBbwuZm
支援です
23 名前:僕◆K17zrcUAbw 投稿日:2017/01/18 15:52 ID:VwLtWKE1
支援
24 名前:名無し 投稿日:2017/01/19 01:04 ID:xJIuRuZw
支援
25 名前:名無し 投稿日:2017/01/20 00:34 ID:n1vvs5sG
ヒカリ「貴方は……誰?




少女は短めな髪を横に束ねただけのシンプルな髪型をしていた。
色は鮮やかな薄オレンジ色。

暗い色の髪型を持つヒカリからしたら、少し羨ましかった。




少女はヒカリを見つめたまま、にっこりと微笑んで口を開く。



カスミ「カスミよ。ハナダジムのジムリーダーやってんの。サトシとタケシとは昔の旅仲間って感じかな。




カスミ……聞いた事ある、と。
ヒカリは脳の淵に眠る、深層の記憶を呼び起こしてみる。




やがてヒカリは、夜の森で野宿をするときに、火を囲んで月明かりに照らされながらサトシとタケシから聞かされた、かつての旅仲間についてのエピソードを思い出した。




自称、おてんば人魚のカスミ。
少し強気な性格で、タケシの暴走を止める当時はいなかったグレッグルの役割を担当していたのだとか。



ヒカリ「カスミさん……あ!昔タケシから聞いた事あるわ!一番最初の旅仲間だって。





カスミ「まあ、そうなるのかな?久しぶりに会ってみたけど、サトシもタケシも随分変わってたわ。特にサトシはポケモンの事しか脳にないバトルマシーンみたいな奴だったけど……





ヒカリ「ああ、確かに!サトシってば旅してる時も休んでる時もポケモン、ポケモン言ってソワソワしてた!





カスミ「だ・け・ど……今はアイツも思春期真っ盛りの飢えたグラードン……いや、ヒコザルね。ヒカリさんも気をつけてね、貴方とっても可愛いから油断していると襲われちゃうわよ?





カスミはやれやれといった感じで肩をすくめながら言った。
対して、ヒカリは不思議そうに首をひねる。





ヒカリ「思春期……ヒコザル?……サトシが私を襲う?どういう事ですか、カスミさん?




カスミはずるっと体勢をオーバーに崩しながら、ヒカリを見つめる。




カスミ「まさか……気づいてないの?貴方、サトシに負けず劣らずの鈍感系ね?




ヒカリ「えっ?……どゆこと?
26 名前:名無し 投稿日:2017/01/20 01:30 ID:96xUC1X7
支援
27 名前:名無し 投稿日:2017/01/20 07:48 ID:IrCcCWzO


カスミは半ば呆れを含んだ溜息を漏らした。




カスミ「いい?サトシはね、今思春期真っ盛りなの。思春期にはね……男は女の子を意識してしまってしょうがなくなるのよ、それで毎日エッチな事しか考えなくなるの。




ヒカリ「ええっ!!あのサトシが!?……毎日エッチな事ばかり考えているの?



ヒカリはにわかに信じられなかった。
あのポケモンバトルばかりに傾倒していた、バトルマシーンのサトシが女の子を意識してしょうがなくなっているなんて。

しかも、今では日がなエッチな事を考えているのだとカスミは言うのだ。




ヒカリ「うーん……でもさすがにそれはないんじゃないの?



カスミ「タケシを思い出してみてご覧なさいな。アイツはいつも綺麗なおねぇさんを見ると、走り寄って愛の告白してたでしょ?アイツは当時十五歳、サトシも今は十五歳。年齢的に、タケシと同様の思春期を発動させてもおかしくないと思わない?男は十三歳から十八歳までにかけて思春期を爆発させて変態になるって言われているわ。





ヒカリ「そんなに長い期間!?変態に!?……でもやっぱりサトシはその……『思春期』なんかじゃないと思うなあ……だって今日も再開した時、目も合わしてくれなかったし。私、妙に避けられてるような感じがしたんだけど?タケシと同じとは思えないな。




カスミは目をパチクリさせた後……はあ、と溜息を漏らした。
そして、今度はヒカリに向け、諭すような口調で口を開く。
28 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 13:47 ID:0qXxjUJX

カスミ「いい、ヒカリ?男の思春期には沢山の種類があるの。一つはタケシみたいな、ガッツリ女の子に擦り寄るタイプ。そして、もう一つは奥手で女の子と会話する事が出来なくなってしまうムッツリスケベ、タイプね。




ヒカリ「む、ムッツリ?




カスミ「そう。そりゃもうムッツリスケベタイプは厄介よ、ちょっと話しかけても恥ずかしいのか返事してくれないし、挙動不振になりがちなの。どう?サトシに当てはまるでしょ?





ヒカリ「ま、まあ……確かに。





半ば強引な説だと思ったが、顔を赤らめながら逸らすサトシを思い出し、ヒカリはなんだか納得した。
29 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 20:40 ID:biwggiHC
それと同時に、ヒカリは自分がルカリオに襲われて深手を負ったのを思い出す。
ーーーーそうだ、私は脇腹に大きな木片が刺さっていたのだ。
あの後どうなったのだろうか?





ヒカリは恐る恐る脇腹を見てみるが……無かった。
無かったのだ。
ヒカリは混乱して頭を抱えた。
無い、無いのだ……あの深手を負ったハズの傷が。





カスミ「えっ?……ど、どうしたのよー?




ヒカリ「カスミさん……私、ここに運ばれてくるまでの記憶がないんですけど……何があったか聞いてますか?





カスミ「そ、そりゃ気絶してたから記憶がないのも当然よ。貴方はバスの旧ブレーキで頭を打って気を失っていたの。たまたま通りかかったタケシとサトシがオオキド研究所で脳に影響が無いか見たんだけど……何も異常は無かったみたい。それにしてもこんな日に限ってこんな事が起こるなんてね。




ヒカリ「ち、違う……





カスミ「へっ?





ヒカリ「る、ルカリオは?脇腹の傷は?私一体どうしちゃったの!?なんで……あれ全部夢だったって言うの?






カスミ「ちょっ、ちょっと落ちついてよヒカリ……。大丈夫?頭を強く打ったから混乱しているだけよ。


30 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 22:37 ID:0qXxjUJX
ヒカリ「私……ちょっとサトシに聞いてくる!



カスミ「ちょっと!ヒカリ!?



ヒカリはそう言うとベッドから飛び起きて、カスミの制止を振り切りながら部屋の外に出た。




…………………………………

…………………



タケシ「まさかお前がこんなに女に興味を持つなんてな……俺は嬉しいぞサトシ!



現在、サトシの家の庭では香ばしい炭特有の匂いが充満していた。

サトシはバーベキューコンロの下を団扇で扇ぎながら、火力調整をしている。
タケシは上から炭を入れながら、大げさに涙を流していた。



今庭にいるのはこの二人だけだ。
パーティーが始まる時間は午後6時、現在は3時半。
パーティー開始までだいぶ余裕があるが、コンロを何台も設置している為、火起こしにかなりの時間を要するのだ。



サトシ「な、泣く事ないだろうタケシ。そりゃ俺も年頃の健康な男子だ。そりゃ……女の子とチョメチョメしたいと思わないハズがないだろう



タケシ「そうだろ!そうだろうなあ!……でもなあ……お前絶望的なまでに奥手になってるよな?バトルマシーンだった頃はよく女の子ともケンカしてたのにな。なんで今はそんなに女耐性なくなったんだ?



サトシ「う、うるさいな!誰がバトルマシーンだ!山に篭ったりしてたらいつの間にかこうなっちまってたんだよ。今じゃあ女の子と視線も合わせるだけで赤面しちゃうんだ……


タケシ「……重症だな


タケシは袖を捲り上げながらお試しで肉を網に乗せてみる。
ジュージューと音を立てながら、香ばしい匂いを漂わせて、近くで遊んでいたポケモン達までもがよだれを垂らしていた。

フードカンパニーが作ったジャガイモとコンニャクで合成された人工の肉だ。
古代人はポケモンの肉を食べて力を強めたなんて話もあるが、今そんな事をしたら死刑では済まされない。この世界ではポケモンを殺す事は殺人よりも罪が重いのだ。




ご家庭用の人工肉とは違い、かなりお高めの肉だが、ポケモンマスターとなったサトシには莫大な賞金が手に入っていた。
サトシが庭に噴水まで作ろうとしたくらいだからこれ位の出費は痛くも痒くも無い。




二人の作業しながらの談笑は続く。
タケシはサトシと男特有の会話ができるのが嬉しくて堪らないらしい。
ニコニコしながら話を続けていた。




タケシ「よーし!そんじゃあ経験豊富な俺が人肌脱いでやるか!サトシ、お前に女のなんたるかを教えてやる!



サトシ「ま、まじで!?



タケシ「ああ……ていうかお前、何たってポケモンマスターだし、ルックスも悪くないから世界中に女の子のファンがいるのを知らないのか?俺の所にも紹介しろって何人も来たしな。お前に必要なのは今は相手じゃない、女の子に対しての耐性だ!



サトシ「ええ、まじで!しかも具体的!さすがタケシ!……でも耐性って言ってもな……どうすりゃいいんだ?
31 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 23:23 ID:xkizqGTQ
うえーい!
いい感じ メガ支援‼
32 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 23:29 ID:0qXxjUJX
タケシ「そうだな、まずはーーーー



ヒカリ「サトシ!!



サトシ「ほえっ?



タケシとサトシは揃って声のした方向に顔を向ける。そこには裸足のまま、寝かせていたサトシの部屋から庭に出てきたヒカリの姿があった。



サトシ「ひ、ヒカリ!?



タケシ「おいおい……どうしたんだよヒカリ?いきなり動くと頭に響くぞ




ヒカリ「頭じゃ無い!!



サトシとタケシはヒカリの大きな声にビクッと身を震わせる。
そして、二人で顔を見合わせた。



タケシ「お前……なんかヒカリを怒らすような事をやったのか?




サトシ「そんな筈はないだろう?俺たち二人でバス事故から気絶しているヒカリを連れ出したから、怒らすどころか、一度も会話してないじゃないか。




タケシ「えっ?……バス事故?……そういやそんな気も……ああ思い出した。そうだったっけな。そうだよな。



サトシ「ひ、ヒカリ。どうしたんだよ?裸足で出てきて。



ヒカリ「サトシ、あの遺伝子操作されたルカリオは!?私の傷はなんで治っているの?



ヒカリが尋ねると、サトシは一瞬顔を強張らせ、直ぐに何時もの笑みに戻った。



サトシ「ははっどうしたんだよヒカリ、ルカリオってなんだよ。お前は多分気を失っている間に夢でも見たんじゃないのか?



ヒカリ「ゆ、夢?えっ……あれ?……どっから……夢だったの?


あんなにリアルで痛い思いをしたのに……全てが夢だったのだろうか?
確かにある筈だった傷は綺麗サッパリ無くなっている。ヒカリは混乱しながらサトシの至近距離に走り寄った。



ヒカリ「襲ってきたルカリオの事本当に覚えてないの!?サトシとピカチュウが助けてくれたじゃない



サトシ「ひ、ヒカリ……ち、近いよ。落ちつけって。だから俺はルカリオなんか知らないよ



33 名前:名無し 投稿日:2017/01/21 23:33 ID:xkizqGTQ
31からの引き続き支援
34 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 00:13 ID:cfkYtvW2
ヒカリ「……本当に夢だったの?


サトシは赤面しながら後ずさって、ヒカリから離れた。大袈裟に呼吸を荒くし、ヒカリのまっすぐな視線から目をそらす。



サトシ「そ、そうだよ……なんならポッチャマとピカチュウにも聞いてみようか?おーいポッチャマ、ピカチュウ!!ちょっと来てくれ!!



ピカチュウ「ピカ?



ポッチャマ「ポチャ?



遠くの方で遊んでいたポッチャマとピカチュウがドドドドッと地響きを鳴らしながら走り寄ってきた。



ポッチャマはヒカリを見つけ、元気よく彼女の胸に飛び込んできた。



ポッチャマ「ポチャア!!


ヒカリ「ポッチャマ!……ポッチャマ、ルカリオの事覚えてない?毒技とか手から炎を出すルカリオなんだけど……



ポッチャマ「ポチャア?



お前は何言ってんだ、という様な瞳でポッチャマはヒカリを見つめる。
ヒカリはそれを受け、周りにいたサトシ、タケシ、いつの間にか庭に姿を現していたカスミの反応を伺う。


カスミ「毒技を使うルカリオ?


タケシ「手から炎?


ピカチュウ「ぴーか?


サトシ「ぶはっ


サトシが吹き出したのにつられ、タケシとカスミも豪快に笑い出した。
ポッチャマまでもが地面をバンバン叩いて爆笑している。
それを受け、ヒカリはだんだん頰が赤くなっていくのが自分でも分かった。



ヒカリ「ええー!全部本当に夢だったのー!?


カスミ「はっはっやばい、ヒカリ面白すぎ!初めて会った気がしないわ!ていうか寝ぼけ過ぎ!



タケシ「あっはっは!やっぱりお前は何かとやらかしてくれるよな?最高だ!最高のキャラだぞ!



ヒカリ「も、もう〜!やめてよ、恥ずかしいよ!



「おーい、みんな!!


ひとしきりみんなで笑い会っていると、遠くからサトシ達に呼びかける声が聞こえた。ド派手なロードバイクに乗った男女だ。
背の高い、女の方が運転していた。

彼らはサトシ達の家の前に止まると、赤と黒のフルフェイスヘルメットを脱ぐ。



ハルカ「ちょっと早く来すぎたかも



マサト「そうだけど世界初のポケモンマスターに会えるんだから待ちきれなくてね!久しぶり、サトシ、タケシ!



タケシ「おおーマサトか!デカくなったなあ……なあサトシ……ってあれ?



ハルカ「サトシはあそこにいるけど……なんで木陰からこちらを覗きこんでるの?



見ると、サトシは庭にある木陰からこちらをもじもじチラチラと盗み見ていた。
タケシはそれを見てため息を吐く。



タケシ「はあ……訳あって今サトシは人見知りなんだ。俺たち男衆はパーティーの準備で火起こししてるからカスミ達は暫くの間サトシの家で休んでてくれ。ママさんも勝手に入って勝手に使ってくれって言ってたから。



ヒカリ「えっ?手伝うよ、料理の下ごしらえとかあるでしょ?



ハルカ「私も手伝うよ



タケシ「そこらへんは抜かりない、すでに前日から仕込んであるからな!



タケシが胸を張って答えると、カスミがヒカリとハルカの背中を押しながらサトシの家へと誘導する。



カスミ「そうしましょ、料理なんて男の仕事なんだから!ハルカ、さっきヒカリがね、寝ぼけてーー



ヒカリ「もう〜!!その話は無し!



ハルカ「かなり気になるかも
35 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 00:56 ID:cfkYtvW2
マサト「ていうかサトシが人見知りって……本当なの!?タケシ、あのサトシだよ!?



タケシ「あの木陰からこちらを伺うサトシを見たらわかるだろう?おーい、サトシ!カスミ達は家に入ったぞ、そろそろ出てこいよ!




サトシは辺りを見回した後、ため息を吐きながら出てきた。



サトシ「ふう……やばかった。ハルカのやつ、無駄に色々成長してやがったな……



マサト「さ、サトシ……久しぶり。


マサトは恐る恐るといった感じでサトシに喋りかける。サトシはマサトを見るなり顔をパァと、輝かせて近寄ってきた。




サトシ「おお!マサト!ポケモントレーナーになったんだってな?どうだ、強くなったか?




それを受け、マサトはホッと胸をなでおろすのと同時に、タケシに近寄って耳打ちをした。



マサト「……タケシ、本当にサトシは人見知りなの?何時ものサトシに見えるんだけど……



タケシ「男相手は平気なんだけどな……女の子を相手にすると奥手になってしまう心の病だ



マサト「な、成る程……思春期というヤツか。あのサトシがまさか女の子に臆病になるなんてね。



タケシ「理解が早いな……さすが頭脳系だ。思春期は事あるごとに気を持ってしまう恐ろしい病だ。今のサトシならハルカに気を持ってくっつくかもしれんぞ?



マサト「別に全然構わない、むしろ最高だよ!姉ちゃんなんかにはサトシは勿体無いくらいだと思うけど、もしそうなったらサトシが僕のにいちゃんになる訳だよね?ポケモンマスターが僕の兄か〜これは色々自慢できる様になるね。



サトシ「な、なんだよ二人とも……コソコソ喋りやがって
36 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 11:34 ID:s3Q0hMYR
タケシ「お前の将来についてだ



マサト「そうだよ!



サトシ「なんだよ、俺の将来って……



タケシ「あ、談笑している間に炭の火が弱まってる!サトシ、マサト、ほらほら団扇だ。扇げ扇げ!



三人は慌てて団扇を持ってそれぞれ別々のバーベキューコンロの火力調整を行う。
三人は背を向けながら、談笑を再開した。



マサト「本当にサトシがポケモンマスターなんだよね?僕、未だに信じられないよ、世界一名誉で有名人が僕の目の前にいるなんてね。



タケシ「全くだ……長年一緒に旅した俺としても未だに信じられないな。あのガキでバトルマシーンだったサトシがな……



サトシ「お前ら褒めてるのか、けなしてるのかハッキリしてくれ!俺だって大変だったんだぞ?山に篭って2年ほど自給自足の生活してたりな……そりゃもう地獄だった。



タケシ「そうだ!お前二年も音信普通だったのは山に篭ってたからなのか!お前が連絡しなくなってから俺たちはどれだけ心配したと思ってるんだよ。何故かママさんだけは大丈夫でしょってケロッとしてたけどな。本当は心配で心配でたまらなかった筈だ。



サトシ「うっ……お説教は後にしてくれよ



マサト「ねえ、ねえサトシ。山に篭ってたって言ってたけど何でなの?修行なら街でトレーナーとバトルした方が強くなると思うんだけど。



サトシは困った様に頰をポリポリと掻いて、口を開く。
37 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 18:41 ID:s3Q0hMYR
33さん、支援ありがとうごさいます!励みになります。今日の夜中も時間が空いているので8時くらいから書き始めようと思います。
38 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 19:27 ID:dhdA2XEV
支援
39 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 19:54 ID:UtYXO1C2
サトシ「どこまで話たらいいのか……うーん。まあ、成り行きってやつだな。ロケット団の三人組が深く関係してるんだ。今日あいつらが来るから詳しい事は奴らも交えて皆んなに話すよ。



タケシ「おお、アイツらも来るのか。楽しみだな。



マサト「へっ?ろ、ロケット団?



マサトは和気あいあいと喋るサトシとタケシを他所に、体を硬直させ、フリーズする。
それをサトシとタケシはおかしな物を見る様な視線を送った。



タケシ「マサト、まさか覚えてないのか?あの喋るニャースと男女の二人組だ。あんなキャラの濃い奴らを忘れる訳ないよな?



サトシ「一々丁寧に自己紹介する笑えるやつらだよ、本当に覚えてないのか?




マサト「わ、忘れる訳ないだろ!僕が驚いたのは何で敵のロケット団がパーティーに来るんだよ!



マサトが地団駄を踏みながら訴えると、サトシとタケシはお互いに顔を見合わせる。



サトシ「あれ……言ってなかったっけ?変だな……アイツらも結構巷じゃ有名人な筈だろ?



タケシ「まだカントーではの話なんじゃないのか?違う地方には知名度が行き渡ってないのかもな。
40 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 20:14 ID:UtYXO1C2
マサト「もう何がなんだか……



マサトが混乱しているのを見て、サトシは慌てて説明を始めた。



サトシ「ロケット団の三人な、今は引退して飲食店を経営してんだよ。元々アイツら器用だから飯も美味いし店は綺麗で繁盛してさ。ホワイトホールって店なんだけど今やカントーに何店も店を構えるチェーン店にまで発展してんだよ。



タケシ「サトシが帰ってきてからカスミと三人で食いに行ったんだが……ありゃ俺も舌を巻くほど美味かったぞ。それに店員のニャースが喋りながら料理を運んで来るんだ。そりゃテレビにニュースで大騒ぎだったんだぞ?喋るニャース店員の店、ホワイトホールってな。



マサト「そ、そんな事が……



サトシ「そうだよ。アイツらとは成り行きで一緒に二年ほど山に篭ってたからさ、仲良くなってWPGに行くまで一緒にいたんだ。元々アイツら悪党の素質がなかったし、途中で組織を裏切っちまってロケット団はクビ。俺も関わったりして一悶着あったんだ。まあ……結構色々あったんだよ



タケシ「俺も最初聞いた時は驚いたが……店に行ったらサービスしてくれたしな。まあ、クーポンくれただけだけど。



サトシ「はっはっは!まあ、あの流れはタダにしてくれても良かったよな!セコイとこは本当に変わってなかったぜ。
41 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 20:57 ID:UtYXO1C2
マサトはそうやって談笑する二人の姿を見て、確かな年月の経過を感じていた。
二人とも、以前とは比べ物にならない位、落ちついている。



そしてマサト自身は知らない事を沢山経験し、それを話して笑いあっているのだ。
年齢の壁、経験の壁。
それをマサトは寂しくも思い、昔との確かな違いをを感じた。



あれから六年ーーーーあの時の旅の思い出はマサト自身にとって人生で一番楽しい時期だった。
マサトも仲間を集めて旅に出た事がある。



しかし、意見の食い違いなんかでバラバラになり、何度もマサトは一人の孤独を味わった。
自分にはポケモンがいるからと言い訳しながら一人を貫いた。



結果、マサトは強くなったが、後には何も残らなかった。
周りで喜んでくれる仲間、叱ってくれる仲間、祝ってくれる仲間がいなかったからだ。




そこでようやくマサトは気がついた。
あの時の仲間達は僕にとって一番の仲間だったんだと。
笑い合い、喧嘩したり、遊んだり。



そうした事ができる仲間は他にいない。
だけどサトシやタケシは違っただろう。
僕との旅の思い出より、もっと楽しいことや、苦しい事を違う仲間達と経験した筈だ。




マサトはその事を脳裏に浮かべて、ブンブンと必死に振り払った。

ーーーーよそう。今は今で精一杯楽しむのだ。



なんせ憧れのポケモンマスター、サトシが目の前にいるのだから。



マサト笑顔を作り、火力調整を終えて二人の会話に加わった。
42 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 21:27 ID:UtYXO1C2
なんじゃこりゃ
43 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 22:37 ID:s3Q0hMYR



………………………

………………

ここはトキワシティーのほぼ中央に位置する最近流行りの飲食店『ホワイトホール』
テレビに紹介された事もあり、連日大勢の客で賑わっていた。




その厨房にいるスタッフは皆んな鬼気迫る表情で料理を作り、大きなコック帽を被った主任に指示を受けていた。



コジロウ「三種盛りとお子様ランチ追加!客は待ってくれないぞ、皆んな気合い入れろ!



スタッフ「「「うす!!」」」



この店の料理長はコジロウだった。
元ロケット団で行き場を失った連中やアウトローを従い、この店の炊事を担っている。
コジロウは誇らしげにスタッフ達の奮闘ぶりを眺めていると、不意に後ろからスパンと頭を叩かれる。



後ろを振り向くと、私服に着替えてコジロウを睨みつける、ムサシとニャースの姿があった。


ムサシ「ちょっとコジロウ、時計見て見なさいよ


ニャース「今日が何の日か忘れたのかニャ?


コジロウ「んあ?……しまった!もうこんな時間か!
44 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 23:01 ID:UtYXO1C2

コジロウ「皆んなすまない!今日は俺達は先に上がるから、お前達任せたぞ!


スタッフ「俺達の事は心配しないで下さい!


スタッフ「いつも最後まで残って下さってるんだ、たまには羽を伸ばしてきて下さいよ、我らがボス!



コジロウ「お、お前ら……



コジロウがウルウルと感動していると、またもやムサシが後ろから頭を叩く。



ムサシ「いいからさっさと行くわよ!



ニャース「後はまかしたにゃ!


スタッフ「「「うす!!!」」」


ムサシとニャースはコジロウが着替えるのを待ってから、店の横に停めてある、ホワイトホールの名前が入った白いワンボックスカーに乗り込んだ。
運転はいつもコジロウの担当だ。
ニャースは後部座席、ムサシは助手席に座った。



ムサシ「今何時だっけ?



ニャース「4時半ニャ、120キロで飛ばせばギリギリ間に合う距離だニャ



ムサシ「まぁったく……コジロウのせいだかんね!久々にジャリジャリ軍団に会えるってのに、遅刻したら面目もクソもないでしょ。



コジロウ「わ、わかってるよ。でも安全運転だ。ここで捕まったら折角の苦労がパァーーー、



ムサシ「!?ッコジロウ、ブレーキ!!



コジロウ「!!なんだ!?



走り出そうとした車は勢いよく停車し、シートベルトをつけようとしていたニャースはフロントガラスに叩きつけられた。



ニャース「ニャース!!!



コジロウ「うわっ!だ、大丈夫かニャース!?ムサシ、いきなりなんだ?



ニャース「危ないニャ!一体なんだってんだニャ!



二人からの批判を浴びたムサシはそれを物ともせず、無言のままシートベルトを外して外に出た。



ムサシ「人がいんのよ……車の前に倒れてる。



コジロウ「ええっ!?……まじかよ!



ニャース「どこだニャ!?



慌てて二人も車から飛び出すと、十五歳くらいの年齢の赤い帽子を被った少年が、車の前で倒れていた。
45 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 23:20 ID:UtYXO1C2

三人はとりあえず少年を車に乗せ、トキワシティーを軽快に走っていた。
ムサシはイライラとしながらダッシュボードに足を乗せている。


ニャースはパタパタと少年を団扇で扇いで介抱していた。


ニャース「おーい、生きてるかニャ?


少年「……う、うーん……め、メシ


ニャース「……どうやら行き倒れみたいだニャ


ムサシ「クッソ……面倒なことになったわね、あそこの病院ってまだ空いてるっけ?



コジロウ「おいおい、車に乗せたらまずくないか?ジュンサーが来るまで待った方が……。



ムサシ「私らただでさえ指名手配から一転、ジャリボーイと一緒に警察と取引して一般人の身になったばかりよ?目の敵にされてんだから、なっがい乱暴な取り調べなんか受けたらパーティーに間に合わなくなっちゃうじゃない。



ニャース「確かにそうだニャ、カントーのジュンサーにはニャー達かなり嫌われてるニャ……ニャーなんか胸倉掴まれて『繰り返してきた罪は消えないから覚えておきなさい』って言われたニャ



コジロウ「おお、こっわー。お前本当にそんな事言われたのか?そりゃ待たないほうが得策だぜ。



ムサシ「そうよ、だから病院にでも連れてって置いてった方が利口なの。
46 名前:名無し 投稿日:2017/01/22 23:50 ID:UtYXO1C2

少年「それは……困りますね。僕はこの世界の身分を証明する物は持ってません。病院にいって治療を受けてもその後は国営管理局に送られてしまいます……そしたら、僕は目的を果たせなくなってしまう……


ムサシ「んあ?


ニャース「ニャ?


コジロウ「えっ?


三者三様に三人は声を出し、急に起き上がって喋り始めた少年を見た。
少年はグキュルルルッと豪快に腹を鳴らしながらお腹をさすっている。



ニャース「ニャンだお前……身分を証明できないって……訳ありかニャ?



