サトシ「さあ……いこうぜ相棒」

1 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:44 ID:p3kkTtj5

鳴り止まぬ歓声……その中央には、古来からその姿を変えていない、完成された戦場がそこにはあった。



『さあ!始まりました、最高峰のポケモンチャンピオンを決める祭典!ワールド・ポケモン・グランプリ!この強者達が送る最高の協奏曲も、既に終盤に差し掛かってきました!



熱気の収まる様子を見せない、ポケモンリーグの最高峰、WPG。


司会者が叫び声を上げるかの様にマイクを握り、五万人以上はいるであろう観客達に言葉を投げかける。


『そして!ここで争うのは両者、最後の戦いの締めるに相応しい、この二人だ!!!


ド派手な炎の演出がなされて、戦場の対となるゲートに二人の男が姿を現した。


一人は帽子を深く被り、表情が伺えない、黒色のコートに身を包んだ男だ。


決して寒くはない、この気候の中でのかなりの厚着。


会場にいる観客達もこの男から感じる只ならぬオーラに飲み込まれそうになっていた。


もう一人は対照的に帽子は浅く、青色の明るい服装で、曇りのない真っ直ぐな瞳で会場全体を見渡している青年だった。


肩には愛らしい電気ポケモンのピカチュウを乗せて、屈託の無い笑顔で微笑んでいる。


そのピカチュウの背中には、イナズマの様な大きな傷跡があった。


「なあピカチュウ…
2 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:46 ID:p3kkTtj5
ピカチュウを肩に乗せている青年が、小さくつぶやく様に言った。


歓声で掻き消されそうな声を、彼の小さい相棒は聞き逃さなかった。


「ピカ?


「やっとここまで辿り着いたのか……って感じだな。もっと感動するもんかと思ったけど……案外感慨深くはないもんだぜ


「ピーカ!


そんなもんだと言いたげにピカチュウは青年の頭にポンと手を乗せる。



青年は少しばかり苦笑しながら、向かい側にいる対戦者の顔を見た。



表情の窺い知れない、未知の相手だ。
青年はそっとピカチュウを撫でた。



「……さあ行こうぜ、相棒。



『遂に!遂に我々が待ち望んでいたバトルが始まります!このバトルは、史上初となるポケモンマスターの称号を与えられる、明確な証となります!


その様子は、今まで彼を支えてくれた者、敵だった者、ライバルだった者達が、全世界の同時中継によるテレビやラジオで、詳細を余す事なく伝えられた。


やがてバトルが始まり、伝説とまでになった攻防戦を出し惜しみ無く両者繰り広げる。




やがてそれも終わり、あまりの壮絶さに観客達は圧倒され、沈黙が漂う中……今大会の優勝者はサトシという少年で幕を下ろした。
3 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 07:53 ID:p3kkTtj5
カントー地方、ラティアス空港126。



観光客や、帰省で人がごった返す中、人に揉まれながらゲッソリとした表情を浮かべる可憐な少女と、水ポケモンのポッチャマがトボトボと雑多なエントランスを歩いていた。



「な、長かった……カントーは人が多いのね……



「ポ、ポチャア……



可憐な少女の名前はヒカリ。



彼女はシンオウ地方をサトシと一緒に旅した仲間だった。


シンオウ地方在住の彼女が今回、カントー地方に居る訳は。


あれから六年の月日が流れ、最高峰のポケモンリーグを優勝したサトシがカントーのマサラタウンに帰省中だからである。



同じくカントーに在住の旅仲間、タケシから連絡があり、彼の激励パーティーを開くので来ないかと連絡があったのだ。



チャンピオンとして名実共にポケモンマスターとしての称号を手に入れたサトシには、ポケモンリーグ運営から一年間の休養が与えられるらしい。


警察組織と連携して、休養中の彼にポケモン勝負を挑むものは処罰の対象になるというのだから驚きだ。


一個人にそこまでの配慮が成されるのは異例中の異例である。


「高みに登っちゃったって事かあ……なんか、ちょっとサトシが遠い人になっちゃった気がして逢いづらいなあ……



「ポチャア!ポチャ、ポチャア!