少年「まあ……そんなところですかね。



ムサシがダッシュボードに乗せていた足をバンッと鳴らした。
コジロウとニャースはビクッと身を震わせる。



ムサシ「なら尚更アンタに構う必要は無いわね。コジロウ、車を止めて。こんな身分も証明できないとか言うヤバそうなガキ……トラブルの元はほっぽり出して行くわよ。


コジロウ「えっ、いいのかよ?



ムサシ「こんだけペラペラ喋れるんなら大丈夫でしょ?私達は本物の飢餓を味わってきたから分かるはずよ。



ニャース「それもそうだニャ!おい、ガキ。さっさと降りるニャ!



少年「それが立つのもやっとで……。すみません、何か食べ物をくれませんか?食べ物をくれたら僕は貴方達の望む様に直ぐ消えます。



ニャース「がめついガキだにゃ……がめついのはキライじゃないニャ……



コジロウ「パーティー様に沢山料理が積んであったろ?ちょっと分けてやったらどうだ?



ムサシ「やらんでいい!


再びムサシはダッシュボードに足を叩きつける。
47 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 00:08 ID:A3ldUxU5

ムサシ「アンタ達分かってんの!ポケモンにエサをやるのとは訳が違うのよ!相手は人間、しかもガキ!これ程厄介な事は無いわ。



少年「まあまあ……落ち着いて下さい。本当に食べ物をくれたら直ぐに立ち去りますから……。いいんですか?このままほっぽり出されたら僕はホワイトホールという店の店員三人から轢き逃げされて道中で置き去りにされたと証言するしかありません……。



ニャース「な、なんてガキだニャ。がめついのを通り越して悪党だニャ



ムサシ「アンタには身分を証明できるモノが一つもないんでしょう?なら警察の取り調べでフリになんのはアンタの方よ。カントーの不法滞在者は厳しく取り締まられてんだから、ガキであろうと豚箱行きよ。



少年「さっきから話しを聞いていましたが……あなた方は警察から良く思われていないんでしょう?例え僕が不法滞在者だとしてもフリになるのはお互いさまかと……



車内に沈黙が流れる。
それを破る様に、コジロウがピューッと口笛を吹いた。



コジロウ「こりゃガキに一本取られたな。どうすんだ、ムサシ?


ニャース「駆け引きの上手い奴は嫌いじゃないニャ


ムサシは体を持ち上げ、後部座席に振り返って少年の顔を見た。


ムサシ「アンタ……名前は?どっから来たの?



レッド「レッドです。こことは別次元の異世界から来た……って言ったら信じて貰えますか?
48 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 01:16 ID:A3ldUxU5


……………………………

………………

サトシ「おっムサシからだ



サトシは懐に入れていたポケギアの揺れを感じとり、手にとって耳に当てた。



サトシ「もしもーし、何やってんだ?パーティーもう直ぐ始まるぜ。お前らが来たら皆んなビックリすと思うから早く来てくれよ。



ムサシ『……ちょっとトラブルでね、厄介事に巻き込まれたから少し遅れるわ……ああ、もう!そんなに食ったらパーティーで出すもん無くなるじゃないの!このクソガキ!



サトシ「はっ?



ムサシ『ああ、こっちの話よ。今300キロで飛ばしてるから十分くらいで着くわ。



サトシ「おいおい、ジュンサーさんに捕まるなよ?お前らただでさえ目の敵にされてんだから



ムサシ『分かっるわよ、それじゃあね



電話が切れると、サトシはポケギアを懐にしまい、パーティーの会場となる庭を二階のサトシの部屋から眺めていた。
タケシの計らいで、皆んなが到着して並べられたテーブルの席に着いてから、タケシの司会進行で登場する手筈となっている。

もう既に、ロケット団の三人以外は殆どの顔ぶれが揃っていた。


高鳴る鼓動を抑えながら、サトシは会場にいるかつての旅仲間の女の子達に視線を巡らしていた。
カスミ、ハルカ、ヒカリ、アイリス。


セレナ……は来てないか。
当然だよな、とサトシは肩を落とす。
あんか事があったのだ、来るはずが無い。


セレナを除く、カロスの面々は揃っていた。
シトロンにユリーカ。
ユリーカは身長が伸び、より女の子らしくなっていた。
サトシは三年後が楽しみだ、と下卑た笑みを浮かべる。


サトシ「ああクソっ!……なんてこった、俺はあんな可愛い女の子達と旅してたってのか。自分の愚かさが憎らしいぜ。



?「でもそれが分かった今でも手出しできないでしょ?絶望的なまでに奥手なんだから。


背後から声が聞こえ、サトシは一瞬で身構えた。
そこには……ヒカリの前にも姿を現していた、素っ裸でベリーショートの可憐な少女が立っていた。


サトシ「な、なんだ、何でまたその姿に!ってか前隠せよ!ち、乳首見えてんぞ!


サトシは目を瞑りながら、その女の子に布団のシーツを剥ぎ取って渡す。



?「別にいいよ、もう直ぐ元の姿に戻るし……ていうかいつも見てるじゃん



サトシ「す、姿が違うだろ!その格好は俺的にちょっとヤバイ!



?「はあ……サトシってば、全く。長年連れ添った相棒なのにさ……まあいいや。そんな事より、マズイんじゃないの?



サトシは女の子に背を向けながら、ピクリと反応した。



サトシ「あん……ヒカリの事か?


サトシは窓から庭の様子を伺ってみる。
ヒカリはカスミ達と固まって女子グループの輪の中で赤面していた。
今日の事でイジられているのだろう。


?「そうだよ……何でか師匠の力でも忘れてなかったじゃん。今回は夢だったとか言って何とか誤魔化したけど……。


サトシ「今日皆んなが寝静まった頃に聞いてみるよ……それより



サトシが言い切る前に、ドンドンと階段を登る音が聞こえた。
サトシと女の子は後ろを振り返り、顔を見合わせる。サトシは女の子の顔を見てボンッと赤面したが、振り絞って声を出した。



サトシ「か、隠れる場所は?



?「大丈夫だよ、もう戻るから



ダダダダッと廊下を走る音が聞こえた。
それはサトシの部屋の前で止まり、勢いよくドアノブを捻った。
49 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 01:47 ID:A3ldUxU5


……………………………

…………

ユリーカ「サットシー!!タケシがもう降りてきていいだって、さあ行きましょ。主役のポケモンマスターさん!


ピカチュウ「ピッカァ!


扉を開けたのはユリーカだった。
ユリーカは扉を開けるなり、飛び出してきたピカチュウをキャッチして顔を輝かせる。
頬ずりしながら、甘えた声を出すピカチュウにうっとりしていた。



ユリーカ「久しぶり〜ピカチュウ!途中でいなくなったと思ったら此処にいたのね?ああやっぱ可愛い!これが世界中の猛者達を葬ってきた『ガーディアン』の異名を持つピカチュウとは思えない〜



サトシ「葬ってきたとか人聞きの悪い事言うなよ……それよりユリーカ……デカくなったなあ……


ユリーカ「バカね、女の子はデカくなったな。じゃあ、なくて可愛いくなったって言うの!はい、言い直し!



サトシ「ゆ、ユリーカ。可愛いくなったなあ。



ユリーカ「前は可愛いくなかったって言うの!?酷い、サトシ!

50 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 02:46 ID:tWiBX00h
支援
51 名前:名無し 投稿日:2017/01/23 12:35 ID:Pzf2HXhi
主です。皆さん支援ありがとうございます。そして、誤字脱字が多くてすみません……他にも何か気づいた事や、気になる事があればドシドシ質問してください。因みに今日の夜から毎日睡眠時間を削って書き進めたいと思います!大分長くなる予定ですが、暇つぶしにでも楽しんでいただけたら幸いです。
52 名前:名無し 投稿日:2017/01/24 00:27 ID:DJJNZVkV
やっと仕事が終わりました、そろそろ書いていきたいと思います。
53 名前:名無し 投稿日:2017/01/24 01:32 ID:DJJNZVkV

サトシ「何でだよ!?


サトシが叫ぶと同時に、ユリーカはケラケラと笑い声を上げながら歩み寄ってサトシの腕を取る。
サトシは不覚にも成長して女の子らしくなっているユリーカにドキッとしてしまった。



ユリーカ「さあ、行きましょ。皆んな待ってるから



サトシはゆっくりと頷いて、ユリーカと腕を組んだまま、皆んなの待つ、会場の庭にと向かった。




……………………………………

……………………


タケシ「さあさあ、そろそろ登場してもらいましょうか!今現在、世界一のポケモントレーナー……ポケモンマスターとなったサトシ選手の入場です!


タケシの司会で、サトシは少々慌てながら庭へと続く窓をユリーカと共に、置いてあった靴を履いて外に出る。


サトシがユリーカに腕を引かれながら登場すると、直ぐ様仲間達からは歓声が上がり、田舎であるマサラタウンには隅々まで響き渡っているんじゃないかと思えてしまう程の声が上がった。



サトシは頭をさすって照れながら、ポケモン達とタケシが協力して作った簡易のステージに上がる。
ステージにはオオキド研究所から拝借した講義用のマイクとスピーカーが備えつけられていた。


サトシはマイクを握ると同時に、無性に緊張してきて手が震えてきた。
ポケモンリーグの世界大会時より、サトシはるかに緊張していた。


サトシ「あーあー……み、皆さん。こ、こんにちわ



シゲル「声が震えてるぞ!それでもチャンピオンか?サートシ君!



サトシはいつのまにか会場に現れていたシゲルに野次を入れられ、会場は笑い声に包まれた。
サトシ自身も思わず笑ってしまい、そのせいか、いくつか緊張がほぐれたのを感じてサトシはシゲルに感謝の視線を向ける。



シゲルは昔と変わらない、憎たらしい笑みを浮かべながらテーブルに座って踏ん反り返っていた。

隣にはニッコリと微笑むオオキド博士も居る。
後でアイツと博士とは久しぶりに話をしよう。

そう、サトシは心の中で誓いながらマイクを握る。
もう手が震える事は無かった。



擦り寄ってきたピカチュウの感触を足に感じ、確かな安堵感を覚えながらサトシは口を開く。
54 名前:名無し 投稿日:2017/01/24 02:07 ID:KnUi1F2j
支援です
55 名前:名無し 投稿日:2017/01/25 23:30 ID:c8qmXOsm
サトシ「皆さん……俺は……いや、俺達は皆さんの応援や叱責。そして返そうにも返せない様な数かずのご恩で……最強の称号……ポケモンマスターという、憧れだった大きな夢を叶えさせてもらいました。……そして今まで、いや、今でも支えてくれる仲間、家族、友達の前で、こうやってマイクを握っていると考えると……感無量です!本当にありがとう!



サトシがマイクを握り、一つ一つ噛み締める様に喋り始めると。
ずっと忙しなかった会場がシーンと、波打つ様に静まり返った。全員が全員、サトシと深い関わりを持っていた物達だ。
彼らは一様に深い喜びと賞賛の意を持って、サトシの語る心情に内心、大いに心震わせながら耳を傾けていた。



それからサトシは5分ほどでスピーチを終了させ、タケシの司会進行でパーティーの出席者達に乾杯の音頭をとった。



皆んながグラスを合わせて、入っていた飲み物をカラにすると、騒がしくも、とても楽しいパーティーがようやく始まりを告げた。
56 名前:名無し 投稿日:2017/01/27 12:05 ID:RMORDbXF
支援
57 名前:名無し 投稿日:2017/01/27 23:14 ID:kGzF4tZ5
しえん
58 名前:名無し 投稿日:2017/01/27 23:30 ID:pHsZBeOt




…………………………

……………

パーティーも始まり、集まっていた観客達も料理に手をつけ始めた頃だった。
サトシは旅で出会った旧友達に囲まれ、サトシは女の子に質問されると顔を赤らめたりもしながら、世界大会のWPGに出場するまでの音信不通だった二年間の経緯を質問され、簡単に説明していた。



サトシ「それがさ、俺とポケモン達で旅してる時にさ、悪さしてるロケット団を見つけて何時ものノリでそれを止めようとしてたんだよ『何してんだロケット団!悪さは辞めろ!』てな。




マサト「それでそれで!?




サトシ「するとアイツらさ、いつになく必死で『今度ばかりは止められる訳にはいかない!』っとか言い出すんだよ。あまりにも必死だったからピカチュウのボルテッカーでぶっ飛ばした後にさ、軽くわけを聞いてみたんだ。




ユリーカ「あはははっ!ぶっ飛ばした後にって!目に浮かぶー!




マサト「それで!?



アイリス「早く続き!




サトシ「アイツらが言うにはさ、今世界中の地下組織が集結してて、ソイツらは特に危険な集団だからロケット団が強い戦力を持たないとカントーが危ないってんだよ。俺は言ったよ『人のポケモン盗もうとする奴らも同じだろ?』ってさ。だけどアイツら一歩も引かなくて『今集まってるのはポケモンも人も殺す様な奴らだぞ、今までは強い力を持ったロケット団の庇護があったから助かってたんだ』何て言うんだ。



マサト「えっ!?そんな危ない奴らが居たの!?




ユリーカ「ど、どうなったの!?




サトシ「なら俺も協力してそんな奴らぶっ飛ばしてやる!ってロケット団と約束してさ。今まで旅してた中でも特に強いポケモンを博士に送ってもらってロケット団の三人と協力しながらそのヤバイ組織の連合とやらを倒して回ってたんだ。結構手強い奴らでさ、尚且つポケモンバトルじゃ敵わないってなったら普通に武器を使って襲ってくるんだ。それでピカチュウも背中に傷を背負っちまってさ………




話を聞いていた全員の視線がピカチュウに注がれる。ピカチュウは視線を感じると、何時もの愛らしい笑顔を見せながら、皆んなに見せる様にそっと振り向いて背中を見せた。




現在のトレーナー界隈での畏怖の象徴とさえされる、そのイナズマの様な傷跡が露わになった。



衝撃的な話に皆んな言葉を失う中、黙って話を聞いていたヒカリがピカチュウに近寄って、その傷跡にそっと触れる。




ヒカリ「……かなり深い傷ね……命に関わる様な。
59 名前:名無し 投稿日:2017/01/27 23:50 ID:pHsZBeOt

アイリス「ヒカリ、分かるの?



カスミ「ヒカリは看護スクール出だから医療の知識があるのよね?



ヒカリ「うん……資料で色んな患者を見てきたけど……こんな深い傷は初めて



シゲル「それ程悲惨な現場だったんだな……



サトシ「ああ……それでコイツは一回死にかけたんだ……そりゃ俺達も焦ってさ。戦ってたのがヒミダ山脈っていう未開の地で、組織の連合が集まってた本元の基地だったから……近くにポケモンセンターも無いし、居たのはロケット団の派遣したエリナっていう若い看護担当だけでさ、急遽ヒミダの敵の基地で治療を行なったんだ……。



誰かがゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
誰もそれが誰かなど確かめず、サトシの語る真実に耳を傾ける。
60 名前:名無し 投稿日:2017/01/28 00:44 ID:BeP1e9GL
サトシ「ま、色々あったけど結果無事にピカチュウは助かったしな。皆んなもコイツが世界大会で強敵をぶっ倒していくのを見たろ?今じゃ元気有り余り過ぎて困ってる位さ。



ピカチュウ「ピッカピー♪



ピカチュウが陽気にジャンプして自分の姿を皆んなに見せつけた。皆んなはその愛らしさと、負ったであろう傷を感じさせない元気さに安堵して口元を綻ばせる。




マサト「それでそのヤバイ奴らの連合ってどうなったの?


マサトが尋ねると、サトシは表情を曇らした。



サトシ「それがな……




ムサシ「まだ残ってるわ、組織しての力は弱いけどね……一番生かしちゃいけない奴が逃しちゃったのよ……てーかあんたらパーティーだってのに何て話をしてんのよ。ジャリボーイもアンタ空気読めないわね。



コジロウ「おいおいおい、俺達が来たのはお通夜かよ?パーティーは呑んで騒いでだろ?



ニャース「シンミリしちゃって会場が陰気くさいニャ。ここらで一番美味いもん食わしてやるからニャーをもっと楽しませるニャ




皆んなが聞き覚えのある声に驚愕しながら声の聞こえた後方へと視線を向ける。
そこには、私服姿をした元ロケット団の三人組が立っていた。



アイリス「ろ、ロケット団!?




ユリーカ「ど、どうして此処に!?




他の皆んなが騒ぎ出す中、サトシや事情を知っている物達は柔らかな笑みを浮かべて彼らに声を掛けた。




サトシ「遅ぇーじゃねぇか!この落とし前どうつけるんだよ?




タケシ「お前らが来ないからパーティーの予定が大分狂ったんだぞ?




カスミ「こりゃクーポンじゃ済まされないわよアンタら。
61 名前:ジョー 投稿日:2017/01/28 09:50 ID:u3AehrB5
お疲れ様です

いつも楽しく拝見してます

ロケット団のソーナンスはまだみたいですね
62 名前:名無し 投稿日:2017/01/28 14:34 ID:T9qfQfl4


驚く面々にサトシは事情を説明し、ロケット団の三人とは既に和解して、彼らはもう一般人になった事を告げた。



最初は動揺していた皆んなも、次第に元ロケット団の三人の陽気な人柄と、持参した料理の美味しさに驚きつつも次第に受け入れていった。




パーティーは進む。
次第に暮れていった夕日は完全に姿を消し、会場はサトシ達によって設置された照明が明かりを照らし出していた。
もう数時間が経過していたが、皆んなは休む事なく、サトシやかつての仲間達との談笑を楽しんでいた。




サトシ「こいつらとは今までで一番長く旅したかもしれないな。だって最初の旅から六年間、ずっと俺のピカチュウを狙ってついてきたんだぜ?



タケシ「俺とサトシが別れてからも追い続けていたのか……よく飽きないなって感じだ。


ユリーカ「何でサトシのピカチュウをそこまで追いかけ続けたの?言っちゃ悪いけどピカチュウはカントーなら沢山いるんでしょ?


ユリーカが尋ねると、ムサシを一体何を言っているのか分からない、と言った表情を見せた。


ムサシ「はっ?何いってんのよチビジャリ?



ユリーカ「誰がチビジャリよ!



ユリーカが地団駄を踏みながら抗議すると、その様子を見ていたニャースが歩み寄り、近くのステージに上がって彼女を見下ろしながら口を開く。



ニャース「おみゃーの事だニャ。ニャー達がピカチュウ追い続けた理由聞きたいって?なら教えてやるニャ。実際、ジャリボーイのピカチュウはどうなったニャ?




ユリーカ「あっ!!……。



ユリーカが気づくと同時に、会場にいた者達も驚いた表情をみせる。
そうだ。
サトシは実際世界チャンピオンになった。



そしてその最強になるピカチュウを長年バカみたいに狙っていたのは間違いではなかった。
元ロケット団の三人はそう言いたいのだろう。



酒瓶を片手にコジロウがサトシにフラフラと近寄り、バンバンと背中を叩く。


コジロウ「今や世界最強ポケモンの一角……ジャリボーイ、ありがとな。



サトシ「……あ?なんだよ急に…



ニャース「決まってるニャ、ニャー達がピカチュウを追い続けていた意味を見出してくれたのニャ




サトシ「……




サトシが黙っていると、ムサシが酒の入ったグラスを揺らしながら、テーブル席の上で頬杖をつきながら喋りかけてきた。




ムサシ「あんたは誇りを持ちなさい。私達のピカチュウを追い続けた六年は、決して軽くなかったわ。私達が走ってきた道は、アンタを追い続けていた六年は、決して間違いじゃなかった。もっとよ……もっとそう思わせるくらい、デカくなんなさいよ、ジャリボーイ。



サトシ「……!ああ!



カスミ「ちょっとストーップ!!




会場にシンミリとした空気が漂っていた時、突然カスミが声を荒らげた。
当然、視線はカスミへと向けられる。



カスミ「なんかいい感じに終わらそうとしてるけど……タダのポケモンを狙った泥棒の話じゃない!!



コジロウ「おいおい、何とか正当化しようと思ってたけどやっぱりバレたか




ニャース「それは言わないお約束だニャ!




ムサシ「ジャリンコを世界仕様に鍛えてやってたのよ、感謝されんのはコッチだわ!




一転して言い訳を始めた元ロケット団の三人に、会場は大きな笑い声に包まれた。


パーティーの中心となって盛り上げてくれる三人を見ながら、アイツらを呼んでよかったとサトシは心から感謝していた。





………………………………

……………………



パーティーは続く。
そして夜も更けていく。


途中で、サトシとタケシが企画したビンゴゲーム大会やちょっとしたゲームも大いに盛り上がり、サトシ達は一様に時の流れを忘れて、今この瞬間を最高に楽しんでいた。


だが、楽しい事にも終わりはやって来る。
あっという間に時は過ぎ、午前の2時を過ぎた頃。皆んなにも確かな疲れが見え始め、サトシとタケシは頷いてパーティーのお開きを宣言した。



皆んな名残惜しそうにしつつも、疲労には勝てず、まだ遊びたい!と元気だったのはユリーカとアイリスだけだった。




もう、道も真っ暗な為、皆んなはサトシの家の前に設置された沢山の簡易テントに泊まっていく手筈となっている。
田舎のために空き地は豊富にあるのだ。




もうヘトヘトで眠る組と、シャワーだけは浴びたい組が別れ、解散となった。
63 名前:名無し 投稿日:2017/01/28 14:37 ID:T9qfQfl4
すみません、ソーナンスはナチュラルに忘れてました笑
また機会があったら出そうと思います。
64 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 15:48 ID:RfnjVu0s
支援
65 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 16:06 ID:RfnjVu0s
セレナの来ていない理由のあんなことの内容がが気になる…。
66 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 18:58 ID:pSYqaGTF

セレナとのあんな事については今日の夜中に全貌を書き進めたいと思ってます。仕事の為、結構遅い更新になるかもしれません。
67 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 20:07 ID:f9KN9yu8
皆んなが一時解散してから、サトシはタケシと一緒にパーティーの最低限の片付けをして、俺たちもそろそろ寝るかと話をしていた時。



不意に背後から元ロケット団の三人からサトシは声をかけられた。



ムサシ「ジャリボーイ、ちょっと良い?



サトシはタケシをチラリと見て、先にテントに行っててくれと目で合図する。
タケシは短く手を振ると、アクビをしながらテントに向かって行った。



サトシ「場所を変えるか。裏庭に行こうぜ



コジロウ「そうしたいが……他にもお客さんだ、サトシ



サトシはコジロウに言われてその方向を向くと、思い立って足を止めた様子のシトロンが居た。



シトロン「あっ……用があるようなら僕はこれで



シトロンが立ち去ろうとするとニャースが待つニャ、とシトロンを止めた。



ニャース「別にニャー達は急ぎじゃないニャ。明日でも構わないから遠慮するなニャ。



ニャースはそう言ってムサシとコジロウに目で合図を送り、背中を見せる。
不意にニャースは何かを思い出したかの様に振り返り、サトシに歩み寄ってA4サイズの茶封筒を手渡す。




ニャース「新メニューニャ、レシピありの企業秘密だから他の奴には見せるなニャ。ニャー達はバンで一晩明かしてから店に帰るから朝の8時までにコレを見とけニャ。




サトシ「……了解。



サトシは顔を曇らしながらそれを受け取ると、立ち去るニャース達を見送ってからシトロンに向き直る。



サトシ「どうしたシトロン?まあ、まだ俺もお前とは話し足りなかっから調度良いや。




シトロン「……僕もです、サトシ。
68 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 20:24 ID:f9KN9yu8

サトシはシトロンを裏庭へと誘導し、設置された木製のベンチへと座る。
サトシはベンチの下から灰皿を取り出して、腕かけの上にそれを置いた。



サトシは懐からタバコを取り出して口に加えると、シトロンにも一本それを差し出す。



サトシ「吸うか?



シトロン「いえ……ていうかサトシ、タバコ吸うんですね。未成年のタバコは法律違反ですよ?



サトシ「人を殺さなきゃ何やっても可愛いもんさ……それで?まあ、だいたい何の話か分かるけど……



サトシはタバコを蒸かしながら、空を仰ぐ。
対してシトロンはサトシをジッと見ていた。



シトロン「ええ……ご察しの通り、セレナの事ですよ。彼女とはここ暫く連絡が取れませんでした。それで気になって、僕はユリーカと様子を見に行ったんですよ。そしたら……


サトシはそこまで聞いてからシトロンに止めろ、と手を差し出す。



サトシ「……聞きたくない。



シトロン「えっ?……何でですか?かつての仲間の事ですよ?サトシにとってはどうだっていいって事ですか?



シトロンが目に怒りを覚えながら、サトシを見る。
サトシはフーッとタバコの煙を吐き出してから、泣き笑いの様な笑顔を見せた。




サトシ「アイツに嫌われてっから……俺。
69 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 21:08 ID:qZFNMOnw
シトロン「え?……嫌われてるって……どういう事ですか?サトシ



シトロンは呆気にとられた様にサトシを見る。
サトシはタバコを一気に吸い込むと、ため息と煙を両方吐き出して、口を開いた。



サトシ「セレナとは俺、結構頻繁に連絡取り合ってたんだよ……俺、どうもセレナにされたあの時のキスからアイツを意識し始めてさ……二年間、外部との連絡を絶って山に篭って修行を終えた後に、アイツの顔が見たくて小型のテレビ電話まで買ってさ、久しぶりに電話したんだよ……そしたら……。



シトロン「……そしたら?



サトシ「知らない赤髪のイケメンな男が出てさ……俺の女に何か用か?って言うんだよ。俺その時結構ショック受けてさ……ほら、アイツすっげぇ可愛いじゃん?二年間も音信不通だったら別にその間に彼氏がいてもおかしくはないけどさ……けどさ……




シトロン「……あの〜サトシ?



サトシ「俺はまあ、セレナに彼氏がいても元仲間なのは変わらないって自分に言い聞かせてさ……涙目を堪えながら『セレナ居ますか?』って聞いたんだよ……そしたらその男何て言ったと思う?『オメェがサトシか?オメェのヘタレっぷりはセレナからよ〜く聞いてるぜ。それと二年間も音信不通にするなんて有り得ない、仲間なんかじゃないともな。ま、そのお陰で寂しがってるアイツを俺の女に出来たんだ、ありがとな!』だとよ!結果、俺は怒りのあまり七万八千円したテレビ電話をポケモンセンターの二階からぶん投げてた。




シトロン「……サトシ、あの



サトシ「なあ、シトロン……二年間頑張ってピカチュウ達と血を吐きながら修行してさ……強くなった俺をセレナに見てもらおうとしたら……情けないもんさ……結果がこれ。笑ってくれ、この甲斐性もない俺を




シトロン「……そういう事でしたか……それでセレナにはパーティーの招待券を送らなかったんですね?



サトシ「……いや、招待券は送ったよ。結果はどうあれ、元旅仲間だしな。ご丁寧に彼氏さんもどうぞとまで書いたんだ。なのに来ないって事は……そういう事だろ



シトロン「サトシ……あなたはとてつもなく、大きな勘違いをしていますよ。
70 名前:名無し 投稿日:2017/01/29 23:53 ID:qZFNMOnw

サトシ「あ?……なんだよ勘違いって?


シトロン「それはーーー


ユリーカ「ああっ!サトシ、タバコ吸ってるー!!


シトロンが口を開こうとしたその瞬間、ベンチの裏から甲高いユリーカの声が聞こえた。
シトロンは驚きのあまり、ベンチから飛び跳ねて地面に尻餅をつく。
ユリーカはどうやら風呂上がりの様で、湯気を立てながら首元にタオルをかけていた。


サトシは灰皿にタバコを押し付けながら、ユリーカに向かって口元に一本指を立てた。


サトシ「皆んなには内緒な?


ユリーカ「え〜どうしよっかな〜?


ユリーカはそう言いながら、サトシの首元に手を回した。
サトシはユリーカの予期せぬ行動に顔を赤面させながら、腕を解こうとする。
ユリーカはそれを離そうとせず、サトシの耳元でシトロンには聞こえない様に、甘く囁いた。



ユリーカ「何〜サトシ?私の事少し意識しちゃってんの?


サトシ「ば、馬鹿野郎。十三歳のガキンチョに女なんか感じるかよ。



ユリーカ「じゃあ何で赤くなってんの?サトシかわいい〜


ユリーカはサトシの耳をカプッと甘噛みし始めた。
サトシは更に顔を赤面させ、ボフッと蒸気を放出させる。
ユリーカはその様子を面白そうに眺めていた。


シトロン「こ、コラ!ユリーカ!実の兄の前で何てことしてるんですか!?まだ十三歳でしょ?そんな不純異性交友、僕は認めませんよ!



ユリーカ「お兄ちゃんうるさーい。もうめんどくさいからテントで寝よーっと。



シトロン「ま、まだ、話は終わってませんよ!ユリーカ!



ユリーカはサトシを離し、二人に背を向けて立ち去ろうとする。
シトロンがそれを慌てて追いかけ様とした時、不意にユリーカが振り返ってサトシの耳元でこう囁いた。


ユリーカ「私達、明日は用事で朝イチで帰るんだ。今度また来るから……その時はデートしようよ、サトシ。



サトシ「えっ?


シトロン「ま、また何やってんですか!



ユリーカ「ふふっまたね!



ユリーカは追いかけてくるシトロンをかわしながら、急いでテント群の方へと走っていった。


残されたサトシはベンチから体をずり落として、地面に尻餅をついた。


サトシ「マジかよ……な、なんかヤベーぞ俺


?「何がヤバイの?


サトシ「おわっ!?


サトシはまたもや背後からの声に、一瞬で身を構えた。
そこにはヒカリの前にも現れた、ベリーショートの可憐な少女がサトシを見下ろしていた。
サトシは彼女を見るなり、安心した様に息を吐き、「なんだお前か……」とタバコを一本取り出す。


?「なんだお前か……って酷いんじゃない?ユリーカには赤面してた癖に僕には無反応ってなんか腹立つよ。ロリコンなの?


サトシ「暗いからな……顔がよく見えないから女子にも多少は平穏を保てる。……さっきあんなに赤面したのは幾つだろうと女の子にあんな事されたら、ああなるだろ、普通?



?「そうかな……ていうか、どうするのさ、サトシ。


サトシ「何が?



サトシがタバコに火をつけながら質問すると、可憐な少女は肩を落としながらため息を吐いた。



?「ユリーカだよ、明らかにサトシに気が合る様な感じだったじゃん



サトシ「やっぱ、あれってそう!?いや〜どうしたんだろ、俺。最近女の子とやたら接点あるし、遂に春到来か?
71 名前:名無し 投稿日:2017/01/30 00:04 ID:fNbFt1gO
そういうわけだったんですか。
引き続きメガ支援です。
72 名前:名無し 投稿日:2017/01/30 00:33 ID:KV3KV1ZC

?「はあ……呑気なもんだね、僕の相棒は。いいかい、ユリーカはシトロンとサトシが来てから直ぐ位に君達の後ろにいたんだよ?



サトシ「ん?それが何だよ?



?「ユリーカは狙いすましたかの様に、シトロンの『サトシは勘違いしてる』からの次の言葉を遮ったじゃん。まるでセレナの現状が知られるのを自分に不都合みたいにさ。その時のユリーカはスッゴイ女の顔してたよ。……もしかしたらセレナはまだ、



サトシ「止めろ、セレナの話は。……もうアレは終わった事だ、掘り返したくない……ていうかユリーカがスッゴイ女の顔してたって?女なんだから当然だろ?



?「……はあ、もういいよ。


サトシ「おう、もういいぜ相棒。それより俺は未来の事で頭が一杯なんだ。折角未来の彼女候補が沢山集まってんだ、この機会を逃す他ない。



サトシはそう言いながら、ニャースから受け取った茶封筒を開封し始める。
少女はそれを眺めながら、また呆れた様にため息を吐いた。



?「スピーチでは仲間達に今まで支えて来てくれてありがとう、とか立派な事言いながら、頭の中ではそういう事で一杯だったんだ?全く君は……あれ、それよりその封筒、ニャースからの?



サトシ「おう、『新メニュー』だとよ、嫌な予感しかしねぇな。おっと開いた。なになに……


?「仕事かな?


サトシ「……最悪だ『転移者』だとよ、名前はレッド。ヒカリの件といい、メンドくさい事が続いてるぜ。



?「こういう時は……大抵、大きな災いが起きるよね……尚更急いで師匠に伝えなきゃ。



サトシ「ああ……皆んなが寝静まってからな。それが一番だ。
73 名前:名無し 投稿日:2017/01/30 01:05 ID:KV3KV1ZC

………………………………

…………………

サトシがシトロン達と一悶着あった同時刻。
ヒカリはシャワーを浴び終えて、外にある簡易テントへと向かっていた。
傍らには水ポケモンのポッチャマが眠そうに目を擦りながら歩いている。



ポッチャマ「ポチャア……



ヒカリ「はあー今日は楽しかったな。明日はどうしようか、ポッチャマ?一応予定では3日くらい滞在する予定だけど……って、立ったまま寝てるし!



ポッチャマは花風船を膨らましながら、その場で眠っていた。
ヒカリは苦笑しつつ、ポッチャマを起こすのは忍びないと思ってモンスターボールの中に入れる。



ヒカリ「おやすみ、ポッチャマ。私も早く寝よーっと。


ヒカリは伸びをしながら、一つのテントに入ろうとした時、ポンポンと肩を叩かれた。
振り返ってみると、いやらしい悪巧みする様な笑みを浮かべたカスミが立っていた。


カスミ「なーに寝ようとしてんのよヒカリ、夜はこれからよ!女子会するわよ女子会!



ヒカリ「女子会?なんか楽しそう!



カスミ「でしょ!ハルカのテントに行くわよ、皆んな待ってるんだから。



カスミに案内され、ヒカリは一つのテントに入っていく。
中にはランプが一つ置いてあり、体育座りをしたハルカがにこやかに出迎えてくれた。



ハルカ「ヒカリ、カスミいらっしゃい。でもアイリスが寝ちゃったかも……


ハルカが自分の背後を苦笑しながら指さす。
その方向には寝袋の上で大の字で寝る、無防備なアイリスの姿があった。


カスミ「かもじゃないでしょ、完璧寝てんじゃない。ありゃりゃ〜……さっきまで起きてたのにお子ちゃまね。場所変えましょうか?アイリス起こしちゃったら悪いし。



ハルカ「そうね、どこのテントが空いてる?



カスミ「さっきヒカリが入ろうとしてた所が私とヒカリのテントよ、其処に行きましょう。悪いわね、ヒカリ。来た矢先に出戻りになっちゃった。



ヒカリ「全然大丈夫よ。でもアイリス、お腹出したまま寝てて風邪ひかないかしら?



カスミ「あんたは優しいわね〜。大丈夫よ、アイリスは屈強なアマゾネスなんだから、アンタ一時期この子と一緒に居たから知ってるでしょ?原住民よ原住民。腹立つからちょっと私達の女子会計画を狂わしたこの子にお仕置きしましょ?



カスミはそう言いながら、何処からか取り出したマジックでアイリスの顔に落書きを始めた。



ハルカは笑いを堪えながら、ポケギアに搭載されたカメラで写真を撮る。
74 名前:名無し 投稿日:2017/01/31 22:27 ID:lv886QHR

カスミ「こんな落書きしてるとプリンを思い出すわ〜


カスミはアイリスの瞼に新たな第三の目を書きながら、しみじみとそんな事を言った。
ヒカリとハルカは首をかしげる。


ヒカリ「プリン?……人?ポケモン?



カスミ「ポケモンよ。超強力な眠りの効果のある歌を、皆んなに聞いて欲しいから急に歌い出すの。そんで途中で寝ちゃったら不機嫌になって寝てる皆んなの顔に落書きすんのよ。私とか、サトシとタケシも何度も書かれちゃった。



カスミは第四の目を書き終え、マジックのキャップを締める。
そして満足そうに頷くと、振り返ってヒカリ達に向き直る。



カスミ「さあて、行きましょうか。今回は秘密の品も用意してるわ。



ヒカリ「秘密の品?



ハルカ「いいから、いいから。早く行くわよヒカリ。



半ば強引にテントから押し出され、ヒカリ達は主の居ない、二人用のテントへと足を運んだ。
75 名前:名無し 投稿日:2017/02/01 19:00 ID:rPJvt3XZ
支援
76 名前:名無し 投稿日:2017/02/01 23:08 ID:CRj5LcjZ



………………………………

………………

カスミ「デーン!これが私の用意した秘密の品よ!



カスミは背中に掛けていたバッグから瓶に入っている液体を取り出した。
ハルカは「わあ!」と歓声を上げ、ヒカリは首をひねってカスミに質問する。



ヒカリ「何これ?ジュース?



カスミ「アンタは本当に純情よね……私がわざわざジュースを秘密の品なんて言うわけ無いでしょ?お酒よお酒。




ヒカリ「ええっ!?私達、未成年でしょ?




カスミ「構いやしないわよ、今日ぐらい。法律が怖くて命を懸けた旅なんか出来ないわ。サトシなんてアイツ、久しぶりに会ったらタケシと一緒にタバコ吸ってたわよ?今日は猫被ってたから吸ってなかったけど。




ヒカリ「ええっ!?嘘でしょ?




驚愕するヒカリを他所に、ハルカは皆んなのコップを準備する。
カスミは酒瓶の蓋を開け、それをコップに注いだ。
77 名前:名無し 投稿日:2017/02/02 23:24 ID:YOgD4P4A

カスミは全てのコップに液体を満たすと、満足そうに頷きながら笑みを浮かべる。
彼女はそれを二人に手渡すと、コップを持ち上げて乾杯をしようと合図する。



ヒカリは戸惑いつつ、ハルカは迷いなくコップを合わせ、チンッと小気味良い音を鳴らした。
一気に飲み進める二人にヒカリは少々遅れながら、コップに入ったアルコールを口にする。



口一杯に広がる何とも言えない苦味にヒカリは顔をしかめつつ、それを時間をかけてゆっくりと飲み干す。
彼女は体内で何か熱いものが駆け巡るような感覚を覚えていた。
同時に頭にも血がのぼるような感覚が巻き起こる。
ヒカリは若干気分悪げに、二人の様子を伺ってみた。




二人は問題無さげにグングンと飲み進めていた。
それを見てヒカリは呆然としながらも、新たに注がれた液体に口をつける。
ヒカリは二人に負けまいと半ばヤケクソの様に飲み進めた。




ーーーー十分後、テントの中の三人はアルコールによって既に出来上がり、顔を著しく高揚させ、ハルカに至ってはもはや別人格と化していた。



ハルカ「ヒカリ〜呑んれるー?お酒はのんれものまれるにゃ……きいつけなはれ……ヒック。



ヒカリ「……ハルカ大丈夫?



カスミ「あんたは意外ね……ヒカリ。かなり酒強いわよ……アンタ。



ヒカリ「そうなの?飲んだ事ないからよく分かんないや。ハルカみたいな酔っ払う感覚ってどんか感じなの?



ハルカ「うっさいわね……ひとをよっはらいみたいにいうにゃ……このニット帽オバケ……



ヒカリ「……



カスミ「そうよ、このカオス感……これが見たかったのよ。



カスミは顔を高揚させつつも、ハルカより出来上がってはいない様だった。
彼女はニヤニヤしながら酔った様子のハルカを楽しんでいる。
カスミはヒカリに向き直ると、ハルカと肩を組みながら口を開いた。




カスミ「ハルカとはね、前にも一回飲んだ事があるんだけど、そりゃもうやばかったわよ。泣きじゃくりながらサトシ達との旅にもう一度戻りたい!とか、ジムリーダーなんかやだ、あの頃が一番楽しかった!とかね、もうそりゃ色々終わってたわ
78 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 00:35 ID:veuerKyV
支援
79 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 08:34 ID:Huz6H3pt

ヒカリ「へー、ハルカってジムリーダーもやってんだ。



カスミ「そうよ、家業を継いでジムリーダーとなったらしいわ。今はもうイヤイヤやってるらしいけど




カスミは新たに注いだ液体を飲み干し、更にコップに注いでいく。
注ぎながらカスミはヒカリを見ながら意味ありげにニヤリと笑みを浮かべた。
ヒカリは嫌な予感を感じながら、カスミの次の言葉を待つ。



カスミ「まあ、そんな話はどうでもいいか……ここからが本題よ。



ヒカリ「……本題?
80 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 21:02 ID:SlYvGsLs

カスミ「そうよ……単刀直入に言うと、サトシについての事ね。



ヒカリ「……サトシについて?


ヒカリは何故かサトシという言葉で、自分の胸の中で何かが沸き起こる様な感覚がした。
それを見透かす様にカスミはニヤリと笑い、ヒカリに次の言葉をかける。



カスミ「サトシはこれからどんどんモテていくと思うわ……中身は思春期のアレだけど、何たってポケモンマスターだからね。収入的にも、人望的にも十六歳という若さで既にトップクラスよ?まあ、モテない訳ないわけよ。私は別にアイツに男としての興味は無いんだけどね〜もう彼氏いるし。




ヒカリ「へ、へ〜……そうなんだ。カスミの彼氏さんって、どんな人?



カスミはグラスに入った液体を見ながら返答する。



カスミ「私のこたぁ、どうでも良いのよ。もう、回りくどいのはめんどくさいから言うわね。私が聞きたいのは……ヒカリ、あんたはどうなの?って事。




ヒカリ「えっ……私?



ヒカリの胸のざわめきが大きくなった。
カスミは更に続ける。
81 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 23:25 ID:SlYvGsLs

カスミ「ハルカはね……ずっと言い出せなかったらしいんだけど……サトシの事が、旅してた時からずっと、ずっと好きだったそうよ。



ヒカリの胸のざわめきが更に大きくなる。
彼女はそれを抑える様に、胸に手をやった。




カスミ「でもそれは心の内に隠して、旅仲間としての関係を崩したくないから、仲間達との関係を崩したくないから……それを胸の中に留めてきたそうよ。




ヒカリの中でサトシとの旅の思い出が駆け巡っていた。
喧嘩したり、笑いあったり、泣いたり、励ましあったり。
そういえば誰かに言われたっけ。
『サトシっていいよね……貴方はサトシをどう思ってるの?』って。
その時、私は何て答えたんだろう。
ヒカリは胸に当てた手を強く握りしめる。


カスミ「でも今日やっと踏ん切りがついたそうよ。サトシが今日皆んなの前でスピーチをするのを見て、堂々と話す姿を見て、心に浮かぶ感情を確かめて、やっぱりサトシが好きなんだって再認識して、それで絶対にこの恋を想いだけで終わらせたくない……ってね。可愛いよね、実はハルカは恋愛にはすっごい純情で乙女で、臆病なの。私は本気で人を好きになった事は無いから、少し羨ましいわ。



ヒカリはハルカを見てみると。
彼女はカスミにもたれ掛かったまま、スーッスーッと寝息を立てていた。
カスミは愛おしそうにハルカの髪を撫でている。



ヒカリ「……私にそんな事話しても、良いの?カスミ。


ヒカリが尋ねると、カスミは穏やかな笑顔を見せた。


カスミ「貴方だから言うのよ、ヒカリ。貴方はサトシの元旅仲間で、私達は友達じゃない。もし、ヒカリがサトシを好きじゃないのなら……私達、ハルカの応援をしてあげない?



ヒカリは目を閉じた。
今までのサトシとの思い出がフラッシュバックし、心に湧き上がる感情の正体を探る。
この感情は何なのだろうか?このざわめきは……。


……そうだ。
この感情はサトシのことを思う、一人の女の子がいる事への喜びに違いない。
あのサトシに遂に春がやって来るのだ。
しかも、友達のハルカ、これは喜ばしい事だろう。



ヒカリは笑顔を浮かべながら、カスミに向かって口を開いた。
82 名前:名無し 投稿日:2017/02/03 23:42 ID:SlYvGsLs

ヒカリ「勿論よ!サトシにも遂に春が来たわね、ハルカの為に私達が精一杯盛り上げてあげなくちゃ!



カスミはにっこりと微笑み、ヒカリとグッと硬い握手を交わす。
二人はそれから数時間ほど飲んで語り合い、ランプの光を消して、ぐっすりと就寝した。




……………………………

………………


数時間後、ヒカリは飛び起きる様にして目を覚ました。
と、同時に、彼女は慌てて辺りを見回してみる。
周りには寝ている筈のカスミとハルカが今ので起こしてしまったかもしれない、という配慮からだった。



幸い、二人は毛布を被ってまだスヤスヤと寝息を立てている。
彼女はホッとしながら、再び眠ろうとすると……理性だけでは抑え切れない、我慢できない程の猛烈な尿意に気がついた。



成る程、突然目が覚めたのはこのせいか、と彼女は苦笑しながら腕につけている時計を見てみた。
午前3時59分、まだあたりは真っ暗だ。
参ったな、と彼女は頭を掻きながらも、堪え切れない猛烈な尿意は彼女はテントから出して、サトシの家のトイレへと駆り立てた。
83 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 00:08 ID:Ps4dVvQv

ヒカリ「ふーっ危なかった……



ヒカリはトイレを済ませ、サトシの家を出てテントへと戻ろうとする。
すると……見知らぬ少女と何処かへ行く、サトシの姿が目に入った。




ヒカリ「……えっ?サトシ?……あの隣にいる子は誰?……。



ヒカリはカスミとのハルカの恋を応援するという、約束を思い出し、咄嗟に二人の後をつける事にした。
84 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 00:21 ID:xUUsP0T2
支援
85 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 12:10 ID:613YoEfF

ヒカリ「……何処へ行くんだろう……あれ?あの女の子……何処でみた様な……あっ!?



ヒカリはサトシの部屋で目覚めた時、自分の名前を呼んでいた素っ裸の女の子のことを思い出した。




ヒカリ「あの時の女の子!?あれ夢じゃなかったんだ……でも、あの子……一体何者なの?




謎も深まり、ヒカリは草陰に隠れながら更に後をつける。
二人はどうやら近辺の山に向かっている様だった。



ヒカリ「……あんな所に行ってどうするつもりなの?
86 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 13:11 ID:613YoEfF

ヒカリがサトシ達の後をつけ始めてから、15分。
既に三人は山のかなり深い所まで来ていた。時刻は午前四時を過ぎ、未だポケモン達の眠り声も山に響きわたっている。
ヒカリは息を切らしながら、必死について行った。



ヒカリ「はあ、はあ。……何処まで行くんだろう。




ヒカリが疑問を浮かべた瞬間、サトシと女の子は森の広場の様な所で停止する。
ヒカリはサトシ達の会話が聞こえる、ギリギリの地点の草むらで身を隠した。




サトシ「ここらで良いだろう……



サトシはそう言うと、腰に装着したモンスターボールを取り出した。
それを女の子が待って、と静止する。


?「気付いてると思うけど……良いの?サトシ。



サトシ「……まあ、師匠の力が通じない、アイツにはいづれバレる事だ。このままいく。



サトシはモンスターボールを空中に放り投げ、中に入るモンスターを出した。
そして、出てきたモンスターを見てヒカリは驚愕する。それは、明らかにポケモンと言えるには程遠いモノだったからだ。
それは……何処からどうみても、人間の女の子だった。



年齢はサトシと同じくらいか?
月明かりに照らされ、幻想的なまでに美しかった。
彼女は長い髪をたなびかせながら、切り株の上に立ってサトシ達を見下ろしていた。



??「ふむ……ワシを呼び出したって事は……相当な用事なんじゃろうな?サトシよ。



サトシ「はい……新たな転移者が現れました。



?「それにタケシ達に対して施した師匠の力が、ヒカリに対してだけは効いていませんでした。



ヒカリは自分の名前が飛び出た事に、ビクッと身を震わせる。
切り株の上の女の子は面白そうに目を細め、ヒカリの隠れている草むらの方向を向いた。



??「ほう……やはりあの小娘には効かなんだか。面白い、あやつは巫女の力を持っておるかもしれんのう……。のう小娘、そんな所に隠れとらんで出てきたらどうじゃ?ワシに顔をもっとよく見せい。



切り株の上の女の子は、ヒカリに対して手を伸ばして、人差し指でクイッと呼ぶ様な仕草を見せる。
すると草むらで隠れていたヒカリが空中に浮かび上がり、引力の様に引きつけられてサトシ達の前に放り出された。
87 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 15:09 ID:613YoEfF

ヒカリ「きゃっ!?一体何がどうなっ……痛!



ヒカリは空中から地面に落とされ、尻餅をついた。
彼女は涙目でお尻をさすりながら、立ち上がると……無言でそんな彼女を見つめる三人がいた。




ヒカリ「あ、あはは……ど、どうも〜。ちょっと夜道を散歩してたら偶然……眠たいからテントに帰るね、サトシ……




サトシ「家からつけてたのは気づいてたよ、ヒカリ。そんなお前に話しかけなかったのは……大事な話があるからだ。



サトシ達に背を向けて帰ろうとするヒカリに対し、サトシはそう言った。
ヒカリは恐る恐るサトシに振り返ると、質問をする。



ヒカリ「は、話?何の?



サトシ「お前が今日茶化されたルカリオの事だよ。ゴメンな、あれ夢じゃないんだわ。



ヒカリは自分の心臓が早く脈打つのを感じた。




ヒカリ「えっ……でもタケシ達も気絶した私をバスから運び出したって。




サトシ「上書きだよ。この切り株の上にいる師匠に手伝ってもらって、全員の記憶を改変したんだ。……何でかお前だけ記憶を保持したままだったけどな。



ヒカリ「えっ、えっ?……か、かいへん?何でそんな事が……ていうか師匠って……その女の子の事なの?その女の子モンスターボールから出てきたよね?……い、一体何がどうなってるの?
88 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 20:04 ID:613YoEfF

??「小娘、お前にはワシが何に見える?



唐突に尋ねられ、ヒカリはビクリとしながら、謎の女の子を見る。
どっからどう見てもヒカリには人間の女の子にしか見えなかった。



ヒカリ「人間……に見えます。



??「ほう……そうか、人間に見えるか。でもワシはいわゆるモンスターボールから出てきたのだぞ?それでも人間と言えるのか?




ヒカリ「……さ、サトシ。ど、どういう事なの?



ヒカリは助けを求める様にサトシを見た。
サトシは真剣な表情を浮かべたまま、口を開く。



サトシ「なあヒカリ……ポケモンと人間の違いって、何だと思う?



ヒカリ「ポケモンと人間の違い?……わ、分かんないよ、そんなの。技を使うとか?



サトシ「間違ってはいないな。でも明確に答えを出すとするならば……無いだ。答えは無い。人間とポケモンの違いなんか、名称だけだ。




ヒカリ「……
89 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 22:12 ID:613YoEfF

??「ほう……サトシ。お前、中々いい事言う様になったの。じゃがの、お前ら人間が定めるポケモンと人の違いの定義など、ワシらにとってはどうでもいい事じゃ。別に勝手に区別や差別してもらってもこっちは一向に構わんし、それが間違いとも言わん。この世に生まれ落ちたからには正解なんか追い求める事自体が無意味じゃ。のう、ピカ娘よ。



?「師匠……ピカ娘はやめて下さいよ。せめてピカチュウって呼んで下さい。……まあ、そうですね。ボクらポケモンからしたら定義とかそういう概念はありませんね、あるとすれば敵か味方か……それ位の区別です。




ヒカリ「へっ?……ピカチュウ?



ヒカリが二人の会話にハテナマークを浮かべていると、それを察したサトシが説明を始めた。



サトシ「ヒカリ……俺の隣にいるショートヘアの女の子……実はコイツ、俺の相棒のピカチュウなんだよ。




ヒカリ「へっ……え?ごめん、何言ってんのかよくわかんない。
90 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 22:28 ID:613YoEfF
一応分かりにくいから説明しときます。「」前に??二つがついてるのが、ジジイ言葉を使うロングヘアの女の子(師匠)
「」前に?一つがサトシがピカチュウと説明した女の子です。
91 名前:名無し 投稿日:2017/02/04 23:18 ID:WqkQTI2I

ピカチュウ「ヒカリ……ボクは正真正銘のサトシのピカチュウだよ。五年前、君と一緒に旅したのもボクさ。……今は姿が違うけど、ヒカリの事は大好きだから信じてほしいな。



ヒカリ「……一体どうなってるの?貴方がピカチュウなのを信じたとしても……どうして人の姿に?



サトシ「その辺も踏まえて全部説明するよ、皆んなに説明した二年間音信不通で山に篭って修行してたって話……アレは半分本当で半分は嘘なんだ。



ヒカリ「嘘……



サトシ「騙したみたいで悪いけど……こっからの話はお前らの命が危うくなるからしょうがないんだよ。だから俺が今からお前に話す内容も、危険が及ばない程度に大まかな内容だ。聞いてくれるか?



命が危うくなる様な話とは……一体どんな事をサトシは体験してきたんだろう?
ヒカリは緊張して胸が苦しくなるのを感じていた。
だが、それを振り払う様に彼女は自らの頬を叩く。
そしてヒカリは決心を固めた様に、口を開いた。



ヒカリ「うん……でも、私には大まかな話じゃなくて、全部聞かせてほしいな。だって私達……大事な仲間じゃーーーー



サトシ「ダメだ。全部は話せない。



切り捨てる様にサトシは言い放つ。
その事にヒカリはショックを受けていると、サトシはそれが分かっているのか、顔を歪めながら話を続ける。
92 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/05 17:15 ID:uqfvGGLf
ペンネームを十五歳の早計として、また夜中に書いていきたいと思います。
93 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/05 20:44 ID:uqfvGGLf

サトシ「すまない……俺だってヒカリは大事な仲間だし、全てを打ち明けたい。だけど、コレはそういう問題じゃないレベルの事なんだ。分かってくれ。




ヒカリ「……




??「やれやれ……そんな事言うなら初めから端折って喋れじゃええじゃないか、バカサトシよ。回りくどい言い方するからややこしくなるのじゃ。本当は小娘に心配して欲しくて堪らんのか?女々しい男じゃのう。なあ、ピカ娘よ?