寂しそうに呟いたヒカリに、ポッチャマが叱責する様に口を開く。




恐らく、お前がそんなんでどうする!と言っているのだろう。



付き合いの長い彼女にはポッチャマの言っている事がニュアンスで分かってしまう。



ヒカリは苦笑しながら、



「そうよね!浸ってるなんて私らしくないわ!何時もの大丈夫、大丈夫で行きましょう!そんでハイタッチよ!



「ポチャア!
4 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:07 ID:p3kkTtj5

頷きあった二人は空港を後にし、マサラタウン行きのバスに乗って出発した。




流れていく外の景色をみながら、ヒカリは道中を歩くポケモントレーナーとおぼしき子供達を見て顔を綻ばせる。




「見て見て、ポッチャマ。トレーナーよ、サトシ達と旅に出たのが懐かしいね。



「ポチャア……



ポッチャマは昔を思い出す様に腕を組んでつぶらな瞳を瞑る。




その様子にヒカリはクスクス笑いながら、彼女も目を瞑って昔を思い出してみた。




ヒカリは自分達もトレーナーで旅をした時は、必要な時以外、徒歩で移動したもんだ、と振り返る。




トレーナーは基本、交通機関は使わない様にするのが常識だ。




森や山を越える時、道中で新たなポケモンに出会えるかもしれないし、バトルを挑まれたり、挑んだりして力量も磨ける。




森や山で野宿したりして、心身ともに体を鍛えるのだ。




ヒカリの中ではその時の事を鮮明に思い出せる。
嫌な事も沢山あったけど、楽しい事はもっと沢山あった。




まるでダイヤモンドやパールの様に、大切な思い出として心の中に残っている。




アレもコレもみんな、サトシやタケシ、ポケモン達のお陰だ。




彼らのおかげで今の私があるのだと、ヒカリは胸を熱くする。




「ポチャ?




ポッチャマを強く抱き締め、かつての旅の仲間達と早く逢いたい……。





ヒカリがそう思いを馳せていると……その思いを踏みにじるかの様に、期せずしてバスが勢いよく停車した。




「きゃ!




「ポチャア!
5 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:12 ID:p3kkTtj5
あまりの勢いの停車に、ヒカリは前の座席に頭をぶつけそうになったが、ポッチャマが寸前で自ら前に出て、クッション代わりとなった。


「ポ……ポチャ……


「きゃあ!ポッチャマ大丈夫?


ポッチャマは顔を赤くしながら、フラフラと立ち上がり、


「ポチャア!ポチャ、ポチャ、ポチャア!


涙目で運転席に向かって抗議した。


「も、申し訳ありませんお客様!前にポケモンの群れが出てきて……



運転手がマイクを使って、車内にアナウンスする。

外を見ると、確かに何かのポケモンが砂埃を上げながら走り去っていた。
6 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 08:18 ID:p3kkTtj5

「ちょっと!おばあちゃんが今ので頭を打って動かないの!


車内で悲痛な叫び声が上がった。


ヒカリは振り返ると、確かに後ろの座席でピクリともしないおばあさんが床に横たわっている。


それを確認した運転手は慌てて席に戻り、再びマイクを握ってアナウンスをした。



「すみません、お客様!緊急事態につき、先程出発した街へと引き帰らせて頂きます。何卒ご迷惑ご容赦下さい!



運転手はそう言ってバスをUターンさせ、元来た道を引き返す。



ヒカリは席を立ち上がり、床に横たわるおばあさんの元へと近寄ろうとして……


「何よ、アンタ!近寄らないでよ!


「きゃ!