ピカチュウ「……サトシは不器用ですから。でも、師匠もそんな言い方しないで下さいよ。サトシだって色々考えてるんです。




??「おお、ピカ娘を怒らしてしまったか。すまんのピカ娘や。おい、サトシ。お前の妾のピカ娘がお前を庇護しておるぞ、情けないから早く話を進めい。



ピカチュウがギリッと、師匠と呼ばれる女の子を睨みつけ、歯を噛みしめる。
師匠と呼ばれる女の子はそんなピカチュウを見ながら面白そうに挑発的な笑みを浮かべていた。


サトシ「いや……そうだな、多分そうですよ。俺はヒカリに心配して欲しくてこんな言い方をしたのかも……ゴメンな、ピカチュウ、ヒカリ。俺、情けないよな……本当は全部背負い込むのが怖いんだよ、それでこんな言い方して、ヒカリに心配して欲しかったんだ。




ピカチュウ「サトシ……




ヒカリ「……いいや、全然情けなくなんか無いよ。むしろ、嬉しい。私は何にも出来ないかもしれないけど……危険になったっていいから……そのサトシが背負ってるモノが何なのか分かんないけど、一緒に背負う位はしたいもん。
94 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/05 22:59 ID:uqfvGGLf

??「ほら、小娘もこう言っておるぞ。バカサトシ、全部話てやったらどうだ?この世界の裏側がどうなっておるかなどな。



ヒカリ「……この世界の裏側?



??「そうじゃ、小娘。お前はこのマサラの反対側にある大陸の国の名前を知っておるか?その国の民がどんな事をしておるかとかな。



サトシ「師匠!



サトシが力強い声で師匠と呼ばれる女の子を制止する。
その女の子はサトシを見下した様に見つめ、肩をすくめた。




??「なんじゃ?話さんのならワシが代わりに話をしてやろうとしてやっただけじゃ。それが嫌なら早う決着をつけい。ワシはもうめんどくさくなってきたぞ。



女の子は切り株に座り、大きな欠伸をした。



サトシ「……そうします。ヒカリ。



ヒカリ「は、はい!




サトシ「やっぱり全部は話す事は出来ない、お前に今はそんな重荷を背負わしても俺たちにとってもプラスにはならないからだ。……すまないな、長くなって。今はこのヒカリが巻き込まれた現状の理由だけを聞いてくれ、ピカチュウが人の姿になった理由や、ルカリオに襲われた理由を。




ヒカリ「……分かった。




サトシは話し始めた。
それはパーティー会場で話していた、ロケット団と協力し、ヒミダ山脈の敵の基地でピカチュウが瀕死の重傷を負ってからの話だった。
95 名前:名無し 投稿日:2017/02/05 23:13 ID:uqfvGGLf




………………………………

………………

サトシ「ヒミダで敵にやられてピカチュウが段々冷たくなっていってさ……その背中の深い深いキズはロケット団の看護婦じゃ手に負えなかったんだ。それで俺は慌てて山を下るって言ってさ。血だらけのピカチュウを抱えて、制止するロケット団を振り払って転がる様に山を降りたんだ。




ヒカリはサトシの話に相槌を打ちながら、女の子の姿となったピカチュウを見る。
ピカチュウは満点の星空を見上げながら手を伸ばし、何か物思いに耽っている様子だった。



ヒカリはそんなピカチュウを見ながら、山を必死に駆けているサトシの姿を脳裏に浮かべた。



…………………………

……………

サトシ「頼む!しっかりしてくれ、ピカチュウ!



ピカチュウ「ピーカ……



ピカチュウは心配するなとでも言う様にさ、俺の頬にずっと手を当てていたんだ。
俺はそれをされて余計に助けてやろうって気になって、後ろから追いかけてくるロケット団の三人を無視してた。
96 名前:名無し 投稿日:2017/02/08 23:38 ID:ucAx98lo
支援
97 名前:名無し 投稿日:2017/02/09 00:45 ID:xAdmSebP

コジロウ「おいサトシ!そんな走って山を下りても1日は掛かるぞ。基地に戻って車両か何かを探そう、それしかない!



サトシ「うるせぇ!それで手遅れになったらどうする!?リザードンも負傷して動けねぇんだぞ!俺の勝手にやらせてくれ!




ムサシ「待ちなさい、バカ!そっちは崖よ!




情けなくてかっこ悪い話だけどさ、俺は焦って全然周りが見えてなかったんだ。
そのせいで優先度を見失って、挙げ句の果てにはロケット団諸共、崖から落ちてさ。




バカだろ?
そんな高くなかったから、俺たちは無事だったけどさ。
ピカチュウは息をしなくなるし、道に迷うしで、もう最悪さ。




狼狽してさ、ああ、ピカチュウはここで死ぬんだなって俺はなんと無く感じながら、歩き続けた。
ポロポロ男らしく無いけど、泣いちゃってさ。



そんな俺をアイツら三人は献身的に接してくれたっけ……。
傷に効きそうな木の実や薬草を探してくれたりさ。
ほんと、あいつらには感謝してる。




……そんでさ、終いには雨が降り始めて、死にかけのピカチュウの体を冷やさない様にアイツらの提案で近くの洞窟に入ったんだよ。
98 名前:名無し 投稿日:2017/02/09 01:12 ID:xAdmSebP

その時にはピカチュウは心臓も止まってたんだ。
毛並みが良いって自慢だったピカチュウの体もさ、ボロボロで……冷たくて……固まった血がこびり付いてて……。



もう、無理だ。
そう、思ったよ。
ロケット団も泣いてたっけ、俺は逆にその時は涙も枯れてさ。
ずっとピカチュウに、話かけてたよ。




やがて夜が明けた。
俺はずっとピカチュウを抱いたままだった。



そんで俺たちは無言だった。
言わなくても分かる、アイツらも何を思っていたか位は。




俺たち四人はそんな中、最悪な気分で山をくだろうとしてた時……。
洞窟を出てすぐ位に、急に笑い声が聞こえたんだ。
変だろ?秘境の山のど真ん中で。
しかも、甲高い女の子の笑い声なんだ。




俺は気になって振り返った。
ピカチュウが死んだのに、悲しいのに、苦しいのに、嘲笑うかの様な笑い声だったから。




その時は本気で殺してやろうと思ったよ。
99 名前:イッチ◆Whc/JdNwwk 投稿日:2017/02/09 17:23 ID:ngedzZgG

情景や状況が分かりやすくて、話も良いですね!
100 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/09 18:45 ID:Fell7wGh
まさかあのイッチさんにコメント頂けるなんて……。
あなたのssを見て自分も書き始めました、光栄です。
101 名前:イッチ◆Whc/JdNwwk 投稿日:2017/02/09 19:11 ID:TdJ5Qj0X

いや、そんな大した事ないですよ私なんて笑


更新大変なのはよく分かります!
是非最後まで書いてください、楽しみに読んでます!

102 名前:ジョー 投稿日:2017/02/09 22:44 ID:ao1LXpN7
主さん、お疲れ様です。ss楽しく拝見しています

これからも支援続けますね
103 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 01:33 ID:akiCT5ss

俺が振り向いた先には……声音通り、女の子が立っていた。
ロングヘアーでラフな白のワンピースを着ててさ、まあ、彼処で切り株に座って……寝ちまったか、寝息を立ててる師匠の事なんだけど。




師匠は殺気を出しながら睨みつける俺を気にしてない様に挑発的に笑って、ゆっくりと近付いてきたんだ。




えっ?
なんであの女の子を師匠って呼んでるかって?
まあ、もうちょっとしたら理由が分かるから少し我慢してくれ。



それでさ、師匠はピカチュウを抱いた俺を興味深そうにしばらく眺めた後、こんな事を言ったんだ。




??「ふむ……そのデンキネズミ、このレベルなら最終進化までいけるの。息を吹き返すやもしれん。

104 名前:僕◆K17zrcUAbw 投稿日:2017/02/11 09:37 ID:Vs3XCeyC
支援です‼
105 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 13:05 ID:akiCT5ss

サトシ「ぴ、ピカチュウが……た、助かるのか?




??「うむ、ある条件を満たしたらだがな




俺は絶望の中の、あり得ない救いの一言に縋ろうとした。
頭では理解してた。
ピカチュウは心臓が止まっている。
冷たい、とても冷たい……モノみたいになってたから。
助かるわけがない……。
あり得ない……。



でも、でも、もしかしたら……。




何でもいいと思った。
コイツを助けてくれる少しの希望なら、悪魔でも、幽霊でも、謎の女の子でもいいって。
俺は言った、迷わずに言った。
何をすればいいんだ。





??「そうじゃの……ちょうどワシは今、長年連れ添った召使いを亡くして一人で不便にしておった所じゃ。お前が生涯を通して、ワシの召使いになればそこの小汚いデンキネズミを最終進化によって救ってやろう。





サトシ「ああ、なんでもする!頼むからピカチュウを助けてくれ!




ムサシ「ちょっと待ちなさい!




そこで沈黙を保っていたムサシが大声を上げた。
俺を止めようとしてくれたんだ、そりゃそうだろうな。
こんな秘境の地で一人、しかもピカチュウの命を救ってやるなんて言う女の子、怪しすぎるだろ?




しかも、その女の子の提案は俺に一生奴隷になれって言ってるのと同じだった。
106 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 13:29 ID:akiCT5ss

でも、俺はそんなのぜんぜん構わなかった。
ピカチュウさえ、救えれば。
俺の命さえも差し出せた。




師匠は止めに入ったムサシを一瞥した後、嘲笑うかの様にロケット団に向けて手を振った。
するとさ、さっきのヒカリみたいにロケット団の体が突然持ち上がって、地面に叩きつけられたんだ。





俺は驚いて止めに入った。
奴らは一緒に命を懸けて戦った仲間だからな、酷いことをされるのは堪らない。
でも、不謹慎だと思うかもしれないけど、俺は俺でその時、期待に胸を膨らましていたんだ。




ミュウツーみたいな力を使う女の子だぜ?もしかしたらピカチュウも!……なんてな。
107 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 14:09 ID:akiCT5ss

師匠は俺のそんな心情を読んでいたのか、ニヤリと笑って近づいてきた。
それで俺の体に触れて、




??「我が御心の元より命捧げし、一人の若者よ。彼の者を、祭壇の儀式へと召喚する。




呪文を唱える様に言った。
すると驚く事にさ、一瞬で周りの景色が変わったんだ。
気がつくと、森の中の神殿みたいな所に立っててさ。その神殿の中は天井が高くて、ポケモンが書かれた壁画があって、そして何かの儀式をする祭壇みたいなのがあった。




サトシ「こ、ここは!?





??「さてと、お主の気が変わらん内に契約をすませるかの。お前、今歳はいくつじゃ?




サトシ「じ、13歳だ。




??「ふむ……痛みに耐えきれるギリギリのラインかの。お主がこれからデンキネズミを救うにあたって、これから契約の儀式というものする。その儀式の内容は、今までのデンキネズミの記憶をお前の脳内に送り込む。対してデンキネズミにはお前の記憶を送り込む訳じゃ。簡単じゃろ?




サトシ「ああ!早くピカチュウをたすけてくれ!





??「まあ待て、若き人間よ。何事にも美味すぎる話など存在せんぞ。記憶の交換、それ即ち痛みの交換じゃ。




サトシ「……痛み?




師匠は悪魔の様な笑みを浮かべていた。




??「今まで感じてきたデンキネズミの痛みが、記憶となってお前の脳内に送られてくる。最終進化には他者との完璧な記憶の同一化を行わなければならん。それがより親密な関係であれば尚更良しじゃ。
108 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 16:14 ID:33jmqFtV

そこで師匠はピカチュウを祭壇の上に乗せるように言った。
俺は言われた通りにしたら、師匠は満足そうに頷いてまた口を開いた。





??「お主をどうやらこの契約を甘く見ておる様じゃが……このデンキネズミが今まで感じた痛みが一気にお前に降り注ぐのじゃぞ?今までそれに耐えきれた人間は……前任の召使いだけじゃ。




サトシ「耐えきれなかった人間は?




??「死んだ。心底苦しんで止めてくれと血を吐きながらな!あれは実に愉快じゃったぞ?最初は勇ましい言葉を吐きながら、最後には自分の保身に走るのだからな!




サトシ「俺が死んでもピカチュウは助かるのか?




??「無理じゃ、最終進化を為すには他者との最後までリンクする事が不可欠じゃ。お前が死んでもただの無駄死にしかならん。どうじゃ?怖気付いたか?




サトシ「何言ってんだよ、上等だ!早くその儀式とやらを始めてくれ!





師匠はそこでニヤリと笑った。
そして、ピカチュウの頭に手をやって俺の頭にも手を乗せた。





段々と頭が熱くなってくるのが分かった。
俺は腰にあるモンスターボールからリザードン以外のポケモンを出して、心配そうに見つめる仲間達にお願いした。




サトシ「もし、俺が死んだらリザードンの入ったモンスターボールを持って山を降りてくれ……ゴメンな……これでお別れかもしれない。勝手な俺を許してくれ。
109 名前:名無し 投稿日:2017/02/11 23:24 ID:wpW57tNO

俺の仲間達は涙を流しながら、頷いてくれたっけ……。



??「感動しているところ悪いが、始まるぞ人間。デンキネズミの記憶を貴様に注入する。途中で耐えきれずワシの手から離れたりしたら、全ては終わりじゃ。こやつの魂は離れ、二度と現世にまみえる事は無いじゃろうな。お前もタダでは済ままい。





サトシ「わかってる、俺はぜったーーー





そこまで言ったところだった。
突然視界がシャットアウトされて、気がつくと俺は真っ暗な空間に立っていた。
暫くすると、突然シャボン玉みたいな物体が俺の周りに浮かび上り始めたんだ。




困惑しながら覗き込んで見たら……俺の顔が浮かんでた。
ちょうど俺の肩口くらいからの視線かな?
瞬時に理解したよ、コレはピカチュウの視線だ。ピカチュウの記憶だ、ってな。



そんな感じのシャボン玉が沢山あるんだよ。
俺は順番にそれを覗きこんでいった。




バトルしてる場面もあったし、一緒に風呂に入ってる時もあったな。
何でか分かんないんだけど、その時は涙が止まらなくなってた。




シャボン玉は次々と増えていく。
俺は涙を流しながら、それを一つ一つ、噛みしめる様に見て行った。




全部見終わったくらいの時、そのシャボン玉は不規則な動きを見せ始めたんだ。
まるで誰かを探す様に……。
110 名前:名無し 投稿日:2017/02/12 23:33 ID:aobtIhcN

サトシ「おれを……俺をさがしているのか?





ユラユラしていたシャボン玉の動きが止まった。
心なしかこちらを向いた様に思えた。
球体なのにな、変だろ?
探し物は見つかった様だった。





だけどそれと同時に、酷く迷ってる様にも見えたんだ。
俺は察した。
察して喋りかけた。





サトシ「俺はここだ、ここにいる!迷うな、ピカチュウ。お前が死ぬ時は俺も一緒だ、俺はお前を絶対に一人なんかにしないぞ!さあ、来い!お前の痛みを……お前の全部を受け止めてやる!





そう言った瞬間、周りのシャボン玉が一気に俺の体に入っていった。
俺は……ピカチュウの痛みと、全ての思いを、その時しっかり受け止めたんだ。





相棒の心に隠された、本当の思いもな。
111 名前:名無し 投稿日:2017/02/14 12:48 ID:j6GpEewH


……………………………

……………


ヒカリ「隠された……想い。



サトシはそこまで話すと、懐からタバコを取り出して火をつけた。
そらに浮かぶ満天の星空を見上げながら、ゆっくり噛み締める様にタバコの火をふかす。



その悲しげな表情は、ヒカリには思いつめている様に見えた。




サトシ「師匠の言う最終進化は成功した……そんでピカチュウが再び目を覚ましたのが、あの姿だ。




ヒカリはピカチュウに目を向けた。
ショートヘアーで目のパッチリとした可愛らしい美少女。あれが最終進化後のピカチュウ……。
ヒカリはそう考えると同時に、最終進化というモノの存在に疑念を持った。




ポケモンを人の姿へと帰変える最終進化……果たしてそれは一体何なのだろうか?
進化……なのだろうか?




ヒカリは答えを求める様に師匠と呼ばれる少女を見た。
少女はヒカリの視線を感じたのか、ゆっくりと目を開いてヒカリを見る。




視線が交錯する二人を見て、察したサトシは口を開こうとして、師匠と呼ばれる少女に遮られる。



??「最終進化が何か知りたいか?小娘。
112 名前:名無し 投稿日:2017/02/15 02:33 ID:u9k7fUU5
すごい展開…。
支援です。
113 名前:名無し 投稿日:2017/02/15 08:12 ID:BpafG8A0

ヒカリ「……そりゃ……ねぇ?




ヒカリは同意を求める様にサトシを見た。
サトシは戸惑った様に師匠と呼ばれる女の子を見る。




サトシ「師匠……それは……




??「小娘に危険が及ぶと?忘れたのか、そもそもワシと創造主しか知らん事じゃ、心配いらん。おい、小娘。この世界の真実というモノの一つを教えてやろう。お主は人間とポケモンの起源が同じというのを聞いたことはあるな?スクールでそれくらいは習うじゃろ?スクールすら通わず、のうのうと旅しとるサトシとかいうバカではあるまい。


ヒカリはその話は看護スクールで聞いた事があった。ポケモンと人間のDNA因子には無視できない程の類似点が存在するらしい。
その為、テレビの特番や学会では声高々に叫ばれるのだ。『ポケモンと人間の起源は同じ。人間だけが奇妙な進化を遂げ、文明という武器で地球での覇権を手に入れている』と。
ヒカリは何故その事を引き合いに出すのか、と少女を訝しみつつ、さらなる質問を口にした。



ヒカリ「……同一起源説の事ですか?でもあれは人間が現在の姿形となる理由に説明がつかず、否定された筈ですけど?




??「そりゃつかんじゃろうな。何故ならポケモンと人間の起源が同じなのでは無く、ポケモンの起源が人間だからじゃ。
114 名前:名無し 投稿日:2017/02/15 13:08 ID:BpafG8A0

ヒカリはガンと鈍器の様な物で頭を殴られた思いだった。
……彼女は何と言ったのだろうか?
ポケモンの起源は……人間?




あの多種多様な種類のポケモンの起源が……人間?
そりゃあ人間ならばDNA情報も類似してくるし、同一起源説なんて学説もでてくるだろう。





だが、ヒカリは彼女の口にした言葉を完全には理解できていなかった。明らかに正しい発音、言語で、尚且つシンプルに説明された筈なのにだ。



看護スクールで、医学的なリアリズム思考を持ち合わしたヒカリからすれば、それは未知の言語で喋る宇宙人の言葉と等しい程、陳腐なものだった。




ヒカリ「あの……お、仰しゃってる意味が
115 名前:名無し 投稿日:2017/02/16 00:30 ID:Z7HA4TB3
支援
116 名前:名無し 投稿日:2017/02/18 00:29 ID:vp5qiTzl

??「古来……気の遠くなる様な昔の話だ。まだポケモンならざる、力を持たぬ生物と人間が共存していた時代の話をしよう。人は科学という神秘を持って、その世界の覇権を為すがままにしていた。だが、天敵を失った生物の待つ末路はいつの時代も決まっている。気に入らない組織、国家、集団に難癖をつけて、始まるのはケンカならざる同族同士の領土、資源を求めた殺し合い……戦争だ。




ヒカリ「……




ヒカリは戦争、という言葉を聞いたのは看護スクールと幼少期の頃以来の事であった。
そして国家、という言葉も、ヒカリからしたら全くと言っていいほど聞き覚えがない。
国家という概念の無い、地方で分けられた世界に生きるヒカリからすれば馴染みの無いワードだ。
それもその筈。



この世界では徹底された幼少期からの反戦教育が成されている。
この世界で育った良識的な人格と社会を重んじる文明人であれば、戦争というワードを聞いただけで忌み嫌い、拒絶反応を起こしてしまうものだろう。
117 名前:名無し 投稿日:2017/02/18 19:18 ID:tDyJ33ZR
それに、ポケモンならざる力を持たぬ生物……とは、一体何のことなのだろうか?
ヒカリは脳裏に沢山の疑問符を浮かべたまま、少女の言葉に傾注する。




??「その国家に身を置く人間達は切り札として、大いなるもろ刃の剣を持っていた。自分達の首まで落としかねない代物じゃ。在ろう事か、愚かな人間達はそれで斬り合う事を選んだ。大地は荒れ、気候は変動し、都市は消滅した。一瞬の熱線を持って、世界の殆どは蒸発したのじゃ。




ヒカリ「……それは、もろ刃の剣とは……人間の生み出した兵器、の事ですか?そんな力を持った兵器なんて……私聞いたことありません。



それだけでない。
彼女の語る歴史はヒカリが幼少期より、聞き及んだ事とは全く違っている。
ヒカリの認知している歴史とは、古来、人とポケモンが争いの果てに共存して、今の形を成しているという事だけだ。



??「そうじゃろうな、この世界に統べる人間達のほとんどがその事を知らん。知っているのは私の認知しているだけで一人だけ、創造主だけじゃ。




ヒカリ「創造主とは……神の事ですか?



??「違う。神などと存在も確かでは無い戯けた存在と一緒にするでない、創造主は創造主。人間じゃよ。人間達をポケモンの姿に変え、変動した過酷な地に順応させた慈悲深き悪友の事じゃ。変動した地から逃げる様に地下に篭り、平穏となった世界に再びノコノコと現れた人間達は大層、驚いていたぞ。自分らの知らぬ内に、地上では未知の生物達が世界を支配しているのだからな





ヒカリ「……そ、その創造主とやらが悪友とは……どういう事なんですか?それとまるで……その場で、それを見てきたかの様に話されるんですね?




??「おお、見てきたとも。創造主とは幼馴染でな、姉妹の様に仲が良かったのじゃが……。ふむ、ところで小娘、貴様にはワシが何歳に見える?




ヒカリ「は?……えーと、じゅう……ろく?




??「ふむ……若く見られるのは悪く無い事じゃ。じゃが、話の流れで察して欲しいモノじゃのう。ワシも暫く眠っとったから定かでは無いが、二千を超える年はとっておる。




ヒカリ「にせっ!?え!?
118 名前:名無し 投稿日:2017/02/20 21:15 ID:C5G93ie8
早く続き書けよ
119 名前:名無し 投稿日:2017/02/22 08:44 ID:JqDtuDhX
支援です
120 名前:十五歳の早計 投稿日:2017/02/22 19:20 ID:deGHmRhZ
すみません、忙し過ぎて全然書けてませんでした。今日時間があれば書いていこうと思います。
121 名前:名無し 投稿日:2017/02/25 18:28 ID:bn9UB5lQ
面白い 支援
122 名前:名無し 投稿日:2017/02/25 21:04 ID:B2tdNNWP
驚愕するヒカリを他所に、女の子は眠気を堪えるように大きな欠伸をした。
女の子は目をしきりに擦りながら、サトシの方向へと向き直る。



??「今日はもうここまででエエじゃろ?なんか、眠うてかなわん。それに、いきなり詰め込みすぎても小娘は理解できんはずじゃ。こやつはこの世界に馴染み過ぎておる、常人には理解できんじゃろ、『試練』を積ませたお前と違ってな。



また新しい言葉が出てきた、とヒカリは顔をしかめた。
二人は構わず会話を続ける。



サトシ「そうですね……明日も早い事ですし、この辺で切り上げましょうか。ヒカリ、もうテントへ帰ろう、今日はもうゆっくり休め。




ヒカリ「えっ?……でも、まだ聞きたい事が




ヒカリは思わず、それを口に出していた。
それもその筈だ、ヒカリは数時間の間に世界の秘密とやらを聞かされ、驚愕に顔を何回引きつらせ続けた事か。
彼女の脳裏に巣食う知識欲の怪物が、ここで話を切られることを恐れていた。

そんな彼女に対し、女の子はめんどくさそうに肩をすくめる。



??「くどいぞ、全く。ふむ、まあ……構わんか。貴様に記憶操作系の技は使えんが、物理技なら聞くことはさっきのテレキシネシスで証明済みじゃ。




ヒカリ「えっ?それってどういう……



??「グッスリ眠れ、ワシもそうする。



サトシ「師匠!?やめーーー



サトシの声が聞こえた瞬間、ヒカリは気がつけば体は宙へと持ち上がり、草木の生い茂る地面に頭から落下していった。
凄まじい衝撃で気を失ったのは、言うまでもない。



………………………………

…………
123 名前:名無し 投稿日:2017/02/25 22:21 ID:Coe06fXl


カスミ「ヒカリ、ヒカリ。起きて、もう朝よ。



ヒカリ「う、うーん……あと、五分……



カスミ「サトシみたいな事言わないの!ほら、起きる!タケシが朝ごはんの準備してくれたから。



ハルカ「起きないとアイリスの二の舞にしちゃうかも。



ヒカリはその言葉に、昨夜のアイリスの顔の落書きをフラッシュバックさせた。
瞼の上にある間抜けな瞳の絵。



ヒカリ「それだけはカンベン!



ヒカリは気づくと跳ね起きるように目を覚まし、カスミとハルカを爆笑させていた。



カスミ「ははっ!早く行くわよヒカリ、アイリスの間抜け面を拝みに!




ハルカ「寝ぼけながら、ご飯食べにいったからそろそろ皆んな気づいてるかも。




ヒカリは二人に促され、テントから出てタケシが朝ごはんを準備しているという、昨夜のパーティー会場へと向かう。



彼女はその道中で昨夜、師匠なる人物とサトシから衝撃の事実を聞かされた事を思い出していた。
カスミとハルカが恋愛話で盛り上がる中、ヒカリは一人、感慨にふける。



ヒカリ『どうしよう……昨日、あの女の子に地面に頭から落とされてガンガン痛いし、信じられないくらい寝不足だし……やっぱり昨日の出来事は夢じゃない様ね。……』



カスミ「でも、やっぱりタケシは無いわよね?



ハルカ「どうして?家事万能だし、気配りがすごいし、頼りになるから凄くモテる気がするかも



ヒカリ『はあ……モンスターボールからサトシが師匠って呼ぶ女の子は出てくるわ、ピカチュウは人型の女の子だわ……もう訳わかんない。あれ、そう言えばサトシから女の子の事を師匠って呼ぶ理由まだ聞いて無いや……それにピカチュウの隠された想いってのも気になる……』



カスミ「逆ね、相手の方が家事万能で気配りされたら女のプライドはズタズタでしょ?付き合う分にはいいかも知んないけどね



ハルカ「うーん……そんなもんなのかな?




カスミ「そうよ、女からしたらちょっと相手がだらしなくて鈍感なサトシみたいなのが楽でいいのよ。その分、そういう男は浮気したりギャンブルにはまりやすいのが難点だけどね。



ハルカ「なんかすっごい経験豊富っぽい発言かも



カスミ「かもじゃなくて、そうなの。ハルカはプライドがないからそう思うだけよ。ね、ヒカリ?



ハルカ「聞き捨てならないかも!




ヒカリ『私ピカチュウはずっと男の子と思ってたんだけど……実は女の子だったとか……しかも、かなりの美少女じゃん……それじゃあ隠されていた想いってのは……恋ごころ?いや、でもまさか……』



カスミ「……さっきからずっとこの調子ね、この子




ハルカ「そう言えば目の下のクマが凄いかも……
124 名前:名無し 投稿日:2017/02/26 22:52 ID:HmnTXXJs

カスミとハルカは頷いて、考えを巡らすヒカリの耳に片方ずつ配置につく。
そしてーーーー



カスミ・ハルカ「無視すんなー!!



ヒカリ「わわっ!!?



ヒカリは突如耳元に聞こえた大音量に、思わず尻餅をついた。



カスミ「全く、さっきから変よ、アンタ。上の空っていうか……何かあったの?



ハルカ「クマが凄いし、夜中に何かコソコソしてたの?



ヒカリ「あわわわっそんな事してないって!




ハルカ「ふーん、なら良いけど




カスミ「……ヒカリ、あんたまさか



カスミは一瞬、意味ありげに呟いて、いつもの雰囲気とは違う、冷たい氷の様な表情を見せた。
ヒカリは背筋を凍らせながら、疑問を口にする。



ヒカリ「えっ?……な、何?



ハルカ「……どうしたの?何の話?




カスミ「……まあ、いいわ。それより今は朝ごはんよ、お腹減っちゃった。
125 名前:名無し 投稿日:2017/02/28 23:31 ID:ySs7fb5t

カスミは尻餅をついているヒカリの前で踵を返し、パーティー会場の方へと歩いていった。
ハルカは戸惑う様に彼女の後ろについていく。



ヒカリは暫く呆然としていたが、やがて立ち上がってそんな二人を小走りで追いかけた。




………………………

……………


ヒカリ「えーっ!?私以外、皆んな朝ごはん食べたら家に帰っちゃうの?




快晴、空は曇り空一つ見当たらない。
爽やかな朝の空気。
それと、香ばしい香りを漂わせる、パーティー会場に用意されたタケシの料理も相まって、素晴らしい休日の朝を演出していた。



それだというのに……と、ヒカリは声を大にしていて驚きを口にしていた。




ユリーカ「そうなんだよー。お兄ちゃんには3日位滞在できる様に予定を空けさせようしてたんだけど、運悪くどうしても外せないジム戦が入っちゃってさー。もー最悪




シトロン「しょうがないでしょう!視察という名目で、ある国の皇太子が来訪されて我がジムでバトルされていくというんですから……これを断ったら何をされるか……




タケシ「ほう……それは凄い!でも、中々難しいバトルになりそうだな




アイリス「?どうして相手のポケモンも見てないのにそんなことが分かるの?



タケシの言葉にアイリスが首をかしげると、朝一番にオーキド研究所からタケシの朝ご飯を食べに来ていた、シゲルが呆れた様に肩をすくめた。



シゲル「なんだ、本当にわからないのか?コレは非常に高度な政治的駆け引きが要求される問題だ



アイリス「……なに、どういう事よ?



呆れた様な態度を取られたアイリスは不機嫌そうに顔をしかめながら、シゲルに尋ねる。
シゲルは朝食のウィンナーをフォークに突き刺し、得意げに左右に振りながら答えた。



シゲル「相手国家にしてみれば国家の象徴である皇太子が負けても、勝っても国民の意識には我々、地方連合国家への印象が位置づけられてしまう。それによる政治操作も容易いものさ。例えば、完膚無きまでにジムリーダーシトロンが皇太子を倒したとする。すると皇太子のいる国家の国民感情はどの様なモノになると思う?



不意に尋ねられ、アイリスはポカンとした後、うーんと暫く思考する。
そして、何かを思いついた様に口を開いた。



アイリス「おこーーー



シゲル「不正解だ。答えは国民に我々に脅威の意識を持たせる事に成功する、だ。それにより、低コストの輸入物で国家の生計を立てている様な奴らに、国家総出の競争性を持たれると非常に厄介な事になる。
126 名前:名無し 投稿日:2017/03/05 12:44 ID:Wg1rwvhq
支援
127 名前:名無し 投稿日:2017/03/07 16:40 ID:ej8UAMSf
更新楽しみにしてます支援
128 名前:名無し 投稿日:2017/03/07 20:14 ID:UzJSbgO0

アイリスは自分の答えを語る前にシゲルに遮られ、更にほおを膨らまして睨みつける。
シゲルはそんな事もお構い無しと言わんばかりに続けた。



シゲル「奴らの国民はバトルを神聖視している。それを利用した狡猾な一石二鳥の国家政策さ。シトロンと僕はエライのに巻き込まれたって訳だ。



アイリス「何よ、あんたは関係ないでしょ!それなのにカッコつけちゃって



アイリスの反撃にシゲルは笑みを浮かべ、余裕をみせつけた。
コーヒーに口をつけてから、また口を開く。



シゲル「関係大アリさ。このバトルに僕はカロス委員会から召集を受けているんだ。僕は今、地方連合国家の対外部門で仕事しているからね。



その場にいた殆どの人間が「「「対外部門?」」」と首を捻る。
シゲルが得意げに説明しようとした時、そこで意外な人物が会話に加わって説明を始めた。
129 名前:名無し 投稿日:2017/03/07 20:32 ID:UzJSbgO0

サトシ「対外部門は地方連合の虎の子さ。連合に含まれない国家の監視、干渉、それを元に対外戦略を練るエキスパート集団だよ。それにしてもシゲルが対外部門にいるなんて驚きだぜ、まあお前は昔から頭は良かったしな……って、なんで皆んな口を開けて黙ってるんだよ?



突然博識な知識をさらけ出したサトシに一同は驚愕を覚えていた。
喋り始めた当の本人のシゲルでさえ、ポカンと口を開いていた。



カスミ「だって……今時スクールも行かずに修行してた様なバトル脳のサトシがそんな私達も知らない様な事を知ってるなんて……



シゲル「そのサートシ君から認知度の低い対外部門の説明が出てくるとは……君は実は何処かの国家がすり替えた偽物なんじゃないか?皆んな、逮捕するべきかな?



サトシ「お前ら俺を何だと思っているんだよ!



サトシの絶叫に一同は声を上げて笑い声を上げた。



………………………

…………
130 名前:名無し 投稿日:2017/03/09 12:53 ID:6SIxLhVW
支援
131 名前:名無し 投稿日:2017/03/10 00:24 ID:CM6Hk9Jg
朝食も終わり、帰参組の一同はサトシの家の前に勢ぞろいで集まっていた。
ハルカは大型バイクのエンジンを吹かし、マサトを後部座席に乗せていつでも発進できる様に準備を整えている。



他にはサトシとタケシが手配していた空港までのチャーターバスが少し前方で待機していた。



マサト「じゃあね!僕の憧れのチャンピオン!また近いうち絶対遊びにくるよ!



サトシ「やめろよ、照れるじゃねぇか



ハルカ「じゃあね、サトシ。一足お先に帰るわ



サトシ「お、おう……気をつけて帰れよ



サトシはハルカを一瞥すると、直ぐに顔を赤くしながら振り返り、後方の青々とした山を眺めながら答えた。
それを見ていた一同はクスクスと笑い声を上げる。


カスミ「別の意味で照れんじゃないわよ、この思春期変態ザル



サトシ「お、おう……すまん



尚も照れるサトシに、カスミは肩をすくめた。




カスミ「はあ、重症ね。こりゃ先が思いやられるわ。



カスミはそう言った後、一同の端で事の流れを見ていたヒカリに静かに歩み寄る。
ヒカリはカスミの冷たい表情を思い出し、ビクリと身を震わせたが。



ヒカリは自らの耳元に口を寄せるカスミを避けなかった。
カスミはヒカリに聞こえる様にだけ小さく呟く。
132 名前:名無し 投稿日:2017/03/14 15:06 ID:vrhXPN7P
しえん
133 名前:名無し 投稿日:2017/03/16 19:05 ID:oiEHHHBF
メガ支援
134 名前:名無し 投稿日:2017/03/16 22:50 ID:YXwAAd6X
ありがとうございます、今日は早く帰れたんで頑張って書きます。
135 名前:名無し 投稿日:2017/03/20 23:01 ID:H1EqrVZw
支援
136 名前:名無し 投稿日:2017/03/23 18:24 ID:ySerdl6O
書く書くといって、結局書けてませんでした。今日こそは必ず書きます!
137 名前:名無し 投稿日:2017/03/23 23:03 ID:gh50WmQI
年度末は忙しいですよね。
仕事も作品投稿も支援です。
138 名前:名無し 投稿日:2017/03/25 01:40 ID:pC1OxRmZ

カスミ「昨日……サトシに会ったでしょ?



ヒカリ「!?



ヒカリはその言葉に背筋が凍る様な感覚を覚えていた。
何故知っているのか?その疑問符だけがヒカリの脳内で飛び交って羅列を組む。




カスミ「その反応は……当たりみたいね、カマかけただけなんだけど……そうなんだ、ふーん




ヒカリ「カスミ……私は別に貴方が思っている様な事は……



カスミ「あら、私まだ何も言って無いわよ?そんな口ぶりじゃ、私との約束を破ってヒカリがサトシと逢引してたって、私が疑ってるみたいじゃない。まあ、それでも別に私は構わないわ。例えそうだとしても、所詮口約束を交わしただけの私にはとやかく言う権利は無いしね。




ヒカリ「……
139 名前:名無し 投稿日:2017/03/25 16:02 ID:uNMkP51A
ヒカリは弁解しようにも弁解できない状況に、軽く頭痛を覚えながら押し黙るしかなかった。
昨夜の事はカスミには言わない方が良いだろう、とヒカリは密かに心中に誓う。



瞼の裏のスクリーンに映るのはモンスターボールから出てきた女の子の姿。
他には衝撃の真実を語るサトシと人型のピカチュウだ。




話した所で余計ややこしくなるだけ、不本意だがヒカリはカスミに勘違いされた形でこのまま話を進めるしか無かった。
性格のキツイ、カスミの事だ。


この無表情の顔のまま、今度はどんな言葉を浴びせられるのだろうか?
ヒカリはそこまで想像した所で内心、恐怖を感じていると……。



ヒカリの予想に反して、カスミはいきなり表情を和らげて、穏やかな口調で語りかける様に話しかけてきた。

140 名前:名無し 投稿日:2017/03/26 00:48 ID:oIU6NIgQ

カスミ「なーんてね。心配しなくてもヒカリがハルカを裏切る筈が無いもの、信じてるから安心して。



ヒカリ「う、うん……



ヒカリはカスミの激変したと言っていい表情の変化に戸惑いつつ、首を縦に振る。
そして、脅す様な声音で言葉を吐く高圧的なカスミに恐怖を感じていると。
カスミは微笑みを浮かべながら、又もや口を開いた。




カスミ「寧ろ私はヒカリにもっと積極的に行動して欲しいと思っているのよ



主語の抜けたカスミの言葉に、ヒカリは首をひねる。



ヒカリ「……どういう事?



すぐ様聞き返すと、カスミは頷いて手早く説明を始めた。



カスミ「ヒカリは3日位ここで過ごすんでしょ?その間に女耐性の無いサトシと近い距離で接して慣れさせてやってくんない?どうせサトシと行動を共にするんだろうし、腕くらい組んでも大丈夫な位にはしときたいわね。それが将来的にハルカの為に繋がるわ、このままじゃ幾ら何でもね



ヒカリ「……
141 名前:名無し 投稿日:2017/03/26 12:50 ID:ZyrVrYoS
支援
142 名前:名無し 投稿日:2017/03/26 23:21 ID:zp2jBOv5

カスミ「あら、不服?



ヒカリ「いや……でも……うーん。……そういう事はカスミに言われてやる様な事じゃ無いと思う……



ヒカリの言葉にカスミは表情を崩して眉をひそめた。


カスミ「は?ならどういう事よ



ヒカリ「私がやるわ、私の意思で。ハルカの為になるかは分からないけど……少なくともサトシの重度の照れを少しは治してあげたい



先ほどの怯えた表情と打って変わり、意思の篭った口調と姿勢で答えるヒカリに、カスミは若干驚いた様子を見せる。
が、それもすぐに消え、いつもの不敵な笑みに戻った。



カスミ「そ、まぁ私としてはどっちでもいいわ。あんまり気張らずに3日間楽しんでね。……そろそろバスも出発しそうだし、サトシの相棒にも不本意ながら見られてるから行くわね



ヒカリ「え?



カスミの言葉にヒカリは振り返ると、背中に大きな傷を持つ愛らしいピカチュウが二人を見ていた。
ピカチュウは首を傾げて何のことだか分からない、という表情を見せている。



ピカチュウ「ピカ?



カスミ「とぼけた顔しちゃって、あんた絶対分かってるでしょ……まあ喋れないから良いけどね。……ねぇヒカリ、そういえばピカチュウって昔と比べてサトシと全然ベタベタしてないよね?


言われてみてヒカリはそういえば、と気がつく。
昔は常にサトシとベッタリで肩に乗せたり、じゃれあったりしていた。
でも今は……パーティー会場でも、普段の様子を見ていても、二人は一定の距離を保っている様に見える。
ヒカリは一瞬、昨夜にサトシから聞いた話を思い出し、それに原因があるんじゃないか?と思い至った。




だが、ヒカリはカスミにジーッと顔を見られているのに気がつき、思考を停止する。



ヒカリ「言われてみれば……そうね



カスミ「でしょ?まあどうでもいいか。こいつら付き合い長いし、そんなもんなんでしょうね。それよりもう皆んなバスに乗ったみたいだし、そろそろ行くわ。もう飽きたし、まだ落書きを顔に残して皆んなに笑われてる哀れなアイリスに、バスの中で盛大にネタバラシといこうかな。じゃあね、ヒカリ。近いうちまたパーティーがあるらしいからその時に逢いましょ


ヒカリ「うん、そうだね……またね、カスミ


カスミは軽く手を振って、バスへと乗り込んでいった。暫くして、出発して小さくなっていくバスとバイクのシルエットを見送ると。
その場に残されたのはサトシとヒカリ、ピカチュウだけとなった。
143 名前:名無し 投稿日:2017/03/27 00:42 ID:mjGwEZkU

ヒカリ「行っちゃったね?



ヒカリがサトシにそう促すと、サトシは山々を見つめながら挙動不審に答える。



サトシ「そ、そうだなぁー!……そ、それより、ヒカリ、これからどうするんだ?俺はちょっと野暮用が出来たからロケット団と一緒にトキワまで行くんだけど……



ヒカリ「私も行くわ、まだサトシには聞けてない事があったし……それとサトシ!



ヒカリはグイッとサトシの両頬を挟んで自分の顔へと向けさせた。



ヒカリ「喋る時はちゃんと目を見て話してね。そんなんじゃあこの先やっていけないよ?



サトシ「わわわ、ひ、ヒカリ!な、何を!



ヒカリ「私がいる3日間は直ぐ近くにいるから、女の子に少しは慣れてね。私もサトシが慣れる様に努力するから



サトシは赤面しながら、コクコクと頷いた。
ヒカリはサトシから手を離し、近くにいた別の方向を向くピカチュウを視界に入れる。
ヒカリは心なしか、一瞬ピカチュウの方から言い知れぬ殺気の様な何かを感じた気がした。
144 名前:名無し 投稿日:2017/03/28 05:48 ID:M6HkCl3H


……………………

………

カロス地方、アサメタウン。
閑静な住宅街と自然の草花が辺りを締め、その美しい相貌と風景からは、他地方や外国からも賞賛を贈られる程だ。



そんな町を一人、トボトボとキャリーケースを持って歩く一人の少女と一匹のポケモンが居た。



彼女の名前はセレナ。
彼女は五年前、サトシと共にカロスの地を旅した仲間である。
二年前から全寮制のスクールに通っており、彼女が実家に帰るのは久方ぶりの事であった。



セレナ「はあ……最近全寮制スクールは試験ばっかりだったからなぁ……逃げ場もないし、サトシとも全然喋れてないなぁ……疲れたよテールナー



テールナー「テーナッ



テールナーが呆れた様に返事をする。テールナーもまた、セレナと会うのは久しぶりだった。
その全寮制スクールは休暇期間以外はポケモンはもちろん、家族と会うことすら許されない。



セレナ「やっと家についた……久しぶりだなぁ。ただいまー……って誰も居ない?お母さん買い物かな……まあいいや。部屋に帰って着替えてからお風呂でも入ろ




セレナはキャリーケースを重そうに持ち上げながら階段を登る。
部屋の前にたどり着くと、勢い良く扉を開けた。



セレナ「ああ〜つい……た?……え、そ、ソーヤ?何で私の部屋なんかにいるの?



ソーヤ「せ、セレナ!な、何でだ……寮から帰って来るのは明日の筈だ!



その部屋に何故か居たのは……セレナの幼馴染、小さい頃はよく近所で遊んだ綺麗な赤髪を持つソーヤだった。
145 名前:名無し 投稿日:2017/03/28 06:02 ID:M6HkCl3H

ソーヤは慌てた様にサッと何かを隠す仕草をする。
セレナはそれを見逃さなかった。


セレナ「ソーヤ……今何を隠したの?



ソーヤ「何も隠してなんか……無いよ



セレナ「じゃあ手を上げて、何も持って無いことを証明して。いくら幼馴染でも勝手に部屋に入った挙句、何か悪さしてたなら許さないわよ



ソーヤ「い、いやだ!上げるもんか!



セレナ「……話にならないわね、もういい加減にしてよ、ソーヤ



ソーヤ「そんなに僕よりサトシって奴の方が良いのか!



セレナの動きが止まる、ソーヤはそれを見て笑みを浮かべる。



セレナ「……何でサトシを知ってるの?



ソーヤ「セレナの居ない時に電話がかかって来たからだ!俺の女になんか用か?って言ったら情けない顔してたぜ?



セレナ「えっ……う、うそでしょ?
146 名前:名無し 投稿日:2017/03/28 20:00 ID:XoC0lW4S
支援です。
147 名前:名無し 投稿日:2017/03/29 01:49 ID:k9LDc9aJ

ソーヤ「嘘じゃねぇよ……それとな、セレナ。サトシって奴を俺が知らない訳ねぇだろ。何たって世界チャンピオン様だ、世界一の超有名人だぜ?そんな奴が田舎娘のセレナには釣り合う訳がねぇよ。お前が傷付く前に俺が追っ払ってやったんだ



セレナ「な、あんた何言って……



ソーヤ「なあ、セレナ。それでさ、俺がチャンピオンと話してから数日経ってちょっとしてからよ、こんな面白いもんが届いたんだ、見ろよ、傑作だからよ



ソーヤはそう言いながら、懐からハガキの様な物を取り出してセレナに投げつけた。
セレナは恐る恐るそれを拾い、中身を確認する。



セレナ「なっ……



ソーヤ「笑えるだろ?彼氏さんもどうぞだってよ。楽しい楽しいパーティーの招待券だ。期日は来週の金曜日、お前は厳しい全寮制のスクールだから行けっこないよな?



セレナがストンッと床に尻餅をついた、その顔は呆然と手紙を見つめている。
やがて瞳から涙を流し始めたセレナに、ソーヤはニヤリと口角を釣り上げて笑みを浮かべる。



ソーヤ「なあ……セレナ。そんなに落ち込むなよ、俺がいるじゃねぇか?……俺結構モテるんだぜ?どうせチャンピオンはお前の事なんか相手にしないんだから、俺と……えっ?


ゆっくりとセレナに近づき、髪に触れようとしたソーヤの手には鋼鉄の冷たい棒が押し当てられていた。
その主の正体は……紛れも無く、セレナだった。



ソーヤは、しばらく鳩が豆鉄砲食らったかの様な表情を見せていた。
対するセレナは……怒りを浮かべた冷静な表情を見すいた。



セレナ「住居不法進入、他者の所有物隠蔽……これだけやれば現行犯逮捕のヤマのら
148 名前:名無し 投稿日:2017/03/29 07:20 ID:RLWNj9Op
すみません、寝ぼけながら書いたんで文章がめちゃくちゃになってました。147は見なかった事に……もう一度今夜、新しい文を書かせて頂きます。
149 名前:名無し 投稿日:2017/03/30 18:39 ID:cpn4ZTeY
支援
150 名前:名無し 投稿日:2017/03/30 20:37 ID:t1MLg4Qy

ソーヤ「嘘じゃねぇよ……それとな、サトシって奴を俺が知らない訳ねぇだろ。何たって世界チャンピオン様だ、世界一の超有名人だぜ?そんな奴と田舎娘のセレナが釣り合う訳がねぇよ。上手く付き合えたってどうせ捨てられるんだ。お前が傷付く前に俺が追っ払ってやったんだ



セレナ「な、あんた何言って……



ソーヤ「なあ、セレナ。それでさ、俺がチャンピオンと話してから数日経ってちょっとしてからよ、こんな面白いもんが届いたんだ。見ろよ、傑作だ



ソーヤはそう言いながら、懐からハガキの様な物を取り出してセレナに投げつけた。
セレナは恐る恐るそれを拾い、中身を確認する。



セレナ「なっ……



ソーヤ「笑えるだろ、彼氏さんもどうぞだってよ?楽しい楽しいパーティーの招待券だ。期日は来週の金曜日、お前は何処か知らないけど山奥の厳しい全寮制スクールだから行けっこないよな?



セレナがストンッと床に尻餅をついた、その顔は呆然と手紙を見つめている。
やがて瞳から涙を流し始めたセレナに、ソーヤはニヤリと口角を釣り上げて笑みを浮かべる。



ソーヤ「なあ……セレナ。そんなに落ち込むなよ、俺がいるじゃねぇか?……俺結構モテるんだぜ?どうせチャンピオンはもっとモテモテだ。お前の事なんか相手にしなくなるんだから俺と……って、えっ?



ソーヤはゆっくりとセレナに近づき、そのショートカットの髪に触れようとしたが……それは予想外の形で阻止された。
それを遮った物体があったからだ。



彼の手には真っ黒で鋼鉄の冷たい棒が押し当てられていた。
その棒を見てソーヤは顔を醜く歪める。
何故ならそれは……紛れも無く、スタンロッドと呼ばれる対人間用の防犯道具だったからだ。



本来、それは地方連合国家警察のジュンサーしか持つことを許されてない代物だ。
ソーヤはそれを見て、しばらく鳩が豆鉄砲食らったかの様な表情を見せていたが、棒を押し当てている当の本人は感情的に目をギラつかせて獲物を捉えていた。



セレナ「住居不法進入、他者の所有物隠蔽……法令第18条と23条の適用で……



ソーヤ「な、なに言ってんだよ。ていうかお前、何でそんなモン持って!それはジュンサーしか……



セレナ「ジュンサーよ。最近法律が変わってジュンサー教育寮生の私でも逮捕権を行使できる様になったの。私みたいな一般人がジュンサー教育を受けているのも同じ理由よ




ソーヤ「ジュ、ジュンサーだって!?だってジュンサーは……




バチッと鈍い音が部屋に響き渡り、ソーヤは頭から崩れ落ちる。
セレナはゆっくりと立ち上がり、バックから無線機と手錠を取り出す。



セレナ「ソーヤ……貴方、運がないわね。私の逮捕……いや、ジュンサー候補生全体の逮捕第1号だもん
151 名前:名無し 投稿日:2017/03/30 21:31 ID:R33zsNze
なんか読み返してみたらソーヤのキャラがいきなりヤンキーみたいになってました……気にしないで頂けたら幸いです
152 名前:名無し 投稿日:2017/04/01 23:53 ID:96NB4FqD

セレナ「サトシに会わなきゃ……


セレナは気づけば呟いていた。
ソーヤのせいでサトシは勘違いしたに違いない。
最悪だ、折角彼が少しばかり私意識しだしたのか、照れ臭そうにテレビ電話をかけて来るようになったのに……。
……いや、それも二年前の話か。

今のサトシがどんな感じなのか分からない。
テレビや新聞で顔を見たくたらいだ。
体を逞しくなって、顔は大人っぽくなっていた。


そんな彼が今、どんな考えを持って久しぶりに私に電話を掛けてきたのか分からない。

もしかしたら私のことを異性として気にしていたかもしれない。
もしそうだとしたら……したら……。

セレナは自分の机の上にあるテレビ電話を起動し、サトシの番号に掛けてみる。

……繋がらない、今度は自宅の固定電話に掛けてみるが結果は同じだった。
番号が変わっているのか、はたまた家に居ないだけか……まあ、いいか。どっちでも構わない。
とセレナは言葉を零す。

実際に会って説明すればいい。
どうせジュンサースクールは来週の木曜で卒業だ。パーティーのある来週の金曜日には距離的に飛行機を使っても間に合わないだろう。
だが、卒業してそのまま向かえばパーティーの次の日にはたどり着けるはずだ。

焦ることは無い、どうせ卒業したら会いに行くつもりだったし、その時に全部話せばいいか。
セレナはそう結論づけ、一人納得していた。

…………………

…………


セレナは無線で応援を要請し、それが来るまで一人ベッドに座り、思いに耽っていた。

今からちょうど二年前の事だ。
サトシと急に連絡が取れなくなってから、セレナは毎日不安感に苛まれていた。
聞けば故郷にも帰っていないし、連絡も取っていないらしかった。
完全に行方不明なのだそうだ。


しかし、彼女には確信めいた一つの事があった。
それは……サトシは生きている、という事だ。


セレナはサトシ程パワフルな人物を知らない。
トラブル体質で、様々な事件に巻き込まれやすいが彼は一歩も引かずに立ち向かうのだ。


彼は運にも恵まれている。
それも、ただの運では無い。それはサトシ自らが勝ち取る運なのだ。


サトシは何事にも全力で物事に挑む。
それが周りを感動させて、人なら応援をポケモンなら最高のバトルを引き起こす。
結果様々な出来事が奇跡を産み、サトシは成功するわけだ。
私もそんなサトシに魅了された一人だ……とセレナは頬を染める。


そんな彼を知っているセレナは確信していた。
彼が死ぬ筈が無い、彼は何処かで生きている。
153 名前:名無し 投稿日:2017/04/02 00:22 ID:VkFj2aVx
私が、私自身の力で見つけ出す。
彼女は心にそう誓った。

それから彼女は強くなって、技術を身につけてサトシを探そうと考えたのだ。
それが彼女を新設されたジュンサースクールへの道へと駆り立てる事になる。


………………………

…………


家のチャイムが鳴り、応援が来たのかと扉を開けたセレナは、予想外の訪問者に驚いていた。


セレナ「シトロン、ユリーカ、どうして此処に?


ユリーカ「やっほー!セレナ久しぶり!あの巷で、話題のチャンピオンからパーティーの招待券届いたでしょ?


シトロン「折角だから一緒に行きませんか?セレナは同じカロス組ですし



セレナ「そうなんだ……ごめん、私パーティーに行けそうに無いわ



ユリーカ「ええっ!?どうして?



シトロン「……よろしければ理由をきいても?



セレナ「いいわ、全部話す。上がって、折角だからお茶にしましょうか



セレナはそう言って二人を家に上げると、客間ではなく二階にある自分の部屋へと誘導した。
154 名前:名無し 投稿日:2017/04/02 08:07 ID:LCLa4OjZ

……………………

………

砂埃をあげてマサラの地を白いバンが駆けていく。
バンの側面にはホワイトホールという店の名前と、電話番号が書かれていた。

その車内には……運転手はコジロウ、助手席にムサシ、後部座席にヒカリとサトシが真ん中にいるニャースを挟むように座っていた。

静かな車内の中、流れ続けるラジオの音だけが響き渡る。

『……続いてニュースです。地方連合国家における警察組織、JPSN。その実働部隊、ジュンサーの愛称で呼ばれる女性警察官達の出生元が、クローンバイオ科学で知られる地方連合国家研究所でクローン生成されていた事が判明した問題について、地方連合委員会政府は認知していなかったと主張し、地方市民団体の代表のノダギシ委員長は非人道的だとーー』



ムサシが乱暴に車両内のラジオを消し、ダッシュボードに足を乗せる。


ムサシ「全く……この国は闇だらけね。そう言えばジャリガール、あんたの行ってた看護スクールって……ジョーイを養成する場所だっけ。あそこのジョーイもクローンだがなんかで騒がれていたわね?