横にいた女の子に突き飛ばされた。
ヒカリは頭を打たない様に、バスのポールに捕まり、態勢を立て直す。


「ちょっと、いきなり何すんのよ!


「ポチャア、ポチャア!


ヒカリとポッチャマは非難の声を女の子に投げかけると、女の子は引かずに鋭い目でヒカリを睨みつけた。


「医者でもない癖におばあちゃんに近寄らないでよ!下手にいじられたらこっちが困るの!


「医者よ!なんなら証拠見せたげる!


ヒカリはそう言うと、バッグから医者の証明書カードを女の子に見せつけた。


ヒカリは数年前に短期スクールを出て、医者の資格を取っていた。


まだ新人研修者扱いだが、それなりの知識はある。


「私が診るから、早く退いて!


ヒカリは鬼気迫る顔で女の子に迫ると、バツが悪そうにおばあさんの横をどいた。


ヒカリは跪いておばあさんの脈拍を見てみる。


……異常は見当たらない、次は突っ伏している状態の顔を少し持ち上げ、外傷を見てみた。


本来なら頭を打った場合、動かさない方が得策だ。


しかし、救急隊が到着した時、少しでも症状を伝える必要がある。


見てみると、軽いコブはあったが、脳内出血を起こしている風には見当たらなかった。


「脳しんとうの様ね……緊急性は無いけど、一応は病院で見てもらった方がいいわ。


ヒカリはうつ伏せのおばあさんを仰向けにして、頭の下に自分のバッグの中にある、小さいマットを敷いた。


と、その時。


再びバスが急停車して大きく揺れる。


「きゃ!


「ポチャア!


頭を打たない様に近くの座席に掴まりながら、ヒカリは今度は何だと運転席を見る。



「く、クソ!またポケモンが前に!


見ると、今度はポケモンがバスの前に出て、バリアの様な技で車体をせき止めていた。
7 名前:名無し 投稿日:2017/01/09 13:44 ID:z0btr4Tp

空間が大きく揺らめいて、存在を視認出来ないほどの強力なバリアだ。


並々ならぬオーラとパワーをヒカリは感じた。


「ポチャア!ポチャア!


ポッチャマに声をかけられ、ヒカリはハッと我にかえる。


ポッチャマは床に横たわるおばあさんを指差していた。このままじゃあ早く病院に行けないって事だろう。


ヒカリは意を決して運転席へと歩みを進めた。


「運転手さん!バスの扉を開けて!


「お、お客様!?今外に出るなんて無茶ですよ!


「大丈夫!私こう見えてもトレーナーだったんだから!ポッチャマと私であのポケモンを何とか引き付けるから貴方は早く町に向かって!


「で、でも……


なおも食い下がる運転手に、ヒカリは胸ぐらを掴んで叫ぶ。


「良いからお願い!私に任せて!


運転手はコクリと頷いて外へと出るドアのボタンを押した。


ピーッと音がして、扉が開く。


ヒカリは幾つかの小銭を料金入れに放り投げ、勢いよく外に出た。
8 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 00:08 ID:bP7hQiuw
支援
9 名前:ジョー 投稿日:2017/01/10 00:33 ID:NALpbdma
ポケモンSS描いてるジョーと言います

主さんの作品面白いですね。支援させてください
10 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:10 ID:YZUxHW7I

「ッ!このポケモンは……!?



それは真っ赤な瞳をした、ルカリオだった。
片手からバリアーの様な技を発生させ、バスをせき止めていた。



ルカリオは落ち着いた様子で、ヒカリとポッチャマを見つめている。



「ルカリオ!貴方何でこんな事を!怪我人がいるの!早く退いてよ!


「……



返ってきたのは返事では無く、強烈な悪の波動だった。



ポッチャマはヒカリを蹴飛ばして、悪の波動の軌道上から逸らさせた。



そして自らは蹴飛ばした反動でくるくると回転しながら技を避ける。



トライポカロンで鍛えたポッチャマの身のこなしは、既に完成されたレベルだった。



後ろからは悪の波動が炸裂し、岩の破片がパラパラと降ってくる。


「ポッチャマ!冷凍ビーム!