ヒカリ「うん……。私はジョーイ養成所の卒業生だよ。全寮制で結構厳しかったっけ……。私達が旅をしていた時代、ジョーイさんとジュンサーさんは皆んな同じ顔だった。本人達は姉妹だって言ってたけど……それは試験管の中で作られた嘘の記憶。今、渦中のジョーイさん達は一目につかない場所で一般人から選抜された人々をジョーイに仕立てる教官として活動してる



ムサシ「やるわねジャリガール。ジョーイ試験て、すっごい難関なんじゃ無かったっけ?私も一応看護スクール行ってたんだけど、当時はラッキー育成場しかなくてね、私一人だけ人間だったんだから、直ぐに辞めちゃった
155 名前:名無し 投稿日:2017/04/02 20:45 ID:XFZIELJW
ヒカリ「ええっ!まさかあのラッキースクールに!?……そうか、あれはムサシさんの事だったんだ


ニャース「なんにゃ?その含みのある言い方は?


コジロウ「聞かせてくれ、ヒカリ


車内にいる全員の視線を浴び、ヒカリは戸惑いながらも説明を始める。



ヒカリ「うん……ジョーイ養成所で訓練している時にね、教官のジョーイさんからこんな事を言われたの『実は貴方達が初めての一般からの入校者じゃないの、実はもっと以前にスクールに入校した伝説の人が居たのよ』って



ニャース「で、伝説の入校者にゃ?
156 名前:名無し 投稿日:2017/04/02 21:00 ID:XFZIELJW

ヒカリ「そうよ。それでね、その話を聞いていた一人の同期が『でも当時は一般からの看護師枠すら無かったんじゃ無いんですか?』て尋ねると、ジョーイさんは『その人は何とラッキー看護学校に入校したとんでもない破天荒な人だったの。人間がポケモン枠で卒業するのはやっぱり難しくてやめちゃったらしいんだけどね』って教えてくれたの。厳しい訓練で挫折しそうな子がいたら、ジョーイさんはその事を引き合いに出して同期を勇気付けてたわ



コジロウ「そうか……そういやハピナスの件でそんな話を聞いたな。……だけどムサシが伝説の入校者になっていたとはなぁ


ニャース「ムサシらしいにゃ。でも若い世代達に勇気と希望を与えたのに、実際はその後ロケット団という悪の道に走ったなんて知られたら……



ムサシ「うっさいわね!悪の道も今を走る糧となってるじゃない。実際、ロケット団の時のノウハウはかなり役立ってるし
157 名前:名無し 投稿日:2017/04/02 21:11 ID:XFZIELJW
すみません、ややこしくなってしまいましたが、セレナの話はサトシ達がパーティーを企画して招待状を出した一週間前の出来事です。シトロンとユリーカがパーティーに一緒に行かないかと誘いに来たのはその為です
158 名前:名無し 投稿日:2017/04/02 21:46 ID:ZepMnLkR
支援
159 名前:名無し 投稿日:2017/04/02 22:15 ID:XFZIELJW

そんな感じで一同は会話を弾ませていった。
ヒカリも笑顔でロケット団と談笑する中、サトシだけは沈黙を保ち、外を眺めていた。


ニャース「……そうにゃ、サトシ。そう言えばおミャーに聞いときたい事があるにゃ



サトシ「うん?


見兼ねたニャースが口火を切った。


今まで会話に入らず、外を眺めながら肘をついていたサトシがニャースに呼ばれ、顔を向ける。
心なしか視線は斜め上の天井を向いている様だった。
顔が赤い。


ニャース「どこ向いてるのにゃ……まあいいにゃ。とにかく、ヒカリをこのバンに乗せたって事は全部話していいのかにゃ?



コジロウ「そうだぞサトシ、お前がヒカリを連れて行くって言った時は驚いたぜ。お前、仲間を巻き込みたく無いんじゃ無かったのか?


運転席のコジロウが若干不機嫌そうに口を挟む。
サトシは困り顔の様な微笑で答えた。


サトシ「事情が事情でな……ヒカリには師匠の力が通じなくてさ、隠しようも無いし知っても必要ない事だけ話す事にしたんだ



コジロウ「まじかよ!?



ニャース「まさかあの人の力が通じないんにゃんて……ひ、ヒカリは超能力者なのかにゃ?
160 名前:名無し 投稿日:2017/04/02 23:27 ID:sqyXTot3

ニャースが突然ヒカリを恐れるような目で見てブルブルと震え出した。
ヒカリが戸惑っていると、ムサシがダッシュボードを蹴って場を沈黙させる。



ムサシ「とにかく、サトシ。今から店に行って転移者とご対面な訳だけど、その時ヒカリも一緒に連れてくの?そんで合わしたとして、その後ヒカリをどうするのかちゃんとしたビジョンあるプランを示してくれないと私達も動けないわ。あんたが現状リーダーなんだからヒカリに照れてないでいつもの様にビシッとやってよね!


転移者とは何だろうか?
ヒカリは疑問に思ったが、話の流れ的にその人物には会えるらしい。
どうせその時に全部説明してくれるだろう。
ヒカリはそう結論づけ、グッと知識欲という化け物を押さえつける。


サトシ「ああ……分かったよ。取り敢えず転移者……レッドだっけ?ソイツと会う時はヒカリも連れて行く。その後はソイツの話次第で長引くか分からないけど、ヒカリとマサラタウンには必ず帰る予定だ。どのタイミングで帰るかは俺が判断する。



コジロウ「了解だボス。足はどうすんだ、送ってこうか?


コジロウのボス、という言葉にヒカリは戸惑う。
先ほどのムサシもサトシの事をリーダーと呼んでいた。
どういう事なのだろうか?
この元ロケット団の三人も全て知っている様だし……サトシが指示しているという事は。



サトシ「要らない。リザードンもいるし、バスもある、手段はいくらでもあるからな。お前ら三人はこっちで転移者を監視しつつ、引き続き情報網の構築に勤しんでくれ。敵が来るなら必ず通過点のトキワは通ってくる筈だ


まるでサトシを中心とした組織の様だと、ヒカリは心中に言葉を浮かべる。
どうやらその通りの様だが、話の内容から察するにロケット団の三人の他にも仲間が複数いる様だ。
結構なスケールで動いていると予想される。
161 名前:名無し 投稿日:2017/04/05 14:47 ID:oDD2br8q
支援
162 名前:名無し 投稿日:2017/04/06 00:50 ID:8lshtS5C

コジロウ「そう言えばサトシ、ピカチュウはどうした?



サトシ「へっ?



不意に尋ねられ、サトシは間の抜けた声を出す。
だが、直ぐにサトシはバックミラー越しに見つめているコジロウの問いに返答した。




サトシ「あいつならモンスターボールさ、人数も多いし窮屈だからそっちのがいいってさ……



ニャース「人間の姿でも普通に入れるのにゃ。何時もはモンスターボールが嫌で外を歩いてる癖に、ホワイトホールのスーパーカーを嫌がるにゃんておかしな奴だにゃ



サトシ「へっそうだよな……何考えてんだか



サトシはそう言うと、外を向いて黙り込んでしまった。
何となく車内には気まずい静寂が訪れる。
ヒカリはそれに耐えかねて口を開いた
163 名前:名無し 投稿日:2017/04/06 01:16 ID:8lshtS5C

ヒカリ「そういえば……パーティー会場でピカチュウはポケモンの姿だったけど、夜になると女の子の姿だったよね。ピカチュウって自由に人間になったりポケモンになったり出来るの?



サトシ「まあ……それが最終進化の特性らしいからな。……時間が経てば逆にポケモンの姿になる方が難しいそうだ



ニャース「いいにゃーピカチュウは。ニャーも最終進化してイケメンアイドルでもなろうかにゃ?



コジロウ「おいおい、笑わせるなニャース。お前が最終進化してもそのダミ声じゃアイドルなんかになれないぞ。その点ピカチュウは元の鳴き声と人間の姿の声も変わらないだろう?ルックスも良いし、アイツこそアイドルとか向いてると思うぜ
164 名前:ハック 投稿日:2017/04/06 01:21 ID:3LHadx80
追いついた!
とても面白いです。
しえーん
あと、一ページ目のヒカリのトライポカロンって奴あれ、カロスでしかないですよ。シンオウとホウエンはトライポカロンではなくポケモンコンテストです。ちなみにポケモンコンテストに出る人のことをコーディネーターと呼びます。

P.S.
僕もSS書いてます。タイトルは『ポケモンSSポケモンその後の物語』です。ぜひ見に来てください。

長文すみません
165 名前:名無し 投稿日:2017/04/06 12:16 ID:8lshtS5C
ご指摘ありがとうございます。ポケモンはほとんど素人な為、そういった意見を聞かせて頂くとありがたいです。
貴方も書いているんですね。
学生にしろ、会社員にしろ忙しい限りの時期ですが、一緒に頑張って書き切りましょう。
166 名前:名無し 投稿日:2017/04/07 01:33 ID:4aD35yv0

ムサシ「ピカチュウにフリフリな服でも着せたらどうよ?あの子今サトシのお母さんの服ばっか着てるじゃない。ヒカリ、その辺はあんたの得意分野でしょ?転移者との対面も終わったらどうせ時間も余るんだし服でも買いに行ったら良いじゃない。サトシは今金だけは持ってるから



サトシ「……



一同はピカチュウの話題で会話を弾ませる中、一人不機嫌に外を眺めているサトシに気がつかなかった。


ヒカリ「面白そう!ねぇサトシ、ピカチュウに……



サトシ「うるせぇんだよ!お前ら!!



突然怒鳴り声をあげたサトシに、一同は狭い車内で静まり返る。
声を上げた当のサトシはというと、逆に自分でも驚いた様な表情を浮かべ、気まずそうにポリポリと頰を掻く。



サトシ「あ……あ、ああゴメン。なんだか変だな俺、体調でも悪いのかなあ……ははは、は



ムサシ「そうみたいね。突然怒鳴り声なんかあげて、驚いたわ。……そういえばあんた最近ピカチュウの事になると……いや、まあ良いか……
167 名前:名無し 投稿日:2017/04/08 23:11 ID:TEsRboDm
メガ支援
168 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 00:08 ID:IM8sTA6Q

ムサシは呟く様に言葉を吐いた後、無言で車内の窓を開けてタバコに火をつけた。
サトシも無言のまま窓を開けてタバコに火をつける。
結局、そこから一同は一言も喋る事なく、気まずいままトキワシティーへとたどり着いた。



…………………

………

一同を乗せたバンは、元ロケット団三人が運営する飲食店、ホワイトホールの車庫で停車した。
気まずそうに車を降りる全員に、サトシは申し訳無さそうに口を開く。



サトシ「みんな、聞いてくれ……さっきはすまなかった、雰囲気ぶち壊して悪かったな。俺、どうかしてたよ……



コジロウ「……ふむ、まあなんかよく分からんが気にしてない。俺たちホワイトホールのリーダーはサトシだ、怒鳴ろうが喚こうが俺たちは受け入れるぜ……だけどな、サトシ。ヒカリは違うよな?



コジロウの、悪戯をした子供を叱る親の様な目に、サトシはバツが悪そうに微笑する。



サトシ「すまなかった、ヒカリ。終わったらピカチュウの服、一緒に買いに行こうぜ。



ヒカリ「えっ?……うん、絶対だよサトシ



ヒカリはサトシの謝罪を受け入れ、同意を表す曇りの無い笑顔を向けた。



サトシがどんな理由で声を上げてのかをヒカリは何となく脳裏に想像させつつ、辿り着いしまった残酷な真実をヒカリは考えない様に必死に楽しい事だけを頭に浮かべる。



オシャレの大好きなヒカリにとって、美少女のピカチュウに何を着せるか楽しみなのは事実だった。
早速ヒカリは思案に耽っていると……一人不機嫌そうなムサシが会話に入ってきた。



ムサシ「ふん……何がアンタの琴線に触れたか知らないけど、理由も分からずいきなりヒステリックを起こされたらこっちだって敵わないわ。部下として、年上として、聞かせてもらいたいわね……納得のいく理由を。そんで私らに非があったんなら謝るし、対策するわ
169 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 00:35 ID:IM8sTA6Q


駄目だーーーー一
ヒカリは一瞬、声に出していないか自分を疑っていた。
大丈夫だ……声には出してない……けど。
それは正しい選択だ、私が口を挟めるものじゃない。
けど……サトシには次の言葉を言わせてはならない気がした。



ムサシ「……どうなの?



サトシ「そうだな……


サトシは口に出していいのか迷っている様だった。
だが、ヒカリには直感的に感じ取れた。


ピカチュウだ。
ヒカリは確信していた。
原因はピカチュウに違いない、あの森でサトシから聞いたピカチュウの本当の想い、という言葉。
あれが関係しているとヒカリは導き出していた。
170 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 00:42 ID:IM8sTA6Q

サトシは一瞬微笑み、ムサシを真っ直ぐと見据えながら、腰からモンスターボールを取り出した。
そこからボタンを押してピカチュウを出す。




何やら重苦しくなった場の空気に戸惑うポケモンの姿のピカチュウをサトシは見つめながら、迷いなく口に出した。



サトシ「言わない



ムサシ「……そ、どうして?



サトシ「俺じゃ無くなるからだ



ムサシ「えっ?



サトシ「俺が、俺で無くなるからだ
171 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 12:25 ID:fy746Zlb

ムサシ「そう……なら仕方ないわね



サトシ「ああ……悪いな。……それよりもう行こう、転移者ってのは何処にいるんだ?



ニャース「それなら厨房にゃ、タダ飯食わせるのも何だから働かせてるにゃ



一同はニャースの引率で裏口から店内へと入っていく。
ヒカリは飲食店には不相応な万全のセキリュティに驚きつつ、一同の最後尾に自分を組み込んだ。



……………………

…………
172 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 12:45 ID:fy746Zlb

「おい新入り、七番テーブルにサラダはまだか?



「五番もだ!来店したら水と一緒にテーブルに持ってけって言ったろ?



レッド「はい、直ぐにお持ちします



厨房では目まぐるしく熱気を発しながら店員たちが働いていた。
まだお昼前なのにこの忙しさは人気の証なのだろう。
怒号が飛び交うそんな中に、ムサシが靴音を鳴らしながら近づいていった。



ムサシ「悪いけどそれは別の人間に運ばせて、コイツをちょっと借りるわよ



「!!ムサシさん!分かりました。おい、誰か手が空いてないか?



コジロウ「代わりに行こう。ちょっと俺は抜けさせてもらっていいか?サトシ



サトシは微笑を浮かべながら口を開く。



サトシ「手洗って、コック服に着替えときながらよく言うぜ。別に構わないよ……だけどコジロウ、お前にしちゃウッカリしてるな、コック帽は忘れたのか?



コジロウはウィンクした後、近づいてくるレッドのコック帽を取って自分に被せた。



コジロウ「ボスのお許しが出た所で、馬車馬のように働くとしますか……
173 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 16:23 ID:25cKuKXw
支援
174 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 17:08 ID:fy746Zlb

ムサシ「レッド、大事な話よ。着替えて面談室に行きなさい



レッド「了解です。それにしても……さっきコジロウさんが貴方の事をボスって呼んでましたね



レッドがサトシの前まで行ってまじまじとつま先から足先まで眺め始めた。サトシは不快そうに眉を寄せる。



レッド「正直言って驚きです、貴方は僕と同じくらいの年齢じゃ……



ムサシ「ゴタゴタ言ってないで、早く行きなさい!



ムサシに怒鳴られ、レッドはやれやれと言いながら面談室へと向かう。
サトシはため息をついた後、ムサシに向き直った。



サトシ「おいおい、ムサシ。やけに態度の悪い店員サマだな



ムサシ「小間使いとして使ってるだけよ、私の店の洗練された店員たちと一緒にしないで



サトシ「そうかい。何にせよ……アイツが何の目的でここに来たのか、どんな対処をするかハッキリさせないとな。ヒカリ、行くぞ



ヒカリ「う、うん



サトシはヒカリを連れて面談室へと向かう。
その途中、サトシは何やら思いついた様に振り返り、ムサシに向き直った



サトシ「そういや……面談室って禁煙だっけ?



ムサシ「禁煙よ、吸うなら裏口を出てちょっと行った所に喫煙所があるわ



サトシ「了解
175 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 17:22 ID:fy746Zlb

サトシは頷いてヒカリを面談室へと連れて行った。


……………………

…………


サトシ「ここに座ってくれ



サトシはそう言いながら、ヒカリを中央に設置された対面式のソファーへと座らせた。



ヒカリ「分かった



サトシ「……



ヒカリ「……



面談室に沈黙が、支すり。
ヒカリはどうしたもんか、と頰をポリポリ掻く。
ヒカリは車内で怒鳴り声を出したサトシ思い出しながら、なるべく当たり障りのない話題をサトシに向かって話しかけた。



ヒカリ「ねぇ……サトシ?



サトシ「……なんだ?



ヒカリ「もうそろそろ慣れて来たんじゃない?だって私に対してそんなに照れている様に思えないんだけど……



サトシ「……そう見える?



ヒカリ「う、うん


サトシ「実はめちゃくちゃ緊張してる……車内でタバコ吸いまくってたの、そのせいだったんだ



ヒカリ「そ、そうなんだ
176 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 20:58 ID:deHEhzru
支すり、とは支配する、の事です。誤字すんません……
177 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 21:57 ID:fy746Zlb

サトシは顔を赤らめながら、ヒカリの方を見ない様にしていた。
ヒカリは溜息を吐きながら理由を探ろうと口を開く



ヒカリ「そもそも……いつから女の子が苦手になったの?少なくとも五年前はそんな事全然無かったのに……何かキッカケみたいなモノがあるの?



サトシ「う、う〜ん……実は以前からその兆候はあったんだよ、ハッキリと意識し始めたのはアローラに行った頃からかな……



ヒカリ「アローラって……あのリゾートの?



サトシ「ああ、一番地方連合に加盟するのが遅かった国だ。半分外国みたいな国だったな



ヒカリ「そこで……何かあったの?



サトシ「俺はそこで初めてスクールに入校してさ……そこのクラスメートに三人女の子がいたんだけど……



ヒカリ「だけど!?



ヒカリはサトシに顔を近づけて、興奮した様子で目を輝かした。
サトシは顔から蒸気を出しながら、そっぽをむく。



サトシ「何、テンション上がってんだよ……



ヒカリ「えっ?……あはは、ゴメン。人の恋バナって面白いじゃない



サトシ「……まだ、恋バナとは言って無いぞ



ヒカリ「えっそうなの?流れ的にそうだと思ったんだけど……
178 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 23:25 ID:fy746Zlb

サトシ「……どうだろうな、まあ恋バナっちゃ恋バナなのか?



ヒカリ「!早く続き続き



サトシ「わ、分かったよ……。それがさ、その三人は何というか……自分で言うのも何だけど、俺の事を好きになっちゃったみたいでさ……スクールの後半は結構な沙羅場になって……逃げる様に修行の旅に出た感じだ



ヒカリ「へ〜スゴイじゃんサトシ。モテモテだったんだね。で、問題の意識し始めたのは何時?



サトシ「お前……グイグイ来るな……まあ、卒業間近に俺が三人から誰が好きなのかって聞かれたてさ。俺は友達として皆んな大好きだって言ったんだけど……女の子達はそれじゃ納得できなかったみたいでさ……友達としてでは無く異性として好きになって欲しいって言われたんだ



ヒカリ「まあ、そりゃそうだろうね



サトシ「それで俺は訳わからなくなって……三人とその……付き合う事になった



ヒカリ「へっ……三人と?どういう流れなのかは分かんないけど三人はそれで良いって言ったの?



サトシ「三人から言われたんだ、俺に女の子との付き合い方を教えるとか言ってさ……無理やりキスされたり、過剰なボディータッチされたり……だんだんそれはエスカレートしていったんだ



ヒカリ「ふ、ふーん……当時11歳でしょ?……結構なオマセちゃん達だったんだね


サトシ「ああ、それで俺は逃げた。なんかその子達といるとさ……ポケモンマスターになるっていう夢もどうでも良くなってくるというか……段々俺の気持ちもおかしくなってくるのを感じたから、その気持ちを封印して修行の旅に出ようと思った
179 名前:名無し 投稿日:2017/04/09 23:43 ID:fy746Zlb

サトシはタバコを胸ポケットから取り出そうとする仕草をして、手を止めた。
ここが禁煙だというのを思い出したのだろうか、かなり動揺しているらしい。



サトシ「そんな矢先だよ、ロケット団の三人に出会ったのは。そっからはパーティーで話した通りさ、危険な組織に出会って、戦って、戦って、ピカチュウが死にかけて……師匠に出会った。


サトシはまた胸ポケットを漁る仕草をする。
今度はタバコを取り出して、ズボンのポケットにしまった。


サトシ「そっからは、ずっとがむしゃらだったから暫くそんな気持ちは忘れてたんだけど……夜寝るときに空を眺めながら今までの旅を振り返ってたらさ……そういや今まで旅した女の子達はスゴイ可愛いかったな……なんて



照れながらそんな事を言うサトシに、ヒカリはドキッとしてしまった。
照れ隠しにヒカリは腕を組んで、意地悪な顔でサトシに問いかける。



ヒカリ「……へ、へー。も、もちろんその中じゃ私が一番可愛いでしょ?



サトシ「あ、ああ……可愛いと思うぜ


不意にサトシは赤い顔をヒカリに向けながら、真剣な眼差しで見つめて来た。
ヒカリは不意打ちをくらい、思わず顔を赤くして顔を背けた。
180 名前:名無し 投稿日:2017/04/10 00:11 ID:XnQ1qUV6


ニャース「お前ら時と場所を考えるニャ……サトシ、おミャーはニャー達のボスなんだからそんなんじゃメンツが立たなくて舐められるにゃ。もう直ぐレッドが来るからビシッとしとけニャ


サトシ「わっニャース!


ヒカリ「い、いつから居たの?


ニャースはドア付近で呆れ顔をしてサトシ達を眺めていた。


ニャース「ついさっきにゃ……あいつは着替えるのおっそいから急かしてたのニャ。それにしてもあのジャリンコだったサトシがラブコメかにゃ……時が経つのは早いものニャ


ヒカリ「そ、そんなんじゃないって!


ニャース「しっ、もう来たにゃ


ニャースが指を立て、ドアから遠ざかる。
すると本当にドアが開閉し、厨房で働いていたレッドという少年が部屋に入ってきた。



レッド「お待たせしましたボスさん。えっと……座って宜しいですかね?


サトシ「ああ、座れ。先ずは簡単に自己紹介といこうか


サトシは先ほどとは打って変わって、真剣な表情を見せた。
それはヒカリがテレビ見たチャンピオンのサトシ、そのものだった。
大企業のトップのような凄み、オーラがある。



サトシ「つっても、名乗るのはお前だけだ。所属、年齢、目的を言え。持ちポケモンの数もな



レッド「なんで僕がポケモン持っているって分かったんです?



サトシ「格好見りゃ分かるよ、グダグダ言ってねーでさっさと言え



サトシは低い声でそう凄んでみせた。
ヒカリは思わず冷や汗を流してしまう、さっきのサトシは完全に別人だった
181 名前:名無し 投稿日:2017/04/10 00:45 ID:XnQ1qUV6

レッド「そうですね……まあご存知だとは思いますが、名前からいきましょうか。レッドです、所属は……根無し草のポケモントレーナーですかね。年齢は15、目的は……この世界で生きる事、ですかね



サトシ「前の世界はどうした、戻りたくないのか?



レッド「戻ろうにも、戻れないんですよ。とっくに僕のいた世界は隕石の落下で崩壊してしまいましたから。……それにしても、どうして僕が異世界の人間だって信じてくれたんですか?普通は信じないと思うんですけど


サトシ「はっ?じゃあお前、どうやってここに来たんだよ



レッド「えっ?……えっと、女の子です。隕石落下の瞬間に知らない女の子が突然僕をこっちに送ってくれたんですよ。何でも気に入ったからとか何とかで



サトシ「ほう……その女、肌は浅黒で名前はヒガナとか言わなかったか?



レッド「!……ご存知なんですか?名前は聞いてませんが……肌は浅黒かったです



サトシ「そうか……ちっ、あの野郎、面倒事増やしやがって


サトシはそこまで言った後、立ち上がってニャースの方へ向かって口を開いた。


サトシ「聞いたなニャース。コイツはあれだ、いい意味で期待ハズレだ。コイツは何も知らない様だし、単なるポッと出の転移者だな。席を外してるムサシとコジロウにも伝えといてくれ、俺たちは予定より早く帰るわ。四時くらいまではトキワにいるから何かあったら呼んでくれ



ニャース「……問題はコイツの処遇なのニャ。市民カードも持って無いし、外に放り出してニャー達の事をバラされたら終わりにゃ



サトシ「殺しちまうのが一番楽なんだけどな



ヒカリ「えっ!?



サトシはヒカリを見て我に返り、しまったという顔をした。
直ぐに誤魔化すように追加で口を開く。



サトシ「それはタバコ吸いながら考えるわ。ヒカリ、ごめん……ちょっとタバコ吸ってくるから待っててくれるか?結論が出たら直ぐに帰ろう



ヒカリ「え?……う、うん



サトシ「ちょっと席を外すからな、ニャース。コイツがヒカリに変な事したらぶっ飛ばしていいぜ



ニャース「あいニャ


サトシはそう言い残して部屋を出て行く。
途端、部屋は異様なまでの静けさが訪れた。
182 名前:名無し 投稿日:2017/04/10 01:19 ID:XnQ1qUV6


レッド「ヒカリさんって言うんですか?


レッドが突然話しかけてきて、ヒカリは戸惑いながらも頷いて見せた。


ヒカリ「……う、うん


レッド「いい名前だ、それに……美しい



ヒカリ「……


ヒカリは助けを求めるようにニャースを見た。
ニャースはソファに近寄って爪を光らせる。
ひっかくの攻撃の前兆だ、ニャースはいつでも動けるような体勢を取った。


レッド「妙な気は起こしませんよ……あのおっかないボスさんの彼女なのでしょう?手を出したらそこの喋るニャースさんに殺されるのは目に見えてますから



ヒカリ「か、彼女じゃないよ



レッド「!?そうなんですか!じゃあ……僕にも脈は多少あるって事ですよね?



ヒカリ「え、えーと



レッド「実は……さっき一眼見た時、僕は分かってしまったんです。ああ、なんて可愛い子なんだ、これが一目ボレってヤツか……ってね



ヒカリ「は、はあ……



レッド「よろしければ友達からで良いので、結婚を前提に付き合ってくれませんか?