「ポッチャア!


そして、その動きをある程度予測していたヒカリが尻餅をついた状態で指示を出す。



ポッチャマはすかさず、ルカリオへと向けて冷凍ビームを繰り出した。



「!?


ルカリオは驚きながらも、大きくジャンプをしてそれを避けた。



せき止めてられていたバスが、動き出す。


ポッチャマの冷凍ビームが少しばかりバスの車体にかかったが、大きな問題は無かった。



運転手はヒカリ達に大きく頭を下げながら、猛烈な勢いで町へと向かって行く。



ルカリオはそうはさせまいと思ったのか、空中でまた悪の波動を作り出し、バスに向かって撃ち込んだ。



それをポッチャマが冷凍ビームで食い止める。
ルカリオはそれを受け、今度はヒカリ達に敵意の視線を向けた。



完全にターゲットが切り替わった様だ。
11 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:13 ID:YZUxHW7I

大きく唸り声を上げながら地面に着地し、猛烈なスピードでこちらに向かってきた。



「ハハッ……ちょっと後悔。ポッチャマ!地面にバブル光線!



「ポッチャア!



ポッチャマがバブル光線を地面に放つと同時に、砂埃がもうもうと上がり、その場の視界がゼロになる。



ヒカリは立ち上がり、ポッチャマと一緒に近くの森へと駆け出した。



「グルァァアアア!!!



「る、ルカリオってあんな鳴き声だっけ!?



「ポ、ポッチャア!


違う気がする、とポッチャマは首を振りながら猛然と走る。



ヒカリもまた、息を切らしながら猛然と走りながら、新入した森の地形を見ていた。


「クッソォ……何でこんな日に限ってこんな目にあうかな!トラブルメーカーのサトシ達と別れて平穏な日々を過ごしていたのに!サトシの故郷に近づいたからかな!?


「ポチャ、ポチャア!


後ろから幾つもの悪の波動が飛んでくる。



近くの木々に命中し、とてつもない炸裂音が響き渡る。



木々の破片が飛び散り、それがヒカリの脇腹に一つ突き刺さった。



「カハッ……


「ポチャ!?


ヒカリはその場に倒れこむ。


ポッチャマが慌ててそれを受け止めた。
12 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:15 ID:YZUxHW7I

後ろを見てみると、ルカリオがゆっくりとした歩みでこちらに近づいて来ていた。



心なしかその口元は笑って見える。



ルカリオは両の手から、轟々と燃える炎を出した。


「ウッソォ……あんな技ルカリオって使えたっけ?……ポッチャマ、私の事は良いから早く逃げてって……逃げる訳ないか、貴方の事だから。



「ポチャポチャ!!



当然だ、とでも言いたげにポッチャマは涙目で胸を張る。



ヒカリはこんな状況でありながら、クスクスと笑みをこぼしながら、小さな相棒を抱きしめた。



「じゃあ……アイツを倒して、一緒にサトシ達に会いに行こっか?



「ポチャポチャ!



望みはハッキリ言って薄い、だが、賭けるしか無かった。



ヒカリはポッチャマを放し、ルカリオと対峙しようとした時、ルカリオが一瞬ブレ、そして姿を消した。



「エッ?……



数瞬の時が流れ、突然ルカリオが目の前に現れる。



まるでエスパータイプのテレポートの様だった。
ルカリオはポッチャマを蹴り飛ばし、遠くへと吹っ飛ばす。



「ポチャア!!



「ポッチャマ!