ヒカリ「な、なんでイキナリ友達からそんな一足飛びするの。か、からかってるんでしょ



レッド「本気です、命賭けてもいいですよ。……僕はね、ヒカリさん。故郷も家族も失って……新しい自分に生まれ変わったんです……自分に正直で、可愛い女の子と結婚して、幸せな家庭を築いて……楽しい、楽しい人生を送ろうって……



ニャース「お前、そろそろ黙れニャ。キモいんだニャ



ニャースがレッドの首筋に爪を立てた。
レッドはそれでも言葉を止めない。



レッド「キモいのはお前だよ。ペラペラ喋りやがって、殺されたくなかったらその汚い垢だらけの爪をどけろ


ニャース「上等だニャ、短い人生だったって精々悔んどけニャ



レッドの首筋に血が流れ始めた、ヒカリは思わず止めようとすると、途端にニャースの体が何かの力によって吹き飛ばされた。



レッド「雑魚が粋がるんじゃないよ、お前は精々喋る事だけが取り柄のマスコットだろ?違うってんなら証明してみせろよ、コイツが相手してやる



レッドの後ろから、ニャースを吹き飛ばしたポケモンが姿を現した。
何もない空間から突然色が落ちた様に現れたポケモン……。
それを見て、ヒカリは思わず息を呑む。


ヒカリ「ゲンガー……


レッド「流石ヒカリさん、可愛いだけじゃなくて博識ですね。さあ行きましょう、僕が貴方を幸せにしてみせます
183 名前:名無し 投稿日:2017/04/10 23:56 ID:XnQ1qUV6

ヒカリ「い、いやだよ



レッド「……そうですか、無理やりは僕の流儀にそぐいません。残念ですが、今回は溜飲を下げるとしましょう



ヒカリはレッドの予想外の返答に驚いた。
てっきり流れ的に自分は無理やり連れていかれるものだと思ったからだ。

内心ホッと胸をなでおろすヒカリを見て、彼は残念そうな顔を浮かべたまま自らの後ろに位置するドアへと向きなおる。



レッド「やれやれ、そろそろ彼が来ますかね。……ヒカリさん、実は黙っていたんですけど、僕は前の世界ではポケモンマスターという称号を持っていたんですよ。そういえばいるんですか?この世界でもポケモンマスターは



ヒカリ「え!?



突然のレッドの宣言にヒカリは耳を疑った。


さっきのサトシ達の会話を聞いていたヒカリは、未だに信じられないが、彼は本当に異世界人なのだろうと薄々思ってはいた。
しかし、その世界でポケモンマスターだったとは……その話は到底信じられなかった。


もしそれが本当なら……世界初のポケモンマスターが一つの部屋に二人存在していた事になる。



レッド「あのサトシとかいう人も相当な実力者の様ですが、残念ながら僕には勝てません。力押しでこの店から出させて貰います



ヒカリ「……どうして?



レッド「どうやら此処はヤバイ組織の様ですし、多少なりとも組織体系を知った僕を彼らは外に出す気は無い様だ……一宿一飯の恩はありますが、変な事される前に逃げさせて貰いますよ。ああ、心配しなくても僕はヒカリさんを忘れたりはしません、いづれ僕の事を好きになった貴方をお迎えに上がりますよ

184 名前:名無し 投稿日:2017/04/11 17:46 ID:7n3OCcHh
今日は書けそうなので結構進めようと思います。
185 名前:名無し 投稿日:2017/04/12 06:42 ID:1UqXFHjI
支援
186 名前:名無し 投稿日:2017/04/12 18:05 ID:evSMTJHB

ニャース「なんか勘違いしてニャいか?おミャーは


気づけば後ろに吹き飛ばされていたニャースは、ソファーの後ろに位置してあった机の上に足を組んで座っていた。
ヒカリが起き上がってニャースの近くに寄ると同時に、レッドは余裕の表情で笑みを浮かべる。


レッド「?……おや、もう動ける様になったんですか、喋るニャースさん。手加減していましたが、貴方レベルのポケモンなら昏倒する位の力は加えたと思っていたのですが……多少侮り過ぎていた様ですね




ニャース「その発言自体が青臭いガキニャ。ポケモンマスターだかなんか知らないけど、この世界がそんな甘くない事を教えてやるニャ



レッド「それはそれは……是非とも教えて頂きたいですね



レッドの言葉で、ニャースの前に殺気だったゲンガーが立つ。
ヒカリがニャースを守る様に前に立とうとすると、ニャースが必要ないと、押しのける。



ニャース「言質は取ったニャ、後で泣いても許さないからにゃ。……ではテキスト35ページから、レッスンワン!



サトシ「全てがポケモンバトルで片が付くと思うべからずだ



レッド「!?


いつの間にかサトシがレッドの後ろに立ち、殺気めいた眼光で彼を睨んでいた。
レッドは慌ててサトシから離れようとするが、サトシは素早くレッドの頭を掴み、容赦の無い膝蹴りを喰らわす。



レッド「ガッ!?



血が室内に飛び散った。
サトシは膝蹴りを更に3発ほど食らわせ、レッドを床にひざまづかせた。



ニャース「レッスンツー!
187 名前:名無し 投稿日:2017/04/12 20:48 ID:2sUYhMjj
支援
188 名前:名無しのst 投稿日:2017/04/12 23:10 ID:NYrlFHss
おもしろい!今後に期待!
受験生なのに読みに来てるってマズイか・・・
189 名前:名無し 投稿日:2017/04/13 12:35 ID:Lv2LPuuu

サトシ「トレーナーが直接攻撃される様な異常事態に、正攻法なバトルしかやってこなかったゲンガーは放心状態に陥る。その間に更に一撃を加えるわけだ



グジャっという音と共に、レッドの方から何やら白いモノが飛んできた。
赤黒いモノに覆われたそれを歯だと気づくのに、ヒカリは数秒を有した。



それと同時に放心していたゲンガーがようやく動き出した。
顔を怒りに染め、猛然と突進していく。
それをみてサトシはにこやかに微笑んだ。
190 名前:名無し 投稿日:2017/04/14 19:10 ID:KFWzaT5z
支援
191 名前:名無し 投稿日:2017/04/15 23:40 ID:G4UDIvfZ

ニャース「レッスンスリー!



サトシ「ねぇよ……そんなもん



突然、猛然と突進していたゲンガーの体が強力な電撃に身を包まれた。
空間を切り裂く様な電撃と、目が焼けてしまいそうな程の閃光にヒカリは身動きを取ることも、目を開けて状況を確認する事も出来なかった。



やがて1分程の時間が経ち、恐る恐る目を開けたヒカリが目にしたモノは、地面に倒れ伏しているゲンガーを見つめるサトシとピカチュウの姿だった。



サトシ「ゲンガーお前は強いよ……けどな、殺す気で来なきゃ



サトシはそう言った後にモンスターボールを取り出して、空中に放り投げる。
中から赤い光線と共に、サトシとピカチュウが師匠と呼んでいた黒髪ロングの女の子が飛び出てきた。



ふてぶてしい事に彼女のモンスターボールから飛び出た出現場所はソファーの上だった。
赤い光線が完全に消える頃には、寛いだ姿勢でこちらを傍観している。



サトシ「師匠、こいつらの治療と記憶の改編をお願いします……そうですね……元々仲間だったって事で、こいつの手持ポケモンも全部お願いします



師匠「はっ?何でじゃ?話はモンスターボールの中から何となく聞いとったが、別に仲間だった設定じゃなくとも奴隷でも何でもええじゃろ?元々そういうーーー



サトシ「……



師匠は黙るサトシを見て、次に状況を注視しているヒカリを見た。
すると、師匠は何か納得した様に「なんじゃ、めんどくさいのう」と呟き、ソファーに体を埋めた。




師匠「分かったわい、後はやっとく。予定通り仕事を終えて、ワシは早くここのメシにありつきたいんじゃ。ニャース……準備は整っとるんじゃろうの?



ニャース「ば、万事抜かりなしですのニャ!



ニャースをそう言った後、机の上に飛び乗って内線電話をかけ始めた。
おそらく繋がった先は厨房だろう、ニャースが「予定より早く師匠様が出られたからいつでも料理を出せる様にしろにゃ!」と声を荒らげていた。
192 名前:名無し 投稿日:2017/04/16 00:14 ID:Nm8loSW6

サトシ「じゃあ……行こうかヒカリ



ヒカリ「えっ?……ど、何処に?



サトシ「?ショッピングだろ?



若干照れながら、にこやかにそんな事を言うサトシを見て、とても今はそんな気分では無いとヒカリは口が裂けても言えなかった。



サトシはこの状況を屁とも思って無いようだ。
ヒカリは少しばかり、サトシに対しての狂気と、恐怖を感じていた。



どんな体験をすればあの天真爛漫だったサトシがこんなマフィアのボスの様な感じになるのだろうか。
彼は躊躇いなく暴力をして、躊躇いなく殺すという言葉を吐いていた。



サトシは……どうやら変わってしまっていた様だ。
それに気がつくと同時に、ヒカリは強くサトシを抱きしめていた。



彼女の目からはいつの間にか涙が流れ、もう昔のサトシでは無いという寂しさと、彼を変えてしまった全ての要因をヒカリは憎らしく思った。



ヒカリは一瞬でも彼を恐怖した自分の愚かさに、胸が締め付けられる様な思いだった。
そうだ、違う。
彼は……サトシは……変わったんじゃない、変えられたんだ。
彼は残虐な組織と対立していたと聞いた、それ以外にも師匠という女の子の元で色んな辛い体験をした筈だ。


甘い考えではやっていけなかったのだろう……ジョーイスクールで一年半しごかれたヒカリには理解できた。



サトシ「ひ、ヒカリ……急にどうしたんだ



ヒカリ「辛かったんでしょ?……悲しかったんでしょ?……サトシは色んな体験をしたんだよね……苦しい世界を見たんだよね……私、サトシがどんなに変わっても……



ヒカリはサトシの胸に埋めていた顔を上げ、彼の瞳を真っ直ぐ見つめながら震える声で口にする
サトシは赤面しながらも、それを逸らさずにずっと見つめ続けていた。




ヒカリ「貴方の味方だから!




サトシ「ヒカリ……
193 名前:名無し 投稿日:2017/04/16 05:10 ID:52p2jiIz
支援です
194 名前:名無し 投稿日:2017/04/16 15:24 ID:cxcVsFW6

まるで二人の間だけ、時が止まってしまった様だった。
見つめ合うサトシとヒカリは、一言も言葉を発する事なくただただ、お互いを見つめていた。



それを殺意の篭った目で見つめる人物がいるとは……二人は知るはずもかった。



…………………………

………………


トキワシティー、トキワ警察署。
そこの署長室で不機嫌そうに来客用のソファーに座っているセレナの姿があった。


彼女は自分の腕時計と携帯をしきりに眺めながら、ソワソワとしていた。
そんな彼女はソファーから立ち上がって、自分を落ちつかせる様に並べてあるトロフィーを眺め始めていると、現署長である年老いたジュンサーが部屋に入って来た。



セレナは眺めていたトロフィーから、現れた六十代くらいのジュンサーに視線を移し、見事な敬礼を見せた。



年老いたジュンサーはそれに答礼し「ソファーに座りなさい」とセレナを促した。



暫く沈黙が支配する。
セレナは自分に引き起こっているこの状況に、戸惑いを隠せなかった。



何故なら……彼女がサトシに会いに、スクールを卒業して直ぐにマサラタウンに向かおうとトキワ空港に降り立った瞬間、トキワ警察署から出頭命令が下ったのだ。
タイミングの良すぎるこの命令……彼女は嫌な予感を脳裏に浮かべながら、



目の前に座る、トキワシティー警察署のトップの年老いたジュンサーを見つめていた。



老ジュンサー「セレナ巡査官……だったかしらね。ジュンサースクール、主席卒業おめでとう。かなり優秀な人物だったと聞いているわ
195 名前:名無し 投稿日:2017/04/16 15:35 ID:cxcVsFW6

ゆっくりとした口調で老いたジュンサーは口を開いていた。
セレナは背筋を伸ばし、凛とした表情で答える。



セレナ「身に余る光栄であります。ジュンサー捜査官として、恥の無い働きをしていきたい所存です



ジュンサー「ふふっ……そんなに堅くならなくていいのよ。貴女は初の一般からのジュンサー捜査官、尚且つ主席なんだから……そんなにいきなり気を張っていると、誰だって転ぶものよ。私達だってそうだったから



セレナ「ご忠告、感謝します



尚も姿勢を崩さないセレナに、老いたジュンサーはニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。
それにセレナは背筋をゾクリとさせたが、それを気取られない様に無表情を貫く。
196 名前:名無し 投稿日:2017/04/16 22:23 ID:cxcVsFW6

老ジュンサー「貴方みたいなタイプは嫌いじゃないわ……主席で卒業する能力がありながら、上にはとことん従順な姿勢を見せる。一番賢い生き方よ、セレナ巡査官



セレナ「お褒めに預かり、光栄です



老ジュンサー「そんな貴方に頼みたい事があるの



やはり来たか、とセレナは内心肩を落とした。
ただ褒めるためだけにこんな大物が来るはず無い事をセレナは重々承知していたからだ。


あるとすれば特別な任務の命令か、解雇の通告くらい……セレナは前者である事を半ば確信していた。



老ジュンサー「それは護衛任務であり、監視任務でもある……非常にレアで特殊なケースの捜査を担当して貰うわ。その為、貴方の希望していて在籍する筈だったカロス警察署交通課は申し訳ないけど破棄させて貰う事になった。原告をもってセレナ巡査官を地方連合国家、公安部特殊捜査官へと任命する。……異議があるなら聞くわ。元々無茶苦茶な人事異動だしね、上も多分貴方の要求を受理してくれる筈よ




セレナ「……いえ、もう少しお話を詳しく教えて頂いてもよろしいですか?
197 名前:名無し 投稿日:2017/04/17 04:01 ID:7MK9XoCy

老ジュンサーはニヤリと笑みを浮かべ、「いい心がけね」と、話を続ける。


老ジュンサー「監視対象者は少年一人。十五歳で貴女と同年齢ね。彼は現在、ポケモンマスターになった事で世界的にも有名人よ。名前は勿論知っていると思うけど……


老ジュンサーが差し出した写真に、セレナは嫌な予感を的中させ、微妙な表情を作った。
セレナが老ジュンサーの顔を見ると、彼女はまたしても嫌らしい笑みを浮かべていた。


セレナ「この任務は……私が昔彼と旅していたのを知っての事ですか?



老ジュンサー「任務自体は前々から構想があったわ。しかし、クローン問題で注目を集めているジュンサーが捜査官では根幹的な問題があったの。そこで今回実施されたジュンサースクールの卒業生から実行に移せる人材に適任がいるか選定していた所……貴女を発見したまでよ



セレナ「……それで、サトシを監視して何になるんです?
198 名前:名無し 投稿日:2017/04/17 10:20 ID:zNgeRiyo
支援
199 名前:名無し 投稿日:2017/04/17 21:35 ID:Beb4t2PS

老ジュンサー「彼はトキワシティーを統べる二大組織のうち、片方の勢力のボスをやっているの。名前はホワイトホール。構成員は主に解散させられたロケット団が主体となっている



セレナ「サトシがですか!?しかもロケット団!?


セレナは身を乗り出して反応したが、目の前の老ジュンサーは一つも身動きは取ろうとはしなかった。
彼女はゆっくりとした動作で、机の上に置いてあるティーカップを二つ取り出した。
カチャカチャとお茶を入れる作業をしながら話を続ける。



老ジュンサー「現在、この地方連合国家では様々な勢力が乱立し、日夜シノギを削って自分達の縄張りを巡っての争いが頻発している。グロバール化した社会では犯罪の多様性を産み、我々警察組織も手をこまねいているワケだ



老ジュンサーはティーカップに注ぎ終わった液体をセレナの方に押し出し、自らも口をつける。



老ジュンサー「その中でもサトシ少年を中心とする組織は凶悪な組織を武力によって牽制する様な動きを見せている。それによって街では多少の小競り合いが起きているが、均衡状態によって何とか平和が保たれているのだ。我々実働部隊からすれば大助かりなのだが……上層部、連合国家委員会はこの現状を宜しく思っていない様だ




セレナはティーカップの液体に口をつけた。
ハーブティーだ、後味は花を通り抜けるレモンの風味がした。
老ジュンサーはその香りを楽しむ様に、目を瞑りながら説明を続けていた。




老ジュンサー「委員会はこの国家に存在する組織自体を徹底的に駆逐したいらしい。目障りなハエは除去するのが連合国家の習わしだそうだ。私もそれには大いに同意する。部屋に入ってくる虫ポケモンを退治してくれる虫ポケモンには違いないが、虫ポケモンは虫ポケモンだ。害は無いが目障りなのは変わりない



老ジュンサーの眼光が一気に鋭くなった。
セレナは思わず息を飲む。




老ジュンサー「サトシ少年の動向……それが私達にとって吉と出るか凶と出るか。どっちにしろ、私達はサトシという少年を注視しなければならない。部屋に放った虫ポケモンは想像もつかない場所に入りこむものだ。それが寝室ならば……駆除の準備に入らなければならない
200 名前:名無し 投稿日:2017/04/19 12:25 ID:4uOK134n

セレナ「私がサトシの懐に潜り込んで……地方連合国家に都合が悪い事が判明すれば、逮捕しろって事ですか?




老ジュンサー「別に逮捕でなくても構わない。彼とその組織を機能停止に追い込める状況を作りだせれば問題はない



セレナ「……機能停止とは……具体的にどの様な方法か教えて頂いても?



老ジュンサー「詳しい事は貴女の直属の上司から聞く事になる。まだ貴女はこの任務を承諾していないから現時点では限られた情報しか与えられないわ



セレナ「受けます



迷いの無いセレナの返事。
老ジュンサーの口角がピクリと動いた。
まるで笑いを堪える様な仕草だ、セレナはそれが不快だった。



老ジュンサー「任務を承諾し、公安部への異動を受理するという認識でよろしいかな?セレナ巡査官




セレナ「はい、受けさせて頂きたいです。サトシの動向を探るのは、仲間だった私が一番適任かと




老ジュンサー「宜しい、いい返事だ。連合国家警察において、貴女の様な人材が任官された事を誇りに思う。では原告をもってセレナ巡査官を特別承認させ、特別捜査官の権限を与えます。これは公安部のバッチよ、大抵の事はコレを同胞に見せれば融通を効かしてくれるわ
201 名前:名無し 投稿日:2017/04/19 20:50 ID:ZmWg2o0x
支援
202 名前:名無し 投稿日:2017/04/19 23:22 ID:4uOK134n

セレナはバッチを受け取ると、立ち上がって一糸の乱れもない敬礼をした。
老ジュンサーは満足そうに頷いて席を立ち上がると、出入り口の前に立って電気スイッチの横にあった何の用途で使われるかセレナが疑問に思っていたボタンを押した。



セレナが不思議そうにしていると、老ジュンサーは微笑を浮かべながら口を開いた。




老ジュンサー「貴女が同意を示した事を別室にいた公安部の捜査官に伝えたの。もう直ぐ貴女の直属の上司がやってくるわ



??「もう、来てる。彼女が承諾する事は分かっていた



謎の声が聞こえ、唐突にドアが開いた。
そこから現れた人物に思わずセレナは息を呑む。



セレナ「あなたは!!
203 名前:名無し 投稿日:2017/04/22 04:29 ID:tfX2m1U3

スイレン「なんちゃって♪盗み聞してただけだけどね。……ていうかアレー?その驚いた様な反応……私の事知ってるの?



セレナ「……サトシとまだ連絡を取っていた頃、テレビ電話越しに見せてくれたスクールの集合写真の中に貴女を見ました



セレナは彼女に見覚えがあった。
確か名前はスイレンで、青色を基調とした髪と服、そして小柄な体。
サトシが一人、一人どういった人間か丁寧に説明してくれたのだ。



スイレン「ふーん……普通は何年も前にテレビ電話越しに見た写真なんか覚えて無いと思うんだけど……まあ、それだけ貴女が優秀だって事なんだね、期待しちゃうな




セレナ「……善処します



スイレンという少女はクスクスと笑うと、ドアを開け放ってクイクイとセレナを呼ぶ仕草をした。



スイレン「別室に行こう、渡したい物もあるし。ここじゃ話せない事も……あるしね!



スイレンは老ジュンサーにウィンクをした後、廊下をツカツカと先行して歩いていく。
セレナはそれを追いかけながら、心の中で誰にも口にしていない、ある事を誓っていた。



セレナ『……サトシが危ない、例え警察を裏切る事になろうと、どんな手を使ってでも彼を守らなきゃ。その為に、私はジュンサーになったのだから!』



セレナは拳を握りながら誓っていた。
誰にも気づかれない様に、平常心を保ちながらだ。
しかし、スイレンだけは全てを見透かした様に笑っているのをセレナは気づかなかった。



…………………

…………
204 名前:名無し 投稿日:2017/04/22 22:23 ID:tfX2m1U3

ヒカリ「サトシ、早く早く!こっちに可愛いのがいっぱいあるよ!



現在、サトシとヒカリはトキワシティー最大のショッピングモールで買い物に勤しんでいた。
服を見てはしゃぎ回るヒカリをサトシは必死についていきながら、眩しそうにヒカリの姿を目で追っていた。



サトシ「ああ可愛いなぁヒカリは……昔は女の子とショッピングなんてつまんない事この上無いと思ってたけど……こういうデートみたいのも、悪く無いもんだぜ



ヒカリ「?何か言った?



呟く様に言ったサトシの言葉に、ヒカリはハテナマークを浮かべて質問する。
サトシは手をバタバタと振って口を開いた。



サトシ「い、いやいやなんでも無いよ。それより良いのが見つかったって?




ヒカリ「うん、これなんか……ってサトシ、ピカチュウは?当の本人が居ないと服が合わせられないじゃない



ヒカリがそう尋ねると、サトシは露骨に表情を歪める。



サトシ「いや〜この状況にアイツは邪魔……じゃなくて、アイツは疲れたからモンスターボールで寝とくとかなんとか……言ってたような
205 名前:名無し 投稿日:2017/04/23 22:30 ID:3lVTVOEW

ヒカリ「え〜……合わせるだけだからちょっと出てもらってよ



サトシ「分かったよ……ちょっと人気の無いところ行ってくる



サトシはそう言うと、渋々その場を離れていった。
ヒカリが暫く服を物色していると、ピカチュウを連れたサトシが帰ってくる。
ピカチュウは店内に入るなり、キョロキョロと立ち並ぶ服を見て訝しげな顔をした。



ヒカリ「ピカチュウ、ゴメンね疲れているのに……ちょっと可愛い服があるから合わせさせて



ピカチュウ「?別に疲れてないからいいけど……



ピカチュウの言葉を聞き、ヒカリが疑惑の目でサトシを見ると、彼はヤバイという表情を浮かべて誤魔化す様に別のブースの方を眺め出した。



ピカチュウ「えっ!?……ヒカリは僕にこんな服を着させる気なの?



ヒカリの持っている服を見て、ピカチュウが驚きの声を上げ、ヒカリの意識はそちらへと移行する。
206 名前:名無し 投稿日:2017/04/23 23:12 ID:3lVTVOEW

ヒカリ「可愛いでしょ?絶対貴女に似合うわ



ピカチュウ「い、いいよそういうのは……僕、動きにくいのやだし



そう言って逃げようとするピカチュウの腕を掴み、ヒカリは無理やり着替え室へと押し込む。
ドッタンバッタンと音を立てる個室に、店内にいた客は何事かと視線を向ける。
サトシは呆れた様に頭を抱えていると、暫くして着替え室のカーテンが勢いよく開いた。



思わず、店内にいた客が声を漏らすほどそこにいた少女は可愛かった。
中には見惚れてしまってツネられるカップルの男がいる位、ピカチュウは完璧な姿をしていた。
207 名前:名無し 投稿日:2017/04/24 04:33 ID:Z12HykqK

ピカチュウ「さ、サトシは?



ヒカリ「え?……



ピカチュウはしきりに店内を見回し、サトシを探している様だった。
そんな彼女の彷徨う視線はやがて、ある一点で静止する。
ヒカリもその先を見つめてみると、泣き笑いの様な表情を浮かべたサトシの姿があった。




ピカチュウ「さ……ッ



ヒカリ「……



ピカチュウは顔を赤しながら何かを必死に尋ねようとしているみたいだった。
ヒカリはそれを瞬時に理解し、ピカチュウの背後からサトシへと声をかける。




ヒカリ「サトシどう?……すっごい可愛いでしょ!



サトシ「そうだな……すっげー似合ってるじゃん



照れるでも、驚くでもなく、ただ困った様に笑顔を浮かべてサトシはピカチュウへと言葉を贈る。
ピカチュウはサトシのそんな表情を読み取る事無く、盲目的に頬を染めて喜んでいる様だった。



ピカチュウ「やったぁ……
208 名前:名無し 投稿日:2017/04/24 23:16 ID:Z12HykqK

ヒカリはサトシの言っていたピカチュウの本当の想いという言葉を思い出していた。
薄々勘付いてはいたが……この一連でヒカリの考えていた仮説は確信へと変わる。



ピカチュウはサトシの事が好きなのだ。
だけどサトシはそのことに戸惑っている様だった。



ずっと相棒として一緒に過ごしてきた中で、そんな想いを密かに寄せられていた事に動揺しているのだろう。




ヒカリは笑顔を浮かべるピカチュウと困った様な笑顔を見せるサトシを見て、こう思った。



あまりにも儚く、脆い……今にも割れてしまいそうなガラスの様な関係だと。




………………………………

………………


ピカチュウ「……本当にいいの?ヒカリ



サトシ「そうだぜ、金なら俺が出すって。こう見えても俺稼いでんだぜ?



ヒカリ「いいの!一般人初のジョーイさんを舐めないで。教育を受けながら給料が出てたし、何よりピカチュウには私から買ってあげたいの。なんども危ない時助けてもらったし、この位安いわよ




ヒカリは会計を済ませて商品を受け取ると、それをサトシに渡してピカチュウの腕を取る。



ヒカリ「さあ、もう一軒まわったら次はアクセサリーよ。その次は……



ピカチュウ「えっ!?まだまわるの?



ヒカリ「貴女に色々着せるのが楽しいのよ。悪いけど私の趣味に付き合って!



ピカチュウ「ひ、ヒカリが楽しいならいいけど……



サトシ「悪いな、ヒカリ。今度は俺が出すよ
209 名前:名無し 投稿日:2017/04/24 23:47 ID:VjCdIRl0
面白い設定だなぁ
支援!
210 名前:名無し 投稿日:2017/04/25 22:07 ID:7cvJIwCK

ヒカリ「いいからいいから、これは私が好きでやってるんだから!サトシには譲らないわよ



そう言ってヒカリはピカチュウの腕を掴んで軽快に走り出した。
サトシは呆れた様に笑った後、二人の姿を追って駆け出していった。




…………………………

……………



ヒカリ「サトシ、全部持てないでしょ?私とピカチュウも持つよ



サトシ「なんのなんの、これくらい修羅場をくぐり抜けた俺にとっちゃ軽いもんさ


陽もすっかり落ちて、控えめな星々が姿を見せ始めた頃。
サトシ達一行は買い物を終え、ショッピングモールの駐車場を歩いていた。
山の様に抱えた荷物を持つサトシを見て、ピカチュウは呆れた様に口を開く。




ピカチュウ「ヒカリの前だからって張り切っちゃってさ……君は変な所で鈍臭いだから見栄を張ってないで荷物を渡したら?



サトシ「やかましいわ、そう言ってる間に着いたぜ



気付くとサトシ達は自分たちの車まで到達していた。
白のワゴン車だ。
この車は先日サトシが購入した物で、免許も世界大会終了後の短期合宿で取得していたそうだ。



ピカチュウの言葉通り、変な所で鈍臭い所のあるサトシの運転を不安に思っていたヒカリだったが。

難なくバック走行もこなす手慣れた感じにヒカリは安堵感を持って席に着く事が出来た。
後部座席にヒカリが座り、助手席にピカチュウが座る。




サトシ「じゃあマサラに帰るか……ピカチュウ、何か音楽つけてくれ



ピカチュウ「あの趣味の悪いロックはヤダよ、最近僕がニャースにダウンロードしてもらったクラシックでいいよね?