ヒカリが叫ぶと同時に、ルカリオはヒカリに対し、拳を上げていた。



拳を天高く上げ、作り出しているのは悪の波動だ。



今まで見た事の無いくらい、大きい悪の波動だった。



「あーあ……サトシ達にもう一度……会いたかったな……



ヒカリは涙を浮かべていた。



そして覚悟を決め、ゆっくりと目を瞑ろうとした時……聞き覚えのある声と、見覚えのある黄色い小さな背中が見えた。
13 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:18 ID:YZUxHW7I

「ピカチュウ、アイアンテール!



「ピッカァ!



ルカリオは横からの乱入者に思いっきり弾き飛ばされる。



凄まじい威力のアイアンテールだった。



あまりの衝撃に、ヒカリの体は少しばかり吹き飛んだ程だ。



「きゃあ!



「よっと、間に合ったみたいだな……



聞き覚えのある声。
吹き飛んだヒカリの体を優しく受け止めた人物から聞こえた。


ヒカリは自分でも無意識に涙を流しながら、その方向を向いた。



その人は……。



「サトシ!!



「ひ、ヒカリ。間に合って良かった。丁度、近くにいたら妙な爆発音が聞こえてさ……きてみたらこんな状況に……



サトシだった。



サトシは何故かヒカリの顔を見て赤くなりながら、自分の現れた経緯を説明する。



そして、サトシはヒカリをお姫様抱っこすると、妙に息を荒くしながら、ピカチュウに指示を出した。



「ピカチュウ、ルカリオがまた起き上がるぞ。適当に暫く動けなくしてやれ。



「ピッカァ



ピカチュウは倒れているルカリオに近寄ると、今度はエレキボールを作り出し、ルカリオの顔面に叩きつける。



もうそれは、爆発だった。
こんな技は……威力は見たことが無い、それ程の迫力だった。


「あ、あれがポケモンマスターのピカチュウ……



思わず呟くと、サトシは照れた様に笑いながら、静かに頷いた。


「ああ……最強で、最高の相棒さ。



爆煙が晴れ、ピカチュウの後ろ姿が見えた。



もはや世界中で知らないものはいない、背中に大きなキズのトレードマークを背負った最強のピカチュウ。



畏怖の象徴とまで言われたその背中は、とてつもなく、頼りに見えた。
14 名前:名無し 投稿日:2017/01/10 12:28 ID:YZUxHW7I
支援ありがとうございます。作者です。実を言うとポケモンあまり詳しく無くて、最近アニメにどハマりして書き始めた感じです。なので自分の想像で書いてしまう場合が多々あるかもしれません。何卒ご容赦ください。
15 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 22:52 ID:x992BiqI
ゴォォォッと未だに爆煙が舞う森の中、ヒカリとポッチャマは無事サトシに救出され、近くの川のほとりで治療を受ける事となった。



先ほどのルカリオはサトシがモンスターボールで捕まえ、現在は彼のバックの中で眠っている。



「いてて……



「む、無茶しやがって……ほ、ほら。傷はどうだ?


「それが……まだ脇腹に突き刺さったまんまで……結構木片が大きいから病院に着くまでこのままにしとくわ……



「見してくれ



サトシは大きく息を吸い込むと、意を決した様にヒカリの服を捲って傷を見た。




ヒカリはお腹とはいえ、初めて男性に服を捲られた為に少しだけビクッとしたが、羞恥心より痛みが優っていた。




黙ってサトシに傷を見せる。




「やっぱりか……コリャまずいな



「えっ、どうしたの




気になってヒカリはサトシの顔を見ると、真剣な眼差しで傷跡を凝視していた。



暫くして目があうと、サトシは顔を赤くしながら顔を背ける。



ヒカリが首を傾げていると、サトシがハッと何かを思い出した様にヒカリに向き直った。



「な、なに?どうしたの?



「ヒカリ……あんま傷口痛くないだろ?



「ま、まあ……確かにこの傷ならもっと痛いかな〜と思ったけど、何でかそこまで痛くないわ。大丈夫よ。でも……どうして分かったの?



「ルカリオの毒技のせいだ、感覚が麻痺してるから今はあんま痛くないだろうけど……このままじゃあ毒が広がって死ぬぞ



「ええ!?毒技!?なんで……



ヒカリが驚くのも無理は無い、なんせ毒技など浴びた覚えは無いからだ。




しかも刺さっているのはルカリオの悪の波動で散った木片。確かな医療とポケモンの知識を持っているヒカリには到底信じられなかった。
なんせ……ルカリオには毒の特性は無い。



「サトシ……ルカリオには



「さっきのは遺伝子操作された改造ポケモンだ。最近ああいうのが多いんだよ



ヒカリは耳を疑った。
遺伝子操作?改造ポケモン?しかもそれが最近多いって?
ヒカリは困惑しながら口を開く。
16 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 23:05 ID:x992BiqI

「その……遺伝子操作って本当?だ、誰が何の為にそんな事を……


「それより今は治療だ。ヒカリ、ポケモンに乗ってマサラタウンまで行くぞ



困惑するヒカリを他所に、サトシはモンスターボールを取り出してポケモンを出した。
そのポケモンは大きな翼を持った鮮やかな橙色のリザードンだった。



「わあ……



思わずヒカリ感嘆の声をあげると、リザードンは誇らし気に背中を見せた。
乗れという事だろう。



ヒカリはサトシに抱えられて、リザードンの背に乗り、あっという間に空高く天空へと飛び上がった。
17 名前:名無し 投稿日:2017/01/11 23:39 ID:x992BiqI

ここはマサラタウン。
人口も少なく、ポケモン研究の大権威のオオキド博士のいるオオキド研究所と、寂れた植物園くらいしか目新しいものは無い、静かな街だ。




その為か野生のポケモンも近辺に沢山垣間見え、のんびりとした空気感が漂っていた。




そこに、凶悪そうな古傷を沢山持つ、サトシとヒカリ、ピカチュウを乗せた(ポッチャマはヒカリのボールの中)リザードンがオオキド研究所のポケモン広場に降り立った。



サトシはリザードンをモンスターボールに戻し、ヒカリの手を取る。



「ヒカリ、少し持ち上げるよ……ハアハア



「サトシ?……どうでもいいけど何でさっきから鼻息が荒いの?




「えっえっ?……ご、ゴメン



ヒカリは赤面しながら謝るサトシを不思議に思いながら、言葉に甘えてサトシに身を預けた。
サトシはヒカリを軽々と持ち上げ、オオキド研究所の中に入っていく。




ヒカリは必死に鼻息を抑えて呼吸をするサトシを見ながら、背が伸びて、体もより一層逞しくなったサトシを頼もしく思っていた。


『……サトシ、何だか逞しくなっちゃって……





しばらく行くと、建物のキッチンの様な部屋に入った。
その部屋にはガッシリとした体型には不相応な、可愛らしいピンクのエプロンを着た男が鼻歌を歌いながら流し場で炊事をしていた。



周りにはその炊事を見届ける沢山のポケモン達の姿がある。



ヒカリにはその後ろ姿に、確かな見覚えがあった。




「よーし、みんな。もうすぐタケシ特製スペシャルポケモンフーズが出来上がるぞ!……はあ、たくっ、それにしてもサトシの奴、朝っぱらから外をほっつき歩いて……パーティーにちゃんと間に合う様に帰ってくるのか?




「聞こえてるぞタケシ。ちゃんとお客さんを連れて帰ってきたぞ!



ん?と振り向いた男は……ヒカリの思った通り、かつての旅仲間、タケシだった。
タケシはサトシを見ると、呆れた様な表情を浮かべて……




「あ!おい、サトシ。お前どこ行ってたんだよ?パーティーの主役がその辺ほっつき……って!その抱き抱えられているのはヒカリか!?その傷どうしたんだ!
18 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 00:09 ID:sannKG9M
タケシはヒカリを見るなり、慌ててこちらに走り寄ってきた。


ヒカリ「タケシ……久しぶり


タケシ「久しぶりじゃないだろうヒカリ!……ああ、ひどい傷だ……サトシ!何があったんだ!?