車が発進すると、ピカチュウはそう言ってダッシュボードからCDを一枚取り出してサトシに見せつける。サトシは露骨に顔を歪めて、拒否した。



サトシ「クラシックなんか聞いてたら寝ちまうよ……ロック一択だ、一択。



ピカチュウ「ヒカリが聞いたらドン引きすると思うよ、君の好きなあのロックは。あのサイコな歌詞をヒカリに聞かせていいの?



サトシ「……他にバラード系無かったっけ?



ピカチュウ「意地でもクラシックは聞かないんだね……まあ、あのロックよりマシだからいいや。ヒカリもいるし、有名所のバラード歌手の曲にしよう



そう言って掛け合う二人の会話を聞いて、ヒカリは思わず吹き出してしまった。
不思議そうに見つめてくる二人の視線を受けながら、ヒカリは笑いを堪えて口を開く。



ヒカリ「いや〜やっぱり貴方達は最高のコンビよね……お互いの事なんでも知ってるのが良く伝わったわ
211 名前:名無し 投稿日:2017/04/25 23:54 ID:7cvJIwCK
一瞬間が空いて、サトシは笑みを浮かべて口を開こうとした。
それを遮るように、唐突に喋りだしたピカチュウの声が車内に響き渡る。


ピカチュウ「そうだね……ヒカリ。僕とサトシはある意味では一番の理解者同士だと思うよ……なんせ感覚を共有してお互いの全てを曝け出したんだから……今となっちゃあサトシはもう一人の僕であり、僕はもう一人のサトシなんだ。素晴らしそうに聞こえるだろ?でもね、全てを知ってしまったその後の僕達は仲良しコンビでも相棒でもない。とても歪で理解しがたい関係となったんだ



ヒカリ「……



サトシ「おい……



サトシは低い声を出してピカチュウを静止しようとしたが、ピカチュウは言葉を辞めない。
ピカチュウは不敵な笑みを浮かべながら、ヒカリに向き直って言葉を続ける。



ピカチュウ「一番理解しているからこそ、分かるんだ。今この瞬間、人間の姿でいる僕はサトシにとって……不必要な




サトシ「オイッ!!!




サトシの悲鳴に近い声が車内に響き渡る。
ピカチュウが言葉を辞め、サトシの方を虚ろな目で見ると同時に。
サトシがピカチュウの襟を掴んで、驚いている彼女に向かって口を開いた。




サトシ「お前は相棒だ!それでいて俺の唯一無二の、かけがえのない家族だ!今度そんな事を言ってみろ、ぶっ飛ばすぞ!



サトシがピカチュウの襟を乱暴に放して、運転を再開する。



ピカチュウは少し伸びてしまった新しい服を見て、申し訳無さそうに笑いながらヒカリを見た。



ピカチュウ「ゴメンね……ヒカリ。折角楽しい雰囲気を壊しちゃって……



ピカチュウのその言葉に、ヒカリはクスッと笑う。
ピカチュウはヒカリの予想外の反応に驚いている様子を見せていた。



ヒカリ「サトシも同じ事言ってたわ、車内で雰囲気ぶち壊してすまないって



サトシ「……



ヒカリ「やっぱり貴方達……似てるわね
212 名前:名無し 投稿日:2017/04/26 20:11 ID:PusrGlhA
支援
213 名前:名無し 投稿日:2017/04/26 22:36 ID:T8ilKOEY

ピカチュウ「……



サトシ「似てるってさ……俺たち



ピカチュウ「うん……



サトシは運転しながら窓を開けた。
暗い車内に一瞬光が灯され、消えると同時にタバコの匂いが微かに広がる。




サトシ「実際そうだと思うぜ……俺たちは




ピカチュウ「……似てるから、何さ?



ピカチュウが泣きそうな目でサトシの方を向いた。
サトシは真っ直ぐにピカチュウの目を見据える。



サトシ「さあな……でもなんか……嬉しいよな



ピカチュウ「……



サトシ「ずっと一緒にいようぜ……俺たち。



ピカチュウ「うん……うん……



ピカチュウは涙を流しながら頷いていた。
ヒカリはそんな彼女の背中を強く抱きしめる。



抱きしめ返してきたその手は……余りにもか細く。
世界大会で強敵を倒してきた伝説のポケモンとは程遠かった。




………………………

…………


マサラタウンに到着した。
閑静な住宅街を走り抜け、サトシの家の前にワゴン車は停車する。
車を降りると、一同は満天の星空に迎えられた。
暫く無言で星空を眺めていると……ヒカリの直ぐ横にサトシが近寄ってきて、ピカチュウに聞かれない程度の小声で話しかけてきた。




サトシ「今日はありがとな……ヒカリ



ヒカリ「……なに?お礼を言うのはこっちよ。ピカチュウを着せ替えさせてもらって楽しかったわ



サトシ「アイツも楽しんでたし、久しぶりに笑ってるのを見た……実は最近アイツ、凄く不安定でさ。俺と二人きりの時もたまに泣き出したりするんだよ……あの姿の時はさ、元仲間でも結構緊張したりするんだよ、アイツ



ヒカリ「そうなんだ……



サトシ「でも今日はアイツ、ヒカリの側で凄くリラックスしてた様に感じた。それはヒカリがずっとピカチュウに態度を変えないで接してくれたお陰だよ



ヒカリはピカチュウの方向を眺めてみた。
ピカチュウは満点の星空をつかむ様に、手を伸ばしていた。
サトシから話を聞いた夜にもやっていた仕草だ。



サトシ「……今日の夜は……悪いけどアイツの側に居てやってくれないか?




ヒカリは無表情のままサトシのオデコにデコピンをする。
戸惑うサトシを横目に、ヒカリは不機嫌そうな表情で口を開いた。



ヒカリ「サトシなんかに言われなくとも、私はピカチュウの側にいるわ。サトシなんかより断然ピカチュウの事を考えてるんだから!




そう言って鼻を鳴らしながらヒカリは、ピカチュウの腕をとってサトシの家に入っていく。
サトシは暫くキョトンとしていたが、直ぐに「相変わらず人に何か言われんのは嫌いなんだな……」と笑みを浮かべ、ポケットからタバコを取り出して口に咥えた。




……………………

……………
214 名前:名無し 投稿日:2017/04/26 23:10 ID:T8ilKOEY

真っ暗な室内の中、ヒカリとピカチュウは唯一点けた電球が煌々と照らす脱衣場の前で向かい合っていた。
先ほどヒカリから出た言葉をピカチュウは戸惑った様に復唱する。


ピカチュウ「……お風呂?



ヒカリ「そうよ、お風呂



ピカチュウ「一緒に?



ヒカリ「もちろん



ピカチュウ「……別にいいけど



ヒカリはピカチュウと一緒に脱衣場で服を脱ぎ、洗濯機にそれを放り込んだ。
二人はお風呂場に入って小さい丸椅子に腰を下ろすと、シャワーの前に座ったヒカリが出す水がお湯に変わるまで、それをジッと眺めながら話をしていた。



ヒカリ「そう言えば……サトシのお母さんは何処にいるの?パーティーの時からずっと姿が見えないんだけど



ピカチュウ「リゾートにバリヤードと一緒に旅行に行ってるんだ。サトシが羽を伸ばしてきてくれってチケットを渡したんだよ



ヒカリ「そうなんだ、いつ帰ってくるの?



ピカチュウ「予定では後二週間だけど、多分後一ヶ月は帰って来ないよ



ヒカリ「えっ?……どうして?



ヒカリがお湯に変わったシャワーをピカチュウに浴びせる。
ピカチュウは気持ち良さそうに目を瞑ってそれを浴びながら、ヒカリの問いに答えた。



ピカチュウ「サトシがそういう風に裏工作したんだ。今ホワイトホールはカントーを占める裏組織の中でもトップクラスなんだよ、その為対抗組織に狙われる危険性がある内は遠い安全地帯でママさん達はのんびりしてもらってるのさ。



ヒカリ「そうなんだ……。でも、さっき帰ってくるのに一ヶ月くらいって言ってたけど……本当にそれくらいでサトシのお母さんは帰ってこれるの?



ピカチュウ「一ヶ月だよ。ホワイトホールがカントーの覇者となるのは……もしかしたらそんなに掛からないかもね



ピカチュウはそう言って、置いてある石鹸を泡立ててヒカリの背中につける。



ピカチュウ「今、サトシ主導で大規模な作戦が進行中なんだ。カントーのありとあらゆる裏組織はホワイトホールに度肝を抜かれると思うよ



ヒカリの背中を洗いながら、ピカチュウは楽しげにそんな事を言った。
215 名前:名無し 投稿日:2017/04/27 18:04 ID:BCsUishM

ヒカリ「……あんまり無理しちゃダメだよ?貴女は昔からそういう所があるから




ピカチュウ「サトシ程じゃないよ




ヒカリ「ふふっそれもそうね




ヒカリが笑うと、ピカチュウも追随して笑った。
しかし、その声もピカチュウは段々と暗くなる。
ヒカリが気になって首だけ振り向くと、少しばかり寂しそうな表情を浮かべた少女がいた。




ピカチュウ「そういえば……ヒカリはいつ帰らなきゃいけないの?




ヒカリ「……明後日には帰らないといけないの。地元で本格的にジョーイとして勤務するから




ピカチュウ「……また来れる?



ピカチュウの洗う手が止まる。
ヒカリは振り向いてピカチュウの手を強く握った。



ヒカリ「必ず来るわ。そしたらまた貴女を着せ替えさせてもらうけど



ヒカリがウィンクしながらそう言うと、ピカチュウは嬉しそうにはにかんだ。



ヒカリ「さあ、今度は私が洗うわ。背中を見せて




ピカチュウ「うん



……………………………

………………

体を洗い終え、そろそろ湯に浸かろうかと二人は腰を上げた。
二人が入るには少しばかり狭い湯船にすっぽりと収まったヒカリとピカチュウは、向かい合う形で様々な話をしていた。
昔の旅や出会った人々の話が大半だった。



ヒカリ「でもピカチュウと話せて本当に嬉しいわ、貴女とはずっと話したいと思っていたの



新たな話題に差し掛かり、ピカチュウの表情が変わるのをヒカリは見逃さなかった。
216 名前:名無し 投稿日:2017/04/27 18:11 ID:BCsUishM

ピカチュウ「本当にそう思うの?



ピカチュウの意味深い発言にヒカリは動揺しながら頷く。



ヒカリ「そりゃそうよ、トレーナーとしてポケモンと話せる様になるのは夢だもん



ピカチュウ「ふーん……じゃあポッチャマと話したいと思う?



ヒカリ「そりゃ思うけど……



ピカチュウ「ポッチャマが話せる様になって困るのはヒカリだよ



ヒカリ「……どういう事?
217 名前:名無し 投稿日:2017/04/27 18:38 ID:BCsUishM

ピカチュウ「だってポッチャマは……ヒカリの事が好きだから



ヒカリ「……私も好きよ



ピカチュウ「異性として?ヒカリの好きは違うでしょ。ポッチャマはオスだ、ポケモンのオスが求める好きっていうのは……生物としての繁殖欲の事だよ。ヒカリの事をメスとして好きなんだ



ヒカリ「……それはポッチャマから聞いたの?




ピカチュウ「いや、僕の直感だよ




ヒカリ「じゃあ……




ピカチュウ「分かるんだ、自分がそうだから
218 名前:名無し 投稿日:2017/04/27 20:18 ID:BCsUishM
ヒカリが複雑そうな顔をしていると、ピカチュウは申し訳無さそうに笑った。



ピカチュウ「ゴメンね、でも意地悪で言っている訳じゃないよ……僕はね……いや、僕たちポケモンは……人間とは根本的に考え方が異なるんだよ




ヒカリ「……



ピカチュウ「僕もただサトシが好きなだけだったら良かったんだ……でも僕が抱いていたのは純粋な恋愛感情じゃない、劣情だよ。サトシとそういう事をしたかったんだ……だから知られたくなかった。サトシも言ってたよね、僕の隠された本当の想いって。あの時僕は自分の命とひた隠しにしてた自分の劣情を知られる事を本気で天秤にかけたんだ。僕が隠す事を選べばサトシも死ぬかもしれなかったから選択肢は無かったけどね




ヒカリ「ピカチュウ……




ピカチュウ「一番傷ついたのはサトシの反応だよ。あれ以来サトシは……僕に触れるのを躊躇する様になった。サトシが僕に余所余所しいのをヒカリも気付いてたろ?……アイツのタチの悪い所はそれを認めないんだ。綺麗事ばっか言って……僕の気持ちなんて、本当は分かってないんだよ
219 名前:名無し 投稿日:2017/04/27 22:23 ID:BCsUishM

ヒカリは更に何かを言おうとしたピカチュウの言葉を遮って抱きしめた。
泣きそうなピカチュウに代わって、ヒカリは静かに涙を流す。




ヒカリ「貴女は真っ直ぐすぎるのよ……だからそういう言い方しか出来ないの



ピカチュウ「……真っ直ぐなんかじゃないよ



ヒカリ「……劣情とか、そんなの言い方の問題じゃない……本気で好きならそういう気持ちにもなるよ。それはポケモンだけじゃない、人間だってそうよ……貴女はそれ以前に……サトシを守りたいとか、独り占めしたいって気持ちがあるんでしょう?



ピカチュウ「……



ヒカリ「それが好きって事でいいじゃない……ただただキレイな恋愛なんか無いよ。無理にそんな劣情なんて言葉を当てはめる事無い……




ピカチュウ「……ヒカリに抱きしめられると何だか安心するよ……ありがとう……そうだね、僕はただ少しばかり卑屈になっていただけかも。……でもね、ヒカリ



ピカチュウが次なる言葉を吐こうとした瞬間、バスルームの照明が消え、あたりは闇に包まれた。
ヒカリが何事かと立ち上がろうとすると、ピカチュウがそれを遮って湯船に引き戻す。



ヒカリ「どうしたの?



ピカチュウ「……囲まれてる。今はサトシを待とう



サトシ「居るぞ、さっき確認してきた。電気線は切られてる、相手は暗視装置まで用意してたぜ



お風呂場から脱衣場を繋ぐ、すりガラスの先からサトシの声が聞こえてきた。
ヒカリはイマイチ状況が掴めず、混乱した様子で尋ねる。



ヒカリ「……何があったの?



ピカチュウ「敵だよ……ゴメンねヒカリ。本来は巻き込む筈じゃ無かったんだけど。……でも、いい機会だ



ヒカリ「えっ?



ピカチュウ「僕を見てて……ヒカリ、僕は君が思う程、純粋じゃないんだ。真っ直ぐなんかじゃないんだよ……ヒカリは大好きだから、本当の僕を見て欲しい
220 名前:名無し 投稿日:2017/04/27 23:12 ID:BCsUishM

サトシ「俺は先にポイントBで指揮を執る……ピカチュウ、ヒカリもそっちにいく様に誘導してくれ。その後お前は正面から奴等を蹴散らすんだ、支援するリザードンとゲッコウガは既に外で展開してある。久々の軍団バトルだ、連携を忘れるなよ?



ピカチュウ「了解……


すりガラスの先からしたサトシの声が終わると、足音がして遠のいていく。
ヒカリは段々と暗闇に慣れてきた目で、月明かりに照らされたピカチュウの表情を見た。



ピカチュウ「ヒカリ、急いで湯船から出よう。ポイントBっていうのは大げさな名前だけど、二階にあるただのサトシの部屋さ



ピカチュウはヒカリの手を取って湯船から上がると、急いで一緒に体を拭いて服を着た。



脱衣場を抜け、二階へと通じる階段のある廊下へと出ると、玄関の先の小窓から微かに炎の光と悲鳴が聞こえた。
サトシ達が何者達かと戦闘を始めたのをヒカリは察知した。



ピカチュウ「……サトシの部屋へは一人で行ける?予定より早く交戦状態に入った様だ。僕も参加するよ



ヒカリ「う、うん。行けるけど、敵なんでしょ!?貴女はその姿で……



ヒカリが言い切る前だった。
リビングの方からガラスの割れる音が聞こえ、ドカドカと誰かが入ってくる音が聞こえた。



ヒカリはその方向を見ると……真っ黒な服に同色のフルフェイスヘルメットを被った人間が三人ばかり、大きな杖の様な物を構えて立っていた。



??「ターゲットだ!!撃て!



その集団が杖の先端から電撃の様なものを発射する。それはヒカリとピカチュウに迫り、そして……



ピカチュウ「目障りだよ……



それはピカチュウの前で相殺された。
まるで電気で作られた様なバリアが、いつの間にかヒカリとピカチュウの間を覆っていた。


??「ッ!!プラズマガンが効かない!


ヒカリが謎の三人組同様に驚いていると、ピカチュウが手のひらから電気を放電しながら説明を始める。


ピカチュウ「ヒカリ、最終進化ってのはね……ポケモンからただの人間を生み出す代物じゃないみたいなんだ……。師匠は人間の姿のまま技を使うでしょ?僕もそれが出来るんだよ



ピカチュウは言い切った瞬間、腕を伸ばして放電していた電気を三人に放った。
目が焼ける様な閃光が三人のいた空間に広がり、断末魔の悲鳴が室内に響き渡る。
221 名前:名無し 投稿日:2017/04/27 23:23 ID:9DphQdYU
サトシとピカチュウにこんな関係があったなんて…笑 支援
222 名前:名無し 投稿日:2017/04/27 23:54 ID:BCsUishM

ピカチュウ「さ、早く今の内に……ヒカリはサトシの部屋へ行って。正直ヒカリがいると戦いにくいんだ




ヒカリ「ピカチュウ……




ピカチュウ「二階から見ててよ……本当の僕を



そう言って振り向いたピカチュウの表情は、ヒカリが驚く程に残忍な笑顔だった。




……………………

…………

トキワ警察署、公安事務室。
そこでは苛立ちを隠せない様子のセレナと、飄々とした様子でパソコンをつつくスイレンの姿があった。
セレナは不満たらたらの様子でスイレンのデスクの前で仁王立ちしていた。



セレナ「なんでトキワの公安捜査員が私とスイレン部長だけなんですか?これじゃあ捜査のしようがないでしょ!?



スイレン「仕方ないじゃん、無能な先代公安署長のおかげで対外部門に予算も人員も根こそぎ取られちゃったんだから。貴女はだって対外部門に引き抜かれそうなのを私が方々に土下座しながら頼み込んだんだよ。



セレナ「事の経緯なんかいりませんよ!じゃあ全く期待されてないお飾り部署に私は配属されたって事ですか?
223 名前:名無し 投稿日:2017/04/28 15:23 ID:ZOicoH3B

スイレン「君がなんで?って聞いたんじゃん……まあまあ、期待されてないって事はそれはそれで楽だし、その分成果を上げた時の反動はデカイよ?



セレナ「その成果を伴う為の人員が居ないから言ってるんです!



スイレン「何言ってるの、人員ならいるんじゃん、優秀なのが沢山



セレナ「は?……今この部署には私たち二人しか居ないじゃないですか



スイレン「隣にいるじゃん



スイレンの言葉に、初めはキョトンとしていたセレナが段々と表情を険しくする。



セレナ「まさか……



スイレン「そうだよ、対外部門。彼らの捜査資料を拝借すれば労せず捜査を進められる。一人でも二人でも変わらないよ



セレナ「横取りじゃないですか!



スイレン「あのねぇ、セレナ君。僕達は警察で目的は問題の解決だよ?違う部署と手柄を取り合っている場合じゃないんだよ。目的はあくまでスピーディーな解決、外の人は対外部門が解決しようが公安が解決しようがどっちでもいいでしょ?警察がやってくれた!って思うだけだよ



セレナ「くっ……なまじ説得力はある……でもどうやって対外部門の捜査資料なんて手に入れるんですか?



スイレン「今見てるのがそれだよ、彼らの対策プログラムは何重にもプロテクトされてるんだけど、私レベルのハッカーなら容易く入れるんだ




セレナ「……スイレン部長はハッキングが出来るんですか?



スイレン「出来るよ、見たい?最新の面白捜査資料がタダで見れるよ?



セレナ「……拝見します



スイレン「ふふ、君もすきものだね。うーむ、最近彼らのやり方は過激さを増してるな……あ、面白いの見つけたよ



セレナ「これは……動画?
224 名前:名無し 投稿日:2017/04/29 12:54 ID:czf3lQ5b

スイレンが表示した画面に現れたのは、何人もの人間の視点から撮られた動画だった。
おそらくヘッドセットに装着した視点カメラだと思われるそれは、現在リアルタイムで対外部門本部と中継されている様だった。



スイレン「対外部門の特殊部隊が遂に火を吹いたらしいね。場所は……おやおや、これは



セレナ「どうしたんですか?早く見ましょうよ



セレナがスイレンを見ると、彼女は無表情のままセレナを見つめ返した。



スイレン「絶対に君は勝手な行動を取らないと約束するなら、この動画を開こう。約束出来る?



セレナ「……どういう事ですか?



スイレン「いいから約束出来る?



セレナは訳も分からないまま頷くと、スイレンがマウスを操作して動画を開いた。
動画はいきなり、対外部門の特殊部隊が戦闘を繰り広げている所から始まる。



『退避しろ!後退しながら撃て!』


『あのポケモンは何だ!?何処から攻撃してきている!?』


『あのリザードンを黙らせろ!俺たちのピジョットを支援しながらプラズマガンで落とせ!』



セレナは絶句していた。
ポケモンはポケモン同士で戦うものだ。
そのルールは生まれた時から地方連合に住む住人たちの頭に擦り込まれたモノである。
それをあざ笑うかの様に対外部門の特殊部隊は対人用の制圧兵器を何の迷いもなくポケモンに向かって使用していた。



セレナ「これはまるで……



スイレン「戦争だね。知ってる?世界の裏側ではこれが日常で起こっているんだよ



セレナ「えっ?……



スイレン「君も公安なら知っておいた方がいいよ。地方連合の外がどうなってて、どんな事が起こっているのか……ずっと上が市民に隠し続けていた真実を
225 名前:名無し 投稿日:2017/04/29 13:05 ID:czf3lQ5b

セレナ「世界の……真実



スイレン「まあ、今はこの動画の真実だ。よーくこの対外部門の特殊部隊が戦っている舞台を見て



セレナが戸惑いながら画面を眺めて見ると、どうやらこの特殊部隊はある民家を強襲している様だった。
別の動画ではピジョットに乗った数人の特殊部隊員が民家の屋根に飛び乗り、ロープを括り付けて窓から突入していた。
そこはポケモンのポスターやモンスターボールのレプリカが転がる明らかに子供部屋の様な場所で……


その部屋の中央に立っていて、特殊部隊員に銃を突きつけられている少年にはセレナは確かな見覚えがあった。



セレナ「サトシ!?



思わず部屋を飛び出そうとするセレナをスイレンは腕を掴んで静止させた。



スイレン「勝手な行動を取らないと約束したよね?



セレナ「……スイレン部長は、この事を知っていたんですか?



スイレン「まあ、何となくわね。今日作戦決行なのはついさっき動画を見つけて知ったよ
226 名前:名無し 投稿日:2017/04/29 13:34 ID:czf3lQ5b

セレナ「じゃあどうして!?貴女は元サトシの仲間なんでしょう!?



セレナの言葉に、スイレンは不敵な笑みを浮かべた。



スイレン「それ以上だよ、恋人だった事もあるかな



セレナ「……えっ?



スイレン「まあ、見てなよ。どうせ対外部門の強行作戦は失敗に終わる。この部隊には優秀な指揮官が二人も出張で不在しているし、それに……



スイレンは画面のサトシを指差して言った。



スイレン「サトシの目を見れば分かるよ。これは狩られる側の目じゃない……狩る方の目だよ



セレナは言われて画面をもう一度覗き込んでみる。
そこには、不敵な笑みを浮かべて対外部門の特殊部隊を見るサトシの姿があった。
227 名前:名無し 投稿日:2017/04/29 13:57 ID:czf3lQ5b

………………

…………

サトシ「ようこそ我が家へ、歓迎はしないがちょっと遊んでいけよ



「撃て!!」



一人の特殊部隊員の号令で二人の銃口から圧縮されたプラズマ因子の塊が容赦なく発射される。



それは特殊部隊員が入ってきた別の窓から侵入してきた物体に阻止され、相殺した。



「コイツは……!?」


「ゲッコウガだ!制圧し……」


言い終わる前に、二人の特殊部隊員はゲッコウガの水手裏剣で吹き飛ばされ、窓から一階へと落下していった。
それを見届けたサトシはため息を吐きながらゲッコウガの肩に手を置く。



サトシ「よくやった……けど部屋がメチャクチャだな



ゲッコウガ「……コウガ



サトシ「気にすんな。ま、ホワイトホールのメンバーにやらせるとしよう……それよりピカチュウは何やってやがる。ヒカリがまだ来ねぇじゃねぇか……



ヒカリ「サトシ!!



サトシが呟いた瞬間、ヒカリが蹴破る様に部屋に入ってきた。



サトシ「ヒカリ!……ピカチュウは?アイツに誘導させる様に命令した筈だけど……ていうか、それ何持ってんの?



ヒカリ「ああ、これ!?さっきなんか二階の廊下の窓から突入してきたヤツがいたから投げ飛ばして奪ってきちゃった



サトシ「え、えええ!?け、ケガは無いか、ヒカリ!?



驚愕するサトシを他所に、ヒカリは窓から持っていたプラズマガンを外にいる特殊部隊員に向けた。



ヒカリ「大丈夫よ、ジョーイスクールでは室内戦闘一位の成績だったから!窓からコレでピカチュウ達を援護するわ!



サトシ「ほ、本当にそれはジョーイスクールなのか!?……く、何にせよヒカリに危険が及んだ事はペナルティーだ。ピカチュウにはキツイお灸をすえないとな
228 名前:名無し 投稿日:2017/04/30 00:32 ID:ONWisj8T
爪をかんで苛立ちを表していたサトシに向かって、ヒカリが声を上げた。



ヒカリ「私が一人で大丈夫って言ったの!ピカチュウには何の非もないわ!それより今は敵をどうするかでしょ!



サトシは一瞬面食らった表情をしていたが、直ぐに真面目な表情へと戻った。



サトシ「大丈夫だよ、ヒカリ。奴らがこの屋敷に……マサラタウンに踏み込んだ瞬間から勝敗は決してるんだ。そこの窓から外を見てみろ



ヒカリ「えっ?……



ヒカリはサトシに言われ、外を眺めてみる。
すると夜にも関わらず、真昼の様な明かりを照らし出す物体がゆっくりと移動していた。
ピカチュウだ、彼女は全身から電撃を発しながら周りにいる特殊部隊員を一掃していった。



圧倒的だった。
ヒカリが唖然としている間に、その場に立つ敵と思われる集団はいなくなっていた。




サトシ「ウチのエースだ。それを支援するゲッコウガとリザードン……それだけじゃない、他にも配置してある仲間達は二重にも三重にも包囲網を敷いてある。ここは俺たちのホームグラウンドだ、何人たりとも容易く落とせる城じゃない
229 名前:名無し 投稿日:2017/04/30 14:15 ID:TvZ5UKOk
ブラックだな 支援
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