サトシ「散歩してたらポケモンに襲われているヒカリを見つけたんだ、ヒカリは今そのポケモンのせいで毒状態になってる……タケシ、悪いけど研究所の倉庫から薬を持ってきてくれないか?




タケシ「何!?分かった、すぐ、持ってくる!



タケシはそういうと、キッチンを風の様に飛び出していった。



サトシ「さてと……ヒカリ、悪い



ヒカリ「えっ!?何?



サトシ「ちょっと痛むぞ



そういうとサトシは、ヒカリの脇腹に刺さった木片を勢いよく引き抜いた。




ヒカリ「っ!!?




あまりの痛みにヒカリは意識が遠くなり、すぐ様意識を失った。
19 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 01:15 ID:sannKG9M
微睡みの中、ヒカリは夢を見ていた。
まだかなり幼かった、子供の頃の夢だ。



近所のスーパーで母親に連れられ、ヒカリは沢山の商品棚にキラキラとつぶらな瞳に星を浮かべて視線をめぐらしていた。



ヒカリは自分の好物を見つけ、母親の持っているカゴにお菓子を放り込もうとして怒られる。
それを数回繰り返して、見兼ねた母親にカゴの上に乗せられ、監視下に置かれた。



そんな夢。


今覚えば恥ずかしくも、思い出せば微笑んでしまう様なそんなエピソード。
そんな中で、ヒカリは誰かからの呼びかけで目が覚めた。



………………………………

……………


?「ヒカリ……ヒカリ……大丈夫?


ヒカリは意識が完全に覚醒し、自分に声をかけてきた人物へと視線を送る。
それはベリーショートの髪型をした、背の低い、とても可愛らしい同年代くらいの女の子だった。



ヒカリ「……え?あなた……だれ?



ヒカリの質問に女の子は目をパチクリさせ、ヒカリにおかしなモノを見る目を向けた。



?「何行ってんのさ?……ボクは……ってあれ?……またボクはいつの間にこの姿に……ま、いっか



女の子はピョコッと立ち上がり、ヒカリに背を向けて歩き始める。



ヒカリ「ちょっと!待ってよ、あなた一体……て、え?


呼び止めたヒカリは、女の子がスッポンポンの全裸な事に気がついた。
そして背中には、目立つ大きな傷が見えた。



ヒカリ「……



言葉を失っているヒカリを他所に、女の子はガチャリと音を立てて、部屋から出て行った。



……暫く放心してから、ヒカリは改めて自分が寝ていた部屋を見回してみる。



ポケモンのポスターやら、モンスターボールのレプリカやら、トロフィーなんかが飾ってある如何にも男の子らしい部屋だった。
ヒカリはその部屋のベッドで寝ていたのだ。



イマイチ状況が掴めずにヒカリは戸惑っていると、ガチャリと音を立てて部屋の扉が開いた。



「あら、起きてたの?



ドアノブに手をかけ、心配そうに声をかける女の子だった。




彼女はヒカリを見つめたままゆっくりと歩み寄ってきて、ヒカリの寝ていたベッドに腰をかけて座った。
20 名前:名無し 投稿日:2017/01/12 22:32 ID:KAClwio9
ユーチューブにopとed付きでアップしてみました。宜しければご覧下さい。
21 名前:名無し 投稿日:2017/01/13 00:02 ID:lzPYphSM
支援
22 名前:名無し 投稿日:2017/01/14 14:13 ID:lXBbwuZm
支援です
23 名前:僕◆K17zrcUAbw 投稿日:2017/01/18 15:52 ID:VwLtWKE1
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24 名前:名無し 投稿日:2017/01/19 01:04 ID:xJIuRuZw
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